『 私が月までついて行くっ!』

著者:まきしゃ


    美神事務所
横島 「ち〜っす! あれっ? お客様?」
令子 「…………」 ムッス〜〜〜
小早川 「君が横島さんですかっ! 初めまして、小早川ですっ!」
横島 「えっ? もしかして、宇宙飛行士の小早川さんっ!?」
小早川 「ええ、そうです。 今日は横島さんにお願いがあってお伺いしました。」
横島 「えっ? 俺にっ!?」
   
小早川 「はい。 NASAを代表してお願いにまいりました。
  まずは、こちらをご覧下さい。 月から届いた地球へのメッセージです。」
  パソコンの画面にメッセージを再生する小早川
横島 「あっ! 迦具夜姫っ!」
   
  迦具夜姫からのメッセージ…
迦具夜姫 『私は… 月世界の女王 迦具夜――
  以前、月が地球の魔族に侵略されたとき、横島どのたちの救援により
  無事、撃退することができました。
  ところが、最近、魔族の眷属の一部が生き残っていることが判明しました。
  その退治のために、再度、横島どのの救援を要請します。』
   
横島 「えっ? 眷属の一部って、メドーサの…?」
令子 「そっ。 ビッグイーターのことらしいわねっ。」
横島 「メドーサが消滅してるのに、なんで生き残ってるんですか?」
令子 「さあね。 でも、月の魔力は地球の比じゃないわ。
  退治しそびれた個体が生き残ってたとしても不思議じゃないわ。」
   
横島 「あの、それで、俺、どうすればいいんですか…?」
令子 「ん? 月に行くに決まってるでしょ? NASAとも、契約しちゃったしね。」
横島 「NASAと?」
   
小早川 「NASAの月にある観測機器の保守点検は、月神族に委託しているのです。
  今回、横島さんに行って頂かないと、契約を破棄すると言われまして…」
横島 「外部委託っていうやつですか…」
令子 「10億の仕事だから、断る理由は何も無いわっ!」
小早川 「横島さん、よろしくお願いしますっ!」
横島 「は、はい……」
   
  小早川が退出した後…
横島 「おキヌちゃん、10億の仕事なのに、なんで美神さん機嫌悪いのかな?」
キヌ 「迦具夜姫さまのメッセージの中に、美神さんのことが一言も語られてなくて…」
横島 「あっ…」
令子 「ふんっ! 月の連中めっ! よくも、私をコケにしてくれたわねっ!?
  あんたらの思い通りには、させないんだからっ!」
   
   
  その頃、月では…
(おぼろ) 『神無、へび退治の方は、うまくいってる?』
神無 『朧か…。 まあ…な…。』
『これで…?』
  朧の指差す方にいるのは、ビッグイーターに噛まれたために、
  身体の一部が石になってしまっている20人ほどの月警官…
   
神無 『そう言ってくれるな…。 前回と違い、相手が小さすぎて捕捉するのが大変なのだ…。』
『でもね〜、こんなに被害者が出ると、私のヒーリングだけじゃ、追いつかないのよ。』
神無 『わかっているっ!』
『で、血清用のビッグイーターは、生け捕っておいてくれた?』
神無 『ああ。 その箱の中だ。』
   
  箱の中には、ビッグとは名ばかりでハムスターぐらいの大きさしかない
  ビッグイーターが数匹入れられている
『これだけいれば、足りそうね。 被害者がこれ以上増えなければだけど…。
  まあ、あと何日かすれば、地球からの救援者も到着するはずだから、
  そうなれば、きっと解決してるわねっ!』
神無 『なにっ!? 地球の連中を呼んだのかっ!?』
   
『ええ。 あなたも、さんざんぼやいてたじゃない。
  「こんなことになるんだったら、横島の奴にお礼なんか言うんじゃなかったっ!」って。』
神無 『うっ! 独り言を聞かれていたのかっ…
  でも、今度ばかりは、月神族の戦士だけで、かたをつけてみせるっ!』
   
『そうしてもらうつもりよっ!』
神無 『えっ? そう思ってるなら、なぜ地球の連中を呼んだのだっ?』
『今回、呼んだのは、横島さんだけなの。』
神無 『横島…どの…だけ?』
   
『ええ、そうよ。 会うのが楽しみでしょ?』
神無 『楽しみって… それだけのために呼んだのかっ?』
『それだけのためだけど、効果はそれだけじゃないわっ! 周りを見てごらんなさいよっ!』
   
  横島が来るという朧の言葉に反応して、ざわつきだした月警官たち…
  先ほどまで暗かった場の雰囲気が、一転して明るくなっていく…
『ほらっ、みんな、横島さんに会えると知って、士気が高まって来てるわっ!
  神無、あなたも知ってるでしょ? 横島さんは、ここでは、月を救ったヒーローなのよっ?』
神無 『そうだったな…』
   
『だから、早く退治しちゃってねっ! 私、横島さんと、ゆっくりおしゃべりしたいしぃ〜』
神無 『お、朧っ! それが本音かっ!!  (でも…、私もお話してみたいな……)
   
   
   
  翌日 アメリカ行きの飛行機の中…
タマモ 「シロ、見て! シロ、見て! アメリカが見えてきたわよっ!」
シロ 「わ〜い、外国でござる〜! めきしこ湾でござる〜〜!」
キヌ 「シロちゃん、意味わかって言ってるのかな?」
   
横島 「うう… こんなにつまらんフライトは初めてだ…。
  スッチャデスさんが、なんで乗ってないんだぁ〜〜〜〜っ!?」
令子 「あんたねぇ、米軍機での移動に、何を求めてるのよっ!
  それに、アメリカ人女性も同乗してるじゃないっ。」
   
  ず〜〜ん! 女華姫級の女性軍人が一人…  ふしゅるるぅ〜〜
横島 「あああ、俺、VIPなのに、VIPのはずなのにぃ〜〜〜」
   
   
  NASAで月に行く準備をしている令子たち…
横島 「あれ? 美神さん、ずいぶん沢山の装備を持って行くんですね?
  眷属だけなら、そんなにいらないんじゃないっスか?」
令子 「あんた、気楽に言うけどね〜、今回も結構危険なのよっ!?
  小竜姫が、竜神の装具を貸してくれなかったしね〜〜〜。」
   
横島 「えっ!? マジ? それって、美神さんが悪いんですよっ!?
  美神さんに装具を取られるのが心配で、貸してくれなかったに違いないんだっ!
  あああ〜〜、俺たち、小竜姫さまに見捨てられちゃったんだぁ〜〜〜!」
   
令子 「うっさいわねっ! だから、こうして準備してるんじゃないのっ!」
横島 「でも、宇宙服を着て戦うんでしょ? 少しでも穴が開いたらおしまいじゃないっスか〜!
  そんな危険なとこ、俺、行きたくないっスよ〜〜っ!!」
令子 「あんた、さっきまでさんざん朧ちゃんたちに会える〜って喜んでたじゃないのっ!
  もう契約しちゃったから、行くしかないのよっ!」
   
   
  準備も整い、スペースシャトルが打ち上げられて…
タマモ 「美神さんたちがあれに乗ってるなんて、なんか、すごいわね…。」
シロ 「先生たち、大丈夫なんでござるのか…?」
キヌ 「ええ、特に強い魔族がいるわけじゃないし、美神さんと横島さんなら、
  心配いらないわっ。 横島さんだけだったら、別の意味で心配だったけど…」
シロ 「そうでござるな…。」
   
  シャトルの中では…
横島 「うう…、狭いっスね…」
令子 「しょうがないじゃないのっ! 計画外の搭乗だから、元々私たち用のスペースなんて、
  存在しないんだものっ!」
  シャトルの格納庫に、月着陸船ごと積み込まれていて、
  中は令子が積めるだけ積め込んだ武器のせいで、身動きがとれない二人…
   
小早川 「そろそろ、切り離しますが、準備はよろしいですか?」
令子 「ええ、お願いしますわ。」
小早川 「では、お気をつけてっ!」
  シャトルから切り離されて月に向かう二人…
   
横島 「ああ、でも考えてみれば、今、俺たちって、宇宙でたった二人なわけですねっ!
  これって、新婚旅行みたい… ぶっ!?」
  電気ショックを受けてしまった横島…
   
横島 「な、なんなんスか? いまのはっ!?」
令子 「さすがにこの状態じゃあ、あんたを殴るわけにはいかないからね。
  かわりに、服の中に電極をし込んでおいたの。
  変なこと言ったりしたら、今の攻撃を受けることになるからねっ!」
横島 「ひ、ひえ〜〜〜」
   
   
  やがて、月からの通信が着陸船に届く…
『横島さん〜 元気ですか〜?』
横島 「あっ! 朧ちゃんっ! 横島、元気ですっ!」
令子 「お久しぶりねっ!」
『えっ!? 美神…どの?』
令子 「また来たわ。 よろしくねっ!」
   
  神無に向かってひそひそ話す朧…
『神無、どうしよう? 美神どのがついて来ちゃったわよ?』
神無 『どうって、いまさら追い返すわけにもいくまい。
  横島どのの上司なわけだし、丁重にお迎えすればよかろう?』
『そうね、横島さんの彼女は、今回も来てないみたいだし。』
令子 「あんたたち、聞こえてるわよっ!?」 (ピキピキ)
   
『それでは、横島どの、美神どの。 お二人の到着をお待ちしております。
  眷属の退治方法については、到着後に打ち合せしたいと思います。』
令子 「わかったわ。 楽しみにしてるわよっ!」
   
  通信終了後…
令子 「なんか、危機感の無い通信だったわね〜 ほんとに救援が必要だったのかしら?
  横島クン、もしかしたら、あんたを月に閉じ込めるためのワナだったのかもよ?」
横島 「えっ!? それって、俺は一生、月から帰れないってことですかっ!?
  そんなひどいことを、彼女たちがするわけが……
  いや、待てよ…? それはそれで、いい人生を送れる… ぶっ!?」
  電気ショックを受けてしまった横島…
   
   
  月に到着した令子と横島
『長旅、お疲れ様でした。 こちらの地球環境の部屋へどうぞ。』
令子 「ん、ありがと。」
『あら、今回は竜神の装具をお持ちではないのですね?』
令子 「眷属レベルの退治では、貸してくれなくてね。」
   
『それでしたら、月神の装具をお使い下さい。 竜神の装具ほどの力は有りませんが
  防護服を着用しなくても、月での生命維持は可能です。』
令子 「そいつは助かるわっ! あら、竜神の装具にそっくりね?」
『ええ。 それを真似て製作しましたから。』
令子 「小竜姫に、パテント代請求させようかしら。」
   
   
  眷属退治の打ち合せを始める令子たち
迦具夜姫 『お待ちしておりました。 では、早速現状を説明させていただきます。 神無!』
神無 『は…! これが現在問題になっているメドーサの眷属です。』
令子 「あら、またずいぶん小さいのね〜」
   
神無 『これが10日ほど前から急に発生し、多くの月神族が噛まれてしまいました。
  ただ、幸い小さいために毒も弱く、噛まれた部分が石になるだけで済んでいます。
  また、血清によって、約1週間で元に戻ることがわかっています。』
   
令子 「ふ〜ん、で、どのぐらいの数がいて、どのぐらい退治したの?」
神無 『正確な数はわかりませんが、40〜50匹ほど発生した模様で、
  すでに30匹ほど退治しております。』
   
令子 「6割がた終わってるのね。 それなら、あんたたちだけで退治できるんじゃないの?」
神無 『私も、そう考えていますが…』
令子 「じゃあ、なんで横島クンだけをわざわざ呼んだのよっ!?
  あんたたち、なんか別の悪巧みを隠してるんじゃないでしょ〜ねっ!?」
   
  朧があわてて口を挟む
『そんなこと有りませんっ! 横島どのが月警官のヒーローだから呼んだのですっ!』
令子 「えっ?」
横島 「お、俺が、ヒーロー…?」
   
『はい。 私たちも横島どのが直接、眷族退治に役立つとは思っておりません。
  ですが、月警官たちのヒーローである横島どのが来られることで、月警官の士気が
  高まるのです。 ですから、横島どのに居ていただくことに価値があるのですっ!
  それだけ、月警官の被害は深刻なのですっ!』
   
横島 「俺、喜んでいいのかな…?」
令子 「そうなの…。 疑って悪かったわ。 でも、私も月を救ったヒロインよっ!?
  なんで、私を呼ばなかったのよっ!?」
『え〜っと、その〜〜〜、月警官に人気が無いから……』
令子 「うっ!」
   
『月警官から見た美神どのは、魔族と戦ったけれど負けてしまい、
  殺されかけたところを、かろうじて横島どのに助けられた人…と思われてますので…』
令子 「ううう…っ!」
迦具夜姫 『朧っ! 口を慎みなさいっ! 聞きたくない事実を伝える必要は有りませんっ!』
『はっ…!』
   
令子 「ぜぇ〜、ぜぇ〜、ぜぇ〜 (私は横島より評価が下なわけっ!?)」
   
横島 「結局、俺はどうすればいいわけ…?」
『これから城内を巡回しますので、各部署で警戒にあたっている月警官たちに
  声をかけて、励ましてあげてください。』
横島 「それだけでいいの? 楽でいいなっ!」
   
   
  城内を巡回しに行く横島たち… まずは、病院から…
横島 「えっ? こんなに大勢の人がっ!?」
神無 『相手が小さいだけに、噛まれずに退治するのが難しいのだ…』
   
  腕が石化している月警官に、話しかける横島
横島 「ねえ、仮面とってよ。 あっ! かわいいっ!
  かわいそうに… こんなになっちゃて… どんな感じかな…?」
  石化した腕に触ってみる横島 ついでに胸もっ… むにゅっ!
月警官 『きゃぁっ!?』
   
神無 『横島どのっ! 部下にセクハラせんでくれっ!』
横島 「い、いや、胸も石化してたら可哀想だな〜って思って…」
   
令子 「あれが、あんたたちのヒーローの実態よ…っ?」
「…………」
   
   
  令子に殴られ、大人しく巡回することにした横島…
  突然、警報が鳴り出す!  ヴーー! ヴーー!
場内放送 『A−4地区にてビッグイーター多数確認っ! 至急応援をっ!』
   
神無 『なにっ! わかった、すぐ行くっ!』
  神無に続いてA−4地区に向かう横島たち
  たどりついてみると、すでに生きているビッグイーターは逃げ去ったあとで、
  退治したビッグイーターの死骸が数匹と、噛まれて傷ついた月警官が数人いるのみ…
   
神無 『くっ! 逃げられたかっ! いったい何匹ぐらいいたのだっ!?』
月警官 『おそらく、40匹以上です…』
神無 『なんだと? まだ、そんなに生き残っていたのかっ!』
   
令子 「なるほど… どうやら、そう簡単にかたのつく話じゃなさそうね…」
『えっ? どういうことですかっ?』
令子 「この死骸を見て気付かない? 最初に見せてもらったやつより一回り小さいわっ!
  おそらく、ここに現れたのは生まれたてのビッグイーターよっ!」
   
『生まれたてですってっ!?』
令子 「たぶんねっ。 メドーサを退治してからずいぶんたつのに、今ごろなんでこれだけ
  大量発生してると思う? 当時逃げたビッグイーターが、いろんなところに卵を
  産み付けて、それがちょうど孵化する時期にあたってるんだわっ!」
   
『そうだとすると、まだどこかに卵があるかもしれないのですかっ?』
令子 「かもね。 それはわかんないけど、とにかく場当たり的に退治してもきりがないわ。
  今回発生したビッグイーターが、また生き残って卵を産んだら、城中
  ビッグイーターだらけになっちゃうわよっ!」
   
『そんなっ! では、どうすればっ!?』
令子 「私にいい考えがあるわっ! 横島クン、持ってきた装備のところに戻るわよっ!」
横島 「え〜? 巡回だけじゃ、ダメなんスかぁ〜?」
令子 「あんた、ヒーローならヒーローらしい働きしなさいよっ!」
   
  月着陸船から、装備を取り出す令子たち
令子 「たしか、持ってきたはず… ん、あったわ。 これを使うわよっ!」
  令子が指差したのは、ダンボール箱に入った御札の束
横島 「これで結界を張るわけですね?」
令子 「そうよっ! そうすれば、隠れているビッグイーターも退治できるし、なにより
  どこにあるのかわからない卵だって、退治できるわよっ!」
   
横島 「でも、どこに貼りますか? この広いお城の中…」
令子 「城中に決まってるじゃないの。 どこにいるのかわかんないんだから。」
横島 「ひえ〜〜」
   
令子 「ま、相手は小物で1枚で効く範囲も広いから、なんとかなるわよ。
  じゃあ、横島クンは城の最下部から頼むわよ。
  私は最上部から、貼っていくからっ!」
横島 「それって、美神さんの方が楽ですよね……」
   
『それでは私たちも二手に別れてお二人をご案内いたしますわっ!
  神無は、美神どのを案内してくれる? 私は、横島どのを案内しますから。』
令子 「ダメっ!」
『えっ?』
令子 「横島クンの道案内をするのは神無よっ! あんたと横島クンを二人にすると、
  雑談ばかりして、仕事になりそうもないからねっ!」
『うっ…! (くそ〜、読まれている…)』
   
   
  二手に分れて、御札を貼りつけて行くことにした両チーム
  令子チームでは…
令子 「それじゃあ始めるわよっ!」
『お願いしますっ!』
  呪文を唱えて御札を貼りつける令子
令子 「よしっ! 次のところに行くわよっ! 急がないと被害者が増える一方だからねっ!」
『そうですねっ! では、こちらへどうぞっ!』
   
令子 (素早く動いて、すごいところを見せつければ、私の評価も高くなるはずよっ!)
(早く終わらせて、横島さんとおしゃべりしたいわっ!)
  それぞれの思惑はともかく、手際良く処理して行く二人…
   
   
  一方、横島チームでは…
横島 「これでよしっと。 じゃあ、次のところに行こう。 あれ? 神無さん?」
神無 『え? あ、はい。 こちらへ…』
  気落ち気味で寡黙になってしまっている神無…
   
横島 「ねっ!ねっ!? 神無さんっ! もっと元気だしてさっ!?
  これが終わったら、二人でお茶にしようよっ!
  悩みがあるなら、僕が相談にのるからさぁっ!?」
神無 『ん…、ありがとう、横島どの… でも、大丈夫だ…』
横島 「そ、そう?」
   
  シャーーッ! 突然二人に襲いかかる数十匹のビッグイーター!
神無 『なにっ!?』
横島 「御札の結界に追い出されるかたちで、ここに出てきたんだっ!
  気をつけろっ! こいつら、気がたっているはずだっ!」
   
  テニスのラケットのような武器で応戦する二人  パコーン! パシッ!
  カプッ!
神無 『うっ!』
  噛まれてしまった神無 横島は気付いていない…
   
横島 「相手が多すぎて、対応しきれないっ! ここは文珠でっ!」
  キーン (浄) バシュッ!!
  襲ってきたビッグイーターは全滅…
   
   
横島 「よしっ、うまくいった。 急ごう、神無さんっ!」
神無 『あ、ああ…』
  次の場所へ、急ぎ足で向かう横島
  噛まれた場所が石化して、横島に追いつけない神無…
   
横島 「ここらへんでいいかな? えっ? 神無さんっ!?」
  少し遅れて横島のところにたどり着いた神無…
神無 『だ、大丈夫だっ! 作業を進めてくれっ!』
横島 「大丈夫って… さっきの襲撃で、どこか噛まれたのかっ!?
  俺の文珠で治してあげるからっ!」
   
神無 『たいしたことはないっ! 早く、作業をっ!』
横島 「やっぱり、噛まれてたんだなっ!?  神無さんっ、無理しないでくれよっ!
  俺の大切な相棒が怪我してるのに、ほっとけないよっ!」
神無 『うっ…』
   
  横島の言葉に押されて、おとなしくうなずく神無…
横島 「どこを噛まれたの? 走れないところを見ると足だと思うけど…」
  恥ずかしそうに横島に背を向け、噛まれたところを指差す神無…
横島 「えっ? あっ? オシリ…?(汗)」
   
  キーン (治) バシュッ!!  神無のオシリに文珠を投げつける横島
  ついでに、触ったりして…   むにゅっ!
神無 『きゃっ!』
横島 「あ、ご、ごめんなさいっ! お、俺の文珠が効果あったのか確かめたくって、つい…
  えっ…?」
   
  いらぬ言い訳をしていた横島が見たものは、神無の目にたまった涙…
神無 『横島どのっ!』
  両手で横島の胸をつかみ額を押し付ける神無… その肩は小刻みに震えている…
   
神無 『前回あれほど反省したというのに、今回も何も出来なかった…
  結局、私は横島どのの足手まといでしかなかった…
  プライドばかりが高くて、それが邪魔をして…
  そんな私には…、月警官の長を勤める資格がないっ!』
   
横島 「そ、そんなことないよっ! 神無さん…」
  やさしく話しかける横島…
横島 「だってさ、月警官の長って、みんなから信頼されてるから成れたんだろっ?
  迦具夜姫さまだって、神無さんを信頼してるから任せてるんだろっ?
  それに、俺が月に来たのも、神無さんを信頼してるからだし。
  1度や2度、思い通りにいかなくたって、めげないでっ。
  俺なんか、思い通りにいくことのほうが少ないぐらいだし。」
   
神無 『ありが…とう…、横島…どの… でも… いまは… 泣か…せ…て…』
  横島の胸で、声もたてずに涙を流し続ける神無
  神無の背中に手をまわし、軽く抱き寄せる横島
   
  そんな状態のまま、どのぐらいの時間が過ぎたのであろうか…?
   
令子 「そろそろ、いいかな〜? お二人さんっ! (ピキピキ)
『たまには誰かに甘えたいわよね〜? 神無っ! (ピキピキ)
  びくぅ〜〜っ!!  あわてて離れる二人っ!
   
横島 「あ、あの… なぜ、ここに…?」
令子 「手元にあった御札を使いきっちゃってね〜
  あんたに渡した分を、少し分けてもらいに来たんだけどね〜〜
  もっと、上の階まで来てると思ってたんだけど、なかなかいなくてね〜
  そおか〜、こういうことだったのね〜〜〜?」
   
横島 「あわわわ…… ぶっ!?」
  令子に殴られ横島ダウン…
神無 『横島どのっ!?』
   
令子 「朧っ! 神無の処置は、あんたに任せるわっ!
  横島っ! まだ、私たちは仕事の途中よっ! のんびりしてる暇は無いわっ!
  残りの御札、全部貼りつけに行くわよっ!」
  横島を引きつれて、御札を貼り付けに戻って行く令子
   
  あとに残された朧と神無…
神無 『朧…、私は……』
『ん? 何も言わなくてもいいわよ、神無。
  あなたのことは、私が一番よく知ってるんだから。
  ま、さっきはさすがに、ちょっと妬けちゃったけどねっ! (クスっ)』
神無 『…すまん』
   
『もう大丈夫? 大丈夫なら、二人のあとを追いかけるわよ?』
神無 『ああ。 任せっきりでは申し訳無いからなっ!』
  令子たちのあとを追いかけて行く二人…
   
   
  無事(?)眷属退治を終えて、迦具夜姫のところに戻ってきた4人…
迦具夜姫 『ありがとうございます。 来ていただいて、ほんとうに助かりました。』
令子 「いえいえ、私も十分な報酬をいただいてますし…
  そうですね…、あとは私の偉大さを、月警官に語りついでいただければいいですわっ!」
迦具夜姫 『おほほほっ! わかりましたわっ!』
横島 「ずいぶん、ずうずうしい要求っスね…」
   
迦具夜姫 『ところで、地球にはいつお戻りになられるのですか?
  できれば、いろいろおもてなしをさせていただきたいのですが…』
令子 「それは、ありがたいですわっ!
  シャトルに戻るまで、まだ丸1日余裕がありますから。」
   
  もてなしの準備をする月神族たち
  そんな中、横島のところに寄ってくる朧と神無…
『横島さん、私に地球のお話聞かせてほしいんですけどっ!』
神無 『横島どの……』
横島 「ちょ、ちょっと待ってね? 美神さんに確認しないと、俺、殺されちゃうから…」
   
  横島たちの様子を見ていた令子が声をかける
令子 「横島クン、いいわよ? みなさんとお話ししてきても。
  あんたは、ここではヒーローなんだから。
  でも、地球の恥になるようなことだけは、してほしくないの。
  だから、こっちに来て、手を出してくれる?」
   
横島 「えっ? なんですか?」
  令子に言われるままに、手を出す横島
  カプ、カプッ!
   
令子 「これで、悪さは出来ないわねっ!」
横島 「ひ、ひえ〜〜〜〜?」
  令子の持ってきた血清用のビッグイーターに噛まれて、両手が石化してしまった横島…
   
神無 『横島どの、私が薬を塗りますっ!』
『神無っ! 今度は私に譲りなさいよっ! 私ならヒーリングが出来るんだからっ!』
   
令子 「さてと、前回は気を失ってたから何も持って帰れなかったけど、
  今回はいろいろ持って帰るわよ〜〜〜っ! まずは、月の石を1トンねっ!」
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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