・・・・・・・・・2004年春。私はデジャブーランドにいた。別にこれといった用があるというわけではなかった。ただ、マジカル・ミステリー。ツアーが明日オー

    

    プンだというので足がふらふらと向いてしまっただけだった。まあ、この不況で再建設が遅れたんだと思うが・・・。とにかく私はマジカル・ミステリー・ツアー

 

    のある方向に向かうことにした・・・。

 

    

 

                 ザ・フォックス・オブ・ハート!!

                                       著・来栖川のえる(ネタはセン○みたいな〜)

 

 

    「・・・・・・・・ふう」

 

    目的地についたタマモは、その全く変わっていない外見に少しほっとしたような顔をした。

 

    「そういえばここで真友くんといっしょにあそんだなあ・・・」

 

    タマモはマジカル・ミステリー・ツアーの看板を見上げながらぽつりとつぶやいた。

 

    「さてと・・・・用もないしもう帰るか・・・」

 

    そう言ってにぎやかなデジャブーランドをあとにしようと歩き始めた時、

 

    「あれ・・・・?」

 

    そこにはなんと、あのなつかしの顔があった。

 

    「タマモちゃん・・・?」

 

    「真友くん?なんでここに・・・」

 

    彼女の目の前にいたのはまぎれもなくあの真友君であった。

 

    「いや・・・ちょっとね。タマモちゃんこそなんでここに?」

 

    「・・・私も、ちょっとね」

 

    そういうと、二人は顔を見合わせ、どちらともなく笑い始めた。

 

    「・・・くすっ」

 

    「あはははっ・・・・」

 

   

    「・・・・・・・・・・・・・・なつかしいね」

 

    そう言って彼はなつかしのアトラクションに目を向けた。

 

    「ねえ、また入ってみない?」

 

    「え?」

 

    彼の突然の発言にタマモは少しとまどったが、

 

    「・・・・そうしよっか!」

 

    と、すぐに笑顔で返した。

 

 

 

    「そういえば、ここに入ったのよね」

 

    そう言ってタマモが指した所には「非常口」とかかれていた。

 

    「・・・なつかしいな〜・・・。ねえ、入ってみようよ!」

 

    タマモはそう言うと返事も聞かずにはいっていった。

 

    「あ・・・!ちょっとまってよ!」

 

    タマモはいつになくわくわくしていた。・・・そう、5年前ここにいた時と変わらぬココロがそこにはあった。

 

    

 

    「相変わらずここは寒いわね・・・」

 

    メンテナンス室に入ったタマモの第一声がそれだった。

 

    「なんだったら僕の上着きる?」

 

    そう言って真友が上着を脱ぎ始めたので、タマモはあわててそれを止めた。

 

    「あ!いいって、いいって。そんな2回も迷惑かけられないよ!」

 

    「・・・そう」

 

    「?」

 

    上着を着なおした真友の顔がわずかにさびしそうだったのをタマモは見逃さなかったが、そのことについてはだまっておいた。

 

    「・・・え〜っと、確かこの辺に・・・」

 

    真友はなにやら探しているようだ。

 

    「・・・あ!あった!これだ、これ!」

 

    「たしかここからステージに行ったんだ」

 

    真友は5年前、二人で通った穴の前にいた。

 

    彼は本当にうれしそうだった。

 

    

 

    「なつかしいわね〜、ここのステージ」

 

    タマモもどこか喜びの混じった声で言う。

 

    「そうそう、確かこの辺で霊におそわれたんだよね」

 

    「そういえば、そうだったわね」

 

・・・・・・・5年前、水の中にひきずりこまれたタマモを、小さいながらも必死で助けようと頑張ってくれた真友・・・。彼女はそのことを思い出して思わず微笑え

 

    んでいた。

 

    「どうしたの?」

 

    顔に何かついているとでも思ったのか、彼は真剣な顔をしてタマモに聞いてきた。

 

    「あ・・・なんでもないの」

 

    「?」

 

    慌てて言うタマモに不思議そうな顔をする真友。

   

 

    「・・・・・・・・・・・僕ね、こうして二人でいられる時が来るなんて、夢にも思わなかったんだ」

 

    唐突に彼は話はじめた。

    

「え?」

 

    「だってそうだろう?世界の中に僕とタマモちゃんという存在は一人ずつしかいないんだよ。それがまた会えるなんて・・・・」

 

・・・ドキッ・・・!そう言った彼が妙に大人っぽく見えて、彼女の心臓は大きく脈打った。

 

    (ヤダ・・・。なにどきどきしてんのよ・・・)

 

    そう思ってタマモはできるだけ真友に悟られないように違う話をし始めた。

 

    「私ね・・・今日、5年前と同じくらいわくわくしてるんだ。・・・こんなにわくわくするの、久しぶり・・・!」

 

    「僕もだよ。今日君に出会えて.本当によかった・・・・!」

 

 

 

・・・タマモと真友はそれからしばらく話をしていたが、タマモの顔が急に険しくなった。

 

    「どうしたの?」

 

    「なんか・・・けっこう強い霊気を感じるわ」

 

    この施設には、やはりかなりの低級霊がいて、タマモは常にそれを感じていたが、一際大きな霊力を感じたので警戒し始めた。

 

    「・・・近い!」

 

 

    ドカァッ!!

 

 

    タマモがそう言うと同時に、床からいきなり妖怪のロボットが現れた!

 

    「え・・・?何でこんなところにアトラクションが・・・?」

 

    「いえ・・・、どうやらこれは本物みたいね・・・」

 

    「・・・・・・」

 

    彼女の表情が険しいままなのを見て、真友も状況を理解したようだ。

 

    「なんでこんな強力な霊がここにいるのよ・・・?」

 

    「クックック・・・。これだけの霊が集まってるんだ・・・。私がここにひかれて来るのも別におかしくはないだろう・・・?」

 

    ロボットが不気味な笑いを浮かべて答えた。

 

    「・・・で?そのあんたが私達に何のよう?」

 

    「決まってるだろう・・・?このロボットをつかえば私もかなりの戦闘力を持てる。人などもう敵ではない・・・。私はずっと前からきさまらのような人間が来るの

 

    を待っていた・・・。きさまの霊力がいくら強くても私に比べたら雑魚にすぎない・・・」

 

    そう言うが否や、ロボットは風となって突進してきた!

 

    「なっ・・・!」

 

    

    ブンッ・・・・・!

 

 

    タマモの目の前を拳がかすめる!

 

    「雑魚・・・だって!?」

 

    間一髪身をひるがえしたタマモが反撃に転じる。

 

    霊力を帯びたパンチが疾風のごとくロボットめがけてうなりをあげた!

 

    

    ガシィッ・・!

  

 

    「えっ!?」

 

    タマモの一撃は片腕だけであっさり止められてしまった。

 

    「くあっ!」

 

    

    ドゴォッ・・・!!

 

    

    タマモの体が宙に浮いたかと思うと、一瞬の内に激しく壁に叩きつけられた!

 

    「タマモちゃん!?」

 

    (・・・しまった!油断してた・・・。体が思うように・・・・!)

 

    そう思ってられるのもつかの間だった。見上げるとそこにはすでにあのロボットが拳を振り上げていた。

 

    「・・・死ね・・・・!」

 

    「くっ・・・!」

   

    

    ドカァッ!!

 

 

    「・・・なにぃっ!?」

 

    攻撃してこないのを不審に思ったタマモが目を開けて見ると、そこにはおおいかぶさるようにしている真友の姿があった。

 

    「真友くんっ!?」

 

    「く・・・!」

 

    そのまま真友はタマモの上にくずれた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・プッツン・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

    「この・・・くされ妖怪がーーーーーーーっ!!!」

 

     

    カッ!!

 

 

    「バ・・バカな!!」

 

    「ウォォォォォォォッ!!」

 

・・・・まさに一瞬であった。タマモの渾身の一撃をくらった妖怪は、ロボットごと粉々に砕け散った・・・・。

 

 

 

    「ちょっと!しっかりしてよ!」

 

    「だい・・・じょうぶだって・・・」

 

    タマモが真友を抱えながらゆすると、真友は弱々しく答えた。

 

    「だいじょうぶなわけないでしょ!妖怪の私でさえまともにくらうとかなりのダメージを受けるのよ!・・・なんであんなことしたのよっ!!」

 

    「・・・・・・・・・・・ずっと前、タマモちゃんに助けてもらったことがあったよね?・・・あの時から僕、いつかタマモちゃんに恩を返さなきゃって・・・。人に守られて

 

    ばかりじゃ、いつまでも子ども扱いされるから・・・・。僕もあらから5年・・・ずいぶん成長した。だから今度は僕がタマモちゃんを助ける番・・・。人を守れる時

 

    に守らないのは、ただの弱虫だから・・・。ま、今回も結局最後には助けられちゃったけどね・・・」

 

    そう言って彼はタマモに微笑んだ。

 

    「・・・・・・・・・・・・・ばか・・・・・・・・・・!」

 

・・・・そう言ったタマモの顔は、目に涙を浮かべながらも、なぜか真友と同じように微笑んでいた・・・・・・・。

 

 

 

                                                                          (おしまい。)