MISTER ZIPANGU > REVIEW 'LoveHINATA' > Vol. 5

00/ 5/16 信長ヒロイン説

「超歴史型ファンタジー」への懸念

「超歴史型ファンタジー、エンジン全開!!」
(週刊少年サンデー24号「MISTER ジパング」のハシラのアオリ文句より)

 自分から「このマンガはファンタジーだ」ってバラしてどうするよ!?(個人的な返答)

 つうか、別にこのマンガは本格的な歴史マンガではなく、あくまで「歴史を題材にした椎名高志オリジナルの創作マンガ」であることは、大抵の読者にとっては言われなくても承知しているはずです。
 ただ、Cna-BBS での書き込みなどから判断する限りでは、「MISTER ジパング」が持っている歴史マンガっぽさの部分に惹かれて読んでいる人も結構存在するのも確かであり、下手するとその手のマジメな歴史ファン系の人をバッサリ切り捨てかねない「超歴史ファンタジー」という表現をこの段階で行うのは如何なものか? とか思いました。


 で、戦国時代とか三国志とかに代表される歴史系創作の肝は、史実や伝記を元に構築されている既存のキャラクターなどのイメージを、どう作家が自分なりにアレンジして作品として表現するのか? という部分にある訳であり(多分)、逆に言えば「既存のイメージ」を基調にして話を作ることができなければ、それはあえて「歴史」を題材にする必要がなくなってしまいます。
 ですが、今回のハシラに書かれていた「超歴史型ファンタジー」(および、2ページ目にある「この時空がどれくらい我々の歴史に近いのかはまだわからない」という言葉)という表現だと、この「歴史を題材にした創作が守らなくてはいけない一線」を、時と場合によってはアッサリと越えてしまいかねない→最後はモラルハザードを起こして作品性崩壊、という危険性を自ら孕むことになってしまいます。
 「ファンタジー」ってのは、言ってしまえば「何でもアリ」って意味ですからね。

 で、この「この時空がどれくらい我々の歴史に……」って表現については、「歴史ファンから『史実と違うじゃん』と突っ込まれる事に対する防衛策である」という推測が成り立ちます。
 実際、今までも細かいところではかなり史実と異なる設定になったりしている箇所もあり、歴史マニアな諸子から多数のツッコミがサンデー編集部に対してなされたことは容易に推測できます。特に、ヒナタとヒカゲのアレなんかに至っては、もう純粋な「歴史モノ」としてはとても言い訳できない設定と言えますね。私も、こんな設定を「純粋歴史モノとして許される存在」として擁護しようとは思っていません(笑)。

 ただ、「MISTER ジパング」という作品(更には、いわゆる「秀吉モノ」と呼ばれる、豊臣秀吉の半生を描いた作品群)の本質は、あくまで「日吉が信長と関わり合うことによって、一介の農民から『天下人』に成長していく姿を描く」ことにあるのであり、その本質さえキッチリ描けているのであれば、それ以外の部分で多少の歴史の改編とかファンタジー要素が混ざっていたりしたとか言っても、作品そのものの評価を落とす要因にはならないのではないかと思います。
 私が思うに、「MISTER ジパング」における『史実と違うじゃん』と突っ込まれる箇所ってのは、今のところは「作者が『日吉と信長の関わり合いと成長』を促進するために創作した」という理由で説明できる事項がほとんどではないのでしょうか。特にヒカゲの「能力」は、日吉の成長プロセスの節目に発動してこそ最大の効果を発揮する類のものであり、作品のテーマを週刊少年マンガという限定された媒体上で判りやすく表現するという観点からすれば、むしろ「なくてはならない」キャラクターであると言えるでしょう。
 このマンガ、見てくれは「ファンタジーマンガ」という呼称が付いてもおかしくない内容に見えますけど、あくまで本質は「歴史マンガ」と言い張っても一向に構わない作品にちゃんと仕上がっていると思いますよ。今のところは。

 ですが、せっかく「歴史マンガ」と言い張れるだけの内容を持ちながら、最初のうちからマンガを提供する側が「これはファンタジーです!」とか「これは我々の世界とは違う次元のお話です!」とか事前に言ってしまうってのは、何というか作者の側が事前に逃げ道を作っているように見えてしまい、こちらとしては興醒めしてしまいますね。
 まぁ、これらの言葉はあくまでシャレの範疇で言っているのは判っていますけど、あんまりこういう後ろ向きな事を書くのはほどほどにして頂きたいです。個人的には。

 というか、むしろサンデー編集部には、「貴様らがどう言おうとも、これは本格歴史マンガなんだよ! 細かいことでガッタガッタ抜かすな! 本質を見据えろ! 黙って読め!」と強硬に主張して読者を騙し、そして最後の最後で「このマンガはこっちの世界の歴史とは違うんだよ〜」ってネタバラシをして逃げ、再び読者を敵に回すくらいの事はして頂きたい所存です(ドクロ)。

そして、信長ヒロイン説

 あと、サンデー24号を読んでいて気が付いたのですが、この回の「MISTER ジパング」に出てくる信長って、なんか妙に可愛くないですか? いやその、決してやおい的な発想ではなく! なんつうか、今回の話の描かれ方が、まるで「ラブコメマンガのヒロイン」の如き演出を伴っていたように見えてならないんですよ!
 例えば:

 ……えーと、要するに何を言いたいのかと言えば、今回のエピソードの目的は「日吉が信長の側にいられる合法的な状況を作る」ことであり、それ故に信長と日吉の現段階での関係の描写が必要なのは理解できます。しかし、上で紹介したように、ここでの信長の描かれ方は、そのままラブコメマンガのヒロインに(妄想を駆使すれば)変換が可能であるって辺りが興味深いですね。
 ラブコメマンガの定番ストーリーの一つとして、「アタシは普段は『活発でおてんばな女の子』って思われてるけど、でも本当はちょっと寂しがり屋さんなの! 最近カレのことが気になるんだけど、でもカレと二人っきりになっちゃうと、どうしても素直になれないの! アタシどうしよう!」ってのがあるのですが(あるのか?)、今回の信長って、なんか行動がコレっぽいんですよ。

 日吉の事が気になり、先回りして待ち伏せしたのにも関わらず、彼に対して素直な態度が取れないばっかりに、彼も日頃のおてんばっぷりを警戒して気を許してくれず、なかなか関係を進展させることができない信長。ああもう、これって立派なラブコメシチュエーションの一つですよ! いいたーいな! いえなーいな! チャンス! のーがしてばーかりー! って感じですよ!
 「男勝りな女の子が彼氏の前で見せる素直な姿」ってのは、男性向け成人コミックではお馴染みの(←馴染むな)萌え萌えシチュエーションなのですが、まさか信長が! 信長殿がこのパターンにハマってしまうとは! このマンガの真のヒロインは信長だったのか!

 「MISTER ジパング」は、今のところは主にマンガを沢山読んでいる玄人層や歴史ファン辺りにはそこそこ以上の人気を博している模様ですが、まだ「GS美神」の頃のような広範囲に渡る手広い人気を得るところまでには至っていないようです。その一因には、やはり美神令子やおキヌのような、作品のイメージをそのまま体現できる判りやすいヒロインキャラの不在が上げられると思います。
 が、信長をヒロインとしてこのマンガを読み直せば、この「ヒロイン不在」問題は一挙に解決します。
 いわゆる秀吉モノの肝は「日吉と信長の関わり合いによる成長」であることは説明した通りですが、これって早い話が「頭はいいけど臆病で弱虫な日吉と、カッコイイけどケンカ早くてお転婆な信長が繰り広げるラブストーリー」に容易に翻訳可能な訳であり、即ちこのマンガのヒロインは、実は信長だったのです! 帰蝶姫でもヒナタでもヒカゲでもなく!

 という訳で、当サイトでは今後、心の中で「信長がヒロイン!」と思いながらこの作品を鑑賞することを推奨するモノであります。
 これぞ「超歴史型ファンタジー」の面目躍如だぜ!(強引)

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