ひのめちゃんのおさんぽ

著者:トンプソン


 シロちゃんは、かわいそうに夏風邪を引いています。そんなことはどうでもいいのですが。
 今日、事務所でひのめちゃんを預かっています。
 「寝顔はホント、天使だね、タマモちゃん」
 「こればっかは同意見よ、オキヌちゃん」
 預かってから数時間ず〜っと御昼ねしっぱなし。
 あ〜見ている方まで眠くなっちゃったよぉ。
 「ふあぁああ!そろそろひのめのミルクかな?あれっ?」
 おやおや?哺乳ビンを持って揺り篭を覗きますが、赤ちゃんはいません。
 「ひのめ〜、でてらっしゃい?」
 おかしいですね。近くにもあかちゃんのいる気配がありません。
 「人工幽霊1号!!」
 《ZZZZ、ZZZZ・・・・》
 人工幽霊1号君もねむっちゃったようです。
 「1号!」
 美神さんは大声を出しました。
 《はっ、何で御座いましょうか、オーナー美神》
 「ひのめ、どこにいるか判らない??」
 《探しています・・。はっ!わたしのおうちにはいないです》
 「ひ、ひのめがいないわー」
 なんとも大きな声で驚いています。その声でオキヌちゃん、タマモちゃんも起きてしまいました。
 そこで、タマモちゃんはいそいで、屋根裏にかけ上がりました。
 「ど、どこにいるの?」
 外をみまわすんだけど、ひのめちゃんの姿は見当たりません。
 窓の外では鈴女ちゃんが、せっせと、藁を集めて巣作りをしています。
 「鈴女!あんたひのめちゃん見なかった?」
 鈴女ちゃんは、
 「ひのめちゃ〜ん?わたしぃ、赤ん坊には興味ないもーん」
 おやおや。なんとも無責任な発言でしょうか。
 「シロちゃん、起きて」
 「なんで御座るか?オキヌ殿、ひのめ殿がいないで御座るか?でも拙者、風邪ひいちゃって鼻が利かないでござるよぉ」
 あらあら。
 そこで、美神さんは知り合いのワンちゃん、マーロウ君に来てもらいました。
 『事はわかったが、そのひのめちゃんの匂いを教えてほしいのだが』
 そうです。マーロウはひのめちゃんの匂いをしらないのです。
 「えっと、ひのめちゃんのお洋服は・・ないですよ?ひのめちゃんの匂いがあるのは・・こんな物しか」
 オキヌちゃんはごみばこから、白い布を出しました。
 『なんだ、こりゃ?クン』
 マーロウ君が匂いを一嗅ぎ。
 『くっ、くーーん』
 おや?倒れちゃいました。
 「オキヌちゃん、何を嗅がせたの?」
 「・・紙オムツです」
 それじゃあマーロウ君が気絶しちゃうのもしょうないですね。
 「ど、どうしよう!」
 美神令子さんは何時になく慌てています、とそこに何かが飛んできました。鈴女ちゃんです。
 「美神さ〜ん、ひのめちゃんをみつけたよ〜」
 どこにいるのと、み〜んな、美神令子さん、オキヌちゃん、シロちゃん、そして風邪の体を押してシロちゃんも外に出ました。
 「ほら、あそこ」
 どういう事でしょうか。鈴女ちゃんが指をさすのは、道路の向う側にいます。幸い、火炎術の封印のきぐるみをきているようです。
 「どうやっていったの!」
 美神令子さんが驚くのも無理はありません。広い広い道路に面した建物だからです。
 「まかせて、私がつれてくる!」
 タマモちゃんが元気良くいいました。
 だって、空を飛べるのですから。
 「おねがいね」
 オキヌちゃんのお願いです。
 タマモちゃんは、普通の自動車があたらない程度にしか、宙を飛ばなかったのです。
 「これで十分よ!」
 はたしてそうでしょうか。ほらあっちから大きなトラックが走って来ましたよ?
 「きゃっ」
 なんとタマモちゃんのスカートがトラックの荷台に引っかかってしまいました。
 「た、たすけてぇー」
 可哀想ですが、今はひのめちゃんが優先です。タマモちゃんはずーっと向うにいってしまいました。
 美神令子さん、オキヌちゃん、そして風邪の体を押してシロちゃんが、遠い陸橋を渡って向う側の歩道に向かいます。
 なぜって、とーっても車の量が多いからです。
 足が速いのはシロちゃんです。
 「あっ、いたで御座る!」
 とびかかるように赤ちゃんに抱き着こうとします。しかし、と〜っても良い匂いが漂ってきました。
 「こ、この匂いは、鰻でござる」
 きっと風邪の所為でしょう。匂いを辿っていっちゃいました。
 「シロ、ひのめちゃんー!」
 息を切らしてひのめちゃんがいた場所に来ましたが、
 「いないわ!ひ、ひのめー?」
 ひのめちゃんは、よちよち歩きにハイハイでどこにいっちゃたのでしょうか?
 夏はと〜っても暑いです。だから涼しい場所に向かったのです。
 大きなデパートでした。
 「まーー」
 お腹がすいちゃったのでしょうか?ちょっと泣いています。
 「あれー?赤ちゃんだぁ」
 ひのめちゃんよりかは大きい小さな女の子がやってきました。おかあさんの御買物の邪魔にならないように良い子にして待っていたのでしょうか。
 「どうしたの?あかちゃん」
 「えーーん、えーーん」
 おやおや、泣き始めちゃいましたね。
 「ね、なきやんで、なきやんで」
 ひのめちゃんを抱いて泣き止んでもらおうとしますが、どうしようもありません。その様子を見ていたデパートのお姉さんが来ました。
 「どうしたの?妹さんがないちゃっているけど?」
 「ううん。妹じゃないわ。さっき会ったばっかりなの、この子迷子なの」
 デパートのお姉さんは驚いてしまいました。
 「じゃあこの子は迷子なのね。じゃあお母さんを探さないと」
 デパートのお姉さんはひのめちゃんを抱きかかえました。
 「あれ?なんだろう。このへんな紙は?」
 何もわからないのです。だからはがしてしまいました。
 「ふえぇーーん」
 やっぱりちょびっと火をだしてしまいました。
 「きゃっ!」
 驚いてしまったのですが、デパートのお姉さんもプロです。ひのめちゃんを決して落しません。
 「み、水、水!」
 外に向かいました。幸い近くにオキヌちゃんが来ています。
 「あっ!ひのめちゃん・・ってお姉さんも危ないは」
 あわててバタバタとデパートのお姉さんの火を消していきます。
 「な、なんなの?あの子」
 「すいません。えっとひのめちゃんは?」
 おや?何処にいちゃったの?ひのめちゃん。
 近くでは工事をやっている場所がありました。
 ひのめちゃんは賑やかなところが大好きなのでしょうか?
 工事の場所はとっても危ないんだよ。ですが、そんな事赤ん坊には判りません。
 「あーー!」
 な、なんと言う事でしょう。鉄骨が落ちてきているのです!
 恐ろしくなって、逃げようとしますが、早く歩けません。
 「きゃぁーー!」
 目を瞑ると、急に影になりました。
 「大丈夫・ですか・?赤ちゃん」
 それから、火が出るのですが、ひのめちゃんを助けてくれた女の火とは火はへっちゃらです。
 「ドクターカオス・Ms ひのめ・です・これは?」
 そう機械の女の子、それはマリアさんだったのです。
 美神令子さんは、全く別の場所で、
 「ひのめぇ〜御願いでてきてぇ〜」
 大きな声で叫んでいました。
 その頃、事務所では、
 「あら?ひのめを連れて散歩でも出ているのかなぁ」
 マーロウが気絶しているのが気になるところです。
 美神令子さんのお母さん、美神美智恵さんが来ているのです。
 そこに電話が鳴りました。
 『はい、美神GS事務所です』
 『あーもしもし、カオスじゃ。済まんが隊長殿の電話番号をおしえてほしいのじゃが』
 これは丁度よかったです。何故って美神美智恵さんが電話に出ているからです。
 『なんじゃと?今なワシの手元にひのめちゃんがいるのじゃが、どういう事かな?まぁちかくの工事現場だ、はよう引取りに・・』
 しかし、最後の方は美智恵さんの耳に入ったのでしょうか?
 「どういう事なの、令子!」
 運の悪い日はあります。なんと美神令子さんが事務所に帰ってきてしまいました。
 「げっ、ママ!」
 「れいこぉーーーー」
 もう大人の令子さんなのに、今日ばかりはお母さんからこってり絞られました。
 次の日、
 「こんちゃーす」
 おやおや、奴隷というかしもべというでしょうか。横島君がやってきました。
 「こんにちわ。でも今日は御仕事キャンセルですよ」
 「どうして?」
 オキヌちゃんが答えにこまってしまうのも当然です。
 ベットにうつぶせになって、お尻を氷で冷やしている美神令子さんがいたそうです。

FIN


※この作品は、トンプソンさんによる C-WWW への投稿作品です。


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