GS美神 2015 〜久遠の絆編〜

著者:fukazawa


「ハァイ、こんにちは! アタシの名前は美神ひのめ! 現役の女子高校生にしてゴーストスイーパー見習いをやってるっていう設定の、16歳の女の子ダヨ! ヨロシクね!

 で、唐突な自己紹介ついでだけど、アタシの得意技はパイロキネシスなのよ! パ・イ・ロ・キ・ネ・シ・ス! 悪霊とか化物とかに無理矢理火を付けて爆発炎上させてヒィヒィ言わせるのが得意なの! 物理的に燃えようが燃えまいがおかまいなしで念力だけで何でも燃やせるって、科学的にも証明されてるらしいわ! 炭素の塊に過ぎない人体なんて、楽勝で燃やせるわね! 滅多に燃やさないけど!(ドクロ)
 だから、今はアタシが一人前になって独立してアニメ化とかされたりした時に供えて、キャッチフレーズを考えている最中なのよ! 『アタシに触れるとヤケドするわよ! 物理的にね!』ってのはドウカナ! 『アタシに触れるととヤケドするわよ!』って辺りでアダルティかつエロチックなニュアンスを含ませた上で、『物理的にね!』ってフレーズを着けてオチを効かせてみたつもりなんだけど!(←ダメです)
 でも、アダルティに迫るためには、ホントはもうちょっとバストアップしたいんだけどね! お母さんや令子お姉ちゃんはいい歳して相変わらずやたらと胸デカいんだけど、アタシはお姉ちゃん達に比べると、ちょっとばかり胸が小さいのよ! ちょっとばかり! 迫力に欠けるわね! こんな所ばっかりお父さんに似てどうするのよアタシ! テヘ!

 そうそう、状況の説明がまだだったわね! 何故アタシがこんなところ(カメラ視点が引き、ゴーストタウンと化した臨海副都心にある廃ビルが映し出される)にいるかというと、実は今日は、アタシの師匠にして令子お姉ちゃんのダンナ様であるところの忠夫義兄さんの愛娘でアタシの幼なじみの螢子ちゃんと一緒に、除霊の実地研修をするって事になってるのよ!
 螢子ちゃんって、あの令子お姉ちゃんと忠夫義兄さんの間に生まれた子供にしては奇跡的にマトモな子で、優しくて可愛くて霊感も強くてとてもいい子なんでアタシも大好きなんだけど、でも時々ちょっと困っちゃう能力を発揮しちゃうのが欠点かな?(伏線) あ、とか何とか言ってるうちに螢子ちゃん13歳が来たわ! 螢子ちゃーん!」
「あっ、ひのめちゃん。ひのめちゃんて、ホントいつも元気なのね」
「お陰様でね! っていうか、なんか語尾に必ず『!』が付いてるだけなんだけどね! それより今日は一人なの? 忠夫さんは?」
「パパは隠れて見守ってるって。危なくなったら手助けするって言ってたけど」
「ハ! まだ子離れできない親バカの師匠にしては珍しいわね! まぁ、アタシ達の実力だったら、ザコ悪霊の一つや二つは楽に倒せるはずだから問題ないけどね!」
「パパはパパなりにわたし達のことを心配してくれているのよ」
「ま、相変わらず仲良し親子なのネ! 令子お姉ちゃんから聞いた通りだワ! あんまり仲がいいからアタシ疑っちゃう! 色々なこと妄想しちゃってもう大変ヨ! アタシ恥ずかしくて火ぃ吹いちゃうわヨ!
 ――とか何とか言ってるうちに、来たわよ悪霊が!」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「来たわね、永遠に停滞したと錯覚するくらい不景気な日本経済の有様に耐えられずに世をはかなんで副都心で自殺した亡者達! さぁ、このゴーストスイーパー見習い美神ひのめが、極楽にイカセてあげるワ! かかって来なさい! アタシに触れるとヤケドするわよ! 物理的にね!」
「……ひのめちゃん、なんか台詞が矛盾してない? あと、『物理的にね』ってフレーズは止めた方がいいよ」
「やっぱり? 『アタシに触れるとヤケドするわよ! 身も心も!』の方がいいかな?」
「そういう問題でもないと思うけど。それに、今日はパイロキネシスじゃなくて、破魔札を使って除霊する訓練をするのが目的なのよ?」
「もう、螢子ったら相変わらずしっかり者で生真面目さんね! 可愛い顔してツッコミも鋭いし! でも、その辺が可愛くてラブなんだけど!」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「あ、螢子ちゃん! 危ない!」
「きゃー」
「あっ、油断しているうちになんか螢子ちゃんの方に悪霊が行っちゃったわ! 13歳の少女特有の可愛らしい仕草で悪霊を嫌がる様はとても可愛くて読者サービス要素もバッチリではにゃーんなんだけど、でもそんな事ばっかりも言ってはいられないわ! 助けなきゃ!」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「きゃー」
「螢子ちゃん、ちょっとの間だけガマンしてね! さーて行くわよ! かつて、平成のアニメ界を色々な意味で震撼させた令子お姉ちゃん譲りの決めポーズを取りながら、そーれ! 吸引!」
「ボンッ」(←効果音)
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「ってちょっとアンタ! ちょっと念を込めた途端に、破魔札が燃えちゃったじゃないのよぉ! こんなところでお笑いシーンを持ってくるなんて、計算外の展開だわ! 霊力の塊である破魔札をいきなり燃やしちゃうなんて、アタシの能力強すぎ! さすが!」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「きゃー」
「あっ、悪霊を避けようとした螢子ちゃんが、勢い余って転んじゃったわ! 13歳の少女特有の可愛らしい脚をむき出しにして1コマだけパンチラしながら倒れる様はとても可愛くて読者サービス要素もバッチリなんだけど、でもそんな事言ってはいられないわ! 螢子ちゃん、アタシが悪霊の注意を引きつけるから、そのスキに破魔札を使うのよ! 至近距離だから、螢子ちゃんならなんとかなるって!」
「う、うん、判った。えいっ」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「上手い! 螢子ちゃんが13歳の少女特有の子猫のような軽やかな身のこなしで、しかもパンチラなしで体制を立て直したわ! パンチラは1話に1回だけなのね! 渋いわ螢子ちゃん! っつう訳で、今がチャンスよ! ――って何? 上から何かが降って来るわっ!」
「きゃー!」
「大丈夫か、ル……いや、螢子!」
「パ、パパ!?」
「ってアンタちょっと、師匠の忠夫義兄さん! なんでいきなり空から降って来るんですか! しかも、いつの間にか螢子ちゃん抱きしめてるし!」
「なんだ、ひのめちゃんもいたのか。大丈夫だったか」
「なんだじゃないわよぅ! せっかく、今螢子ちゃんが破魔札で悪霊を退治しようとしていたところだったのに! 何を邪魔しているの!」
「いやその、この部屋の天井裏に隠れて様子を見ていたんだけど、螢子がピンチだと思った途端に、いても立ってもいられなくなってしまってなぁ。ル……いや、螢子が危険な目に遭うのを見ると、どうしても螢子の出生のキッカケとなったあの時の事を思い出してしまって……」
「マイガッ! ヤバイわ、忠夫義兄さんちょっと視線が遠いよ! まさか、あの思い出してはいけない事件の思い出に浸って感傷的になってるの!?(伏線を強調) まだ悪霊がウロウロしているってのに、まったく世話が焼けるわね! 忠夫さん、後ろうしろー!」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
(突然)「ヨコシマ! 危ない!」
「――ルシオラ!? ルシオラなのか!?」
「マイガッ、螢子ちゃんまで! ああ、ついにショックで螢子ちゃんの変な能力が発動しちゃった!」(伏線回収)
「しっかりして! ヨコシマ――!」
「ルシオラ……」
「螢子ちゃんは、忠夫義兄さんが危険な目に遭っているのを見ると、時々突然こうなっちゃうのよ! 彼女に乗り移っている人格は、なんでも螢子ちゃんの前世で、かつて忠夫さんに激ラブだったけど、結局最後は救われないまま非業の死を遂げたルシオラっていう魔族のものらしいんだけど、この頃に何があったのかって話は、なんかよっぽど辛い思い出だったらしくてみんなのトラウマになっちゃっててお姉ちゃんもお母さんもあまり教えてくれないので、アタシにはよく知らないのよね! でも、今更前世ネタって言われても困るんだけどね! 久遠の絆ってのも、案外厄介なモノなのね!」
「ヨコシマは死なせない! どんなことをしても……」
「ルシオラ……」
「っつうか、この二人何やってるのよ! 二人してお互いを庇い合って抱き合ってる姿は美しいんだけど、でもこの二人33歳と13歳よ! しかも親子だし! 倫理的にかなり問題があるわっ! アタシ恥ずかしくて火ぃ吹いちゃうわヨ! っつうか、周り飛んでる悪霊どうするのよ悪霊!」
「うぱー」(←悪霊ボイス)
「生きて、ヨコシマ……」
「ルシオラ……」
「うわ、もう二人だけの世界に突入してるわ! 実の親子が! 仕事ほったらかしで!」
「ヨコシマ……」
「ルシオラ……」
「い、いやぁぁー!」

 爆発。
 暗転。

−完−

※この作品は、fukazawaWhat's New! に掲載した文章を転載したものです。
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