その後のGS美神 2003 リポート6 美神令子

渡さないんだからっ!

著者:まきしゃ


    令子と横島が付き合いだしてから1ヶ月ぐらいたった某日…
  美神事務所のガレージで、なにやらゴソゴソしている男4人…
横島 「なっ? なっ? 銀ちゃん、ええやろっ!?」
近畿 「う〜ん、そら、できんことやないけどなぁ〜〜」
ヒロシ 「銀一さんっ! 俺からもお願いしますっ! なっ? 康則もだろ?」
康則 「うんっ! 出きればでいいですから、俺も行きたいですっ!」
   
横島 「なっ? こいつらも行きたがってるやないかっ!
  ここは1つ、事務所関係者の男だけの親睦会を兼ねてということで…」
   
令子 「ほぉ〜〜? 兼ねる前の目的は、なんなのかな〜〜?」
横島 ぎく〜っ!
   
  事務室 令子に殴られ横島ダウン…
横島 「堪忍やぁ〜〜 しかたなかったんやぁ〜〜〜」
令子 「近畿クン、ごめんね〜。 女優との合コンをセッティングさせようとするなんて…」
近畿 「まあ、そうゆう話は、横っちに限らず、友達からしょっちゅう頼まれとることやから、
  あんまし気にならんですけど…」
   
令子 「それにしても、横島っ! あんた、大人のくせに高校生を巻き込むんじゃないっ!
  みんな、彼女が居るから関係者なのに、そいつらを合コンに誘ってどうするっ!」
横島 「うぅ〜〜 しかたなかったんやぁ〜〜〜」
   
シロ 「ヒロシも、賛成したんでござるのか…?」
ヒロシ 「ほ、ほら、横島さんが、行きたいっていうから…」
タマモ 「康則もなの?」
康則 「え、えっと、やっぱ、女優さんに会ってみたくて… えっと、その…、ごめん…」
   
令子 「あ〜あ、横島みたいなバカな先輩を見て育つと、しょぼい男にしかなれないわよ〜?
  シロもタマモも、苦労するわね〜。」
タマモ 「康則は、横島みたいなバカじゃないわよっ?」
シロ 「先生を賢くするのは、美神さんの仕事でござろう?」
令子 「うっ!」
   
近畿 「みんな、きっちり言い返すんやな…」
キヌ 「美神さんを見て育ってるから…」
   
近畿 「おキヌちゃん、今日は全員で除霊に行くんやったっけ?」
キヌ 「ええ、そうなの。 あと30分ぐらいしたら出かけないと…」
近畿 「そっか〜。 どないしようかな…。 次の仕事まで、中途半端に時間あるしなぁ〜…
  そや。 ヒロシに康則、合コンってわけにはいかんけど、これから一緒にTV局に
  いかへんか? 運が良ければアイドルに会えるで〜?」
   
横島 「なに〜〜っ!? 俺も行く… ぶっ!?」
令子 「あんたは、仕事だろうがっ!」
   
ヒロシ 「い、行きたいけど… な、なあ?」
康則 「行っていいのか…な?」
   
シロ 「まあ、見学だけでござるなら…」
タマモ 「近畿クン、今度、私も連れてってくれるなら、いいわよっ?」
シロ 「あっ! 拙者もっ!」
令子 「私もっ!」
みんな 「え゛っ?」
   
令子 「な、なによっ! 私だって、見に行きたいわよっ!
  あんたらより、ほんのちょっと年上なだけじゃないのっ!」
   
近畿 「あはは。 そやな、また機会作って、みんなに見に来てもらいますわ。
  おキヌちゃん、みんなの予定とか、あとで教えてや。」
キヌ 「はい、銀一さん。」
   
   
  近畿の車に乗ってTV局に向かっているヒロシと康則
ヒロシ 「康則〜、横島さんってさぁ〜、俺たちと一緒にTV局に行きたがってたけど、
  贅沢な話だよな〜? 自分は、女の子4人を独り占めしてるのにさ〜?」
康則 「まあな〜。」
近畿 「横っちの奴、昔から女好きやったからなぁ〜。 ひどいセクハラしまくりのくせに、
  やたらとモテまくるんが、しゃくにさわるんやぁ〜。」
   
ヒロシ 「え〜? モテモテの銀一さんが、そう言うのって、なんか変ですよ〜?」
近畿 「変やと言われても、ほんまやから、しかたないやんか。
  あいつのこと、よお知らん女の子からは嫌われとるみたいやけど、そばにおる子に
  好かれとるんは、事務所を見ればわかるやろ?
  俺もヒロシも、横っちに惚れてた女性と、つきおうてるんを忘れるんやないで〜?」
ヒロシ 「うっ!」
   
近畿 「なあ、康則。 横っちと美神さん、うまくいっとるんか?
  ここ数年、見てきとるんやから、そのへんのことわかるやろ?」
康則 「え? ま、まあ、仲は良さそうですけど…」
近畿 「仲良うしてもらわんと、困るんや。 横っちが、ほかの女に手ぇ出す気にならんくらいにな。」
康則 「う〜ん、そういうことだと、ちょっとまずいかも…」
   
近畿 「えっ!? な、なにがまずいんやっ!?」
康則 「横島さんたちがつきあうようになってから1ヶ月ぐらい経ってますけど、美神さんの
  態度が、あんまり変わってないんです。 一応、デートとかはしてるみたいですけど…」
近畿 「う〜ん、友達付き合いが長いと、なかなか進展しにくいって話は、よく聞くけどな〜…」
   
康則 「横島さん、事務所でいつも、『キスさえさせてくれん〜』って騒いでますし…」
近畿 「……、騒ぐんはどうかと思うけど、横っちの気持ちもわからんでもないなぁ〜…」
康則 「だから、横島さん、欲求不満が溜まってるみたいで、本気はともかく、浮気は
  してもおかしくないと思うんですけど…」
近畿 「………、かなわんで、ほんまに…。」
   
   
  除霊先に向かう車の中で、血まみれになってる横島…
横島 「どさくさまぎれにちょっとしりやちちやふとももにさわるくらいい〜じゃないっスか〜
  俺たち、つきあってるんでしょ〜〜?」
令子 「時と場所と状況をわきまえんか〜〜っ!」
横島 「そんな時と場所と状況が無いから、こうしてるんじゃないっスか〜〜!
  キスさえさせてくれんくせにぃ〜〜〜っ!」
令子 「いい加減に黙れ〜〜〜っ!」
  ボカッ!  静かになった横島…
   
シロ 「この場合、どっちの方が正しいんでござるのか…?」
キヌ 「う〜〜〜ん………」
タマモ 「どっちも、どっちじゃない?」
   
  気絶している横島を車に残して除霊に向かう4人…
キヌ 「あの〜…、美神さん…。」
令子 「な、なあに? おキヌちゃん…」
キヌ 「その〜…、私、男の人のこと、まだ、よくわからないんですけど、
  横島さんは、特別変わってるとは思いますけど、
  でも、もう少しやさしくしてあげたらと思うんですけど…」
   
令子 「わ、私なりに、やさしくしてるわよっ!?
  よ、酔いつぶれた横島クンを、やさしく介抱してあげてるし、
  家まで送って、寝かしつけてあげたりしてるんだからっ!」
キヌ 「それって、横島さんの記憶には残らないんじゃぁ……」
   
令子 「あ、あいつにあんまりやさしくすると、す、すぐ、つけあがるからっ!」
キヌ 「まあ、急にやさしくするのは難しいとは思いますけど…
  でも、あんまりひどいと、今度は横島さんと二人で家出しちゃいますよ?」 ニコッ!
令子 ギクゥッ!!
  苦笑しながら、おっかないことを言うおキヌちゃん…
キヌ 「あっ、美神さん、そんなに驚かなくても… 冗談なんですから。」
   
シロ 「なんか、冗談にしても迫力があったでござったな…」
タマモ 「経験と実績があるからね〜〜」
   
   
  てな調子で、なかなかすんなりいかない美神&横島のカップル
  数日後 美神事務所の屋根裏部屋で、なにやらゴソゴソしている男女6人…
タマモ 「なんだか、ずいぶん、男に都合のいい話ね〜〜」
近畿 「いや、特別なことやってくれって、ゆうてるわけやないんや。 それぞれ、
  普段通りにしてもらっててええから、ただ、それを美神さんに、見てもらえれば…」
   
シロ 「つまり、拙者は、ヒロシにやさしくすればいいんでござるな?」
近畿 「そや。 それを美神さんの前でな。 あと、横っちには、やさしくせんといてくれる?
  横っちがなんか言ったら、美神さんにしてもらうように言ってや?
  そんなんを繰り返してけば、美神さんも横っちにやさしくするようになるはずや。」
シロ 「わかったでござる。」
   
ヒロシ 「なんか、ちょっと楽しみだな?」
康則 「ああ。」
   
タマモ 「でも、なんでそこまでする必要があるの?」
近畿 「そら、横っちが変な気起こさんようにするためや。 おキヌちゃんのおっかない冗談が
  現実になったら、たまったもんやないからな。」
キヌ 「えっ? 銀一さん、知ってたんですか? ご、ごめんなさい。
  あ、あれは、ほんとうに、冗談ですからっ!」
   
近畿 「ああ、わかっとるって。 ま、横っちと美神さんと、事務所のみんなの平和のために
  やってもらえればええから。」
タマモ 「美神さんが、こんなことでやさしくなるとは思えないけど…」
   
  と、そこへ、横島がやってくる
横島 「みんな〜、何やってんだ〜〜? みんながいなくて、美神さんが、さみしがってるぞ〜?」
近畿 「なに、のん気なことゆうとるんやっ! おまえ、美神さんの彼氏やろ?
  おまえが、相手してやりゃ、済む話やないか?」
横島 「そういうわけにはいかんのが、あの人なんだ。 賑やかなことが、好きだからな。」
近畿 「なんか、いろいろ難しいんやな…」
   
横島 「あと、シロ。 美神さんが、厄珍とこにお札取りに行って来てくれって。」
シロ 「わかったでござる。 ヒロシ、一緒に行くでござるよ?」
ヒロシ 「うんっ。」
   
  事務室に戻ってきた近畿たち
令子 「近畿クン、屋根裏部屋は面白かった?」
近畿 「ええ、可愛らしい部屋でしたわ。 あ、おキヌちゃん、のど渇いたんやけど、
  コーヒー入れてもらえんやろか?」
キヌ 「あっ、はい。 今、入れますね。」
タマモ 「私も、手伝うわ。 康則は、ミルク入りの砂糖2つよね?」
  早速、気をきかすタマモ おキヌちゃんは、普段と違い…
   
キヌ 「はい、銀一さん。」
近畿 「おおきに。」
タマモ 「はい、康則。」
康則 「ありがとう。」
   
横島 「あ、あれ? お、俺や美神さんのぶんは…?」
タマモ 「ん? 欲しかったら、美神さんに入れてもらえばっ?」
横島 「えっ?」
  チラッ! 令子の方を見る横島 ギロッ!
横島 「は、はい、わかりました。 美神さんは、いつも通りブラックですよねっ!?」
  自分と令子のコーヒーを入れることになった横島… ああ情けない…
近畿 「なんや、逆効果みたいやったやな…」
   
令子 「おキヌちゃん、どうして私たちのぶんを入れてくれなかったの?」
キヌ 「あの〜…、その〜…」
タマモ 「おキヌちゃんが横島のことをやさしくすると、近畿クンが、ヤキモチ妬くからよっ!」
近畿 「あああっ! タマモちゃんっ! ほんまのこと、言わんといてっ!」(汗)
令子 「あっ、そうか… いろいろ、気を使うことが増えたわね〜〜」
   
  そんなところに、シロたちが帰ってくる
シロ 「美神さん、お札貰ってきたでござるよ〜〜」
令子 「ん、ご苦労さん。」
ヒロシ 「ぜぇ〜、ぜぇ〜」
   
シロ 「ヒロシ、ちょっと待つでござるよ? 今、冷たい飲み物とタオルを持ってくるでござるから。」
令子 「へ〜、あんたも、気がきくようになったわね〜?」
シロ 「そうでござろうっ!?」
  令子にそう言われて、結構、機嫌良くなってるシロ
  ヒロシにどうやさしくするか、一生懸命考えてる模様…
   
シロ 「はい、タオルでござるよっ!」
ヒロシ 「ありがとう。」
シロ 「あれ? 額を怪我してるんでござるか…?」
ヒロシ 「えっ? ああ、並木の枝をよけきれなくて、顔に当たったときに、切ったのかな?」
シロ 「そうだったんでござるか…。 気がつかなくて済まなかったでござるよ…」
  そう言いながら、ヒロシの額の傷をぺろぺろなめだすシロ
   
ヒロシ 「えっ?」 かぁ〜〜〜 顔を真っ赤にするヒロシ
シロ 「えっ?」 そんなヒロシを見て、自分のやってることに気付き、顔を真っ赤にするシロ
  どうやら銀ちゃんの小細工は、この二人にだけ効果が有ったみたい…
   
   
  まわりの心配をよそに、あいかわらずの美神&横島のカップル
  数週間後 キヌの部屋 仕事の合間をぬって会いに来ている近畿…
近畿 「あの二人、ほんまにカップルなんかなぁ〜? 二人とも、普通と違い過ぎて、
  よおわからんわ。 横っちも、よお耐えとるなぁ〜」
キヌ 「そんなに心配いらないと思いますよ? 横島さん、もう何年も耐えてきたんだし、
  それと比べれば、今のほうがよっぽど恵まれてますから…」
   
近畿 「う〜〜ん、おキヌちゃんがあれだけ動いて、ようやくここまで来たってゆうことか…
  なんや、外圧が無いと、変わりそうもないなぁ〜」
キヌ 「それでも、デートの回数は増えてるみたいですよ?」
近畿 「へ〜、よおそうゆうことがわかるんやな〜。 やっぱ、デートの翌日は二人の
  雰囲気とかが違うからなんか?」
キヌ 「雰囲気というか…、横島さん、デートの翌日は必ず二日酔いしてますから…」
近畿 「そ、そうなの…」
   
近畿 「ところで、今日は平日やのに事務所はお休みなんやけど、なんでやの?
  横っちたちが、デートするためにお休みにしたとか…」
キヌ 「い、いえ… 今日は、事務所にとって、特別な日なんで…」
近畿 「ふ〜ん、どんな日なん? 教えてくれる?」
   
   
  東京タワーの特別展望台の上
  長い間、ぼんやりと座り込んでいる横島…
   
横島 「………、ようやく、俺、美神さんを、彼女にすることが出来たよ…
  まだ、こっから先、どうなるかはわかんないけど…
  おまえとここで別れてから、何年もたっちゃったけど、また会えるんだよな?
  俺の子供として…
  このままでいけば…  美神さんとの…
  それでも… いいよな…?  ルシオラ………」
   
  高い位置にあった太陽も徐々に沈んで行き、わずかな時間赤く燃えた後
  暗い地平線の中に隠れて行く…
   
横島 「すっかり暗くなっちゃったな…
  じゃ、俺、帰るから…  わっ!?」
  ツルンッ! 足をすべらせ、タワーから落ちて行く横島
   
横島 「ああ、またやっちゃったよ。 文珠〜〜っ!」
  文珠をすぐに出して、着地に備える横島 慣れてるためか、結構余裕があるみたい…
   
横島 「そろそろだな…。 えっ!? やばいっ! このままじゃ子供に当たるっ!」
  横島の落下地点には、落ちてくる横島を見て固まってしまった女の子がっ!
  ドガシャッ!!
   
   
  その頃、キヌの部屋では…
キヌ 「ぎ、銀一さんっ! なにか、横島さんによくないことがっ!」
近畿 「ど、どないしたんや? おキヌちゃん?」
キヌ 「胸騒ぎがするんですっ! どんな状況かは、わかりませんけどっ!」
近畿 「おキヌちゃんの言うことや。 間違いは無いとは思うけど…」
  そんな中、二人で観ていたTV画面に、ニュース速報のテロップが流れる…
テロップ 「……分頃、東京タワーより男性が落下。 現在、意識不明の重体。
  所持品より、GSの横島忠夫さん(21)と判明。 落下に巻き込まれた人はいない模様…」
近畿 「な、なんやて〜〜〜っ!?」
   
   
  「…コシマ」
横島 「んん……」
ルシオラ 「ヨコシマ…」
横島 「ん… えっ? ルシ…オラ?」
ルシオラ 「ああ、よかった。 気がついたのねっ?」
横島 「え? 俺、どうなっちゃったわけ? なんで、ルシオラが?」
   
ルシオラ 「私は、ずっと前からヨコシマの身体の中に居たわよ? 眠っていただけで…」
横島 「じゃあ… 俺の子供に転生する予定の…?」
ルシオラ 「ええ…。」
   
横島 「俺…、生きてるんだよね…?」
ルシオラ 「ええ、大丈夫よ? 東京タワーから落ちちゃって、重傷には違いないんだけど、
  命には別状ないみたい…。」
横島 「ま、まさか、ルシオラっ! おまえ、また、自分の命を削ってっ!?」
   
ルシオラ 「大丈夫よ、そんなことしてないから。」
横島 「ほんとに、ほんとだなっ!?」
ルシオラ 「あ〜もう、あいかわらず、しつこいのねっ! ほんとうなんだからっ!
  ……、前回は、ウソついちゃってごめんね…。」
横島 「あ、いや、そういうつもりじゃなかったんだが…」
   
ルシオラ 「それに、ヨコシマの命を救うために力を使ってたら、こうしてお話なんか出来なかったもの。」
横島 「えっ? やっぱり、そうしようとしてたのか?」
ルシオラ 「そうしなければならなかったのなら、そうしてたけどね…。
  だって、ヨコシマが死んじゃったら、私も子供に転生できないでしょ?」
横島 「あっ、ああ、そうか…」
   
ルシオラ 「落下のショックで私が覚醒したんだと思うけど、ヨコシマが重傷だったんでびっくりしたわ。
  すぐに助けようと思って、動き出したんだけど、その必要が無いのはすぐにわかったの。
  前回は、べスパの妖毒が原因だったから、ああするしかなかったんだけど、
  今回は、落下のショックだけだったでしょ?
  霊基構造にダメージはなかったし、傷ついた細胞も、自力で再生しようと、
  たくましく鼓動を続けていたわ。 再生のお手伝いをすることもできたけど、
  そうすると、こうしてお話出来なくなるかもしれないと思ったから、やめちゃったの。」
   
横島 「そうか…。 でも、俺もおまえと話が出来るほうがうれしいなっ!」
ルシオラ 「ただ、そのぶん、目が覚めたとき、少し痛みはあるけど我慢してねっ!」
横島 「えっ? そうなの? どれくらい?」
ルシオラ 「身体中の骨が折れてて、ちょっと苦しくてうずくまったところに、
  曙と武蔵丸に両側からズドンとぶつかってこられた感じかな…?」
横島 「うっ… な〜に、軽い軽い! おまえと、こうして話が出来ることを思えば…」
   
ルシオラ 「ありがとう、ヨコシマっ! でも…、そろそろ、お別れみたい…」
横島 「えっ? もうっ? 俺の子供に転生するまで、会えないってことなの?」
ルシオラ 「……、違うわ、ヨコシマ…。 たぶん、もう…」
横島 「えっ!? ど、どういうことっ!?」
   
ルシオラ 「本当は、私、ヨコシマの中で覚醒してはいけなかったの…。
  1つの肉体に、魂が2つ存在することが出来ないってことは、わかるでしょ?
  私の魂をヨコシマの子供に転生させるために、いろんな処置がとられていたみたいで、
  それで今まで、存在できたみたいなの。 でも、落下のショックで覚醒しちゃったために、
  もう、ここには存在することが出来なくなっちゃったみたい…。」
横島 「そ、そんな…」
   
ルシオラ 「でも、こんなに話せて、私、嬉しかったわっ。 普通なら、ヨコシマが気付いた時点で、
  私の魂はヨコシマの身体から、離れてしまうのよ?
  私の魂はヨコシマと親和性が高かったから、ここまでお話出来たみたい…。
  私、挨拶しただけで、お別れになっちゃうのかと、思ってたんだもの…」
横島 「ルシオラ…」
   
ルシオラ 「これで、ほんとうのお別れになっちゃうんだけど…
  でも、私もヨコシマの身体の中で魂が再生したおかげで、きっと転生できると思うわ。」
横島 「お、俺の生きてるうちに、転生してくれよなっ!?」
   
ルシオラ 「……、そうしたい気持ちもあるけど……。
  でも、今、ヨコシマは、千年も待ってた人と、つきあってるんでしょ?
  私、今のヨコシマは、美神さんに譲るって決めたんだもの…。」
横島 「………」
   
ルシオラ 「そろそろ行くね… でも、これで何度目のお別れになるのかしら?
  私たち、何度もお別れしながら、こうして話が出来るなんて、よっぽど縁が深いのよねっ!?」
横島 「…ああ。」
   
ルシオラ 「だから、ヨコシマ…
  また…、会おうねっ。」
   
横島 「ルシ…オラ…」
   
   
   
  白井総合病院 横島の安否を気遣ってかけつけた令子たち…
キヌ 「先生っ! 横島さんは、大丈夫なんですかっ!?」
医師 「手術は成功したんだが、重体にはかわりがない…。
  あとは、本人の生命力しだいです。 今晩が山だと思います…。」
   
キヌ 「よ、横島さんの生命力なら、きっと助かりますっ!
  ねっ!? 美神さんっ!?」
令子 「えっ? そ、そうよね… 横島クンが、死ぬわけがないわ…」
キヌ 「そうですっ! だから、美神さんも、しっかりしてくださいっ!」
  横島の重体を知って以来、ずっと茫然自失状態の令子…
   
  しばらくして…
  ポワァ〜〜ン… 横島の身体から、1つの魂が抜け出していく…
キヌ 「えっ!? 横島さんの…、魂…?」
近畿 「しっ! 静かにっ! 横っちが、何かしゃべりかけてるっ!」
令子 「横島クンっ!!?」
  横島の口元に注目する令子
   
横島 「ルシ…オラ…」
   
令子 「!!!」
キヌ 「あああ………」
近畿 「ひ、ひぇ〜〜〜〜!」
   
   
  数時間後… いったん仕事のために病院を離れ、また戻ってきた近畿…
近畿 「おキヌちゃん、横っちの容態はどんな具合や?」
キヌ 「ええ、徐々に回復に向かっているみたいです。」
近畿 「そっか…、そいつは一安心やな…
  それより心配なんは、美神さんの方や…。
  とてもやないけど、声、かけられへんかったわ…。」
   
  憔悴しきった表情で、病室前の廊下の椅子に腰を掛けている令子…
  おキヌちゃんやシロたちが、何度も横島のそばにいるようにと勧めても、
  イヤイヤをして、そこから動こうとしない…
   
近畿 「そやろな… うわ言で、自分やなくて前の彼女の名前よばれたら、無茶苦茶
  キッツイもんな…。 ほんまは美神さんも、そばにつきっきりでおりたいんやろうけど、
  またうわ言で、自分以外の名前を聞くことになるんが怖いゆうんは、よおわかるわ…。
  こいつも、ほんまに罪作りな男やで…。」
キヌ 「…………」
   
   
  深夜… 徹夜の看病で、二人だけ残っていた近畿とおキヌちゃん
  さすがに疲れて、二人とも居眠りをはじめていたのだが…
   
  ひゅぅ〜〜〜〜 殺気で目を覚ましたおキヌちゃんっ!
キヌ 「えっ!? み、美神…さんっ!?」
   
  殺気の発信源は、令子っ!  ふしゅるるる〜〜〜っ!
   
令子 「もう一度…
  もう一度、私以外の名前を言ったら、こいつを殺して私も死ぬわっ!」
   
キヌ 「あああ…、美神さんっ! 銀一さんっ! 横島さんっ! 二人とも起きて〜〜っ!」
近畿 「ん〜〜 どないしたんや…? ええっ!?」
   
  目を覚ました近畿のうしろに隠れるおキヌちゃん
キヌ 「銀一さんっ! 美神さんを、なんとかして〜〜っ!」
近畿 「な、なんとかって… どないすりゃあええんやぁ〜〜っ?」
   
  しゅこぉ〜 ふしゅるる〜〜
  殺気を発しながら、横島の枕元に座る令子…
  何も出来ずに呆然と立ち尽くす近畿とおキヌちゃん…
   
  カッチ、カッチ、カッチ… 時計の音だけがやけに大きく聞こえる病室…
近畿 「おキヌちゃん…、こんな美神さんをなんとか出来る人って、誰かおらんの…?」
キヌ 「そ、その…、横島さんぐらいしか…」
近畿 「あああ…、つまり、誰にもどうにも出来んゆうことか…」
   
  しばらくして…
横島 「うう〜〜ん…」
  ピクッ! 横島のうわ言に一斉に反応する3人っ!
近畿 「ああ、もう、こうなったら、横っちの言葉に賭けるしかないで〜〜っ!?」
キヌ 「そ、そんなぁ〜〜〜!」
   
   
横島 「み、美神さん…」
  しゅぅ〜〜〜〜 令子の殺気が一気に溶けていく…
   
近畿 「はぁ〜〜、た、助かったみたいやで…」
キヌ 「ああ…、よかった…」
   
横島 「美神さんっ。 キスくらい、してくれたってええやろっ!?」
近畿 「こ、こいつ、また、やっかいな寝言を…  えっ!?」
   
  もう、すっかり柔和になった令子が、横島に声をかける…
令子 「横島クン、何度もキスしてあげてるでしょっ?
  そのとき、あんたは、いつも酔いつぶれているけれど…」
  眠っている横島に、くちづけをする令子…
   
キヌ 「あっ…」 顔を赤らめるおキヌちゃん…
近畿 「………、かなわんで、ほんまに…。 このカップルは…」
   
   
  翌日 横島の病室 令子に呼び出されてやってきた小竜姫とヒャクメ
小竜姫 「そのようなことが有ったのですか…」
ヒャクメ 「う〜ん… そうですね〜 たしかに横島さんの中には、ルシオラさんの霊体は
  認められませんね〜…」
令子 「どういうことなの? 説明してもらえるっ!?」
   
小竜姫 「どうやら、順を追って話をしたほうが、よさそうですね。
  まず、ルシオラさんの魂を再生させるには、霊的質量が不足していたのは覚えてますよね?
  それを補う唯一の方法として考えたのが、横島さんの体内に残されたルシオラさんの魂を
  用いて、横島さんの子供に転生させることでした。
   
  そのため私は、べスパさんの集めたルシオラさんの霊破片を、横島さんの体内に
  埋め込みました。 それを核として、横島さんの体内にあるルシオラさんの霊基構造を
  収集するためです。 普通、体内の霊基構造は、新陳代謝によって古くなった物は
  体外に排出されるのですが、ルシオラさんの物は排出させずに、体内に蓄積するように
  していたわけです。
   
  あれから数年の間に、代用していた霊基構造は、すべて回収蓄積されていて
  一つの魂として、横島さんの子供としての生命を授かる日を待っていたのです。
  ただ、一つの肉体には一つの魂しか存在出来ませんので、
  ルシオラさんの魂は横島さんの体内で休眠状態を保つようにしていました。
  そこまでは、私の想定通りにことが進んでいたようです。
   
  ところが、横島さんの転落事故のショックで、魂が覚醒してしまったのでしょう。
  そのため、横島さんの身体から、離れなければならなくなった…」
   
   
令子 「なるほど…。 そういえば、ヒャクメが瀕死の横島クンを救うために体内に入ったときも、
  魂が覚醒したとき、外に追い出されてたっけね…。」
キヌ 「私も、美神さんが生き返ったときに、はじきだされた経験が…」
   
令子 「ただ、ルシオラは魔族だから、魂が集まったなら、魔族として
  復活できるんじゃないのっ!?」
小竜姫 「いえ、それは……  横島さんの子供…、つまり人間として転生するようにしてましたから、
  ルシオラさんの魂は、おそらく人間として来世を迎えることになると思います…」
   
横島 「それって…、ルシオラは、俺の子供としてではなく…?」
小竜姫 「ええ…。」
横島 「やっぱりルシオラが言ってたように、俺、もうルシオラとは会えないんですね…?」
小竜姫 「………、そうなります…。」
   
ヒャクメ 「そうですけど、横島さんへの想いは魂に強烈に残っているはずですね〜。
  ほら〜、美神さんだって、前世のメフィストの想いが強烈だったため、こうして
  現世で横島さんに再会できたわけですから〜。
  もしかしたら、もうすでにどこかで女の赤ちゃんに転生してるかもしれませんね〜。」
   
令子 びくぅ〜〜〜っ!!!
小竜姫 「ヒャ、ヒャクメっ!!」
ヒャクメ 「あっ! そ、そのぉ〜…」
   
横島 「………、いえ…、それはないと思います…。
  現世の…、今の俺は、美神さんに譲るって、ルシオラ自身が言ってましたから…
  俺の来世が、ルシオラの来世と再会するのを信じるしかないっスよね…?
  そりゃぁ、現世でも、ルシオラのこと忘れろっていわれても無理だけど…
  でも、俺、現世では美神さんのことを大切にしたいと思ってます…。」
   
令子 「横島クン…。」
   
横島 「ですから、美神さん〜〜〜っ!!」
  令子に抱きつく横島っ!
  令子に殴られ… れっ? 殴られて…ないっ?
横島 「えっ…?」
   
令子 「来世では… 来世では、こいつを大事にしてやってね… ルシオラ…。
  でも…、現世ではっ、誰にもこいつを …さないんだからっ!!」
   
  横島の腕を強く握り締める令子
令子 「だけど… 人前で抱きつくんじゃない〜〜〜〜っ!!」
  片手で横島を強く掴んだまま殴りつけた令子… ダメージはいつもの10倍…?
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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