GS試験前日 

「あああああああっ、緊張してきたでござるうっ!」 
「シロちゃん落ち着いて。」 
ぐるぐる歩き回っているシロは時折立ち止まって身震いをした。 
「大丈夫よ、シロちゃんなら合格出来るって。」 
「はうあああああ・・・・っ!」 
「私も冥子さんと一緒に救護班として参加してるから、安心して。」 
「ど―いう意味でござるか・・・?」 
おキヌの笑顔に、シロは頬を引きつって笑った。 


きつねレポート

 牙と思いの幻影 −仮面の女− 


オカルトGメンビル 

「生態兵器?」 
「ええ。」 
美神と横島は西条とひのめを抱えた美智恵と向き合って座っていた。 
「確かな証拠はないけど、その実験を明日のGS試験でやるという情報があるの。」 
「どういう風に?」 
美神はテーブルの資料を手に取る。 
「人工的に作った妖怪ってとこね。 人間に化けさせ、試合させる。 GS試験なら、サンプル集めの手間がないでしょ?」 
「これはオカルト条例に引っかかることだ、何とかしたい。 仕事として、令子ちゃんにも協力して欲しいんだ。」 
「いいけど、こっちの戦力は私と横島君だけよ?」 
「俺もやるんすか?」 
「当然。」 
「わかってる。 あとは唐巣神父にピート君、エミ君といったところだ。」 
「十分ね。 ややこしくなるし、あとはほっときましょう。」 
「よろしくね、令子。」 
「ところでママ? 何でバックを持ってひのめを抱えてるの?」 
「あ〜ら言ってなかったかしら? 今からちょっと南米のパパのところに行くのよ?」 
「ちょっと待ってよ!? 私に全て押し付ける気っ!?」 
「おほほほほ〜〜! じゃあね〜令子〜〜。」 
「あうわ〜。」 
「こら―――っ!!」 
手を振るひのめとバッグを抱え、美智恵はそそくさ走り去った。 
「あんの馬鹿親〜〜!」 
「まあまあ令子ちゃん。 それより、恐らく目標は決勝近くまで勝ち残る奴だ。 それまでに証拠を掴みたいが、まず難しい。」 
「んじゃどうすんだよ?」 
「GS試験にはベテランも多く見学に来るんだよ? 横島君、きみならどうする?」 
「そりゃあ、強い奴と戦わせていいデータを・・・・あっ!」 
「そう。 目的が実戦テストなら当然試合後に観客のGSを襲う可能性が高い。」 
「なるほど、証拠がなくても最終的にそいつをぶっ飛ばせばいいのね?」 
「まあ、黒幕には逃げられるかもしれんが、ある程度の情報をこっちも得られる。 そうしたら公開捜査に踏み切れる。」 
「オーケー、引き受けるわ。」 
「ああ、もう1つ。」 
「何?」 
「実は僕のイギリス時代の知人がこっちにGS試験を受けに来るんだ。 特にどうしてくれってわけでもないんだが、まあよろしく頼むよ。」 
「ほ〜う、昔の女か?」 
「またきみはすぐそう言う・・・・恩師のお孫さんだ。 17の少女にそんな思いはないよ。」 
「俺に任せろ西条っ!」 
横島は立ち上がって西条の手を掴み取った。 
「頼むから変なことはしないでくれよ・・・?」 
「やれやれ。」 

「・・・・・」 
タマモは事務所の屋根に寝転がって足をぷらぷらさせていた。 
『どうしたのですか?』 
背中の下から聞こえる声に、タマモは足を組替えた。 
「別に。」 
『お友達と会われるのでしょう?』 
「まあね。」 
『緊張しているのですか?』  
「どうだろ・・・?」 
『大切な方なのですか?』 
がんっ タマモはかかとで屋根を叩いた。 
『失礼、失言でしたね。』 
「・・・・いいわよ。」 
タマモは再び足を組む。 
「ハルはそんなんじゃないわ。」 
『・・・・・』 
「美神さんや、あんたと同じよ。」 
『・・・・ありがとうございます。』 
「・・・・・」 
タマモはちっとも動かない雲を眺めていた。 瞳が細まる。 
「どういうつもりなんだか・・・」 

「よう、横島。 美神、久しぶり。 ん、おキヌは?」 
「おキヌちゃんは試験の手伝いもう行ったわよ?」 
事務所に入ってきた雪之丞は帽子を取って軽く振った。 
「何だ雪之丞か、飯ならないぞ?」 
「そう言うなって、お前にちょっと話があってな。」 
「何だよ?」 
「俺も今度で正式な資格を取るつもりだ。 そしたら、しばらく俺と組んでみないか?」 
「いいっ!?」 
「駄目でござる―――っ! 先生は拙者と組むんでござるっ!」 
「どうだ、考えといてくれないか?」 
「いや、しかし・・・・」 
「無視するなでござるっ!」 
雪之丞は横島に耳打ちした。 
「お前好みの秘書を雇うことも出来るぜ? その他いろいろ特典が・・・・」 
「い、いいかも・・・?」 
「お―い、シロはともかく私に内緒で話を進めない。」 
「あ、聞こえてました・・・?」 
「いいじゃねえかよ美神、何も一生とは言ってねえよ。 1度横島と組んで仕事をやってみたいんだ。」 
「ふ〜ん、じゃこうしましょう。 家のシロと勝負して、成績がいいほうの勝ちってのは?」 
「せ、拙者でござるか?」 
「おもしれえな。 じゃあ俺が勝ったら1年横島を借りるぜ? ただでな。」 
「お、おい雪之丞・・・・特典は・・・?」 
「ない。」 
「そ、そんな〜〜〜〜〜〜っ!!?」 
「じゃあ家のシロが勝ったら、いつでもこっちの好きな時にただであんたをこき使うわ。 いいわね?」 
「期間は?」 
「10年。」 
「・・・・長い、そっちも1年だ。」 
「まあいいわ、決まりね。」 
「よっしゃ、横島荷造りしとけよ? じゃあ明日なっ!」 
ばたんっ 
「美神さ〜ん、勝手にそんな話決めないでくださいよ〜〜〜・・・」 
「気にしないの、例え雪之丞が勝っても、あんたにはいい経験になるわ。」 
「そんな〜・・・」 
「しか―しっ! 私に喧嘩を売った以上負けるわけにはいかないわっ! シロ、死んでも勝つのよおっ!!」 
「は、はい―っ! じゃ、じゃあもし拙者が優勝したら・・・・」 
「そん時は横島君をあげるから、2人で放浪の旅でもしてきたら―?」 
「や、約束でござるよっ!? 先生、一緒に修行の旅に出るでござるっ!!」 
「嫌だ――っ! 毎日お前と散歩なんかしたくない〜〜〜!! 美神さ〜〜〜〜んっ!!」 
「さ〜て明日の準備するか。」 
「ちょっと〜〜〜! 俺にいいことなんもないじゃないっすか〜〜〜〜!!」 

その夜 

美神はテーブルに並べた神通棍をきゅっきゅと磨いていた。 
「まだやってたの?」 
タマモが入ってきて、向かい合うように椅子に座った。 
「これが命に関わるからね。」 
「ふっ。」 
タマモは神通棍を1つ手に取った。 じゃきんっ 
「・・・・いいんじゃない?」 
「ど―も。」 
美神は手を止め、コーヒーに手を伸ばした。 
「楽しみね。」 
「馬鹿犬にあんまり期待しすぎないほうがいいんじゃない?」 
「・・・ハルって奴よ。」 
「・・・・ああ、こっちの話か。」 
「いい男なの?」 
「・・・・・どうかな。」 
「気に入ってんでしょ?」 
「・・・まあね。」 
美神は微笑んだ。 
「あんまり目立つんじゃないわよ? おおっぴらになったらお互いめんどうだしね。」 
「はいはい。」 
タマモは神通棍を置いて立ち上がった。 
「じゃお休み。」 
「ええ、お休み。」 

GS試験1日目  美神除霊事務所  

「まず今日の予定だ。」 
美神、エミ、唐巣、ピートに向かって西条が口を開いた。 
「ん、横島君はどうしたのかね?」 
「シロと一足先に会場に行ったわ。 あいつには私から話しとくから、続けて西条さん。」 
「うん、まず今日の1時予選と1回戦で様子をみるが、ある程度の参加者名簿は既に手に入れた。 これをできる限り回っておきたい。 そこで2手に別れる。 神父とピート君、エミ君はこっちの研修先を調べる担当を頼みたい。 全員じゃないが、早めに始めたいからな。」 
「わかった。」 
「はい。」 
「ま、雇われてる以上、文句は言わないワケ。」 
「僕と令子ちゃんと横島君は会場でめぼしい選手に絞る。 夜にその報告と対策を練る。 以上だ。 何かわかったらまず僕に連絡をくれ、絶対先走らないように。」 

「すごい人数でござるな〜・・・」 
「去年よりずっと多いなこりゃ。」 
シロと横島は人ごみを掻き分けて歩いていた。 
「拙者自信なくなってきたでござる・・・・」 
「馬鹿っ! お前がしっかりせんと俺は1年も女っけのない仕事をせにゃあならんのだぞっ!?」 
「そ、そうか・・・・先生と2人旅に出るためにもしっかりせねば・・・っ!」 
「いや、優勝はしなくていい。」 
「なぜでござるっ!?」 
目を泳がせる横島に、シロは睨みを利かせた。 
「お〜いシロ―、横島―!」 
「あっ、クロ兄―!」 
錫杖を持って走ってくるクロに、シロは駆け寄って飛びついた。 
「会いたかったでござる―!」 
「おう、いよいよだな。」 
「よ、クロ。」 
「ああ。 そうだ横島、タマモ知らないか?」 
「な、何でタマモを探すでござるか――っ!?」 
「いって、噛むなってシロ。 俺でなくてハルが会いたがってんだよ。」 
「え?」 
「あんたか・・・・ハルってのは?」 
同じく錫杖を手にしている黒髪のぼさぼさ頭が軽く会釈をした。 
「ハルだ、よろしく。」 
「どっかに来てるはずだと思うが・・・・・おい、一応言っとくが・・」 
「何だ?」 
「あれは俺の女だっ! 手え出すんじゃねえぞっ!!」 
「先生何言ってるでござるかっ!!」 
「・・・・ふっ、わかったよ。」 
「おい、いいのかハル?」 
クロがハルをじとっと見る。 
「言ったろ? 僕達はそういうんじゃないって。」 
「そうかね〜。」 
「じゃあちょっとその辺探してみるさ。 クロ、それからシロに・・・・横島だっけ? あとでな。」 
「お、おう・・・」 
ハルは人ごみに消えた。 
「・・・・何か変わった奴だな。」 
「ま―な。」 
「先生っ! タマモが先生のってどういうことでござるかっ!? 先生は拙者の・・・・」
シロはクロをちらっと見る。  
「何だよ?」 
「どうしたシロ?」 
「せ、先生もクロ兄も拙者のものでござるうっ!!」 
「アホぬかせ――っ!」 
「シロ、そう言うセリフはもっと大きくなったらな?」 
「あお〜〜〜んっ!」 
「ん・・・?」 
横島はふと視線を止めた。 ドラゴンをかたどった骨をかぶり、青みがかった黒く長い髪の女が人込みを通り過ぎた。 
「どうした横島?」 
「い、いや・・・・ちょっと・・・」 
「美人でもいたのか?」 
「・・・・ああ。」 
「何!? どこだどこだっ!?」 

「久しぶりだな、タマモ。」 
「ええ。」 
ハルはタマモの座っているベンチに腰を下ろした。 
「ずいぶん多いんだな、受験する奴って。 どうやら、僕は合格出来そうもないかな・・・?」 
「何考えてんの?」 
「何がだ・・・・?」 
ハルは錫杖を立てかけて大きく伸びをした。 
「GSになるなんて、本気じゃないんでしょうに。」 
「ふっ、ばれたか?」 
「まったく・・・」 
にっと笑うタマモは立ち上がった。 
「何するか知らないけど、クロにぐらい話してやったら? 寂しがってたわよ?」 
「きみは・・・・?」 
「何でアタシが?」 
「そりゃ残念。」 
「けけけっ。」 
ハルも立ち上がる。 
「そうだな、キスしてくれたら話してあげてもいいかな?」 
「・・・・クロが?」 
「きみだ、きみ。」 
タマモはハルの肩を掴んで引き寄せると、背伸びして口付けした。 
「・・・・・」 
顔を離したタマモは閉じていた目を開く。 
「・・・で?」 
「人間と妖怪の共存を目指して立派なGSになりたいっ!」 
「・・・・嘘つき。」 
「悪いな、言ってしまうと決心が鈍りそうなんで。」 
「あんたに限ってそれはないんじゃないの?」 
「どうだろうな。」 
「まあいいわ。」 
「キリコのこと・・・・すまなかった。」 
「アタシは気にしてないわ。 それより受付終わるわよ?」 
「おっと、じゃあまた後で。」 
「ええ。」 
走っていくハルの背中に、タマモは軽く手を挙げた。 

「横島君っ!」 
「あ、美神さん。 話は決まりました?」 
西条と美神が横島に駆け寄った。 
「私達はとにかく会場でめぼしい奴を見つけることね。 あんたもしっかりやりなさいよ?」 
「もちろんっすよ!」 
「女ばっか見るんじゃないわよ?」 
「えっ・・・・駄目・・・?」 
「駄目。」 
「ちぇっ。」 
「頼むぞ横島君。 下手をすると、いつかは僕らが襲われかねんからな。」 
「そ、そうなのか・・・・?」 
「まあね、今のうちに潰しておきたい。」 
「あら? 西条さんあれ。」 
「ん?」 
栗色の髪の少女が長い包みを抱えて走ってきた。 
「西条お兄ちゃ――んっ!」 
「あの子?」 
「ああ、名前は・・」 
「ずっと前から愛し・・・ぶっ!?」 
美神に足を引っ掛けられて転がる横島を飛び越え、少女は駆け寄った。 
「お久ぶりです――っ!」 
「ああ、よく来たねコル。」 
少女はぱっと気をつけをして美神にお辞儀した。 
「初めまして、コーリング・ブラントと言います。 お会いできて光栄です、美神令子さん。」 
「そんなかしこまらなくてもいいわよ。」 
「お兄ちゃんから話を聞いて、ずっとお会いたかったんです! 私、私も美神さんみたいな正義のGSになりたいんですっ!!」 
「せ、正義ね・・・・」 
美神は西条に目をやるも、西条は苦笑いをして視線を逸らした。 
「ま、とにかく頑張んなさい。 受付は?」 
「あっと、まだです! じゃ、じゃあ失礼しますっ!!」 
コーリングはくるっと反転し、ぱたぱた走っていった。 
「・・・・西条さん?」
「あ―いやなんだ、わざわざ夢を壊すこともないと思って・・・・ね・・・・」 
「もうっ! 失礼しちゃうわっ!」 
「ほら、僕らも行こうっ! 横島君、いつまでも寝てると置いてくぞ?」 
「うい〜〜〜っす・・・」 

『これより1次審査を始めます。 ナンバープレートをつけた方は、係員の指示に従って奥に進んでください。』 
「緊張してきたでござる〜・・・・」 
「落ち着けって、しゃきっとしろしゃきっと。」 
クロはシロの背中をばしっと叩いた。 
「よお。」 
雪之丞とタイガーが手を振ってきた。
「何だびくついてんのか?」 
「むむっ!? そんなことないでござるっ! そっちこそ、首を洗って待ってるでござるよ!?」 
「何けんか腰になっとるんじゃ2人共?」 
「こっちの話さ。 それよりそいつは?」 
雪之丞とタイガーに、クロは軽く頭を下げる。 
「シロの知り合いか。 俺はこついと同じく人狼の犬井クロだ。 お手柔らかに頼む。」 
クロの差し出した手を雪之丞は握った。 
「こっちこそな。 あんたは強そうだ、戦えるのが楽しみだな。 俺は伊達雪之丞。」 
「わっしはタイガー寅吉ですけん、よろしく。」 
「んじゃ行こうか、俺らは同じ組みたいだからな。」 

その日の午後  客席  

「どうやら全員合格したようだね。」 
「ええ。 それはいいとして、今日の1試合目でどれだけしぼれるか、ね。」 
「やれるだけやるしかないさ。 横島君も頼むぞ?」 
「わ―ってるって。」 
最前列に陣取っている美神、西条、横島は広い会場に目を流していた。 
「そういや横島君、タマモは? ハルってのはいたの?」 
「ええ、まあ。 何か変な奴でしたけど・・・」 
「まさかそいつが目当ての人造妖怪なんてオチはないでしょうね・・・・」 
「そんな気がしてくるからやめてください・・・」 
「僕としてもそういうのは避けたいが、こればっかりは見てみないとわからんさ。」 
「そうね。」 
び――・・・ 
「お、始るみたいね。」 
「おっ!? 美人発見っ!!」 
「おい。」 

『さあ時間です。 1次審査を通過した選手達が入場してきました。 解説には去年と同じくオカルトアイテムを扱う厄珍堂の店主、厄珍さんに来ていただきました。』 
『ど―もど―も。 親切丁寧安くがモットーの厄珍ある。』  
『よろしくお願いします。 さて、今年は1次審査においてもかなり霊力の高い選手がそろったようですから、これは期待出来るかもしれませんよ?』 
『去年みたいな騒ぎは勘弁して欲しいあるなあ。』 
人込みに流されるように歩きながら、クロは回りをきょろきょろ見渡した。 
「へ―、結構つよそうなのがいるもんだな。」 
「クククク・・・クロ兄い、拙者大丈夫でござろうか・・・・?」 
「んなこと言われてもなあ・・・」 
「はう〜〜・・・」 
「お、あそこにいるのは美神殿と横島じゃないか?」 
クロが指差す先をシロは見る。 
「はっ!? つい忘れてしまうがなんとしても優勝しなければっ!!」 
「優勝?」 
「ようおおおおおっし! 燃えてきたでござる―――っ!」 
「現金な奴・・・・ん?」 
龍の骨をかぶった黒髪の女がこちらを見ているのにクロは気付いた。 
「はっ!? 俺に気があるのか・・・・・? お嬢さ―――んっ!!」 
「クロ兄、拙者負けんでござるよ・・・・・・あれ?」 
クロの姿はシロの視界から消えていた。 

『さて、今回も組み合わせはラプラスのダイスで決められますが、おっ、どうやら決まったようです。』 
『んじゃあ、まずはどこから見てみるあるかな?』 
『そうですねえ・・・・では、9番コートのドクター・カオス選手を見てみましょう。 え―、対するは・・・』 
『ありゃ? 令子ちゃんとこのワンコあるな。』 
『令子と言うと、美神令子の・・・!?』 
『そうあるよ。』 
『いきなり面白展開ですっ! カオス選手は昨年法律に触れ哀れな敗北となってしまいましたが、今年はどうなるのでしょうかっ!?』 
「よけいなお世話じゃ―っ!」 
カオスは解説席にガンを飛ばした。 
「カオス殿〜、拙者は負けんでござるよっ!?」 
「ふん、小娘がいい気になるなよ? 行くぞマリアっ!」 
「イエス、ドクター・カオス!」 
「先生、見ていてくだされ・・・!」 
客席に目をやるシロは、逃げる女を追っかけている横島を目にする。 
「って、何してるでござるか先生っ!!」 
『さあ、各コート準備が整ったようです。 いよいよ試合開始ですっ!』 
か―ん 
「ゆけいマリアっ!」 
「ロケットアームっ!!」 
どんどんっ 両腕がよそ見をしていたシロの顔に突っ込んできた。 ばきょっ 
「ぎゃいんっ!?」 
吹っ飛ばされたシロは結界端まで吹っ飛ばされた。 
「いって〜〜〜・・・・」 
『おおっと、どうやらマリアには何か霊的処置が施されているようですね?』 
『曲がりなりにも天才を自称しているあるからね、去年の失敗はちゃんとカバーされているようあるな。』 
「わはは―っ、どうじゃ小娘? さっさと降参せいっ!!」 
「何の、まだまだでござる――っ!」 
バック転で飛び起きたシロはカオス目掛けて突っ込んだ。 

「カオスさんとシロ君がいきなりあたるとはな〜。」 
「とりあえずあの2人は目標じゃないからほっといてもいいでしょう。 他の試合に集中したほうがよさそうね。」 
「とすると、あっちの雪之丞君とタイガー君の相手のほうを見ておいたほうがいいな。」 
「場所を移動しましょう、横島君・・・・・はすでにいない、か。」 
立ち上がった美神と西条は最後尾の客席で2、3人の女に踏み潰されている横島を見てため息をつく。 
「ま、美人でも試合に出れば集中するでしょ。」 
「彼に必要以上に期待しないようにするさ・・・・」 

『さてこちら3番コートでは、昨年優秀な成績を残しながらも失格となってしまった伊達雪之丞選手が試合を行っています。』 
「おらおらおら―――っ!!」 
どしどしどしっ 雪之丞は腹部を連打し、ひるんだ相手の顎を蹴り上げた。 ごきゃっ 
「げはっ・・・!!」 
『圧倒的です、さすがと言うべきでしょうか、今大会の優勝候補の1人なだけはありますっ!!』 
審判が倒れた相手を見て、雪之丞の手を掴み挙げた。 
『勝者、伊達雪之丞っ!』 

「さすがね。」 
「ああ、僕も彼とは戦いたくないなあ・・・」 
美神と西条はポップコーンをぽりぽりやりながら座っていた。 
「しかしどいつもこいつもぱっとしないわね〜。」 
「1次試合だけでもまだ結構ある。 すぐには見つからないさ。 それに・・・」 
「実戦データ採取が目的なら、すぐに全力を出すとも限らない。」 
「そういうことだ。」 
「あ、タイガーもう勝ってるみたいね。」 
「相手もたいしたことなかったな。」 
「どれ、エミにメールでも送ってやるか。」 
「そうだね。」 
「タイガー、哀れ敗北す、っと。」 
「こらこら、また喧嘩になるようなことするんじゃない。」 
「いいじゃない、ごあいさつよごあいさつ。」 
『おお―――っとこれは――――っ!!?』 
「ん?」 
「何?」 
ざわめきとどよめきにつられ、美神と西条は会場内をきょろきょろ見渡す。 
『皆様ご覧になられたでしょうか? 2番コートで開始たった5秒、早くも決着がついてしまいました! え〜この選手の名前は・・・・ツクモ、ツクモ選手とあります!!』 
「何、あいつ・・・?」 
「女性のようだが・・・・」 
「おおっ!? いい女じゃっ!!」 
「って、横島君? いったい今までなにやってたんだきみは!?」 
「んなことよりっ! 誰っすかあれは・・・!?」 
「さあねえ・・・」 
3人は日本刀をひゅんと振り、鞘に収める黒髪の女を見ていた。 黒い皮のズボン、ティーシャツにドラゴンをかたどった骨を被る女は、倒れている相手に軽くお辞儀をしてコートの外に足を向けた。 
『え〜・・・・これは、どうもこのツクモ選手に置いては詳細がよくわかりませんねえ・・・』 
『よくあることよ、フリーに渡り歩くGSもどきはどこにでもいるある。』 
『底知れぬ実力を思わせる選手の登場ですっ! 果してどうなるか楽しみですねえ、厄珍さん?』 
『ぜひ素顔を拝ませて欲しいものある。』 

タマモは客席の最後尾に持たれ、コートを出るツクモを見ていた。 
「・・・・・仮面の女、か。」 

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【次回予告】 
横島 「おおっ! あれこそ俺の運命の人に違いないっ!」 
タマモ「言ってなさい。」 
美神 「彼女強いわ、半端なレベルじゃないわよ。」 
シロ 「ちょっと!? 拙者の応援は・・・・?」 
横島 「んじゃあ、あれが人造妖怪・・・?」 
美神 「さあねえ・・・」 
タマモ「ん、どしたのハル?」 
シロ 「ふんっ、ど―せど―せ拙者何か・・・」 
横島 「いじけんなって、次はちゃんと応援すっから。」 
エミ 「令子っ! 目標の候補が上がったワケ!!」 
美神 「よっしゃ、徹底的に調べるわよ〜〜!」 
タマモ「この女、ハルをっ!? クロっ!」 
シロ 「こら狐っ! クロ兄を馴れ馴れしく呼ぶなでござるっ!!」 
おキヌ「次回、『牙と思いの幻影 −フィーリング・ハート−』」 
横島 「おキヌちゃん・・・・出番ないね。」 
おキヌ「ひ―ん、誰か怪我してください〜〜〜〜!!」 
タマモ「その要求おかしかない?」 


【 補足サブキャラクター設定 】 

ハル 
タマモが放浪生活中に出会った妖怪。 黒髪ぼさぼさ頭の男。 独特のペースと言うか、自分を持っていて、ちょっと変わったオーラ(雰囲気)を持つ。 錫杖型の仕込み刀を持ち、クロ、キリコの修行仲間だった。 GS試験に出る目的、その正体は本編で。 

犬井クロ 
シロと同じく人狼の里出身。 錫杖型の仕込み刀を持つ黒髪のちょんまげ。 女好きで横島と以外にも気が合うも、横島ほど節操なしではなく、襲い掛かったりはしない。 シロの子供の頃からのお兄ちゃんであり、よき友達だった。 犬飼の事件の結構前に修行のため里を出、放浪生活をしていた。 ハルの手助けをしたいと思っているようだが・・・? 

コーリング・ブラント 
西条のイギリス時代の大学の先生の孫。 栗色セミロングの髪のGS候補生。 なにやら槍のようなものを持っているが、こちらも詳しくは本編で。 

ツクモ 
謎の女なので、内緒です。 敵かな? 見方かな? 曖昧にしておくのがお互いの為カナ? 


※この作品は、さんによる C-WWW への投稿作品です。
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