『 男達の番か… 』

著者:まきしゃ


  エミ 「考えてみりゃ、令子は赤字出したんだもの! ひきわけよ、ひきわけっ!!
  捨てゼリフまちがえちゃったわ!!」
  がーっ! 自分の呪いと横島の煩悩が合体した霊体に追いかけられているエミ。
  時は3巻、54ページ。 横島の時給が255円に値上げされたときのこと…
   
ジョー 「おっ、おいっ! ヘンリー! ボビー! いったい、どうしたんだっ!?」
ヘンリー 「うっ… ジョーか…」
  地獄組組長の屋敷の偵察を終えて、バイクで呪いの現場に戻ってきたジョー
  そこには破壊されたエミの車と傷ついて倒れているヘンリー、ボビーの二人だけが…
   
ジョー 「ヘンリー! しっかりしろっ! 傷は浅いぞっ!」
ヘンリー 「お、俺は大丈夫だ… それより、エミ所長が危ない…」
ジョー 「えっ!? エミ所長がっ!?」
ヘンリー 「ああ… 呪いが破られて、霊体に追いかけられている…
  おまえのバイクで、助けに行ってやってくれ… ぐふっ!」
   
ジョー 「わ、わかったっ! どっちの方角だっ!?」
  ヘンリーの指をさした方を向いてみると…
  バキバキバキ〜ッ! 公園の木々が次々に倒れていたりする。
  どうやらエミは、木立の間を逃げまわっているらしい…
ジョー 「あ…、あれか…?」
ヘンリー 「そうだ…」
ジョー 「なむさんっ!」
  ブロロロロンッ! 腹をくくって、エミの所にバイクを飛ばすジョー!
   
  ぐがーっ!! エミをいつまでも追いかけて行く呪いの霊体!
エミ 「ぜぇ〜 ぜぇ〜… このままじゃ、まずいっ! 追いつかれる前に、なんとかしなきゃっ!」
ジョー 「エミ所長、助けに来ましたっ! バイクの後ろにっ!!」
エミ 「ジョーっ!!」
   
  ブロロロロンッ! 夜の街中をタンデムで霊体から逃げる二人…
  ぐもも〜〜〜ん! 猛スピードで追いかけてくる霊体!
  それでも、少しずつ離されて行くようだ…
ジョー 「所長、どこに逃げますかっ!?」
エミ 「そおね… 歓楽街っ、歓楽街がいいわっ!」
ジョー 「えっ!? いいんですか…?」
  ラブホに身を隠すのかと思い、よこしまな期待をするジョー…
   
エミ 「とにかく、3分っ! 3分間が必要なのよっ!!」
ジョー 「えっ…!? たったの、3分じゃ…」
エミ 「おたく、何考えてるワケっ!? 霊体撃滅波を使うために必要な時間を稼ぐのよっ!」
ジョー 「そっ、そうですよね…」
  かなり、がっかりなジョー…
   
ジョー 「で、でも、なぜ歓楽街なんですか?」
エミ 「追ってきてるのは、バカでスケベな男の煩悩よっ!?
  エロい看板が沢山あるところに行けば、霊体はその看板に気を取られて、
  私たちを追いかけるスピードが落ちるはずなワケっ!」
ジョー 「は、はあ…」
   
  ブロロロロンッ!
  スケベな男たちの群がる歓楽街の中を駆け抜けて行くジョーたちのバイク!
  エミの予想どおり、横島化した呪いの霊体は、エロい看板に気を取られてスピードが落ちて行く…
  う〜む… 男のサガか…
   
エミ 「よしっ! うまくいってるわっ! これなら時間を稼げそうねっ!
  それじゃあ、ヘンリーたちのところへ戻るわよっ!
  ジョー、おたく、無線を持っていたわねっ!?」
   
  ジョーの無線を使って、へろへろのヘンリーとボビーに指示をするエミ
エミ 「車の中に結界ネットがあるワケっ! それを霊体にかぶせれば、数十秒はもつわっ!
  私たちが戻るまえに、準備しとくのよっ!?」
   
ジョー 「所長…、3分以上離せば結界ネットは必要じゃないんでは…?」
エミ 「3分踊ったあとに、霊体が近くにいないと意味がないワケっ!
  数十秒は、それで押さえ付けておかないとまずいワケっ! 期待してるわよっ!」
ジョー 「は、はい…」
   
  キキキキ〜〜〜〜ッ! ヘンリーたちの元に戻ってきたジョーとエミ
エミ 「手はずどおりにやるのよっ! いいわね、おたくたちっ!!」
  それだけを言うと、すぐに踊りだしたエミ
   
  どんどん どこどこ どんどこどこ…
  えこえ〜こ、あざら〜く えこえ〜こ、ざめら〜く…
   
  バイクで引き離された霊体は、まだ三人の視野には入っていない…
  ごくん… 生唾を飲み込むジョー
ジョー 「いよいよだな…」
ボビー 「失敗は許されないぞ…」
ヘンリー 「われわれは、ずっとチームだ… 何があっても…だ…」
   
  ぐも〜〜ん  ぐも〜〜〜ん  ぐももぉ〜〜ん!!
  エミを目掛けて駆け寄ってくる呪いの霊体っ!!
   
   
ジョー 「うぎゃぁ〜〜〜〜っ!!」
  ガバァッ!
ジョー 「えっ?」
  自分の叫び声で、目を覚ましてしまったジョー…  
  し〜ん… そこは狭い一室の中、まだ朝日は昇っていない…
   
ジョー 「ふう… またあのときの夢を見ちまったのか…」
ヘンリー 「ん… あのときの夢…か…」
ジョー 「あっ、ヘンリー… すまない、起こしちまったみたいだな…」
ヘンリー 「気にするな… 我々はチームだ… 何があってもな…
  もう、忘れろ… 忘れればいいのさ…」
ジョー 「そうだな… それが出来ればいいんだがな… おやすみ…」
   
  びっしょりとかいた冷や汗をぬぐったあと、ふたたび横になるジョー…
  ここは、とある山奥の工事現場のプレハブ小屋。
  時は流れて、シロタマが美神事務所に居候しはじめてから間も無い頃のこと。
  あの事件以来、エミの事務所を退職したヘンリー、ジョー、ボビーの三人は、
  傷のリハビリを終えたあと、工事現場の作業員として再就職をしたばかりである…
   
  ちゅんちゅんちゅん… 
  やがて朝日も昇り、三人も目を覚まして身支度を整え始めていたとき…
  ドギャンッ! 一人の大男が三人のいる部屋のドアを乱暴に開けて中に入ってくる。
   
大男 「貴様らかっ! 昨夜、叫び声をあげていた、バカどもはっ!」
  大声で怒鳴り散らす大男!
  ジロッ! その男を一瞥しただけで、無視してしまう三人…
   
大男 「貴様ら、ここをどこだと思っていやがるんだっ!?
  呪われた山として恐れられている作業現場なんだぞっ!?
  だからこそ、俺様みたいな、ガタイもでかく、霊能もある有能な男だけが選ばれてくるんだっ!
  それを、貴様らは、なんだ? おびえたような、情けない叫び声をあげやがってっ!
  俺様の安眠を妨害するような、へなちょこな奴なんぞ、荷物をまとめて里に帰れっ!」
  怒鳴りつづけるその男を、相変わらず無視し続けている三人…
   
「ふっふっふ… 俺様を無視するとは、いい度胸をしているぜっ!
  だが、その考えが間違っていたことを、すぐにわからせてやるっ!
  俺様の名は、蛮・玄人だっ! よく覚えておけっ!」
  ズゴゴゴゴォ〜〜〜! 凄まじい霊波を発して三人を威圧する蛮・玄人!
   
  スッ! スッ! スッ!
  バキッ! ドゲンッ! グシャ!!
  三人のチームワークのとれた早業に、あっさり倒されてしまった蛮・玄人…
   
ジョー 「ふん… 口数が多いだけのバカは、相手になんないぜ…」
ヘンリー 「ふぁ〜〜 ところで、今日の朝飯のおかずはなんだ?」
ボビー 「さあ? こんな山中だし、あまり期待しないほうがいいぜ。」
  ぞろぞろぞろ… 倒れている蛮を置き去りにして食堂に向かう三人…
   
「ま、待て… お、俺の出番はこれだけか…?」
  はい、そうです。
   
   
  朝食を終えて、作業現場に集合した作業者たち。 現場監督による朝礼がはじまる。
現場監督 「おめらも、ここに来る前に話を聞いてると思うだが、ここは呪われた山だぁ〜
  長いこと、妖怪のすみかになっていて、先日、ようやっと退治されただよ。
  だども、そのとき妖怪がさんざん暴れまわったもんだで、山が荒れ果ててだな、
  山のあちこちで、いつ山崩れが起きてもおかしくない状態になってるだ。
  そこで、おらたちが、山の修復をすることになっただよ。
  そんな山だで、そういった呪いや妖怪に慣れてる作業者を集めたんだぁ〜」
   
  作業者同士が顔を見合わせてみると、たしかにクセのありそうな男たちばかりであった。
   
現場監督 「もちろん、妖怪と戦うわけではねぇだが、なにが起こるかわからん場所だぁ〜
  ひとりひとり、霊感をはたらかせて、じゅうぶん安全に気ィ使ってほしいだよ。
  でだ、作業を始めるまえに、地元の神主さまにお祓いをしてもらうことにしただ。
  ほいでは、神主さま、よろしくおねげえしますだ。」
氷室 「はい、わかりました。」
   
  現場監督に呼ばれてお祓いを始めた神主は、おキヌちゃんの義父であり、
  退治された妖怪とは死津喪比女で、荒れ果てた山とはオロチ岳のことであった。
   
氷室 「山の神よ、この者たちを守りたまえっ!」
  パサ〜 パサ〜 作業者一人一人に、安全祈願のお祓いをする氷室神主。
氷室 「ん…?」
  ジョー、ヘンリー、ボビーの三人の所に来たとき、少し怪訝な顔をする神主。
   
ジョー 「神主さま、なにか…?」
氷室 「あっ、いや、たいしたことではないんですが…
  少し気になる邪気が感じられましてな…
  たぶん、大丈夫だとは思うんですが、もし今日働いてみて、なにかあるようでしたら、
  今夜、私の神社に立ち寄ってみてください。 そのとき詳しく見て差し上げますので。」
ジョー 「はい…」
  気になる言葉を残して立ち去った神主…
   
  お祓いもすみ、山崩れ防止のための作業を始める工事現場。
  はじめは何事もなく、順調に仕事はすすんでいたのだが…
   
  ゴロゴロリンッ!
ジョー 「ヘンリー、危ないっ!!」
ヘンリー 「わわっ!?」
  まるでヘンリーを狙ったようなころがりかたをした落石から、かろうじて身をかわしたヘンリー
  ぞぉ〜〜〜っ!!
  その後も、三人だけを狙ったような奇妙な自然現象が次々と起こり…
  さすがに気味が悪くなり、今日の作業をやめて引き上げることにした三人…
   
  その夜 氷室神社を訪れた三人…
氷室 「そうでしたか… やはり、邪気の原因を探らねばなりませんな…
  そのままでは、あなたがたの命にかかわる問題になりかねません…
  早苗、頼んだぞ?」
   
早苗 「んだ。 父っちゃ、まかせてくんろ。
  たすかにわたすもこの人たちからは、なんかしんないけど邪気を感じるだべさ。
  山の神様を呼んで、なんとかしてもらうだよ。」
  そういって、念波を使って山の神様を呼び出す早苗。
   
早苗 『山の神様、聞こえるだべか? わたすは早苗。 ちょっくら相談があるんだども…』
山の神様 『ん? 早苗ちゃんスか。 どうしたんスか? こんな夜中に…』
早苗 『なんか邪気を感じる人が、いま神社に来てるんだべさ。
  だもんで、神様にその人たちのことを見てもらいたいんだども…』
山の神様 『う〜ん… 今ちょうど修行の真っ最中なんスよ… 明日にしてもらえないっスか…?』
早苗 『明日だべか…?』
   
  ちょっと考えてから、ふたたび念波を送る早苗…
早苗 『いま来ている人は、ガタイのいい男の人が三人なんだども…』
山の神様 『えっ!? 早苗ちゃん、それを先に言えばいいんスよっ! 今すぐ行くっスよぉ〜〜っ!』
   
  ビュォンッ! あっというまに神社にやってきた元ワンゲルの山の神様…
  それをちょっと白い目で見ている早苗…
   
山の神様 『ふむ、この人たちのことっスね…?』
ヘンリー 「よ…、よろしくお願いします…」
  ペタペタペタ… なにやら、三人を撫でまわし始めた山の神様…
  邪気の調査なのか、趣味なのかは誰にもわからないんだけど…
   
山の神様 『うん、だいたいのことはわかったっスよ。
  この人たちの体内には、呪いの霊体のカスがこびりついているんス。
  それが邪気の原因なんスよ。』
氷室 「しかし、神様。 邪気の原因が、呪いの霊体のカスだけならば、
  落石とかに襲われる原因になるとは思えないのですが…」
   
山の神様 『たしかに、普通はそうっス。 でも、オロチ岳は普通の山とは違うんスよ…
  死津喪比女は退治したけど、彼女が数百年も住みついていた山なもんスから、
  彼女の邪気にあてられて、山全体に邪気が満ちているんス。
  どうやら、山の邪気が異質な呪いの邪気に反応して攻撃してるみたいなんスよ…』
   
早苗 「だども、山の邪気を祓うのが、山の神様の仕事でねえだべか?」
山の神様 『うっ… そ、そうなんスけどね… ま、まだ、力が足りなくて…』
早苗 「頼りになんねえ神様だなっ!」
山の神様 『うっ…!』 (グサグサッ!)
   
氷室 「これ、早苗っ。 神様に失礼だぞっ。
  なんにせよ、神様がいなければ、彼ら三人の邪気の原因はわからなかったんだから。」
早苗 「だども、美神さんに聞いても、すぐにわかったと思うだよ?」
氷室 「ふむ… それもそうだな…」
山の神様 『うぐっ…!』
   
早苗 「ま、いいだべさ。 で、神様、どうすれば三人の邪気を祓えるだべか?」
山の神様 『ぜぇ〜ぜぇ〜ぜぇ〜 はふぅ〜〜 そ、そうっスね…
  一番簡単なのが、呪いをかけた人に祓ってもらう方法っス。』
早苗 「なんだ、そんな方法だべか。 その程度なら、わたすにだって思いつくだべさ。」
山の神様 『うう…』
   
早苗 「おめさんら、自分に呪いをかけた人に祓ってもらえるだべか?
  呪った人に呪いを解いてもらうだなんて、難しいことだと思うんだけんど…
  もしムリなら、わたすが美神さんに頼んでみるだべよ。 お金かかるかもしんねぇけど…」
ヘンリー 「た、たぶん、大丈夫だとは思います…
  エミ所長に聞いてみないとわかりませんが…」
   
早苗 「えっ!? エミ所長って、小笠原エミさんのことだべかっ!?」
ヘンリー 「ええ、そうです。 我々三人はエミ所長の助手として働いていたのです。
  我々の邪気の原因といわれている呪いの霊体のカスも、
  たぶんエミ所長の呪いが破られたときに襲われた霊体だと思いますので…」
   
早苗 「そうだったんだかっ! おめら、すげえんだなぁ〜!
  あんな、超一流の人のところで働いていただなんてっ!
  そすたら、エミさんをここさ呼べば、おめらの問題も解決するだべなっ!
  きゃぁ〜! エミさんに会えるだなんて、わたす、すっごくうれしいだよっ!」
   
  男三人のことや、山の神様のことなんか、どうでもよくて、
  エミに会えることでご機嫌になっている早苗。 まあ、そんなもんかな…
   
   
  ブロロロロンッ! 翌日の夕暮れ時、一人、バイクでオロチ村に向かうエミ…
エミ 「…ったく、あいつら、こんな田舎で働いてただなんて…
  もうちょっと近くで働いててくれれば、移動に苦労しなくてもすんだワケ!
  お金だって、労災扱いだから、とれやしないっ!」
   
  ぶつくさ文句をいいながら、バイクを操るエミ
エミ 「ま、おキヌちゃんの故郷を見に行けるってのが、唯一の救いだけどね。
  でも、おキヌちゃんがいるわけでもないしなぁ〜」
   
  やがて、落石注意の山道に…
  ボォ〜〜 そこに現れた一人の霊体…
エミ 「えっ!? なにっ!? おキヌちゃんの霊体っ!?」
   
  キキキキィ〜〜〜ッ! 急ブレーキをかけてバイクを止めるエミっ!
  エミレベルの霊能者でないと見逃してしまいそうなかすかな霊体だったけど、
  それはたしかにおキヌちゃんの姿で、なぜかとても心配そうな表情をしていて…
   
エミ 「この霊体… これって、おキヌちゃんの残留思念なワケ…?」
  すぅ〜〜 エミが止まったのを見届けて、にっこり微笑みながら消えて行く霊体
   
エミ 「ふ〜ん… ここって、おキヌちゃんにとって何か特別な場所なワケね…?
  まあ、300年もここにいたんだから、そういう場所があっても不思議ではないけど…」
   
  ふたたび、バイクを発進させようとするエミ
  でも、進路にはいくつかの落石がころがっていて…
エミ 「なに、これ。 危ないわね〜
  そ〜いえば、横島も幽霊のおキヌちゃんに、岩を落とされて殺されそうになったとか
  言ってたわね〜 それの名残なワケ?」
   
  そう言いながら、落石をよけて通りすぎていってしまったエミ…
  いえ…、その…、そ〜じゃなくて…
  おキヌちゃんの残留思念が現れなかったら、エミさん、事故ってたはずなんスけど…
   
  てなわけで、無事氷室神社に到着したエミ
早苗 「エミさん、はじめましてっ! わたすが早苗ですっ!」
エミ 「あなたが早苗ちゃんか〜 よろしくねっ!」
   
  早苗に案内されて、ジョーたちのところに行くエミ
ヘンリー 「エミ所長っ! ごぶさたしておりますっ!」
エミ 「おたくら、とりあえず元気になったみたいね。 でも、なんでこんな仕事を選んだワケ?
  もう、呪いも悪霊もこりごりだからってことで、やめたんじゃなかったワケ?」
ヘンリー 「そ、その… 他の仕事より給料が良かったもんですから…」
   
エミ 「そうかもしんないけどね〜… でも、こんなとこに再就職しなければ、わざわざ邪気を祓わなくても
  すんだワケ。 そおね…、今からでも遅くないわ。 おたくら、他の仕事に転職すれば?」
ヘンリー 「そ、そういわれても… その… 邪気は祓ってもらいたいですし…
  それに、あの霊体に襲われたのは、エミ所長を守るためでしたし…」
   
エミ 「そうだけど、おたくらにもっと力があれば、楽に倒せたワケ。
  結界ネットから霊体がはみだして、おたくらが襲われたのは、おたくらの責任なワケ。」
ヘンリー 「そ、そうですが… あ、相手があれでは…」
 
エミ 「ふん、おたくらに期待するほうが間違ってたっていいたいワケ?
  ま、ここで仕事したいのならしかたないわね。 さっさと準備して、カスを取り除いてあげるわ。」
ヘンリー 「エミ所長、よろしくお願いしますっ!」
   
  男三人を神社の床に描いた魔法陣の中に入れるエミ
エミ 「早苗ちゃん、おたくにも手伝ってもらいたいワケ。」
早苗 「はいっ。 どうすればいいだべかっ?」
エミ 「いまからあたしが呪文を唱えるんだけど、そうすると三人の身体の中にこびりついた
  呪いの霊体のカスが口の中から出てくるワケ。
  それをこの結界ネットでとらえてもらいたいワケ。
  しょせんはカスだから、取り逃がしてもたいしたことないんだけどね。」
   
早苗 「こ、これだべか…? なんだか、昆虫採集するみたいだけんど…?」
エミ 「道具って、似たような使い方をするなら、似たような形になるワケっ。
  さっ、そんなこと気にしないで、はじめるわよっ!」
早苗 「ん、んだっ!」
   
  どんどこどこどん えこえ〜こ、あざら〜く
エミ 「呪いのカスよっ! 男たちの身体の中から出てきなさいっ!!」
男三人 「うげぇっ!?」  「げぼっ!!」  「ぐべっ!?」
  ぶぎゃう!! ぬちょお〜  三人の口から流れ出る呪いの霊体…
   
早苗 「ううっ… 気味悪いだよ…」
エミ 「早苗ちゃんっ! カスが逃げないうちに捕まえるワケっ!」
   
  エミに指示されて、いやいやながらに霊体をネットで捕獲する早苗…
  三人ぶんの霊体のカスをネットの中に取り込んだあと、ネットの中で合体する霊体…
  うにょにょにょ… やがて、それは一人の男の姿に変形したのだが…
   
早苗 「こっ、この、どスケベやろ〜〜〜っ!!」
  バキャ――ッ!!  シュボォ〜〜〜
  早苗の霊力のこもった一撃により、ネット内で消滅してしまった横島化した呪いの霊体…
   
早苗 「はっ!? わ、わたす、つい、反射的に身体が動いて…」
エミ 「ふ〜ん… 早苗ちゃんって、横島がキライなワケね…?
  たしかに、どスケベなのは、間違いないけどね〜」
   
  てなわけで、無事、お仕事終了…
  翌日も仕事があるので、速攻で帰ってしまったエミ…
   
ヘンリー 「神主さま、ありがとうございました。
  おかげで、明日から安全に山の現場に行くことができます。」
氷室 「どうやら、お力になれたようで、なによりです。
  それで、ひとつお願いがあるのですが…」
ヘンリー 「はい、なんでしょうか…?」
   
   
  トゥルルルル… トゥルルルル…
キヌ 「はい、美神除霊事務所です。 あっ、おねえちゃんっ!」
早苗 「おキヌちゃんだべかっ! 今日は、話したいことが、いっぱいあってだなっ!」
キヌ 「今夜、エミさんがそっちに行った、その話でしょ?」
早苗 「それもあるけど、それだけじゃあ無いだあよっ!
  父っちゃのせいで、とんでもないことになったんだぁっ!」
キヌ 「えっ? おとうさんがなにか…?」
   
早苗 「んだっ! 父っちゃのせいで、わたすに助手が三人もついただよっ!」
キヌ 「じょ…助手…?」
早苗 「わたすが地元で除霊の仕事をするときに、わたすの身を守る役目をしてもらおうと、
  父っちゃが、エミさんの助手だった人たちに頼んでしまっただ。
  さっき、事務所宛に写真を添付してメールしたから、見て欲しいだべさっ!」
   
キヌ 「美神さん、早苗おねえちゃんから、メールが届いているそうなんですけど…」
令子 「ん? メール? あっ、ほんとだ。 どれどれ…?」
   
  令子のパソコンを覗きこむ横島たち…
令子 「うっ…」
横島 「こ、こいつらが、早苗ちゃんの助手…?」
   
  早苗から送られてきた画像には、巫女姿でひきつった笑顔の早苗と
  神主姿で微笑んでいるジョー、ボビー、ヘンリーの三人の姿が写っていて…
  ピース…
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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