それは、人魔の第一幕を仕上げた翌翌朝の事だった。
 前日に文庫本二冊を読破して四時間睡眠だった私は、懲りずにさらに一冊を読破した。およそ、前期試験を十日後に控えた者の所業とは思えないが、そんなことはどうでもいい。
 さすがに眠気を覚え、私は少し眠ろうと決意した。
 カーテンを閉め、カセットテープでルパン三世のテーマ‘97(TVスペシャル『ワルサーP38』のテーマ)をかけ、布団をかぶる。
 およそ五分。音楽も佳境に入り、私もまどろんできた時だった。
 いきなり、電気がついた。夢だと即断した。何故なら蛍光灯を真下から見上げる視点は、二段ベッドの上段にさえぎられて私には不可能なのだから。
 目を開き、首をめぐらせる。蛍光灯から垂れ下がる紐が、誰かの手に持ち上げられて緩み、軽く弧を描いていた。
 誰かといったのは、つまりはそこに人の姿が認められなかったわけで。
 心霊現象だ。そう思った。
 同時に、なにか嫌な予感がして、左腕を背後に振ろうとした。
 だが、出来なかった。体がピクリとも動かなかったのだ。
 いわゆる金縛りというやつだ。
「また金縛りか、芸がない」
 しかしながら、ある程度自由に金縛りになれるという自慢の出来ない特技を持つ私にとって、それは恐怖を呼び起こさなかった。
 むきになったのか、その心霊現象さんは次なる行動に出た。
 幻聴だ。
 いきなり、左耳に声が聞こえた。
 その声はひそひそと、しかしハッキリした声だった。しゃがれた老人のような声で、こう言っていた。
『なんまんだぶなんまんだぶなんまんだぶ……』
 瞬間、私は思った。
「おお、幻聴だ。これは初めての経験だ、貴重だなあ。
 しかし、何故に南無阿弥陀仏? 確かそれって法然だろ。浄土宗じゃなかったっけ? ウチは曹洞宗だぞ」
 まったくの余談だが、私は般若心経を暗唱できる。
 しばらく聞いていたが、これ以上の追加攻撃はなさそうだったので、私は気合いをいれ、左腕を持ち上げた。
 たいていの場合、金縛りが解ければ、他のすべても消えるものだ。今回も例外ではなかった。
 体を起こした私の目の前には、寝る前と変わりない光景が広がっていた。唯一、曲が『Damageの甘い罠』(ルパン三世劇場版『Dead Or Alive』のED)になっていたことくらいだ。
「……起きるか」
 もう眠れそうもなかったので、私は布団を跳ね除けた。

 などという体験をしました、桜華です!
 皆さん心霊現象の経験ってありますか? 私はこれで二回目です。苦痛はなかったので、たいして恐くありませんでした。一度目は死にかけたので。いやマジで。
 ちなみに、金縛りにある程度自由になれる……本当です。これは最後に回しましょう。

 それではまず、作品の話。
 作者としてではなく、読者として読んでみて………………………
 ……………………短い!
 予定していたストーリーが終わった時点でまだ一幕の半分。これはまずい、まずすぎる!
 というわけで、最後の闇の中の怪しい会話は即興のつけたしです。
 そして――――今回見事にやってくれました、『紅い修道女』ことマリー。
 プロットを立てて、整理してみて思ったんです。ちょっと展開が急で短いな、と。もう少し伸ばせないかな、と。
 そうしたら、です。いきなりキスですよ。本来あの時点で死んでしまうはずだったキャラが!主人公と! キス!しかも、なんとディープな!
 さらにそこから暴れ始めて、プロットオール破棄決定! ですよ。
 そして現在、ヒロイン候補にノミネート。ちなみに順位は、一位ルシオラ。二位小竜姫、三位マリーです。どうした美神令子って感じですが、多分脇になるでしょう。

 そんでもって、幕間の話。
 本編が思いっきり落として終わったんで、ちょっとシリアスな感じに戻したいな、というのが狙いです。
 千春さんはギャグに徹してもらって、隊長さんにギャグからシリアスに変わってもらい、怪しい密談でシリアスを取り戻す。
 しかしながら次回はギャグから始まるのだから徒労のような気もしますが。

 最後に、皆さんにお願いがあります。
 ……名前、考えてください!
 私の貧困な語彙からでは、どうしてもしっくりした名前が出てこないんです。
 とりあえず、今回出てきた怪しい密談の三名と、後、六道女学院で弓かおりと同じ成績で入学したという触覚娘。なお、触覚娘の名字は峰とします。このコたちの名前をお願いします。私が考えると、どうしても『峰不二子』しか出てこないんです(涙)。
 そういうわけなんで、皆さんどうかよろしくお願いします。

 それでは、また次回でお会いしましょう。
 なお、次回はまた短くなるかもしれません。一週間で書けるだけ書くつもりですが、どうかご了承下さい。

  おまけ
 桜華の金縛りのなり方(爆)

 まず、これは夜寝る時の方法です。これは絶対条件です。なぜなら意識と無意識の間に位置するまどろみが一番なりやすいからです。
 さて、まずは部屋の電気を消して、床につきます。音楽はかけません。現実に引きとめられるからです。恐い音楽で雰囲気を出すのはいいかもしれませんが、試した事ないので何とも言えません
 そのまま普通に寝て、眠気が襲ってきたらチャンスです。
 何をするかというと、とっても簡単。
 猟奇的シーンを思い浮かべ、そこから血みどろなストーリーを発展させるだけ。
 その被害者や血みどろ物語の主人公が自分だったりするとなおよろし。
 恐怖に縛り付けられて、あっさりと体が動かなくなる事うけあいです。
 さあ、皆さんも丑三つ時にレッツ・トライ!(核爆)
 ちなみに、陥るのは簡単ですが、抜け出すのは一苦労なので、その辺覚悟してください。
 なお、お経が聞こえて来たり息苦しくなったりしても、当方一切責任は取りませんので、あしからず。


[ 煩悩の部屋に戻る ]