GS美神 NEW事件ファイルシリーズ
FILE-8 「初夏のシロ捜索隊 終決〜帰還編」

著者:人狼


  ガギィッ!! キィン!! ガガガッ!
  蔵王の森の中で激しい戦いが続いていた。シロが先鋒になり、怪我をしている横島がシロの援護に回っていた。その横島とシロはローミエンヌを、後少しの所まで追い詰めてきていた。
『ゼエッゼエッ…なんてシツコイ虫けらなんだ…』
「虫けらだってなぁ、後ろに大事のモンがあるときは魔族以上に強くなれることだってあるんだよ!!」
「大事なものって…拙者でござるか!?」
「…お前は横にいるだろう。横であって後ろじゃない。」
「わうーん!」
『戯言はそこまでにしろ! 貴様等まとめて灰にしてくれるわ!!』
 ローミエンヌは残り少なくなった霊力を両手に集めだした。横島とシロはすぐにでも攻撃しに行こうとしたが、自分達も体力の限界に近くまともに動ける状況じゃなかった。
「クソッ…俺にもうチョイ体力が残っていれば…」
「忠夫さん!」
 横島のことが心配になったキヌが結界の中から必死に呼びかける。タマモが抑えないと結界が壊れそうなほどに。
「おキヌちゃん…そうだ…俺はおキヌちゃんと新しい事務所を作るためにも死ぬわけには行かないんだ…!」
『ゼエッゼエッゼエッ…これで終わりだ! 食らえ!!』
 一人で呟く横島に向かって霊波をぶち込むローミエンヌ。霊波はその大きさ(通常の霊波の10倍近くの大きさ)によってゆっくりと進んでいたが、その矛先は確実に横島を捉えていた。
「これまでか…」
『フハ…フハハハハ!! 死ね虫けら! このローミエンヌさまに葬られることを冥土の自慢話にでもするんだな!』
「せんせえ、しっかりするでござる!! これくらいの霊波だったら拙者が暫く止めておくので、その間にやつを倒す方法を探す出ござる!!」
『犬の妖怪め、中々やるようだな。』
「狼でござる!!」
「シロ…わかった、急いで反撃方法を探してみる!」
とは言ったものの、いい案が中々出て来ない。そんな時、キヌの方から救いの声が聞こえた。
「…忠夫さん、これを!!」
 キヌが横島に投げたもの。それは矢の中間辺りに丸い穴の開いた霊体ボーガンであった。
「…これは?」
「バッグの中に入っていた特殊な霊体ボーガンです! そこの穴に、文殊が入るみたいです!!」
「美神さんだな…ありがたく使わせてもらうぜ。」
『何をしている、早く霊波に飲み込まれた方が楽になれるぞ。』
「………お前を楽にしてやるよ!!」
 横島はそう叫ぶと、『爆』の文殊を乗せた霊体ボーガンを発射機にセットし、ねらいを定めた。しかし、怪我のせいもあって中々照準が合わない。
「せ、先生! 拙者、そろそろ限界でござる!!」
「もうちょい待ってろ!」
 横島はシロに叫ぶが、どうも「もうちょい」では済みそうに無かった。
  照準が合わず苦心する横島の手を何かが優しく包みこんだ。横島が気配のする方を見るとそれは結界で待っているはずのキヌであった。
「おキヌちゃん!?」
「あっ、いつのまに…! おキヌちゃんめ、結界破りを…」
「忠夫さんが苦しんでいたら助けてあげる。それが妻である私の目標です! それはタマモちゃんにだって…妨げることは出来ませんから!」
 キヌは強い調子で言うと、横島の手を取りローミエンヌに照準を合わせた。しかし、その前にローミエンヌが少しだけ回復した霊力で霊波を放ってきた。
『もう誰でもいい、とにかく死にさらせぇーーー!!』
「こ、こんなの拙者だけでは防げないでござるーー!!」
 巨大な霊波を抑えつつ喚くシロ。
「…ったく、しょーがないわね。」
 シロと横島達に襲いかかって来ようとした霊波の全をタマモの狐火が相殺する。
「た、タマモ! 助かったでござるー!」
「じれったくて見てらんないわ。さ、横島、おキヌちゃん、さっさとあのバケモンを!」
「ありがとうタマモちゃん!」
「よしっ、何とか照準が合った! 打つぞ!」
 バシュッ! 小気味よい音を立てて霊体ボーガンがローミエンヌに向かって射出された。ローミエンヌも避けようとはするが、霊力を使い果たしてしまい移動することもままならない状態になってしまっていた。
『に、人間ごときにィィィ!!』
 ボウッ! ローミエンヌの体は煙に隠され、その煙が消えると共にローミエンヌの姿も霊波も消え去っていた。
「か、勝ったみたいだな…」
「そーみたいね。全く、シロが逃げ出さなきゃこんなことにならなかったのに。」
「うぐっ…」
「まあ、もういいじゃないの…」
 どさっ。横島とキヌは一通り喋るとその場に崩れ落ちた。そして、そのまま眠り込んでしまった。
「まったく、この二人は。」
 タマモは二人を見ながらフウッと溜息をついた。そして、
「でも、この二人について行くことにして良かった。」
 シロには聞こえないようにして静かに呟いたのだった。

「……忠夫さん、あのことどうするんです?」
 シロとタマモに抱えられ、旅館に戻ってきたキヌが、部屋で目を覚ます早々言った。
「ああ、あのことか。」
「なんのことでござろ?」
 昨日はいなかったため、話が分かっていないシロ。そのシロをどつくことなく、横島は真面目な顔で言った。
「シロ、逃げ出さずに聞けよ。」
「わかったでござる…。」
「俺、おキヌちゃんとタマモを連れて独立しようと思ってるんだ。」
「なんだ、そんなことでござるか。」
 シロの意外な言葉にまさしく「キョトン」とする横島、キヌ、タマモ。しかし、その直後にはシロがなんの理解をしていない事を知った。
「タマモのヤツが連れて行かれると言うことは、もちろん拙者も連れて行ってもらえるんでござろう。」
「…シロちゃん…」
「シロ、お前は連れて行かない。お前は美神さんの所に残るんだ。」
「へ? な、なんででござる!?」
「お前は美神さんの所で修行した方が伸びる。」
「嫌でござる! 拙者はずっと先生と一緒と決めていたでござる!!」
「勝手に決めるな! それにな、お前を連れて行かないわけはもう1つ。タマモが俺達の弟子になりたいと言ってきたんだ。」
 その言葉はシロにとって最強のダメージとなり得る一言だった。シロは暫く放心状態になった後、山中に響き渡るような大声で泣き出した。
「ウワアアアアアアアアアン!! 先生のバカぁーーー!」
「……………」
「わああああああああああん! ぎゃわわわわわわわわん!!!!」
「…忠夫さん、泣き止ませてあげないんですか…?」
「俺だって、泣き止ませたいさ。」
「だったら…」
「でも、ここでシロを泣きやませると言うことはシロの言っている事を鵜呑みにするのと同じだと思う。」
「なんか腑に落ちない気が…。シロちゃん、可哀想…」
「今はな。でも、後々になって考えて見りゃこっちの方があってると思うんだ。」
「横島はなんでそう思えるの。」
 タマモが見るに見かねて横島に問う。横島は数秒の沈黙の後、静かに言った。シロは今だに泣き喚いている。
「俺はまだ半人前だ。おキヌちゃんがいてくれて始めて二人前になれる。それで始めてタマモを教えることが出来る。でも、シロとタマモを二人とも弟子にするというのは難しい。それに、美神さんだったらシロのために小竜姫さまへの紹介状を書いてやれるし、俺だって基本的なことはみんな美神さんから教えてもらった。」
「横島の言いたいことはそうじゃないでしょ。」
「ばれてたか………シロだからこそ、俺が最も信頼する師匠である美神さんに頼みたいんだよ。コイツは力押し一辺倒だから、美神さんに技術を教えてもらった方がいい。俺はシロと同じ力押しタイプだからな。同じタイプの人に教えられても欠点が明確化してしまうだけだ。」
 横島の静かながらも迫力のあるセリフに何も言えなくなってしまったタマモとキヌ。二人とも、横島がシロに対してそこまで考えていると知り、本当にこの人について行ってよかったと思ってみたりもした。
「ひぐっ…エッグ…せんせえ…」
「なんだ、シロ。」
「先生の考え、よくわかったでござるが…これから美神どのの所に戻るまで、暫く考えさせてほしいでござる。」
「…わかった。じゃあ、美神さんの所に戻るんだな。」
「もちろんでござる。…今日は疲れたので先に隣りの部屋で休ませてもらうでござる。」
「私も一緒に寝てくる。」
「ああ…」
「おやすみなさい、シロちゃん、タマモちゃん。」
「それにしてもおキヌちゃん、お腹に子供がいるのに前線に出たいなんて無謀過ぎじゃないか。」
「あ、そのことですか…すみません。」
「いや、別に謝ることは無いんだけどさ…なんであんなに無茶をしたのかなーって。」
「私、いっつも忠夫さんや美神さんに守ってもらってばっかりじゃないですか。」
「そんなこと…」
「そんな自分が嫌だったんです。だから、ここで自分の実力を確かめてみようと思ったんです。」
「………………」
「でも、だめでしたね。忠夫さんに怪我までさせちゃって。私って、何のためにこうしてるんでしょうね。あーあ、GS辞めてみようかな…」
「…のために…」
 キヌの誰にも聞こえないような声にボソリと呟く横島。
「俺のために、ずっと側にいてくれ…俺は、おキヌちゃんがいないと…除霊だって…」
 横島はキヌの言った言葉に対して、普通に落ちこんでしまった。キヌはそんな横島の肩を優しく持ち、静かに言った。
「忠夫さん…ふふっ、大丈夫ですよ。私は何があっても忠夫さんの側から離れるつもりはありませんから。GSだって辞めないですし。」
「私はGSとしての能力も低いかもしれない、忠夫さんにずっと守られていくかもしれない。でも、私は忠夫さんの妻として横島さんを影から支えることが出来る。それが私の存在意義だとさっきの戦いでわかった気がしたんです。」
 キヌは言葉を一つ一つ選ぶように話し続けた。

自分の存在意義。

キヌはそう締めくくった。
「おキヌちゃん、本当に…俺のパートナーになってくれてありがとう。」
「そんな…忠夫さん、恥かしいじゃないですか。」
「ああ、すまない。でもおキヌちゃん、おキヌちゃんはGSの能力が低いわけじゃないよ。」
「え…?」
「おキヌちゃんは霊力の質が、俺や美神さんと違うだけで、霊力自体は同じくらいだよ。」
「そんなこと…」
「ほんとさ。でなけりゃローミエンヌが近づいてきた時、あまりの霊圧に気絶していたはずさ。」
 横島はキヌに対し、キヌはもう守られる存在じゃない。守ってあげれる存在なんだといった。キヌは横島の言葉になんと言っていいかわからず、黙りこくってしまった。横島も自分が出過ぎた事を言ったと思い、押し黙ってしまった。
「忠夫さん」
 先に口火を切ったのはキヌの方だった。
「私、忠夫さんが独立しても、ついて行く事に決めました。」
「そうか! ありがとう。」
「いえ…私は忠夫さんについて行くと決めただけですから。」
「そっちの方がむしろ嬉しいかも。」
「それじゃあ、寝ましょうか。明日も早く帰らないといけませんし。」
 そう言って二人は床についたのだった。

――翌日。
 横島、キヌ、タマモ、シロの四人は朝一の新幹線で東京に向かっていた。
「…で、昨日の戦いでおキヌちゃんは横島について行く事を決めたわけね。」
「うん。お腹の子供のためにも夫婦一緒の方がいいかなって。」
「そう。そんでもってシロはどーするの。」
 タマモがシロの方を見ると、シロは今まで見た事のないような難しい顔で悩みまくっていた。これにはさすがのタマモも驚き、言葉を失っていた。
「どうやら、事務所まで考えさせてくれってのは本気らしいな。」
「そうみたいですね。」
「………………………………………………………………………………………………………………………決めたでござる!!!!」
「うわっ!! いきなり叫ぶな!」
 シロがいきなり叫んだのに驚き、もっていたお茶をぶちまけそうになる横島。
「す、すまんでござる。」
「で、何を決めたんだ?」
「せんせえ、拙者は美神殿の所に残り、GSになるでござる。そして、せんせえのとこのタマモに負けないように修行するでござる!!」
「そうか、美神さんの所に残ってくれるか。」
 シロの言葉にホッと安堵の表情を浮かべる横島。キヌも同じような表情をしているので、同じ事を考えていたらしい。
「よかった、里に帰るなんて言い出さなくて」
「それをやったら、拙者はタマモに背を向けた事になるので癪に触るでござるよ。」
「バカ犬が…なにカッコいい事いってるのよ。」
 タマモの冷やかしにもカッとならずどっしりと構えているシロ。なぜこのシロが、横島がキヌと結婚した事で事務所から脱走したりしたのだろう。
「タマモに対してそこまで余裕があるなら、なんで逃げ出したりしたんだ、シロ。」
「そ、それは…ショックだったからでござる。」
「ショック?」
「せんせいは昔からモテなくて一生独身だと思っていたでござる。だから」
「お前、遠まわしに俺の事バカにしてんだろ。」
「そんな事ないでござる!! せんせえは一生涯の師でござる!!!!」
「…自覚してないのが、余計にたち悪いわね。」
「そ、そんなこと……」
「なんで言い澱むんだよ!!」
「わー! スマンでござるーーーー!!」
 J○の職員の方に迷惑極まりない乗客を乗せた列車は、運命の歯車も一緒に乗せて一路、東京へと帰還して行った。


※この作品は、人狼さんによる C-WWW への投稿作品です。
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