HAND RED FUTURE

 第3章  変わらない絆


―――3月上旬―――
 吹き抜ける風は、新たな春を運び始めていた・・・

ザワザワ・・・
「なあ、昨日のあの番組見た?」
「今日帰りゲーセンいこーぜ。」
「勉強!勉強!落ちたくねー!」
 平凡な中学の、平凡な始業前の、平凡な会話・・・
 明日の卒業式をひかえ、人生の荒波の一つを越えたもの、これからのもの、自立の道を選ぶもの・・・ 
様々な思いがいきかう若者の学舎。
「よっ。ピート。」
「おはようございます。横島さん。」
 かるく、挨拶を交わす。
「俺たちももう卒業だな〜。あ、ピートは2回目か。」
「そうですね・・・。」
 ピートは複雑な心境でうなずく。
 明神山から帰ってきた氷河は、思っていたほど明るく見受けられた。
「ところで今週、仕事あるか?」
 仕事というのは教会でのGSの仕事。
 氷河は明神山に週1程度のペースで行きながら、ピートにバイトとして雇ってもらっているのだ。
 仕事内容はというと、道具の買い出しや除霊の準備といったもので、実際の除霊中は
 そのほとんどが見学をしているようなものだった。
「今週は、オカルトGメンの勤務があるので、教会の仕事はないんですよ。」
 彼は、多忙だ。オカルトGメン、神父の跡継ぎとしての教会の管理、そしてなぜだか学生もしている・・・
「そーか。じゃあ、あしたから明神山にでも行ってくるか。」
「いいですけど、横島さん、明日は卒業式ですよ。進路の方は大丈夫なんですか?」
「ああ、それならシロが、「一緒に行くでゴザル〜」なんて言ってるから、六道学園に入るつもりなんだけ 
ど。あいつもう現役のGSだってのに行くってきかねーんだよ。」
「あはは。それにしても六道学園ですか。男女共学になって、心霊科メインになったんですよね。それで 
確か、現役GSの推薦があればすぐ入れるそうですけど。推薦は誰かにしてもらうんですか?よければ
僕がしましょうか?」
 氷河はいい友達を持ったと思う。
「ああ、わりぃ。小竜姫様が推薦してくれるそうだから。シロの再学のほうも何とかしてくれるそうだし。」
「そうですか、小竜姫様の推薦なら間違いないですね。」
 苦笑を浮かべるピート。
キーーンコーーンカーーーンコーーーン
 ガラッ
「起立、礼、着席。」
 担任の教師の登場に、二人の会話は終わりを告げた。

―――同時刻・明神山――――

「ここに来るのも久しぶりだな。ガキの頃、よく親について来たもんだ。」
 黒いロングコート、帽子、スーツケース・・・見るからに怪しそうな風貌の男。
「おい、門番のくせに寝てんじゃねぇよ」
 その男は左右そろって、いびきをかいている鬼門を起こす。
「お、おお、お前か。」
 とあわてて左門。どうやら、顔見知りのようだ。次に右門が口を開く。
「小竜姫様に会いに来たんじゃろうが、暫し待たれよ。いま、来客中だ。」
「来客?」
「ああ、なにやら神魔界に関わる機密事項らしくての。待ってくれんか。」
「ちっ、しかたねぇ。待たせてもらうぜ。」
 空腹をおさえつつ、男は壁により掛かる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「終わったようだな。」
 日が頂点から、傾き始めた頃だった。
 そう左門が言うと、門がゆっくり開かれる。
 でてきたのは2人の魔族。
 どちらも厳しい目つきで、片方は黒い羽根にベレー帽、片方は触覚。
 2人は神妙な面もちで目を合わせることもなく会話を交わし去っていった。
 次に門から、小竜姫がでてきた。
 険しい表情が刹那、顔を覆っているように見えた。
「お待たせしました、中へどうぞ。」
 その言葉の主は、いつもの穏やかな表情にもどっていた。

―――同修行場・来客用和室―――

「魔装術、修得できたみたいですね。」
「ああ、ついこないだ修得できた。で、小竜姫の旦那、横島が来たってほんとなのか?」
 部屋に入っても脱がない帽子と、コートの隙間から男は小竜姫に問う。
 小竜姫とも顔見知りらしい。 
「ええ、来ました。来たら連絡がほしいって、言われたのですぐ連絡したのですよ。ずいぶんおそかったですね。」
「ああ、香港の学校が昨日終わってやっと来れたんだ。親が日本でGS免許を取ることに賛成はしたん 
だが、中学くらいは最期まで行って卒業しろって聞かなくて。」
「そうですか。それで、今日はやはり横島さんと?」
「まあ、あいさつと、腕試しってとこかな。あいつが来るまでここにいさせてもらいたい。」
「わかりました。修行の一環としての戦闘なら認めましょう。おそらく明日の午後にはくるはずです。下界
 では、明日から長期休暇のようなので。」
「そうか、丁度よかった。あと、亜空間を貸してくれ。あいつが来るまで、軽く汗を流しておきたいからな。」
「いいですよ。自由に使ってください。」
「あ、それと・・・」
「はい?」
「腹が減った・・・。なんか食い物がほしい・・・。」
 

――――翌日・同修行場――――

 あたりの景色が霞み始める頃、氷河は明神山の前に来ていた。
「ふう〜。卒業式とか、ああいうかったるいの苦手なんだよな。」   
 いつもどおり門をくぐり、シロの必要以上のじゃれつきを回避しつつ、小竜姫の元へ急ぐ。
 小竜姫はいつもの亜空間の入り口に立っていた。
 今日の小竜姫様の雰囲気が、いつもより張りつめているのは気のせいだろうか・・・。
 今日の小竜姫様の視線が、哀れみを含んでいるのは気のせいだろうか・・・。
「せんせぇ、どうしたでゴザル〜?」
 そんなことを思っていたが、次の瞬間その考えは頭から消えてしまった。
「相変わらず、マヌケな顔してんな。」
「なっ、なんだと!?」
 不意をつかれて放たれた自分の悪口をたどり、声のした背後を振り向く。
 そこには見覚えのある小柄な男が一人。
「せんせぇをバカにするとは許せんでゴザル〜!」
 氷河はすぐにそれが自分の友人だと理解し、飛びかかりそうなシロを止める。
「ゆ、ゆっちゃん!どうしてここに!?香港にいるはずじゃ?」
「おいおい、ゆっちゃんはやめろよ。俺たち15だぜ?久しぶりだな。」
「あ、ああ、つい懐かしくて。じゃあ、雪矢で。」
「まあ、それならいい。」
「ん、せんせぇのお知り合いでゴザルか?」
「ああ、昔から親同士仲がよくて、よく遊んだもんさ。」
 この男の名は、伊達雪矢(だて ゆきや)。氷河と同じ年。昔から親同士が仲がよく、幼なじみとまで  
 はいかなくても、氷河とは友人としての関係にあった。
「今日からGS免許をとるために日本に帰って来た。まあよろしくたのむわ。で、やっとおまえも戦えるよ
 うになったそうじゃねぇか。」
 鋭さを増す雪矢の眼光。
「まあな。これでやっとGSになれそうなんだよ。でも、ゆっちゃ・・・雪矢にはかなわないぞ。香港で修行 
 してたんだろ?」
「かなわないにしても小竜姫の旦那から聞いたが、ゴーレム倒すなんてコト、常人にはまねできねぇぜ?
 おまえはいつも自分の力を過小評価しすぎなんだよ。ま、なんだ久しぶりに手合わせ願おうか?
 おれも、ちったぁ強くなったんだぜ。」
(いや、お前が昔から俺を過大評価しすぎなんだよ・・)
「やっぱり、そうなるのか・・・。相変わらずのバトルマニアだなお前・・・。小竜姫様、あんなこと言ってる
 んですけどいいんですか?」
「はい、許可します。実際に戦うことで自分の弱点を見つけることができますし。修行の成果を試すいい機会です。
 ただ伊達さん、横島さんはまだ基礎修行中なので手加減を忘れないでくださいよ。では、どうぞ。」
 亜空間への扉が開く。
(小竜姫様、あいつが戦いで手加減するわけないでしょ・・・)
 不安を抱きつつ、3人は中に入った。1匹の犬も。
 狼でござる!

 何度来てもここは苦手だと思う。
 何もない、変化もない、時が止まった空間。
 前に来たときと変化なく地平線は霞み、土と岩の世界が広がっている。
「では、始めます。制限ルールは特になし。ただ練習試合だと言うことを忘れないでください。
 もし私が試合はここまでだと判断したら、割ってはいります。いいですね?」
 向かい合った両者は、ほぼ同時にうなずく。
「では・・・・開始!」
「いくぜっ!!楽しませてくれよっ!!」
「せんせぇ、がんばるでござる〜〜♪」
 いきなり、両手から霊破を放つ雪矢。
 まともにくらえば致死量であることは明らかだ・・・。

――――――――――ドクンッ・・・―――――――――――
「っつぅ・・・」
 あの感覚・・・ 
 まわりが止まったような感覚・・・
(雪之蒸か・・・)
 雪矢によく似た男の顔が浮ぶ・・・

「せんせぇ!」
 シロの声に泳いでいた氷河の視点が一点に返る。
 霊破はすぐそこに迫っていた。
「ちくしょーー!いきなりムチャクチャしやがって!」
キィィイィン ビュウウッ!
 霊気の盾、サイキック・ソーサーを構成してそれを防ぐ。
 基礎トレーニングの成果により構成時間が短縮され、霊気密度も上がっているようだ。
 「くっ、重い・・・。」
 ゴーレムのストレートにも劣らない威力。
キンッ ドガガッガガッッ
 爆発音とともに幾分か砂煙がたち、氷河を覆い隠す。

 「もしかして、これで終わりじゃねーよな。」
 機をうかがう雪矢・・・そのとき・・・
シュツッ・・・
 一筋の赤線が雪矢の頬を染める。
 「なっ・・・」
 「ぺっ、砂が口にはいりやがった。」
 砂まみれになりつつも無傷の氷河が砂埃の中から姿をあらわす。 
「なるほどな。」
 頬の血を手で拭き、氷河の手に再構成された盾を見つめる。
「下手な遠距離からの様子見は逆効果ってわけか。なら接近してたたく!」
 右手に霊気をのせ、氷河に向かって突進する。
 精神を集中している氷河。
 そのとき雪矢の背後に盾が姿を現す。
ザシュゥゥウ!!
 左手に痛みが走る。
「っつぅぅ!?」
 そこには、さきほど頬をかすめ飛んでいったサイキック・ソーサー・・・
「どうだ!ただ投げるだけじゃねーんだぜ。」 
「コントロールまでできるのか。ちっ!」
 傷ついた左手をかばいつつ、氷河から間合いをとり、はじめに立っていた位置にもどる雪矢。
「やっぱり、俺がライバルと認めた男だ。手加減してちゃ勝てねーかもな。今度からは本気で行くぜ!!おおおおっっ!!」
(おいおい、勝手にライバルにするなよ・・・)
 雪矢を包んでいた一定量の霊気が、刺々しさを放ち始める。
バシュッッ!!
 閃光が雪矢をつつんだように見えた。
(魔装術・・・。)
 明らかに先程とは、違うプレッシャー。
「魔装術・・・俺の家系がもっとも得意とする技だ。数ヶ月前に修得したばっかだから、手加減はできねぇぜ!!」
 雪矢が力を込めて地面を蹴る。
 砂埃が激しく宙を舞う。 
「はやい!?」
 向かってきた雪矢の右ストレートを、盾で何とか防ぐ。
「いまのに反応できるとはな。だが、おまえの負けだ!」
 次々に繰り出される乱撃に、両手の盾で防御に徹するだけでもギリギリの氷河。
 言葉をつづける雪矢。
「おまえの弱点は、接近戦に弱いこと。遠距離では防御と攻撃の転換を、迅速に行う必要はない。
 だが近距離となると話は別だ。どうしても、飛び道具じゃ分が悪い。防御にまわるしかない。
 そして・・・スキができる!!」
「ぐっ・・・!!」
 魔装の右足のミドルキックが、氷河の脇腹に決まる。
 数メートル吹っ飛び、受け身もとれず地面にたたきつけられる。
「決着がついたな。まあ、すごいぜ。数ヶ月でおれといい戦いができるようになったんだからな。
 さすがは俺のライバルだ。」
「ってぇ・・・。」
 立ち上がりたいのに、体が痛む。
パシュッ
 雪矢が魔装術を解いたのが辺りの霊圧の変化で分かった。
「わりぃ。やりすぎたか・・。」
 そう言って、手を貸す雪矢。
(戦い好きで、口は悪いけど、実際悪い奴じゃねーんだよな・・・。)
 何とか上半身を起こす。
「いたたた、霊気の盾にもっと霊力集めてたら、まずかったな。」
「勝負ありです。横島さん、これからは接近戦の練習が必要のようですね。
 霊波刀の修得が当面の目標です。
 あと、伊達さんは魔装術からの乱撃はすごいですがペース配分を考えなければいけませんよ。
 いまのでは、あと1分も戦っていられなかったでしょう?」
 ばつの悪そうな表情の雪矢。
 (それなりにいい勝負だったってことでいいのかな・・・)
「小竜姫様、霊波刀ってたしかシロの奴が使ってるのですよね。」
「はい。横島さんならすぐ出来るようになりますよ。シロちゃんにそれを教えたのが前世のあなたなんですから。」
「前世?」
 と雪矢。
 一瞬、沈黙が流れたかに思えた。
「横島さん、いいですか?」
 少しかげった小竜姫の顔にうなずく氷河。

・・・・・・・数分の説明・・・・・・・

「おまえも、たいへんだな。」
 以外にあっさりした雪矢の反応。
「じゃあ、霊波刀は拙者がせんせぇにおしえてさしあげるでござる〜♪」
「横島さんこれからどうしますか?明日からは長期休暇なんですよね?」
「今日からここにいていいっすか?霊波刀の修行もしたいし。それに高校いって、ドベじゃ・・・。」
「そんな、今の実力があればすぐにでもGSになれるくらいですよ。でも、過信せずに修行することはいいことです。」
 微笑む小竜姫。
「俺も頼む。行く当てないし、金もねぇ。」
「はい。では、来客用の部屋を案内しますので夕食まで部屋でくつろいでいてください。」
 氷河たちは亜空間を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「じゃあ、また夕食でな。」
「はい〜。またでござる〜♪」
 部屋を案内してくれたシロに笑顔で手を振る。
バタンッ・・・
 ドアが閉じると同時に、異様なほどに静まりかえる10畳ほどの部屋。
「あのボロアパートと比べるといい部屋だな〜。」
 部屋をぐるりと見回してみる。
 特に家具がおかれておらず、小さめの窓が自分の姿を映していた。
 洗面所で汚れた顔を洗い、仰向けで横になる。
 窓からのぞく空はもうすっかり日が落ち、星が輝き始めていた。
 まだ痛む脇腹をさすりつつ、ぼんやり眺める。
(山ん中だから、星がきれーだな・・・。)
 あたりを覆う漆黒の世界。
 こんな時、きまって思うことがある。
(この世にはこの世界しか存在しないのか・・・死んでもまた、この世界にもどってくるのか・・・。
 この世のどこかには干渉せずに互いの存在さえ気づかない世界がほかに存在しているんじゃないか・・・。
 例えば、あの時こうしていたなら・・・という可能性の世界。パラレルワールド・・・。俺は・・・。)
 ZZzz・・・。

ガチャ・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「せぇ・・・せんせぇ〜ご飯でござるよ〜」
 ドアの向こうから聞こえるシロの声・・・。
「ん・・・。」
 目をこすりつつ起きあがる。
 (あ、寝ちまったみたいだな・・・)
 ドアをたたく音が聞こえる。
「わかった、わかった。いま行くから、先に行っててくれよ。」
「わかったでござる〜。」
 遠ざかる足音。
「ん〜〜〜〜〜。」
 大きく背伸びをしてみる。
「ん?」
 背伸びをしている途中で、床におかれた紙に目が留まった。
「あれ、こんなもんあったか?なんか書いてあんな・・・。」
 手にとって見てみる。
 これといって、特徴のない字体。

『いつか、辛い過去の記憶を取り戻すときが来る。
 でも、それを拒絶しないでやってほしい。
 あれはあいつにとって、唯一の自由で幸せな一時だったのだから。
 わたしは、あいつの代わりには到底なれないがお前を見守りたい。
 それが、生き残った私にできるただ一つのことだから。
 生き抜け。』

「なんだ?これ・・・」
 何度も読み返してみるが意味が理解できない。
 自分に宛てられたことは分かるのだが・・・。
「いったい、誰が・・・」
 裏返してみるが何も記入されてはいなかった。
 考え込む氷河・・・。
 (小竜姫様でも、雪矢でも・・・到底シロでもないよな・・・ん?シロ・・・)
「・・・・・・あ!飯だった!」
 夕飯で呼ばれているのを思い出しそれをポケットにいれ、鍵のかかったドアから外にでる。

 その左手の甲にはあの赤い模様が薄く輝いていた・・・。

 

――――4月上旬――――

「あっ、てめシロ、それ俺の分だっての!自分の食え!」
「雪矢殿にとられたのでござるよ〜(泣)」
「おかわりたのむ!」
「俺も!」
「拙者も!」
「はいはい。」
「もっと、静かに食べてよ。朝は苦手なんだから・・・」
 明神山の朝・・・。
 管理人+居候4人=5人しかいないのだが、騒々しい。
 3月の終わり頃、妖狐のタマモも居候に加わった。
 下界が暇なので、明神山に遊びに来たと言っているが、シロの連絡で氷河に会いに来てくれたらしかった。
 見た目は氷河たちと同じ、高1あたりの風貌。
 化けるのが得意な妖狐なので、実際に人間形態ではどれくらいの年なのかは見当がつかない。
 氷河にとってタマモは、クールでとっつきにくい性格だったが、数日間でかわいいところも幾分か発見できた。 
何はともあれ、明日からは高校生活がスタートすることになっている。
 小竜姫の推薦や手配で、氷河、雪矢、シロ、そしてなぜか再びタマモも六道学院への入学が決定した。
 本人のいいわけでは、楽しそうだから。だそうだ。
 まったくというわけではないが、お金のなさそうな4人の学費、宿泊費などは小竜姫が負担してくれたのだった。
(もちろん大判小判で・・・)
 修行の方はというと、手だけを魔装術で包んだようなハンズ・オブ・グローリーとかいう接近型の能力は修得できた。
 これを発展させれば、霊波刀になるらしい。 
(栄光の手って、どんなネーミングセンスだよ。)
 これが氷河の初めての感想。
 この後、考案者が自分であることを聞かされ少々落胆したの言うまでもない・・・。
 

―――高校生活初日――――

 春休みは風のように瞬く間に過ぎて、高校生活が始まった。

「○×中学から来た、横島氷河です。よろしく。」
 新学期恒例の自己紹介続く。
 日本唯一のGS教会認定、またオカルトGメン認定の高校ということもあり、生徒は全国各地から集まっていた。
 そのため例外を除いて、顔見知りがいるはずもなく、特有の重い空気とすばやい友達作りのための情報合戦が始まっている。
 もちろん、例外というのは氷河、雪矢、シロ、タマモの4人。
 全員がそろいもそろって同じクラスに割り当てられた。
 そのため、氷河は孤独というプレッシャーを感じる必要はなかった。
(ふうっ・・・)
 自分の自己紹介が終わり、ちらっと、他の3人を見てみる。
 相変わらず、やる気のなさそうな雪矢・・・下向いて寝てるのかも・・・。
 頬杖をつきながら窓の外を見て、これまたやる気のなさそうなタマモ・・・。
 辺りをキョロキョロ見て、興味津々のシロ・・・。
 そして、もう一人の知り合いに目を向けてみる。
 教室の傍らでは、にこやかに生徒の自己紹介を聞いているピートの姿があった。
 ピートは、オカルトGメンの仕事でここの教員に抜擢されたのだ。
 六道学園の教員の幾人かはオカルトGメンの者。
 プロの指導による意欲の相乗と、国際水準における、日本の基本的霊能力の強化を図るために
 オカルトGメンと六道学園は投資金を経て協力しているということだ。
 学園側からしてみれば、実績、性格、生徒受けの良さから、ピートがこの上なく適任だったのだろう。
キーーンコーーーンカーーーンコーーーン
 終業の鐘がなる。
「じゃあ、今日はここまで。明日からは本格的に授業が始まるので、道具一式忘れないように。」
「起立、礼」
 教室を包んでいた、緊張が一気に解かれた。

―――同学園・放課後―――
 
「なあ、ピート。ここに入ったはいいけど、実際何やんだ?俺でもついていけんのかな・・・。」
 人狼で抜群の運動センスと霊力を持つシロに、魔装術を持ち実戦においては豊富な知識を持つ雪矢。
 それに実際戦ったことはないが、伝説として紀伝にまで登場する妖狐のタマモ。
 明らかに自分だけ浮いているような気がする・・・。
 実際、周りはそんな目で見てはいないのだが。
「実際は明神山と同じ基礎トレ、模擬戦ですね。あと、外部研修と学級対抗試合があります。
 横島さんの実力があれば、授業は退屈なものになりますよ。
 今ここにいる4人以上の力を持った生徒なんて、上級生にもいないです。安心してください。
 ただ、普通の授業もあるので勉強はしっかりしてくださいよ。」
「「げ・・・」」
 同時に声を上げる氷河と雪矢。
「ピート殿、外部研修とはなんでゴザルか?拙者たちがいた頃はなかったはずでゴザルが・・・。」
「確かになかったわね。」
「ああ、それは学校内では学べない現場の雰囲気を、実際にその場に行ってつかむようなものですよ。
 えーっと、確か場所は東京になっていたと思います。首都移転計画によって東京は古都となり、さびれていますからね。
 それに様々な人の残留思念も渦巻いていますから、霊が徘徊するにはうってつけの場所になってしまってますし。
 なので、実際に除霊をすることになってるらしいです。」
 現にこの学校も、ピートの教会も人と時代の流れに乗り、場所を移したのだった。
 人がいなければ儲からないGSは様々な心境を抱え、場所を移動する者、とどまる者もいた。
「へ〜。懐かしいでゴザルな〜。」
「東京って、俺が前世に住んでたところなんだろ?。」
「そうですね。きっと懐かしい物ばかりだと思いますよ・・・。」
 懐かしい・・・その言葉ににとどめておく。
 人にとって故郷は決して楽しい思い出だけの土地ではない。
 特に目の前にいる青年にとっては・・・。
「拙者たちが案内するでゴザルよ♪」
「拙者たちって、なんでわたしもやるの?油揚げくれるならいいけど。」
「ふん、どんな霊がいても俺たちがいれば研修にもならないだろ・・・。なあ、横島。」
「ま、まあ、お前ら3人いれば負けねーよ。だから、俺は見学でも・・・」

「さて、そろそろ失礼します。新学期の職員会があるので。」
「そうか、またな。」
 それぞれが、ピートに別れを告げる。
ガラッ・・
 廊下に出て職員室に向かうピート。
 まだ、少し冬の寒さが残っているようだ・・・
 氷河たちのこえが明るく聞こえていた。
 廊下をあるき続ける・・・
(横島さんは受け入れられるのだろうか・・・。あの過去を・・・。)
 階段を下りていく・・・
 ふと、ピートは自分の担当のクラスを見上げる。
 そこにはまだ、3人と話している氷河の姿。
 どうみても、幼さの残る15歳の少年でしかない。
 あの時の忠夫の落胆ぶりが、ピートの頭の中に鮮明に浮かぶ。
(いまでも、あなたの中には・・・。)

 ピートののぞいた窓からは、あかね色に染まった空が氷河たちを包んでいた・・・・
 

第三章  変わらない絆  完


※この作品は、ヒッターさんによる C-WWW への投稿作品です。
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