「ぐっ・・・・に、逃げろっ! 逃げるんだっ! おキヌちゃんっ!!」 
「駄目・・・・今逃げたら、皆・・・殺されちゃうっ!!」 
じゃきんっ 
「今、今逃げたら・・・」 
神通棍を構える手が震えた。 
『首を・・・・首をよこせ・・・・!』 
「おキヌちゃん、きみ1人では無理だっ!!」 
『首をよこせ――っ!』 
首のない鎧が剣を振りかざして突っ込んできた。 
「私はっ! これ以上強くなれなくなるっ!! だからっ・・・!!」  


きつねレポート

 ナイト・ワルツ 


数日前  

「ごめんなさい、美神さんは仕事で今インドネシアに行ってるんです。 帰るのは・・・いつになるかわからなくて。」 
おキヌはスーツを着ている男にお茶を差し出した。 
「そう・・・・ですか。」 
ずずっ・・・ 
「・・・仕事をお願いしたいのです。 出来れば、内密に。」 
「えっ・・・・でも美神さんはいませんし・・・」 
「お願いします、かなり人命に関わるのです。」 
「・・・・いったい何なんですか?」 
「あの鎧は・・・・自分の首を捜しているのです。」 
「首・・・?」 
「そのために、あいつは人間を襲いだすでしょう・・・・永遠に見つからない、自分の首を求めて・・・」 
「―――っ!!」 

某美術館  

「その鎧は、先月こちらの美術館に届けられたものです。」 
廊下を歩きながら、館長とおキヌは話していた。 
「最初はただの頭のない古い甲冑かと思ったのですが、その甲冑が来てから、何か変なことが起こるようになったんです。」 
「変なこと・・・ですか?」 
「ええ・・・・・夜中にいつのまにか展示物の配置が変わっていたり・・・」 
「ポルターガイストでしょうか・・・」 
「その甲冑を触った係員が原因不明の病気になったり・・・」 
「それは・・・おかしいですね。」 
「極めつけに・・・」 
2人は部屋の前に着いた。 
『首〜〜!!』 
がしゃがしゃっ 
「除霊をお願いしたGSの方の首が跳ね飛ばされました。」 
「ひ―――っ!!?」 
2つの首と首なしが転がっていた。 
『首っ!? 首をよこせ―――っ!!』 
「きゃ―っ!」 
鎧がおキヌに跳びかかって来た。 ばちばちっ 
『ぐはっ!?』 
がっしゃあんっ 
「! ・・・結界!?」 
「あのGSの方達がこの部屋に張ってくれたのです。 おかげで何とか外部に漏れることは防げていますが、破られるのも時間の問題です。」 
『ぐおおおお・・・』 
「お願いしますっ! あいつをなんとかしてくださいっ!!」 
「え、え〜〜っと・・・」 

インドネシア 某ホテル 

ぷるるるる ぷるるるる ぷるる・・ 
「は〜いもしもし? ・・・・あおキヌちゃん。」 
『美神さ・・・・んですけど・・・?』 
「え!? 何!? よく聞こえないわよ!?」 
『・・・との依頼で・・・ザザッ・・・・んなんです・・・』 
「仕事? 報酬は!? いくらなの!?」 
『え・・・なんです・・・?』 
「ギャラよギャラ! いくら!?」 
『・・・3お・・・・・ですけど・・・』 
「3億!? 受けるわ! いいわね!?」 
『・・・・でも・・ぶつっ! つ―、つ―、つ―・・・・』 
「・・・・切れちゃった。」 
美神はホテルの受話器を置いた。 
「どうしたでござる?」 
「日本で仕事が入ったみたい。 さっさと終わらせて帰るわよ? 横島君は?」 
「車の手配に行ってるでござる。」 
「わかった、あんたは部屋から荷物取って来て。」 
「は〜い。」 

「ちゃんと伝わったのかなあ・・・?」 
おキヌは受話器を置いた。 
「では、やってくれるのですね?」 
「美神さんの許可を頂きましたから、美神除霊事務所として、お受けします。」 
「おおっ! ありがとうございますっ!!」 
「いったん準備のために戻りますから、除霊は明日ということでいいですか?」 
「お任せします。 私共も、そのように準備させていただきます。」 

夜 事務所 

「よしっ、後は―・・・」 
かちゃっ 
「たっだいま―。」 
「あ、タマモちゃん久しぶり。 4日ぶりね、どこ行ってたの?」  
「北海道。」 
「・・・・何で?」 
「トラックの上で寝てたらいつの間にやら・・・」 
「・・・・・」 
「はいこれお土産、帆立とかにみそと塩いくら。」 
「あ、ありがとう・・・」 
「何? どっか行くの?」 
「これ? 明日仕事が入ったんだ。」 
「ふ〜ん。」 
リュックに荷物を詰め込むおキヌを、タマモは壁にもたれて見ていた。 
「これでよしっと。」 
「・・・・・」 
「・・・・・」 
「・・・・」 
「・・・・・・何も聞かないの?」 
「聞いて欲しい?」 
「・・・ちょっとね。」 
「じゃあ聞きましょうか?」 
タマモはソファーに座り、おキヌも椅子に座った。 
「本当はちょっと怖いんだ・・・」 
「そう。」 
「私ネクロマンサーだけど、笛しか吹けないGSにはなりたくないから・・・」 
「・・・・・」 
「だから美神さん達なしで、自分でやってみたいの。」 
「・・・・・」 
「へへっ・・・・震えてるんだ・・・足が・・・」 
「・・・・・」 
「でも私頑張ってみる。 やってみたいから・・・!」 
「・・・・・」 
「・・・タマモちゃん?」 
「・・・くか―――・・・・」 
「――っ!! ・・・・・疲れてるんだろうけど・・・・ちゃんと聞いてよ―――っ!!!」 
ごんっ 
「はぎゃっ!?」 

翌日 美術館 

「ようおしっ!」 
ズボンにシャツという成り立ちのおキヌは、結界の前に立った。 髪を頭の後で縛り上げる。 
「どうか、くれぐれもお気をつけて。」 
「始めます、危ないからあなたは戻ってください。」 
「はい。」 
『どこだ・・・・俺の首をどこへやった――っ!?』 
どか ばちばちいっ 
「こ、怖い・・・・でも・・・・!」 
おキヌはボウガンを握る手に力を込めた。 
『ぐおわああああっ!!』 
「す――・・・・いきますっ!!」 
おキヌは部屋の中に飛び込んだ。 

「ふわ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・」 
『おはようございます、タマモさん。』 
「・・・・・おはよ。」 
『おキヌさんがキッチンに朝食を用意してくださってますよ?』 
「んあ? ・・・・・おキヌちゃんは?」 
『仕事に行かれました。』 
「仕事・・・・?」 

『首!? お前の首をよこせ―――っ!!』 
「そこっ!」 
ばしゅっ どかっ  矢が甲冑の胸に突き刺さった。 
『ぐっ・・・?』 
ばりばりばりっ 
『うぐおわああああっ!?』 
矢に縛られた封魔札が反応し、放電する霊気に鎧が硬直する。 
「1枚っ!」 
おキヌは結界札を壁に張り付け走り出す。 
『うおおおおっ!!』 
ぼしゅうっ 
「!?」 
矢と封魔札が焼き飛ばされる。 
「まだよっ!」 
ばしゅっ どすっ  左肩に矢が突き刺さる。 
『ううっ!?』 
ばりばりりっ 
『がああああっ!?』 
「2枚っ!」 
おキヌは鎧に目をやる。 
「まだよ、まだ動かないでっ!」 
ボウガンに矢を引っ掛ける。 
『ぐぐぐっ・・・!』 
ばしゅっ どかっ  鎧の背中に再び矢が突き刺さる。 
『うっく・・・』 
ばりばりばりばりっ 
『がああああああっ・・・・!!?』 
「3枚っ!」 
四方を囲むようにお札が貼られる。 
『首っ、首っ、首―――――っ!!』 
ばっしゅっ 
「え!?」 
矢と封魔札が弾き飛ばされ、鎧が剣を振りかざしておキヌに跳びかかった。 
『お前の首を―!』 
「うっ・・・!?」 
引き金を引く。 ばしゅっ かきん 
「弾かれた!?」
ボウガンが手から離れ、神通棍が握られる。 じゃきんっ 
『よこせ――っ!!』 
「きゃっ!?」 
がきんっ 

「う〜〜〜ん・・・・で、おキヌちゃんどこに行ったって・・・?」 
タマモはTVのリモコンを手にソファーにジャンプした。 どさっ 
『美術館だそうです。』 
「ふ〜ん、美術品がらみ、か。」 
ぴっ 
『・・の西洋美術館で、心霊事件が発生したようです。 現場にはオカルトGメンの姿も見られますが、詳しい情報は、まだ入っておりません。』 
「・・・・ひょっとしてここかしら?」 
『そ、そのようですね。』 

どか がらがらん 
「ぷは〜・・・死ぬかと思った・・・」 
瓦礫を押しのけ、ぱんぱんとほこりを払いながらおキヌは立ち上がった。 
「おキヌちゃん!?」 
「あれ、西条さん!?」 
「何できみがここに?」 
「えっと、ちょっと除霊作業・・・・あっ!? 鎧はっ!? 館長さんは・・・!?」 
「か、館長は無事だ。 しかし鎧って・・・」 
「館長さんに何か・・・・?」 
「刃物によって受けた傷がある。 今は病院だが、命に別状はないから大丈夫だ。」 
「・・・・よかった〜。」 
「そんなことよりきみだ、頭から血が出てるぞっ!?」 
「え・・・?」 
おキヌは頭に手をやると、手のひらにべっとり血がついた。 
「痛みはないんだけどなあ・・・」 
「とにかく病院だ、話は車で聞く。」 
西条はハンカチを出しておキヌの頭を押さえた。 
「でも・・」 
「いいから来るんだ!」 
「はあ・・・」 
西条に肩を借りたおキヌは散らかった部屋を振り返った。 
(どこいっちゃったんだろ・・・?) 

「まったく、きみ1人でなんて無茶したもんだ。」 
「ちゃんと美神さんに許可はもらいましたよ?」 
「そういう問題じゃないだろう?」 
病院の廊下を歩きながら、おキヌと西条はロビーの椅子に座った。 
「とにかく、大事がなくてよかった。」 
「お手数かけてすみません。」 
「で、そろそろ話を聞かせてもらおうか・・・?」 
「う〜ん・・・」 
「館長さんにはさっき話を聞いた。 首なしについて、もう隠す必要はないよ。」 
「え〜と、結界で動きを止めて弱らせて、それでやっつけるつもりだったんですけど・・・」 

【回想】 

『よこせ――っ!!』 
「きゃっ!?」 
がきんっ  ぎりぎりぎり・・・・ 
「あうううう・・・・」  
剣を受け止めた神通棍がきしみ、手が震えた。 
『首―っ!』 
再び振り上げられた剣が神通棍に叩きつけられる。 ぼっきんっ  
「じ、神通棍がっ・・・!?」 
『首――っ!』 
「きゃ――っ!?」 
背中を見せて逃げ出すおキヌに、鎧は剣をリュック越しに突き刺した。 どかあああんっ 
「うっきゃ――っ!?」 
『ぐおおおおっ?!』 
どかん がらがらがら・・・ 

「・・・・そっか、リュックに入れておいた精霊石に刺さったんだ。」 
「危ないなあ・・・・しかし・・・」 
「ええ、多分鎧はまだ生きてます。」 
「恐らく地下に逃げたんだろう、下水に繋がっているそれらしい穴を部下が見つけた。 しかしわからないのは、何でそんな必要があるか、だ。」 
「あの鎧、動きながらもボーガンの矢の穴が直っていきました。」 
「回復、か。」 
「私の考えですけど、あの爆発で受けた損傷を直すために動かないでいるんだと思います。」 
「だとしたらまずいな・・・」 
「え?」 
「ただ首を求めるだけの鎧だと思ったが、それなりに知恵がついてきたというと、手ごわいぞ?」 
「・・・・・」 
「とにかく、僕達も協力させてもらうよ? 外に出たとなると、一般人に被害を出させるわけにはいかにからね。」 
「よろしくお願いします。」 
「きみにも、協力してもらうよ。」 
「もちろん!」 
「じゃあ、行こうか?」 
「はいっ!」 

翌日  

ぴ―― 無線機の音に、おキヌと西条は顔を見合わせる。 
『都内警邏中の全車に連絡、墨田区内に目標が出現。 現在県警が住民の避難にあたっていますが、警官3名が重傷を負い、なおも進行中。 付近の車両は現場に急行してください。』 
西条は無線機に手を伸ばす。 
「オカルトGメン西条だ。 住民の避難に専念してくれ。 無闇な行動は慎めよ!?」 
「出ましたね。」 
「そのようだな。」 
西条はサイレンを鳴らすとアクセルを踏み込む。 おキヌは風になびく髪を押える。 
「・・・・・そんなにネクロマンサーは嫌かい?」 
「まさか。」 
おキヌは笑った。 
「でも、それだけだって見られるのは、口惜しいじゃないですか。」 
「そうか・・・・頑張れよ。」 
「はい。」 

『首・・・・よこせ―――っ!!』 
ずかっ 
「わ――っ!?」 
鎧は警官のジュラルミンの盾を切り裂いた。 
『首を――っ!!』 
どんどんっ  ががんっ 銃弾に鎧がひっくり返る。 
『ぐおっ!?』 
きききっ 西条とおキヌは車から飛び降りる。 
「オカルトGメンだっ! 後は任せろっ!!」 
「た、頼みます!」 
警官達が負傷者を連れて撤退を始める中、西条はジャスティスを抜き、おキヌはライフルを構えた。 
『ぐ・・・うううううっ!』 
「!? 当ったのに・・・」 
「穴も開かないか、ずいぶんと丈夫になったものだな。」 
『お前の首をよこせ―――っ!!』 
「来るぞ!?」 
「はいっ!!」 
鎧が突っ込んできた。 
「喰らえ正義の刃っ!」 
がんきんがいんっ 剣が打ち合う。 
「くっ、こいつは強いぞっ・・・!?」 
『首を――っ!』 
「たあっ!」 
おキヌは鎧の背中に破魔札を投げつける。 ぼしゅう・・・ 
「効かないっ!?」 
『おおおおっ!』 
どかっ 
「ぐわ!?」 
西条を蹴り飛ばした鎧は、振り返っておキヌに切りかかった。 
「え? ちょっと・・・」 
『首――っ!』 
「きゃ――!?」 
振り下ろされる剣におキヌはライフルを突き出した。 ずぱっ  前半分が飛んで行く。 
「あ――っ!?」 
『よこせ――っ!』 
「!!」 
おキヌは退魔札を掲げる。 ばちばちっ 
『ずおっ・・・!?』 
後にふらついた鎧に、おキヌは精霊石を投げつけた。 
「えいやっ!」 
どかあああああんっ 
「やった・・・・・・・・あれ?」 
『く〜び〜〜〜〜・・・!』 
「む、無傷うっ!?」 
『首――っ!』 
「おキヌちゃんっ!」 
西条が鎧に後からタックルをした。 
『邪魔するな――っ!』 
「なっ!?」 
どかっ ばきっ 
「ぐはっ・・・」 
「きゃっ!?」 
振り回された腕に吹っ飛ばされた2人を乗り越え、鎧は警官達に突っ込んだ。 
『首――っ!』  
「うわ―っ!?」 
「ひい――っ!?」 
「!? 行かせないっ!」 
呪縛ロープを鎧の足元に投げつける。 鎧の足がもつれる。 
『くがっ?!』 
がっしゃんっ 鎧がひっくり返っている間に、おキヌは警官達との間に割って入った。 
『く〜〜〜び〜〜〜〜〜〜!』 
「わ、私が相手よっ!!」 
『ぐるああああ・・・・!』 
(こ、怖い・・・!?) 
神通棍が握られる。 西条はふらつく頭を押えて体を持ち上げながら叫んだ。 
「ぐっ・・・・に、逃げろっ! 逃げるんだっ! おキヌちゃんっ!!」 
「駄目・・・・今逃げたら、皆・・・殺されちゃうっ!!」 
じゃきんっ 
「今、今逃げたら・・・」 
神通棍を構える手が震えた。 
『首を・・・・首をよこせ・・・・!』 
「おキヌちゃん、きみ1人では無理だっ!!」 
『首をよこせ――っ!』 
首のない鎧が剣を振りかざして突っ込んできた。 
「私はっ! これ以上強くなれなくなるっ!! だからっ・・・!!」  
おキヌも足を踏み出した。 
「私がやりますっ!!」 
『首――っ!!』 
「やあああっ!!」 
神通棍と剣が振り下ろされる。 ばっきん 
「やった!?」 
飛んで行く剣の先端に、おキヌの顔がわずかに緩む。 
「おキヌちゃんまだだっ!」 
「!?」
『首――っ!!』  
折れた剣が突き出され、おキヌの首に迫った。  
「――!」 
思わず目を閉じる。 どかっ がっしゃああん 
「・・・・―――!?」 
目を開いたおキヌは、ひっくり返った鎧の前に着地するタマモを見た。 
「タマモちゃん!」 
「何やってんのよこんな所で。」 
「何って、仕事だけど・・・」 
「アタシにぐらい声かけて行きなさいよ。」 
「タ、タマモちゃん私の話聞かずに寝ちゃったじゃない〜〜!!」 
「そうだっけ?」 
ぎぎぎっと立ち上がる鎧に、西条はおキヌとタマモに精霊石を投げる。 
「2人共! これで閉じ込めるぞ!!」 
「!」 
「はいっ!!」 
おキヌとタマモは走り出し、西条と3人でトライアングルに鎧を囲んだ。 
『首・・・俺の首は――――っ!!?』 
「精霊石よっ! このものを閉じ込めろっ!!」 
「念っ!」 
「これで大人しくしてっ!」 
3人の手にある精霊石が、三角形の光の線で繋がる。 ばちばりりばりばりいっ 
『ぐおわああああっ!?』 
中で飛び交う青白い光が鎧を硬直させる。  
「おキヌちゃん、とどめだっ!!」 
「はいっ!」 
おキヌは左手で精霊石を持ったまま、右手に神通棍を握りなおした。 
「極楽に、行かせてあげる――っ!!」 
神通棍を精霊石に叩き付けた。 衝撃が精霊石を伝って中に広がる。 どっかあああんっ! 
「うわっ!」 
爆発に、とっさに顔を手で覆う。 
「・・・・・やった・・・?」 
鎧が粉々に散らばっていた。 
「やった・・・・のよね?」 
「みたいね。」 
「おキヌちゃん、タマモ君も、お疲れさん。」 
「・・・・やった―――っ!! きゃ―――っ!! 私やれたよタマモちゃんっ!!」 
「ちょっとちょっと!?」 
おキヌはタマモに飛びついた。 
「よし、今日は僕のおごりだ。 皆で食事でもどうだい? おキヌちゃんのGSへの成長を祝って。」 
「あっ、ありがとうございます!」 
「いいの、アタシまで?」 
「もちろんさ。」 

その夜 よさげなレストラン 

「かんぱ――いっ!!」 
かちゃん、とグラスが音を弾く。  
「まずはおキヌちゃん、お仕事ご苦労様。」 
「西条さんとタマモちゃんのおかげですよ、ありがとうございます。」 
「そんなことないよ、きみは立派に仕事をやり遂げたんだ。 自信を持っていい。」 
「神通棍構えてるとこなんか美神さんみたいだったわよ?」 
「ほ、本当!?」 
「ねえ?」 
「ああ、いずれは令子ちゃん以上のGSになれるかもね。」 
「そんな〜私なんかまだまだですよ〜。」 
「ふっ、照れてる。」 
「はははははっ。」 
「えへへへ・・・」 
「そう言えば美神さん達いつ帰ってくるの?」 

インドネシア ホテル高級レストラン 

皿やジョッキが山済みになっているテーブルを囲んで、美神と横島とシロは目の前の料理とお酒にがっついていた。 
「こらうまいこらうまいっ!」 
「ビールおかわり――っ!!」 
「すいませ――ん、バビ・グリンとサテ・バビとアヤム・バンカン3人前おかわりでござる―――っ!!」 
「お、そこのお姉さ―ん、僕と一緒に南国の熱い一夜を・・・!」 
「あっはは――! もう仕事なんてどうでもいいわ! 今夜は飲み倒すわよ―っ!!?」 
「拙者食い倒すでござるっ!!」 
「姉ちゃ―――ん!!」 

  see you next story   


【次回予告】 
タマモ「メールだの携帯だの、何かせわしない世の中ね〜。」 
美神 「そお?」 
タマモ「何か風情がないって言うか。」 
美神 「まあそうでしょうけど、そういうのって見かたによるんじゃない?」 
タマモ「ロマンがないのよ。」 
美神 「ロマンってか?」 
おキヌ「素敵ですね―・・・」 
美神 「そ、そお・・・?」 
シロ 「先生――! これ拙者からのラブレターでござるっ!!」 
横島 「・・・・・どうしろってんだ?」 
美神 「家には無縁の話ね。」 
タマモ「でしょう?」 
おキヌ「むむむ、よおうし私だって!」 
美神 「やめときなさいって。」 
タマモ「次回、『ひと時の郵便』」 
おキヌ「ま、まさかタマモちゃんも横島さんにっ!?」 
タマモ「はあ?」 


※この作品は、狐の尾さんによる C-WWW への投稿作品です。
[ 第十話へ ][ 煩悩の部屋に戻る ]