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■小学館 Web サイトに掲載された「画像使用・著作権について」について

(00/ 2/21 版)

※当該記事は、小学館の Web サイトから「画像使用・著作権について」をクリックすれば読むことができます

 まず当該文章を読んでの感想ですが、この文章は単に「出版社としての建前」を述べたものに過ぎない、と判断しました。これによってこちらがすぐにこれに従わなければならないという必要性は、今のところそれほど感じていません。
 何故なら、この文章だけからでは、既に Web 上に大量に存在している「ファンサイト」や「書評サイト」に対して小学館が具体的にどうしたいのか? という問題に対する解決策がまったく提示されておらず、またこの規制の内容では、小学館側が現実的な対応を取ることも不可能なのではないか、と思われるためです。

 特に「出版物の要約及び出版物を元に制作した小説などを掲載することの禁止」「キャラクターの自作画(イラスト・パロディなど)を掲載することの禁止」の二項については、これに接触するサイトがあまりにも多いことが予想されます。いわゆる二次創作と呼ばれるものは勿論、感想や書評なども「出版物の要約」に当たると判断されれば(書評を書く上では内容の要約や引用を行うことはよくあります)、書評を Web に公開することすら認められなくなります。
 もしこれを厳密に執行した場合、事実上小学館が出版している出版物に触れた全てのサイト(その出版物の作者自身が宣伝のために作成・公開しているページを含めて)に「法的手段を講じる」事になってしまいかねず、現実問題として小学館が対応できるとは思えません。

 さらに、これらの禁止事項が本当に著作権法上正しい解釈なのかどうか、という点においても疑問です。今の記述では Web 上で引用や批評を行うことすら禁じているように取れますが、これは著作権法の意図から逸脱しているように思えます。


 そしてファンサイト運営時に避けて通れないのが、二次創作物(マンガ等を題材にしたイラストや小説)の公開に関する規制です。
 現在、小学館以外にも自社キャラクターの二次創作を Web で公開する上で何らかの規制を実施している会社はいくつかありますが、ここまで強硬に Web 上での二次創作の利用を禁じた例は、おそらくないと思います。最初に「Web 上での自社作品の二次利用を原則として禁止する」という方針を明確に打ち出した(と思われる)サンライズでさえ、ファンが二次創作を発表する場所は限定的ながらも用意していましたが、今回の小学館の方針は「ファンが二次創作を発表する行為」そのものを禁止している点において、かなり厳しい措置だと言えます。

 ここまで Web での情報流通が発達し、誰もが簡単に Web 上にサイトを作成・公開できるようになった現在、ある作品に対して Web 上で感想や書評を述べたり、イラストが描ける人がそれを Web 上で公開する活動を行うのは、少しばかりの創造性を持ち合わせている人なら極めて「当たり前」の行為だと思います。また、自分でサイトを立てる程ではなくても、興味のある作品のファンサイトを検索して見付けだし、そこで意見の交換を行う事も、また当たり前のように行われています。
 私は、今までこのサイトを運営してきた経験から、ある作品の読者が Web 上に「出版物の感想・書評や、出版物を元に制作した小説、キャラクターの自作画を掲載する」ことは、(程度の差はあれ)誰しもが持っているごく普通の「欲求」であると考えてます。

 もし小学館がファンに対してこれらの「著作権等の権利侵害」行為を禁止した場合、小学館はこれらのファンの欲求に応じられるだけの受け皿を用意して頂けるのでしょうか。また、もし受け皿を用意しない場合、どうすれば我々はその「著作権等の権利」を侵害しないで、Web で自分の書評や創作を公開することができるのでしょうか。
 この問いに対して、サンライズは「自社指定のサイトに投稿すれば掲載する」、リーフは「個人・同人サークルならば表現を行う媒体を問わず一切制限を行わない」、タツノコプロは「公開する作品の URL を通知。内容に問題がなければ特に連絡はしない」など、各社毎の回答を提示しています。規制の程度の有無はあるにしろ、これらの会社は二次創作の公開に対して明確なガイドラインを提示しているのです。
 しかし小学館の現在の対応は、この質問に答えてくれていません。ただ、「著作権等の権利侵害になる」という事を述べているだけです。

 私を含めた大半の Web ページ制作者は、もし可能であれば出版社や著作者と「権利」関係で揉めることなく良好な関係を保ちながら運営を行って行きたいと思っており、出版社の側から Web サイトを作成する上での条件などが提示されれば、納得した上でその約束に従う準備があるということを、知って頂きたいのです。
 小学館が行うべきは、自社出版物の権利を守ろうとして非現実的な規制を打ち出すことではなく、現実問題として今存在しているサイトとどう折り合いを付けていくつもりなのかを明確にしたガイドラインを提示することではないのでしょうか。


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