in the heat of midnight


  美神の助手で、いつものように除霊の仕事に向う。
 除霊の対象は、どうやらイケイケ系の女らにいいように振り回されて、カード破産に、信用失墜、会社クビ変な病気を移されたりと、女害の羅列で人生をズタボロにされた男の無念の生き霊の一団らしい。『なんか身につまされてやだな・・・』などと云う横島の、美神への視線と愚痴は神通棍で一閃され(つまり殴られて)、やってきました霊の巣窟は一世を風靡したジュリアーノTOKIO跡地。霊が恨みを持って集まるならば、これ以上の適任地はないであったろう。

 霊を呼び出した美神のいつもの啖呵『極楽に〜』であったが、霊の返した開口一番の言葉は、美神では無く後ろに控えた横島への言葉であった。
  『君も仲間になる資格がある』
  『わかっているよ、あの派手な衣装に騙されているんだろう』
  『しかしあんな衣装で注意を引かないと駄目ってことは、きっと昼の太陽の下で化粧を落とした顔を見れば考えも変わるさ』
  『あんな女はどうせ自分の事しか考えていないに決まっているさ。どうせ将来は誰にも相手にされずに、金を抱えて、寂しさにつけこまれて、詐欺にでもあって、無一文で寂しく死んでいくんだから』
  『いいように扱われて、貢がされ、用が無くなったら捨てられるぞ。そんな女に関わっていないで、もっと人としての大切な心を持った、そこにいるちゃんとした着物を来ている大和撫子らしいじゃないか。その女の子と小さくも暖かい家庭をつくるんだ。この派手な女と作った所で、それはきっと冷蔵庫のような家庭だぞ』
  『あんな女は結局は人のこと一応考えてる振りをしてるが、結局は自分の事しか考えていないんだ。覚えがあるだろう』
  『や やっぱりそうすかね』
 と、霊達に横島は美神と見比べて諭されてしまった。思わず夜のネオンの馬鹿野郎と叫んでしまった。

 美神を見る視線が、それまでより結構冷めたような顔で下した横島の結論。
  『結構いい霊達じゃないですか?。俺にも人生のきび教えてくれたし。このバイト続けていくか考えさせてくれたしな〜。だいたい被害をこうむってるったって、夜の盛り場で愚痴が交じってるのが多少問題すけど、結構正しい人生の教訓教えるだけなんでしょう?。参考になったな〜。いや〜、やっぱ被害者の会の言葉は重いな〜。これで新しい被害者が出ないんだから、結構人類の男にとって役に立ってるんじゃないすか。今聞くと、人生誤まんなくて良かったって感謝にくる人もいるって事でしょう』

  『う う う う〜さいわね』
 霊達の台詞の的確さに狼狽したらしい。ジトっとした冷たい横島とオキヌの視線に、何とか自分の正当性をデッチ上げようと画策した。
  『めめめ 迷惑を ここ こうむってる人だって い いるのよ』
 シドロモドロである。あまりの的確な自己評価にゲシュタルト崩壊も近いらしい。
 いつも、まるで犬のように従ってくれていた二人の距離が遠くなって行くのが、寂しがり屋な彼女ににとっては痛いのだ。頼みの綱のオキヌも、霊達に暖かい家庭を自分と作った方がいいと言われてすっかりアチラの味方だ。
  『だれっすか?その依頼って?』
  『そ それは・・』
 人類の、と云おうか、その筋の女らがこの霊達の被害者であるそうだ。

 依頼は、実はそのイケイケ女に、ウオータービジネス関係の女達。彼ら霊の団体が囁く相手は昔の自分達、その彼女らに貢がせようと騙されかけている男共であった。
  『俺に貢がせた金で他の男に貢ぐつもりだったのか』
  『俺が買ってやったブランドバッグはその日の内に質屋に入れただと』
  『他のホステスと俺のことはいい馬鹿な鴨捕まえたとか言っていたそうだな』
  『結婚の約束は、俺に他の女をあてがって婚約不履行と慰謝料を掠め取るつもりだったというのは本当なのか』
  『うぐぐぐ』
 流石の霊の前ではいくら牝狐と言えども隠し事は出来ないので、自分の腹の内を暴露されて狼狽する女たち。確かに被害者予備軍が、被害者の会の先輩に諭されれば考えも変わるであろう。諭された男達は例外なく彼女らに愛想を尽かして二度と花街には来なくなったそうだ。
 おかげで不幸な男を量産しなくてすんだが、それで日銭を稼いでいる女からすればこれ程迷惑な存在はないであろう。それで、美神を雇うのだから、普段どれだけ貢がせているのか想像が恐い。


  『ええい!うるさいわね。と 取り敢えず、契約結んでいる以上は釈迦だって、キリストだって払うのがあたし達GSの仕事よ!!』
 格好付けようと大見得切るが二人の表情は冷たい。
  『美神さんのじゃないすか』
  『仕事じゃなくて、お金もうけなんでしょう』
 横島に続いて、オキヌの突っ込みも厳しい。因業に強欲は無論知っているが、錦の御旗を掲げての自己正当化には厳しい。

  『ぎぎぎ』
 この時点で味方は完全にいないことを悟った。例え時給や首を宣告しても、横島は先程から霊達の洗脳で寝返ってはくれないであろう。二三日すれば目も覚めるだろうから、今回のリベンジはそれまで取っておく事にした。
 取り敢えずサポートは無いが、愚痴を言う以外にあまり能力はなさそうだ。取り敢えず一人で祓える筈と気を取り直す。確かにこの霊達は結果的には良いことをしているとは分かったが、猫の額程の両親の呵責は後杯を傾けて忘れる事にした。
 幸い素早い以外、愚痴を云う程度の能力しか無いようで安いお札で十分だと踏んだ。しかし、それが美神の油断を生んだ。
  『何?!』
 手にしたお札に吸引しようとしていた霊は、その途中で呆気なくお札の呪縛を解いてしまった。それは逆を返せば両者の近接を意味していたのだ。
  『我らは愚痴をいうだけの存在ではない。過去から営々と続く、牝狐に騙され続けた男の怨念を甘く見るな』
  『え?そんな、ちょっとタンマ。聞いてないわよ〜』
 それならば神にでも匹敵するような強さを持っている事になる。被害が被害だけに、大した力は無いと甘く見ていた事を悔いた。
  『今までは使ってはいなかったが、お前には我らの苦しみを味わって貰おう』
 至近距離で何やら呪いの波動放ち『悔い改めよ』と言って虚空に霊達は消えた。
 迫る霊波。これに対して美神は。
  『横島君お願い』
 いつもの奥の手、人間の盾。お前はGS界のフセインか。
 横島の、途中で転調した悲鳴が暗い室内に響くのだった。

 モクモクとした霊波の煙が立ち込める、その中。
  『やっぱりじゃー。あんたって人は・・』
 横島が煙の向こう、自分を盾にした美神に文句を言おうとした・・・・しかし、その美神は自分でやっておきながら驚いた顔をしていた。
  『横 島 くん?』
  『何いってんすか?・・・あ、まさか』
 いつぞやのように豚や蛙にされていないかと手を見るが、どうみても人のソレだ。
多少細いような気はするが・・。

  『横島 さん ですか』
  『オキヌちゃんまで、何いってんだよ』
  『オキヌちゃん、鏡を』
  『はい』
 何故か除霊にはまったく関係ないのに、横島の荷物から手鏡が出てきた。それを・・。
  『息すって』
  『は?!』
  『いいから、大きく息を吸って』
 気概に押され、美神の云う通りにした。確認して、手鏡を見せる。
  『え?おわ!! お お袋・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃ、無い』
 鏡を見ながら、ペタペタと自分の顔を触り、再び彼、いや彼女の黄色い悲鳴が夜の盛り場に響いたのだった。


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