『 リゾート気分 』

著者:まきしゃ


    美神事務所 土曜のお昼過ぎ…
横島 「…………」 ムッス〜〜〜
シロ 「ねっ、ねっ? せんせっ? 機嫌直して、拙者と遊ぼっ!?」 ひゃん ひゃんっ
   
横島 「……、美神さんも冷てぇよな〜。 俺を残して沖縄出張に行っちゃうなんてさ〜。」
シロ 「でも先生、今日は午前中、追試が有ったんでござろう?」
   
横島 「そうだけどさぁ〜、1日ぐらい仕事ずらしてくれたっていいだろ〜?
  どうせ仕事なんて、昨夜着いたうちに終わらせちまって、あとはリゾート気分で
  遊んでるに違いないんだから…」
シロ 「だ、だから、拙者、先生と一緒にお留守番することにしたんでござるよっ!
  ねっ、ねっ? 拙者と遊ぼっ?」
   
横島 「美神さん、ちゃんと俺用の事務仕事、残してってんだよな〜
  それ終わらせちゃってからじゃないと、遊べないしな〜
  おまえも、掃除とかいろいろ雑用言いつけられてるんだろ?」
シロ 「ま、まぁ、そうでござるが…」
  しぶしぶ働く横島とシロ…
   
  しばらくして…
冥子 「令子ちゃん、令子ちゃん、令子ちゃ〜〜〜ん!!」
横島 「あっ、冥子さん、どうしたんですか?」
冥子 「あれ〜? 令子ちゃんは〜〜?」
シロ 「沖縄に行ってて、帰ってくるのは明日かあさってでござる。」
   
冥子 「令子ちゃん、いないんだぁ〜」
横島 「冥子さん、GSとして一人前になった横島がいますっ!」
冥子 「いないんじゃ、しょうがないわね〜」
横島 「冥子さんを困らせてる悪霊など、この横島が文珠で吹き飛ばしてみせますよっ!」
冥子 「冥子、帰ろうかな〜」
横島 「はっはっは。 それでは、一緒にまいりましょう!」
   
シロ 「せっ、拙者、二人の会話の繋がりがちっともわからないでござるっ!
  拙者の頭が悪いせいでござろうかっ!?」
   
  横島をまったく相手にせずに、シロに話しかける冥子…
冥子 「シロちゃん、おキヌちゃんもいないのぉ〜?」
シロ 「そうでござる。あと、タマモも一緒に沖縄に行ってるでござるよ。」
   
横島 「はっはっは。 ですから、この横島が…」
  あらぬ方角を向いて、涙を流しながらむなしくつぶやく横島…
シロ 「せ、先生? 大丈夫でござるかっ?」
   
冥子 「横島くんかぁ〜 どうしようかなぁ〜」
シロ 「め、冥子どの。とにかく、お話だけでもしてあげて欲しいでござる。」
冥子 「そうね〜、横島くん、聞いてくれる〜?」
横島 「はいっ!」  (パァ〜〜!っと明るくなる横島)
   
冥子 「実は〜、どうやって解決したらいいかわかんないお仕事、引き受けちゃったの〜
  現場には行ってきたけど〜、やっぱりわかんなくて〜、
  それで〜、令子ちゃんに教わろうかな〜と思って来たの〜
  でも〜、令子ちゃんがいないなら〜、帰ろうかな〜と思ってるの〜
  だって〜、横島くんって〜、バカだからわかんないでしょ〜?」
   
横島 「うっ!」
シロ 「た、たしかに、拙者も先生も、考えるのは苦手でござるが…
  で、でも、もしかしたら、わかるかもしれないでござるよっ?
  だから、どんな状況なのか教えて欲しいでござるっ!」
   
冥子 「そおね〜。 場所は〜、スイミングスクールのプールなんだけど〜」
横島 「わかりましたっ! 冥子さん、今すぐ現場を見に行きましょうっ!
  そうすれば、きっと解決策が見つかるはずですっ!」
冥子 「そお〜〜?」
   
シロ 「先生っ! 美神さんに言われてた仕事はどうするんでござるかっ!?」
横島 「そんな仕事は、後回しだっ! 困っている冥子さんを助けるほうが
  よっぽど重要なことだからなっ!
  それにプールだったら冥子ちゃんの水着姿が見れるし… はっ!?」
   
シロ 「せ、先生っ!?」
冥子 「あ〜〜ん、やっぱり言うんじゃなかったわ〜。 冥子、不安〜〜!」
   
   
  イロマンスイミングスクールに到着した三人…
  保護者席からガラス越しにプールの状況を覗いてみると、
  まるで嵐の海のように、水が波立ち、渦をまいている…
  ゴォ〜〜〜〜!! ザップ〜〜ン!
   
冥子 「こんな状況なの〜。 横島くん〜、どうしたらいいと思う〜?」
横島 「ひえ〜〜〜!」
シロ 「と、とにかくプールサイドに行くでござるよっ!ここからでは、なんにも出来ないでござる!」
  (こんなお手伝い、さっさと終わらせるでござるよっ! 先生と遊ぶ時間が減ってしまうのは嫌でござるっ!)
   
横島 「そうだな…。 じゃあ、水着に着替えてプールサイドに集合だ。
  冥子さん、それでいいですね? シロもいいなっ?」
シロ 「わかったでござるっ!」
  更衣室にわかれて行く三人…
   
  プールサイドに集合してみると…
横島 「えっ? なんでっ? 冥子さんっ!?」
冥子 「だって〜、わたし〜、式神使いでしょ〜? 
  式神たちは水に濡れるかもしれないけど〜、私は大丈夫だもの〜」
  と、洋服のままプールサイドに来ている冥子…
   
横島 「そんな〜〜〜!! 俺はいったいなんのために、ここに来たんだぁ〜?」
シロ 「先生……。 拙者、水着姿でござるのに…。」
   
シロ 「それより仕事をするでござるよ? ちょっと様子を見てみるでござる。」
  そういって、波立つ水に霊波刀を突っ込んでみるシロ
  ざっぷ〜〜〜ん! 霊波刀に反応した水が、大波となってシロを襲うっ!
シロ 「わっ!?」
横島 「えっ!?」
冥子 「きゃあっ!」
  そばにいた二人も一緒に波をかぶってしまい、水浸しになってしまった三人…
   
冥子 「あ〜ん、お洋服がびしょびしょ〜〜
  しかたないわね〜  冥子、着替えてくる〜〜」
  と更衣室に引き返す冥子
   
横島 「シロっ! よくやったっ!!」
シロ 「うぅ……」
   
横島 「よしっ。 冥子ちゃんが着替えてくるまでに、大体の見当はつけておこう。
  それで、冥子ちゃんの前で解決して見せればっ…
  『横島くんって、賢いのね〜! 冥子、見なおしちゃった〜!』
  と言いながら、水着姿で俺に抱き付いてきたりして… でへでへ、でへへ…」
   
シロ 「先生っ! だから、どうすればいいんでござるかっ!?」
横島 「あっ、す、すまん。 ちょっと妄想の世界に入っちゃって…
  そうだな…。 大体こんな霊障は、悪さをしている本体をやっつけちゃえば、
  簡単に治まるもんなんだよな。
  シロっ! おまえの鼻で、本体がどのへんにいるのかわかるか?」
   
シロ 「それが、なんか変なんでござるよ…」
横島 「ん? なにが?」
シロ 「拙者も、さっきから本体見つけようと臭いを嗅いでいるんでござるが、
  どこを嗅いでも、似たような霊臭の強さで、特に強いところが無いんでござる…」
   
横島 「じゃあ、どこか外から悪霊が水を操っているってことか?」
シロ 「いえ、そうじゃなくて…
  なんか、プールの水全体が霊体のような感じがするんでござる…」
横島 「げっ! さっき俺、プールの水かぶったとき、少し飲んじゃったぞっ!?」
   
シロ 「それは大丈夫だと思うでござるよ?
  水全体では霊気は強いんでござるが、バケツ一杯でもたいした霊気は無いでござる。
  先生みたいに霊力の強い人なら、全然影響ないでござるよ。」
横島 「そうか、よかった…」
   
冥子 「お待たせ〜〜」
  競泳用の水着に着替えてきた冥子
横島 「おおっ! なんて美しいっ!」
冥子 「………、横島くん、なにかわかった〜〜?」
   
横島 「ええ。 シロに、大波の原因はプールの水全体が1つの霊体になっているからだと
  説明していたところです。 除霊の方法は、これから考えるところなのですが…」
シロ 「せんせぇ〜?」
   
冥子 「へえ〜、横島くんもやっぱりプロね〜。 私もそこまではわかったんだけどぉ〜」
横島 「じゃあ、バサラに吸い込ませるというのはどうですか?」
冥子 「え〜っ? こんなに沢山の水を飲ませるなんて、無理だわ〜〜
  そんなことしたら、バサラちゃん、おなかこわしちゃう〜〜」
   
横島 「ほかの式神は使えないんですか?」
冥子 「霊体がもっとまとまってないと、攻撃しても一部しかやっつけられないの〜
  全員で一斉攻撃すれば、たぶん片付くと思うんだけど……」
横島 「そ、それって、暴走(ぷっつん)のことですよね…」
   
冥子 「サンチラの電撃攻撃は少しは効果が有ったんだけど、半径数mの所までしか
  効かなくて、50mプールの水全部を攻撃するのは一日じゃ無理だわ〜
  そんなことしてたら、やっつけた部分も復元しちゃって、きりがなくなっちゃうの。」
   
横島 「う〜ん、なんかすごくやっかいな仕事ですね〜」
冥子 「うん。(あっさり)  だから令子ちゃんに聞きに行ったんだけど〜。
  やっぱり、横島くんじゃ〜無理かなぁ〜〜」
横島 「うっ…」
   
シロ 「先生っ! 文珠でなんとかなんないんでござるかっ!?」
横島 「そ、そうだな。 よし、やってみようっ!」
  文珠を握り締め、プールサイドに仁王立ちしてなにやら叫ぶ横島…
   
横島 水よ、水よ、荒ぶる水よっ! 汝のあるべき姿に… え〜っと…」
   
シロ 「先生っ!? なにやってるんでござるかっ!?」
横島 「ほら、美神さん、いつもカッコいい呪文を唱えて除霊してるだろ?
  ちょっと、真似してみたくてさ…」
シロ 「そうでござるか…」
冥子 「あ〜ん、横島くんじゃ〜、不安〜〜〜!」
   
横島 「え〜〜い、浄化〜〜〜!!」
  開き直って文珠 (浄) をプールに投げ込む横島   ピカッ〜〜!!
シロ 「先生っ! 効いてるみたいでござるよっ!?」
  文珠の落ちたところから、半径5mぐらいで波が静かに…
   
冥子 「でも〜〜〜、これじゃあサンチラと同じ結果になっちゃうわ〜〜」
  やがて周りの水と混じりあい、文珠の落ちたところも波立ってしまう…
シロ 「で、でも、全体の波立ち具合は、さっきより小さくなってるでござるよ?
  あと数回くりかえせば…」
   
冥子 「そおね〜、文珠を10個ほど、同時に使えばうまくいくかも…」
横島 「そんなに沢山、出せません〜〜〜!!」
冥子 「でも〜〜、同時に使わないと水が混じって、完全には除霊できないわ〜〜」
横島 「う〜〜ん、なんかいい方法考えないと…」
  結局、有効な手段が見つからないまま、むなしく時間だけが過ぎていく…
   
   
  その頃、美神事務所に向けて車を走らせている令子たち
令子 「あ〜、もうっ! ついてないわね〜。 台風が近づいて来るなんてっ!
  せっかく海岸でのんびりしようと思ってたのに。」
タマモ 「ホテルでのんびりしてればよかったんじゃないの?」
   
令子 「嵐の中で? 青い空と海があってこその沖縄よ? ホテルで暴風雨を眺めながらなんて、
  とてもじゃないけど、リゾート気分になんか浸れないわっ!
  それよりおキヌちゃん、まだ繋がんないの?」
キヌ 「ええ…。 さっきから何度も電話してるんですけど、ずっと留守電になってて…」
   
令子 「しょ〜がないわね〜。あの二人のことだから、散歩してるに違いないわっ。
  仕事いいつけといたのに、やってなかったらとっちめてやるっ!」
   
  美神事務所に帰ってきた三人…
令子 「結局、事務所は空のまんまか…
  あいつらには、留守番もまかせられないわね〜〜。」
   
キヌ 「美神さん〜、誰かお客さんが来ていたみたいです〜。
  キッチンに、お客さん用のティーカップが置いてあります〜。」
令子 「お客さん? 誰かしら?」
タマモ 「女の人みたい。 カップに口紅がついてるわ。」
   
令子 「女っ!? (ピクピク)  あのバカ、女性客が来たもんだから、
  ろくに考えもせずに仕事を引き受けたに違いないわっ!
  色香に迷って、ただ同然で引き受けてたら、すぐにやめさせなきゃっ!
  タマモっ! あんた、シロを呼び出せるでしょ? 今すぐ呼び出してっ!」
タマモ 「わかったわ。」
  窓を開けて、遠吠えをするタマモ  コォ〜〜ン!!
  タマモの声に反応して、近所の犬が次々に遠吠えを始める  ワォォ〜〜ン!
   
令子 「へ〜、すごいわね。 あんた、なんて言ったの?」
タマモ 「シロに事務所に連絡しろって伝えて欲しいって…」
令子 「ふ〜ん、犬たちってずいぶん協力的なのね〜〜〜」
   
   
  スイミングスクールでは…
シロ 「あれっ? 犬たちが拙者のことを捜してるでござるよ?」
横島 「ん? どうしたんだ、シロ?」
シロ 「なんか、遠吠えで拙者のことを言ってるみたいなんでござる。」
横島 「へ〜、俺には聞こえないけど…、えっ?」
   
  スイミングスクールの近所の犬たちにも聞こえたらしく、いっせいに遠吠えが始まる
  ワォォ〜〜ン! ワォワォ〜〜ン!! オオオ〜〜〜ン!
   
横島 「ああ〜〜、うるさいっ!!
  シロっ! おまえ、伝言内容わかってるんだろっ? あいつら、黙らせろっ!」
シロ 「わかったでござる。」
  窓を開けて、遠吠えをするシロ  ガォ〜〜〜ン!
  シロの声に反応して、近所の犬が次々に遠吠えをやめる…  し〜ん…
   
横島 「へ〜、すごい威力だなっ! で、なんだって?」
シロ 「事務所に連絡しろって言ってたでござる。 たぶん、発信源はタマモだから、
  美神さんたちが帰ってきたみたいでござるよ。」
冥子 「令子ちゃんが帰ってきたの〜〜? あ〜ん、よかった〜〜
  私が電話するわね〜〜 ちょっと携帯、とってくる〜〜」
  更衣室に急いで戻る冥子
   
横島 「なんか犬たちの遠吠え、異様だったけど、正確にはなんて言ってたんだ?」
シロ 「タマモのやつ、ひどいんでござるよ?
  『狼に、巣穴に連絡するよう伝えてっ!
  ちゃんと伝えないと、あとで狼に食い殺されても知らないよっ!』
  って言ってたんでござる…」
   
横島 「それで犬たち、びびってるような声出してたのか〜。 で、おまえはなんて言ったの?」
シロ 「『狼だ。わかったからもう黙れっ! 黙らないと食い殺すぞ!』って…」
横島 「おまえら、おっかねえなぁ〜〜」
   
  携帯をかけながら戻ってきた冥子
冥子 「うん、そうなの〜〜。 だから〜、令子ちゃん〜〜 来てね〜〜
  あ〜、横島くん〜〜? 隣にいるわよ〜 かわるわね〜
  はい、横島くん、令子ちゃんよ。」
   
横島 「美神さん、どうしたんですか? まだ沖縄にいる予定では?」
令子 「ま、天気の都合でねっ。 それよりあんた、苦労してるみたいね〜
  冥子にいいとこ見せようとしてついて行ったはいいけど、なんの役にも立ってないって?」
横島 「えっ? あっ、ははっ…」
   
令子 「ま、これからあんたらを助けに行くから、そこにじっとしてなさい。いいわね?」
横島 「へ〜い」
  令子が来るのをプールサイドで待つことにした三人…
   
   
冥子 「あ〜ん、冥子、どうしよう〜〜?」
横島 「もうやっちゃったんだから、あきらめなきゃしょうがないっスよ。」
シロ 「次は、拙者の番でござるなっ?」
   
令子 「きさまら、いったい何やっとるかぁ〜〜〜〜〜っ!!?」
  令子に怒鳴られ、トランプをやめる三人…
   
冥子 「令子ちゃん、怒ってばっかり〜〜〜」
令子 「当たり前でしょっ!? あんたの仕事、手伝いに来たのよっ!?
  横島、あんたもプロなら、もっとシャンとしなさいっ! 情けないわねっ!」
   
横島 「へいへい、プロでしたね。 プロには留守番がお似合いでさぁ〜ねっ!」
令子 「こいつ、沖縄に連れてかなかったこと、根に持っていやがるな…?
  おキヌちゃん、こいつらなんかほっといて、仕事に取り掛かるわよっ!
  霊視顕微鏡、出してくれる?」
キヌ 「はいっ。」
   
  プールの水を霊視顕微鏡で覗き込む令子
令子 「やっぱりね。 冥子に話を聞いたとき、そうじゃないかと思ったのよっ!」
シロ 「どういうことでござるのか?」
令子 「水が霊体というわけじゃないわ。 水中のバイ菌が霊気を帯びて悪さしてたのよ。」
   
シロ 「それで、本体が水全体に思えたのでござるな?」
令子 「そういうこと。」
シロ 「でも、バイ菌が水を波立たせるなんて不思議でござるな?」
令子 「バイ菌に考える力なんか、有るわけないわ。 誰かの恨みがそうさせたのよ。」
   
シロ 「恨み? それって、誰なんでござるか?」
令子 「さあね。 でも、ここはスイミングスクールでしょ? どうせ、練習が嫌になった
  霊能の強いガキあたりが、恨みながら泳いでたんでしょうね。
  その恨みが水中のバイ菌に乗り移って、霊気を帯びて繁殖しちゃったんだわ。
  プールがこんな状態なら、練習しなくてすむからね。」
   
シロ 「試験が嫌で、学校に放火するような感じでござるな?」
令子 「そうね。 ま、原因がわかったから、解決するのは簡単よっ!
  ここにいたってしょうがないわ。 裏にまわるわよっ!」
   
  プール裏の機械室に集まった美神たち…
令子 「これがプールの水にいる普通のバイ菌を浄化する装置ね。 このパイプに御札を貼れば、
  ここを通る霊気を帯びたバイ菌も浄化できるわよ。」
  呪文を唱えて御札を張りつける令子
令子 「これで、私の仕事はおしまいよっ!」
冥子 「令子ちゃん、すご〜〜い!」
   
令子 「冥子、なにのんきなこと言ってるのよ。 あんたの仕事はこれからよっ!
  式神を使って、少しでもバイ菌の数を減らすのよっ!
  横島クンも、文珠を使って手伝ってやんなさいっ!」
横島 「俺もっスかぁ〜? 御札だけじゃ、無理なんスかぁ〜?」
   
令子 「私の仕事じゃないんだもの。 安い御札しか使ってないわ。
  だから、バイ菌の数が多いと1度パイプを通っただけじゃ退治しきれないの。
  今のままじゃぁ、退治するまでに何度も水を循環させなきゃいけないから、
  何日かかるかわかんないわね〜。」
   
横島 「ひえ〜〜〜!」
冥子 「あ〜ん、令子ちゃん〜〜 つめたい〜〜」
   
令子 「あのね〜〜、これって、あんたの仕事でしょっ?
  なのに私は、冥子一人でやれだなんて冷たいことは言ってないわよ?
  うちの横島クンが、冥子の手伝いをとってもしたがってるみたいだしね。
  ま、冥子も徹夜で働くことだし、ギャラは半分でいいわよっ!」
冥子 「うぐぅ〜〜〜 令子ちゃん〜〜〜〜」
   
   
  その夜のプールサイドでは…
冥子 「サンチラ〜〜! がんばって〜〜!」
横島 「文珠〜〜〜! 出ろ〜〜!」
   
   
シロ 「拙者も、先生のお手伝い、したほうがいいんでござろうか…?」
キヌ 「大丈夫よ、シロちゃん。 美神さん、口ではああ言ってるけど、結構高い御札を使っているの。
  だから横島さんたちのお仕事、そんなに夜遅くにはならないはずよっ。」
  と、シロの耳元でささやくおキヌちゃん…
   
タマモ 「ねえ、はやくトランプ始めようよっ。」
キヌ 「そうねっ。シロちゃんも一緒にやりましょう。」
シロ 「拙者、先生と遊びたかったんでござるが…」
   
令子 「人の働く姿を、プールサイドでのんびり眺めるのって楽しいわねっ!」
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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