『 異界空間の二人 』

著者:まきしゃ


     
  横島たちの通う高校の校門前に車を乗りつけるエミ
エミ 「そろそろ、下校の時間ね…、おや?おたくは令子のとこの…」
シロ 「あっ、エミどのでござるか?」
エミ 「そうよ。たしか、臨海実習のときに会っただけなのに、よく覚えてるわね。」
シロ 「そ、その、うちの事務所では有名人でござるから…」
   
エミ 「くっ、令子のやつ、どうせろくでもないこと言ってるのね…
  ところで、おたくはなんでここにいるワケ?」
シロ 「拙者、横島先生を待ってるんでござるよ。
  今日は仕事がお休みなんで、これから先生と散歩に行くんでござるっ!」
   
  生徒用下駄箱前
タイガー 「ピートさん、お願いジャ〜」
ピート 「横島さん、お願いしますよ〜」
横島 「あのな〜、おまえらな〜〜〜」
   
横島 「今日の休みは、家でごろごろしてたいんだよっ!
  なんで俺がピートと一緒にエミさんの手伝いしなきゃなんねえんだよっ!」
ピート 「僕がエミさん苦手なの、知ってるでしょ?一人にしないでくださいよ〜〜」
   
横島 「嫌ならエミさんの依頼、断ればいいだろ?」
ピート 「でも、タイガーさんのことを思うと……」
タイガー 「横島サン!あっしからもお願いしますケン。
  ピートさん連れて行かなかったら、エミさんの仕打ちが…」
   
  横島が同意しないまま校門前に行く3人…
エミ 「ああん、ピート〜!来てくれると信じてたわ〜!」 抱きつき!
ピート 「横島さぁ〜ん…」
   
シロ 「先生っ! 散歩っ、散歩に行くでござるよっ!!」 抱きつき!
横島 「うっ、おまえ、来てたのかっ…」
 

(泣くなタイガー!おまえには一文字さんがいる…ハズ)

  移動中のエミの車の中
エミ 「………、なんでこうなるワケ?」
ピート 「ははっ、賑やかでいいじゃないですか…」
   
シロ 「先生と散歩できないのは残念でござるが、大勢で仕事をするのは
  ピクニックみたいで楽しいでござるよっ!」
タイガー 「横島サン、せっかくのお休みに、すまんノー…」
横島 「シロとの散歩は、トライアスロン並みにキツイからな…」
   
エミ 「ま、しかたないわね、ついて来るなら手伝ってもらうわ。
  今日の仕事は除霊じゃないわ。異界空間に繋がる穴を閉じに行くワケ。」
ピート 「えっ?そんなことが出来るんですか?」
   
エミ 「別に難しいことではないワケね。空間の穴を結界で塞ぐだけだから。」
ピート 「簡単なら、別に僕を呼ばなくても……」
エミ 「簡単だけど、人手がいるワケ。 穴を霊波で小さくおさえつけて御札を
  貼り付けるんだけど、大きな穴だとタイガー1人じゃおさえきれないワケ。」
ピート 「そうですか…」
   
エミ 「後ろの3人も、わかったわね?」
横島 「タイガー、狭いぞっ、もうちっと小さくなれんのかっ?」
タイガー 「無理いわんでください。」
シロ 「拙者が先生のひざの上に乗れば、広くなるでござるよっ?」
横島 「おまえ、精霊石はずして、犬になってろ。」
シロ 「狼でござるっ!先生、ひどいでござるよ〜」
エミ 「………」
   
エミ 「令子も、よくこんなのと一緒に仕事できるわね〜」
ピート 「おキヌちゃんがいるからじゃないですか?」
   
  空間の穴のある工事現場に到着
  霊衣に着替えたあと、霊視スコープで異界空間の穴を確認するエミ
エミ 「思ってたより大きいわね〜。おたくらも見てごらん。」
  長径3mぐらいの縦長な楕円の穴がぽっかりと…
   
エミ 「おたくらに来てもらって良かったわ。2人ではきつかったかも。
  ピートとタイガーは上部から、横島とシロは下から霊波を出して。」
  言われたとおりに四隅から霊波を放出する4人
   
エミ 「うん、いいわよ。だいぶ小さくなったわ。
  上から御札を貼っていくわよ。ピート、タイガー、出力高めてっ!」
  脚立に乗って、呪文を唱えながら空間に御札を貼りつけるエミ
   
シロ 「先生、なんだかヒビの入った窓ガラスを修理してるみたいでござるな。」
横島 「それより俺は休みたい。霊波出し続けるのって、文珠出すよりきついんだよな。
  おまえと散歩に行ってたほうが、楽だったかも…」
エミ 「横島、おたく出力下がってるわよっ!」
横島 「へ〜い」
   
エミ 「おたく、まだ弱いわよっ! さぼってんじゃないわよっ!」 
  しゃがんでいる横島の頭を、脚立に乗ったまま足で踏みつけにするエミ
シロ 「ひ、ひどいでござる……」
   
横島 「えっ?この位置はっ!?」
  エミを下から見上げる絶好の位置…
  ズゴゴゴォ〜〜 横島の霊波、出力大幅UP!
エミ 「そ、それでいいんだけど…、おたくも進歩しない奴ね…」
  不機嫌そうに作業を続けるエミ
   
横島 (ここも悪くはないけど、もうちょっと内側の方が眺めがよさそう…うひひ…)
  カタンッ! 脚立の留め金に触れて、はずしてしまう横島
エミ 「えっ?」
  脚立が開いて、前のめりに倒れるエミ
横島 「エミさんっ!危ないっ!」
  助けようとして、エミの片足にしがみつく横島
  横島が霊波の放出を止めたため、穴の下部が大きく開いてしまい、
  エミと横島は、異界空間に吸い込まれてしまう…
   
シロ 「せ、先生?」
タイガー 「エ、エミさん?」
ピート 「まずいっ!」
   
シロ 「ピートどのっ! 先生はどうなるんでござるかっ?!」
ピート 「わからないっ!」
シロ 「そんなっ! 拙者も、中に入るでござるっ!」
ピート 「ダメだっ!中がどうなってるかわからないまま入っても、遭難者が1人
  増えるだけだっ!かえって、状況が悪くなるっ!」
シロ 「では、どうすればっ!」
   
ピート 「まずは、出口を確保すること。この空間の穴を現状のまま維持すれば、
  ここから戻ってくる可能性もあるっ!
  タイガーは僕とここに残って、穴の監視をしてくれっ!」
タイガー 「はいっ!」
ピート 「シロちゃんは、美神さんたちに連絡して応援を呼んできて欲しいっ!」
シロ 「わかったでござるっ!」
   
  大急ぎで事務所に駆け戻るシロ
シロ (先生!すぐに助けにいくでござるっ!待ってて欲しいでござるっ!
   それまで、無事でいて欲しいでござるっ!!)
  「せんせえ〜〜〜 ワォ〜〜〜ン!!」
   
  美神事務所では
キヌ 「タマモちゃん、なにか嫌な予感がするの。 何か感じない?」
タマモ 「ん〜、別に…… えっ?ちょっと待って…、シロの声っ!?」
キヌ 「シロちゃん、横島さんと散歩に行ってるんでしょ? なんて言ってるかわかる?」
タマモ 「わかんない。でも、すごく緊迫した声を出しながら、こっちに向かってるっ!」
キヌ 「横島さんに、なにか起こったのかも… 美神さんに知らせなきゃっ!」
   
   
  異界空間に吸い込まれた二人は、ひたすら落下中…
エミ 「おたく、なんてことしてくれるのよっ!!」
横島 「俺、エミさんを助けようとしただけで…」
エミ 「あのままおたくが霊波を出してれば、穴の中に落ちずに済んだワケっ!
  こんなことになったのも、おたくのせいだからねっ!
  それより、いつまで私の足にしがみついてんのよっ! 離しなさいよっ!」
   
横島 「ここで離したら、一人っきりになっちゃうじゃないっスか〜。
  そんなのイヤ〜〜〜!!」
エミ 「え〜い、うっとおしい〜〜!!」
   
   
  再び美神事務所
シロ 「先生が、先生がぁ〜〜、ワオオ〜〜〜ン!!」
令子 「シロッ、泣いてちゃわからんっ!落ち着いて話しなさいっ!」
シロ 「うぐっ、先生が、異界空間の穴に落ちたんでござるぅ〜〜〜!!」
   
キヌ 「美神さんっ!それって!!」
令子 「うん…、かなりやばいわね…。へたしたら横島クン、一生出て来れないわよっ。
  その穴、まだ開いてる? 閉じてたら、手の施しようがないわ。」
シロ 「閉じないように、ピートどのが見張ってるでござる…」
   
令子 「ピートと一緒だったの? ま、その話はあとで聞くわっ。
  閉じてないなら、助かる可能性は有るわねっ。
  おキヌちゃん、異界空間用の装備を用意してっ!準備できしだい出発よっ!」
キヌ 「はいっ!」
   
   
  ドガシャッ! 異界の底にたたきつけられた二人
エミ 「いたたた…、ふう、なんとか打撲だけで怪我しなかったようね…」
横島 「エミさん、俺の上からどいてもらえません?俺、怪我だらけなんスけど…」
エミ 「おたく、なんで生きてるワケ?
  責任感じて、私のクッションになってくれたんでしょっ?」
横島 「文珠、使ったんス…」
エミ 「ふん、文珠か。生き延びるには役立ちそうね。」
   
横島 「ところでエミさん、ここはどこなんスか?」
エミ 「わかるわけ無いでしょ? 見たとおりの場所なワケっ!」
  うにょうにょとした異様な植物が生い茂り、
  ぷよぷよとした小さな動物がうろつきまわってる場所
  元の世界から落ちてきたのであろう白骨化した犬の死体や
  工事現場で使っていた建築資材もいくつかころがっている…
   
横島 「お、おれたち帰れるんっスか?」
エミ 「落ちた穴と同じ所を通ればねっ! おたく、その場所わかる?」
横島 「…さあ?」
  空を見上げても、地球のものとは思えないグレーな空が延々と広がるばかり…
   
横島 「ということは、俺とエミさんだけの甘い生活…ぶっ!?」
  エミにしばかれ横島ダウン
横島 「美神さんより、パンチが重い……」
   
エミ 「ふだんタイガー相手に殴ってるからねっ。ま、もう殴る必要は無さそうよ。」
横島 「それって、俺でもOKってことっスね?」
  エミに飛びかかろうとした横島、だが首がぐきっと曲がってしまう
   
エミ 「ふん、呪いのプロをなめないで欲しいワケ。おたくの髪の毛、わら人形に組み
  込んだから、へたなこと出来ないわよ。命が惜しけりゃ言うこと聞くのね。」
横島 「うう、こんなんばっかしや〜〜〜」
   
エミ 「とりあえず、このバカを奴隷にするのは完了ね。
  あとは、帰り道を探すしかないんだけど… ピート、助けに来ないかな…」
   
   
  異界空間の穴の前では…
タイガー 「ピートさん、なんか助ける手だては無いんですカイノ〜?」
ピート 「う〜ん、中に入るわけにはいかないけど…
  そうだ、使えそうな道具をできるだけ中に送り込もうっ!
  あの二人に届いたなら、きっと役に立つに違いないっ!」
  エミの車の中にあった道具類を異界空間の穴の中に次々投げ込む二人
   
   
  異界空間の中では…
エミ 「穴を捜さなきゃなんないんだけど、私には霊視スコープとかの道具が無いと
  捜しようがないワケ。おたく、文珠でなんとかならないワケ!?」
横島 「無茶言わんでくださいよ〜。なんて文字使えばいいんですか?」
   
エミ 「ちっ、道具が無い限り、こっち側から穴を捜すのは無理のようね…
  向こう側から、なんとかしてもらうまで、待つしかないか…」
横島 「あの〜、エミさん…」
エミ 「ん? なに?」
横島 「俺、腹が減ったんですけど…」
  横島の言葉に反応して、グゥ〜っと鳴るエミのお腹…
   
横島 「ははっ、そうですよね? 俺、そのへんで食えそうな物、探してきますね。」
エミ 「ちょっと待って。ここは異界で、まともに食べれる物なんて無いワケ。
  精霊石で浄化しないと、ひとくちであの世行きかもよ。
  つまみ食いせずに、全部持ってくるのよっ!」
横島 「へ〜い」
   
  現場へ移動中の令子の車の中では…
令子 「なにぃ〜? エミと二人で落ちたって!?」
シロ 「そうでござる…」
令子 「それも、エミの仕事を手伝っててだとぉ〜?
  あんたら、私とエミの関係を知っての行動ね?
  無事に助けたとしても、無事ですむとは思わないでよっ!」
シロ 「うぐっ!」
   
   
横島 「エミさん、結構、いろんなものがありましたよ〜」
  しばらく歩き回って、果物のような植物を沢山採ってきた横島
  それらをまとめて精霊石で浄化するエミ
   
エミ 「あら、意外に美味しいわねっ!?」
横島 「これなら、ここで生活できますねっ!?」
エミ 「おたくと二人で? 冗談は、やめてよねっ!
  バカな気おこしたら、マジで命を落とすわよっ?」
横島 「えっ?あっ?ははっ…」
   
エミ 「ところで、おたく、文珠はどれくらい出せるワケ?」
横島 「ん〜、最近、連続して出したことなかったから、わかんないけど、
  1日、3〜4個ぐらいだと思います…」
エミ 「えっ?そんな程度? もっと沢山出せないワケ?」
横島 「こうすれば…」
  おもむろに両手でエミの胸をつかむ横島… むにゅっ!
   
エミ 「この場で死にたいワケ?」
  わら人形をぞうきんのように絞るエミ
横島 「だから、俺の霊力源は煩悩なんですってば〜〜 うぐぐ〜」
  (美神さんより小さいけど、弾力はエミさんのほうが…)
   
エミ 「霊力回復のために触らせるなんて冗談じゃないわっ!
  ふう、無駄使いも出来ないワケね。 まいったな…
  使い方をいろいろ考えておかなきゃ…」
   
  とにかく暇なので、あたりの様子を見回ってきた二人
エミ 「あ〜あ、似たような光景ばかりで、つまんない所ね〜。」
横島 「あの、俺、疲れちゃったんで、そろそろ寝たいんですけど…」
エミ 「そうね〜、ここじゃ正確な時間なんてわかんないけど、こっちに来てから
  7〜8時間ってとこかしら。 元の世界なら深夜になってるわね…
  今日は、もうあきらめて寝るかぁ…」
   
横島 「あれ? エミさん、それは?」
エミ 「おたくが食料さがしてる間に作っておいたワケ。」
  柔らかそうな植物の葉で作られた寝床が1つ…
横島 「あの、俺のぶんは…? まさか、一緒に寝…  ぶっ!?」
エミ 「おたくを野放しにしてたら、安眠できないワケ。おたくは、そこよっ!」
  十字架のように突っ立った1本の木を指差すエミ
   
横島 「こんなん、詐欺や〜〜」
エミ 「うるさいっ! 静かにしないと寝れないワケ!」
  地面に突き刺されたわら人形と同様に、磔状態で放置された横島…
   
  異界空間で睡眠中の二人、数時間経過…
横島 「うわ〜、エミさん、エミさん〜〜〜!!」
エミ 「ん〜、なんなの?うるさいわ… えっ!?」
  二人の近辺に、次々に降り注ぐエミの道具類…
   
エミ 「なに? これは、私の車に積んでおいた道具だわっ!
  横島、おたく…  うっ!」
  水晶玉が脳天に直撃して血を流して失神中の横島…
   
   
横島 「う〜ん、いててて……」
エミ 「ようやく気付いたか…」
横島 「あっ、エミさん。俺、なんかが落ちてきて、それに当たって…」
エミ 「わかってるワケ。 おたくの怪我、軽くないから、しばらく横になってなさい。」
横島 「えっ、あっ、はい…」
   
エミ 「おたくに当たったのは、ピートたちが投げ入れてくれた私の道具なワケ。
  それで、いろんなことがわかったわ…」
横島 「どんなことですか?」
   
エミ 「一つは、時間の流れ。
  私たちがここに来てから、少なく見ても10時間以上は経ってるはずよ。
  でも、ピートが道具を投げ入れるまでに、10時間もかかったとは思えないワケ。
  せいぜい10分から15分程度で出来ることだわ。
  つまり、こっちの1時間は、向こうの1分ってとこね…」
   
横島 「それって、ラッキーなんですよね?」
エミ 「まあ、逆だと浦島状態で、戻ったときは数年後っていうのよりはマシね…
  でも身体はこっちだから、ここにいた期間だけ身体も老けてるってことよ。」
   
横島 「つまり、エミさんの場合、戻ったとしても身体は年増… ぶっ!?」
エミ 「おたく、怪我してるんだから、言葉を選びなさいっ!」
横島 「は、はい…。あと、わかったことは…」
   
エミ 「これで、異界空間の穴は見つかったんだけどね。空を見てごらん?」
横島 「はい…。 えっ? こ、これは?!」
  手渡された霊視スコープで空を見上げてみると、数え切れない異界空間の穴…
   
横島 「これじゃあ、どれから出ればいいか、わかんないじゃないスかっ!」
エミ 「そうね…、宝くじみたいなもんよね…。 でも、宝くじも買わなきゃ当たらないワケ。
  おたくの傷が治り次第、しらみつぶしに確認していくから、いいわね。」
横島 「そうですね…」
   
エミ 「それじゃ、私はもう一度寝るわね。寝てる途中に道具に起こされちゃったから、
  寝足りないワケ。 おたくも、休んでていいわよ…」
横島 「はい…。」
   
横島 (いててて…、結構、頭の傷は重傷みたいだな… 文珠出せれば、
   自分でヒーリング出来るんだけど…)
  文珠を出そうとするが、傷の痛みのせいで集中出来ずにいる横島
   
横島 (ダメかぁ… エミさんの寝姿を見れば出るかも…)
  エミの方を見る横島
横島 (えっ? エミさん、下着姿で寝てるっ!?)
  キィィーン 煩悩全開であっさり文珠が出てしまう
横島 (よしっ!(治)で頭の傷、治れっ!)
  文珠によるヒーリングが効いて、起きあがれる程度まで回復
   
横島 (あれ? 俺、エミさんが使ってた寝床に寝てたのか…)
  あたりを見まわすと、ヒーリングに使ったのであろう精霊石の破片、
  包帯代わりに使ったのであろう血まみれのエミの霊衣の切れ端
横島 (それでエミさん、下着姿に… 俺、相当やばかったんだな…)
   
横島 「エミさん、ありがとう……」
  下着姿で寝ているエミに、そっと自分の上着をかける横島
  横島も、再び眠りの中に…
   
   
エミ 「ん…? あれ?横島、おたく、もう起きても大丈夫なワケ?」
横島 「あっ、エミさん。目が覚めましたか? おかげで助かりました。もう大丈夫です!」
エミ 「あいかわらず、妖怪並みの生命力ね…
  あっ…、おたくの上着…。 ありがとう、着させてもらうわよっ!」
   
  食事を終えて一息いれたあと…
エミ 「さて、元の穴を探しに行くワケだけど、あの方法しかないわね…」
横島 「南極のときの技ですね?」
エミ 「空飛べなきゃしょうがないからね。いいわよ、準備してっ!」
  文珠を2個続けて出す横島
エミ 「文珠、出せたのね? それじゃあ、はじめるわよっ!」
横島 「はいっ! (合)(体)っ!」
  しゅわっち!
エミ 「やっぱ、おたくの霊力の方が上かぁ…
  ま、南極以来、そうじゃないかとは思ってたけど、嬉しくない事実ね…」
  合体した横島の肩の部分に、顔を出して話すエミ
   
エミ 「道具の落ち方からして、こっちの方面よ。」
横島 「とりあえず、このへんの穴から入ってみますね。」
  空間の穴に飛び込む合体横島エミ
  出たところは灼熱の溶岩が流れるすぐそば
横島 「わたたたた?」
エミ 「はずれよっ、すぐ戻りなさい!」
横島 「あ〜、驚いた…」
エミ 「驚いてる暇は無いワケ。チェック済みがわかるように、穴の隅に
  御札を貼りつけるのよっ!」
横島 「は、はいっ!」
エミ 「よしっ、次行くわよ」
横島 「はいっ。」
   
エミ 「はずれっ! 次!」 「次っ!」 「その次っ!」
   
横島 「はひ〜、そろそろ時間切れっス…」
エミ 「そうね、降りていいわよ。 それにしても、1日2回、1度に10分程度の探索じゃ、
  たかがしれてるわね〜。先の長い話しだわ…」
   
  元の場所に戻って分離した二人
エミ 「あれ?おたく、その豚の丸焼き、どうしたの?」
横島 「ほら、何番目かの異界で、大勢の人がお祈りしてるとこに出ましたよね?
  そこの、祭壇みたいなところに置いてあったんで…」
エミ 「へえ〜、抜け目ないわねっ。 よくやったわ!」
横島 「これで、食事が楽しみになりますねっ!」
   
  数時間後、この日2度目の合体で…
エミ 「横島、わかってるわね? 異界で使えそうなものがあったら躊躇なく
  取ってくるからねっ!」
横島 「合点承知でさぁ〜!」
   
エミ 「砂漠じゃ、しょうがないわね。次っ!」
横島 「はいっ!」
エミ 「あら、この異界、人間じゃないけど、人間並みの生活してるわね?」
横島 「あのこ、かわいいなっ!」
エミ 「おたく、異界の生き物でも欲情できるワケ? ふむ、その娘こっちに連れてきて
  おたくの奴隷にする? 霊力回復源に使えるわよ?」
   
横島 「え? さすがに、そこまではちょっと…」
エミ 「そお? 勇気ないのね。 それじゃ、その娘の服をもらっちゃってっ!」
横島 「おお! ナイス提案!」
   
異界の娘 「あ〜れ〜〜〜!!」
横島 「ふはははっ! 奴隷にしないだけでも、ありがたいと思えっ!」
エミ 「ついでに、そのへんの服や食べ物、獲るのを忘れないでよっ!」
横島 「ラジャー!!」
   
横島 「エミさん、そろそろです。」
エミ 「了解。 異界めぐりも、なかなか楽しいわねっ!」
  すでに、所期の目的を忘れて、略奪を楽しむ二人であった…
   
  合体を終えて…
エミ 「さすがに異界だけあって、さえないデザインばかりね…
  ま、これでいっか。いつまでも横島の上着だけなんて、ぞっとしないしね。
  横島、着替えるから、おたく、こっち向いたら承知しないわよっ!」
横島 「向きたくても、向けましぇ〜んっ!」
  わら人形で向きを固定されてる横島
   
エミ 「お待たせ。悪かったわね。」
  わら人形の呪いをいったん解除するエミ
横島 「ふぅ〜、エミさんとじゃ覗きの醍醐味がないのが辛いなぁ〜
  えっ? エミさん?」
エミ 「なに? どうかしたワケ?」
横島 「い、いえ、その… ほら、ふだんエミさんが着ないような服だったから…」
エミ 「ま、服を選べる状況じゃないから、しかたがないワケ。」
   
横島 「で、その、なんか、それ着てるエミさん、かわいいかな…と…。」
エミ 「なっ! 横島!おたく、年上をからかうんじゃないワケ!
  おたくは、夕食の準備をしてなさいっ!」
横島 「へ〜い」
  照れ隠しに怒りながら席をはずし、奪ってきた手鏡を見つめるエミ
エミ 「似合ってるのかしら?」
   
   
  食事をしながら打ち合わせをする二人
エミ 「いざ、いろいろ手に入ると思うと、欲が出るわね。おたくは何が欲しい?」
横島 「柔らかい布団で寝たいッス!」
エミ 「うん、それは手に入れたいわねっ。椅子やテーブルも欲しいしね。
  とにかく生活に必要なものは、手当たり次第ね!」
横島 「なんだか、わくわくしますねっ!」
   
   
  そんな調子で異界の感覚では5日目
横島 「ずいぶん、いろいろ、そろいましたね。」
エミ 「あと、電気が使えれば言うことないんだけどね。」
  異界の小さな一軒家をまるごと強奪してきた二人…
   
エミ 「今日は、私が料理を作るわ。道具もそろってるし、暇持て余してるからね。
  おたくは、そのへんでゴロゴロしてていいわよ。」
横島 「へ〜い」
  料理しているエミをぼんやり見つめる横島
エミ 「さっ、できたわよっ。」
横島 「いただきますっ! おいしいっス!」
エミ 「そお? よかったっ!」
   
横島 「さっきから思ってたんスけど、こういった普通の家で食事するなんて、
  なんか家族と一緒にいるみたいっスねっ!」
エミ 「家族…、そういやおたくの両親、外国に居るんだったわね?」
横島 「そうなんスよ。お袋が帰ってきたときは、大騒ぎになって、
  すいませんでした。 エミさんのご家族は、どうされてるんですか?」
   
エミ 「私の? 私の家族はね…」
  10歳に両親を亡くしたこと、叔母に引き取られたが家出したこと
  それ以来、悪魔と契約して公安で呪いの仕事をしてきたことなど
  とつとつと、横島に語りだすエミ…
   
横島 「えっと、俺なんていっていいのか、その…」
エミ 「おたく、いっちょ前に気を使ってるワケ? 気にしなくていいのに。
  この業界の人間なんて、まともな家庭で育った方が珍しいんだから。」
横島 「ん〜、そういやぁそうですね…
  うちの事務所のみんなも、両親と同居してる人なんて一人もいないしなぁ。
  早い話が、同業者は家族みたいなもんですかねっ。」
   
エミ 「まあ、そうかもね。 一緒に危険な橋を渡って来てるからね〜。
  私も、おたくが同業者だから、過去の話をしちゃったのかもね。
  この業界のことを知らない人には、話してもわかってもらえないからね〜。
  おたくも、同業者は大事にしたほうがいいわよ。」
   
横島 「そうですね。なんか俺、嬉しいっスよ。
  エミさんに、家族として認められたような気分で。」
エミ 「(クスッ) ま、とりあえずはね。でも、調子に乗ったら許さないワケ。
  ほら、食事の後片付けは、おたくの仕事よっ!」
   
横島 「うっ、でも奴隷扱いからだいぶ向上しただけでも嬉しいっスよ…」
エミ 「こき使う程の仕事が無いだけなワケっ!」
横島 「へ〜い…」
  とまあ、姉弟のような雰囲気になっていく二人…
   
   
  しばらくぶりの元の世界、現場に到着した令子たち
令子 「ピートッ!横島クンたちが穴に落ちるまでの状況はシロから聞いたわっ!
  その後、どんな状況なのっ!?」
ピート 「美神さんっ! いまのところ、向こう側からの反応は何もありません…
  こちらからは、エミさんの道具類を投げ入れていますけど。」
   
令子 「霊視スコープは?」
ピート 「はい、それも。」
令子 「そう、それなら向こう側から戻ってくる可能性も有るわねっ!
  生きてて、届いていればの話だけど…」
シロ 「そんなっ!」
   
令子 「まっ、とにかく誰かが入って、捜してくるしかないわね。
  当然だけど、シロッ、あんたの仕事よっ!
  あんたの責任でもあるけど、あんたの鼻を頼りにしてるからねっ!
  横島クンの臭いなら、すぐわかるでしょ?」
シロ 「大丈夫でござるっ! 拙者が中に入るでござるっ!」
   
令子 「じゃあ、これらを装備してっ!」
シロ 「うっ! これでござるか…?」
  鉱山技師のかぶるようなライト付の黄色いヘルメットに
  電気技師の持ってるような様々な道具のぶら下がったベルト
  ベルトには長いロープがついており、反対側は車にくくりつけられている
   
シロ 「なんか、カッコ悪いでござるな……」
令子 「カッコなんか気にしてる場合じゃないでしょっ?
  これだけの装備をしても、あんたも助かるとは限らないんだからっ!」
シロ 「そんなに危険なんでござるか?」
   
令子 「ま、高温だったり、水中だったりしたら、あんたも助からないわね。
  でも、心配しないで。 遺体はロープで引き上げてあげるからっ。」
シロ 「そ、そうでござるか…」
   
令子 「シロ、なんかあって自分で戻れない場合は、ロープをひっぱって合図するのよ。
  こっちから引き戻してあげるからっ。」
シロ 「わかったでござるよっ!」
令子 「タイガー、あんたはロープの途中を持って、張ってる状態にして。
  合図が有ったらすぐ引き戻せるようにねっ!」
タイガー 「はいっ。」
   
  意を決して穴の中に入るシロ、異界空間を進んで行くはずなのだが…
シロ 「なんなんでござるか? ちっとも先に進まないでござるよ?
  上でロープが引っかかったんでござろうか?」
   
  異界との時間差のため、ロープ宙吊りにされた感覚になっているシロ
  気になってひっぱってみるものの、タイガーのところでは、あまりにも
  短時間の合図になるため気付かない
   
シロ 「拙者、このまま一生、宙吊りにされるんでござるのか?
  そんなの嫌でござる〜〜〜!!!」
  シロの感覚で10分ほど経過したあと、意を決してロープをたぐって入り口に戻るシロ
シロ 「タイガーさん〜! 合図に気付いて欲しいでござる〜〜〜!!」
   
令子 「えっ? あんた、もう戻ってきちゃったの?」
シロ 「もうって、拙者、10分は宙吊り状態でござったのに〜〜〜!!」
キヌ 「シロちゃん、まだこっちでは10秒も経ってないわよ?」
シロ 「ほんとでござる〜〜! 拙者、ウソついてないでござる〜〜〜クゥ〜ン」
キヌ 「シロちゃん、泣かなくてもいいのよ? 誰もウソとは思ってないから。」
   
ピート 「美神さん、これはっ!」
令子 「どうやら、異界空間は時間の流れが相当速そうね…」
タイガー 「どういうことカイノー?」
令子 「こっちでは数時間だけど、あっちじゃもう何日も経ってるってことよ。」
   
キヌ 「じゃあ、横島さん、エミさんと二人っきりで何日も?」
タイガー 「横島サン、うらやましいノー…」
令子 「そう? ま、タイガーなら、そう思っても変じゃないけど、エミと横島クンよ?
  エミが横島クンを奴隷扱いしないわけがないわっ!」
ピート 「たしかに……」
   
令子 「さっ、向こうの状態がそんなだとわかった以上、急がないとね。
  いつまでも、エミに私の奴隷をただで使わせるわけにはいかないわっ!」
キヌ 「………」
   
シロ 「で、でも、拙者、宙吊りのまま動かないのは、こりごりでござるよ?」
令子 「宙吊りってことは、あっちでは空中の高いところに穴が開いているのね…
  ま、対策は簡単よっ。ロープを先に異界に投げ入れれば宙吊りにはならないわ。
  タイガー、ロープの束を穴の中に投げ入れてっ!」
タイガー 「はいっ。」
  車とシロにくくりつけてあるロープの間の部分を穴の中に投げ入れるタイガー
   
令子 「シロ、あんたは車にくくりつけた側を握って降りて行けばいいわっ。
  そうすれば、無事に地上にたどり着けるはずよっ。」
シロ 「わかったでござる。」
   
令子 「いずれにせよ、結果がわかるのは、シロが入ってから数分てとこね。
  みんな、どんな結果になるにせよ、心の準備だけはしといてねっ!」
キヌ 「は、はいっ!」
   
シロ 「では、いってくるでござるっ!」
  今度は快調に落下して行くシロ、下の方を眺めてみると…
シロ 「えっ? こんなに高いとこから落ちたんでござるかっ?」
  ぐいんっ! ロープの長さが足りずに、再び宙吊りになるシロ
   
シロ 「うぐっ、こんなところでまた宙吊りになるなんて、どうしたらいいんでござるか?
  ロープをはずして下に降りるには高すぎるし、
  はずしたら拙者も元の世界に戻れないでござる…
  先生〜、横島先生〜〜!!
  拙者、先生を助けに来たでござるよ〜
  だから、拙者を助けに来て欲しいでござる〜〜 ワォ〜〜ン!」
   
   
  異界の感覚では10日目、この日2度目の合体を終えたあとの家の中
横島 「エミさん、さすがに疲れが溜まってるっスよ〜」
エミ 「そうね〜、連日文珠を出しつづけてるんだもんね。
  しかたないわね、明日は1度だけでいいわよっ。」
横島 「すみましぇ〜ん…」
   
シロ 「先生〜〜、横島先生〜〜 ワォ〜〜ン」
横島 「あれ? シロの声?」
エミ 「ん? どっちの方角?」
   
シロ 「先生〜〜、助けてください〜〜 ワォ〜〜ン」
横島 「なんか、上のほうみたいですね。」
エミ 「とにかく外に出てみるワケ。」
   
  外に出て、空中にぶらさがってるシロを見つけた二人
横島 「おまえ、そんなとこで何やってんだぁ〜?」
シロ 「先生、助けに来たのにそんな言い方ひどいでござる〜〜
  でも、無事だったんでござるな? 拙者、嬉しいでござるよ〜〜!!」
   
エミ 「ふ〜ん、シロは、どうやらロープで元の世界と繋がってるみたいね。
  これなら、ロープをたどれば帰れるわよっ!」
横島 「そうですかっ! いや〜助かった〜〜〜
  シロ〜、しばらく待ってろ〜〜 明日、助けてやっからな〜〜」
   
シロ 「えっ?明日? 今すぐ助けて欲しいでござるよっ!?」
横島 「悪いなぁ〜 今日は文珠使っちゃって、もう霊力残ってないんだぁ〜
  霊力が回復するまで、助けたくても助けれないんだぁ〜」
シロ 「そんな〜〜。拙者、今夜はずっとこのままでござるのか?」
横島 「まあ、半日の我慢だ〜。あきらめろぉ〜」
シロ 「嫌でござるぅ〜〜〜」
   
エミ 「私も横島の文珠がないと、どうしようもないワケ。 シロ、おたくぶら下がってる
  だけなら危険は無いから、のんびり異界を眺めてればいいわよ。
  横島、おたくは部屋に戻って休んでなさい。
  シロを早く助けたいなら、文珠出すしかないからね。
  私は、その間に持って帰る荷物をまとめておくから。 いいわね?二人とも。」
   
横島 「へ〜い」
シロ 「嫌でござるぅ〜、先生、なんとかして欲しいでござるぅ〜〜」
  ごねるシロをほっといて、家の中に戻る二人
   
シロ 「先生〜〜、まだでござるか〜〜? 早く助けてください〜〜 ワォ〜〜ン」
エミ 「結構、持って帰りたい物、多いわね。これぐらいにしておくか…
  横島、おたくまだかかりそう?」
横島 「努力はしてるんですけどね…」
   
エミ 「やっぱり文珠が出せるまで、何時間も待つのはつらいわね〜〜
  横島も、この10日間よくやってくれたしね……
  ん〜〜〜〜  ま、いっかっ。
  横島っ! 勘違いするんじゃないわよっ!?」
横島 「えっ? エミさんっ!?」
   
   
  しばらくして…… なぜだか文珠を2個搾り出せた横島…
   
   
エミ 「おたく、いつまでもぼ〜っとしてるんじゃないのっ! 合体するわよっ!」
  しゅわっち!
  いつもと違い、合体した本体がエミになり、肩の部分に顔を出す横島
エミ 「今の文珠で霊力ほとんど使っちゃったのか… 悪かったわね。」
横島 「いえ、帰るためですから… それより、さっきのエミさんの……」
   
エミ 「こ、こらっ! さっきのことは誰にも言うんじゃないわよっ!!
  言ったら、おたくの命、ほんとに無くなるからねっ!!」
横島 「はい〜」
   
  荷物を背負ってシロのところに飛んで行く合体横島エミ
シロ 「えっ? エミさん? 横島先生はっ!?」
横島 「俺は、ここにいるよ。」
  肩の部分から顔を出して話す横島
   
シロ 「えっ? 先生? どういうことでござるか?」
エミ 「話は元の世界に戻ってからにして欲しいワケっ!」
  シロを抱きかかえてロープをたぐっていく合体横島エミ
横島 「ま、なんとか文珠を出すことができたんでね…」
シロ 「なんか、よくわかんないでござるが、助かるんでござるなっ!?」
横島 「そういうこと。」
   
   
  元の世界、現場でシロたちの帰りを待つ令子たち
キヌ 「シロちゃん、大丈夫かしら…」
令子 「異界との時間差は、正確なところはわからな…… わっ!?」
  空間の穴から飛び出してくるシロを抱きかかえた合体横島エミ
   
令子 「エミ、あんた横島クンと合体…」
エミ 「令子っ、話はあとよっ! 合体が解ける前に空間の穴、塞ぐワケっ!」
  合体パワー全開で、あっという間に穴を塞ぐ合体横島エミ
   
エミ 「ふぅ、これで仕事の方も終わったわ。横島、お疲れ様っ!」
  合体を解く二人
   
キヌ 「横島さん、無事だったんですねっ!? わぁ〜〜ん!!」
横島 「ごめん、おキヌちゃん、心配かけちゃって…」
令子 「ふぅ、よかった…
  あれ? エミ、あんたなんて格好してるのっ!? ぷぷっ!(笑)」
   
エミ 「し、しかたないでしょっ!? 異界で見つけた服なんだからっ!」
ピート 「でも、エミさんによく似あってますよっ!」
エミ 「えっ? ほんとっ? ピート、ありがとうっ!」
横島 「ピートッ! てめぇ〜、それは俺が先にエミさんに言ったセリフだぞっ!?」
   
エミ 「ん? 横島、妬いてくれてるのね? なんだか嬉しいワケ。
  異界での出来事は、二人だけの秘密だからねっ! いいわねっ?
  これは、口止め料よっ!」
  そう言いながら、笑顔で横島の頬にキスするエミ
   
令子  「えっ?」
キヌ
シロ
   
エミ 「じゃ、ピート、帰りましょう。 タイガー、荷物を車に積んでっ!
  横島、またねっ!」
  美神事務所の連中を残して、さっさと帰ってしまうエミたち
   
   
タマモ 「ねえ、横島。 私たち、いつになったら帰れるの?」
横島 「俺にもわかんない……」
   
  エミの意外な行動に固まったままの令子、キヌ、シロの3人
  まるで、時間の流れが遅くなった異界にいるように……
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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