その後のGS美神 2003 リポート3 小笠原 エミ

それでいいワケ?

著者:まきしゃ


    おキヌちゃんが事務所に戻ってきてから、はや1週間
  ICPOオフィス
横島 「うぐぐっ! お、お茶っ!」
ピート 「ああっ、大福餅を一気に食べようとするから…」
タイガー 「あいかわらず、いじきたないですノ〜、横島サンは…。」
   
横島 「ふぅ〜、苦しかった…」
タイガー 「でも、なんで横島サンが、ここに居るんですカイノ〜?」
ピート 「今、隣に来てるんですよ…、おキヌちゃんの彼氏が…。」
タイガー 「ああ、あの近畿剛一とかいう、役者ですカイ…。」
   
ピート 「横島さんの古い友人なんですから、会ってあげればいいのに…」
横島 「ケっ! おキヌちゃんを横からかっさらった極悪人の顔なんか見たくもないっ!」
ピート 「でも、おキヌちゃんの気持ちも、わかってあげないと…」
横島 「………、そうだけどさ〜〜〜  でもさ〜〜〜
  あああ、おキヌちゃん〜〜〜〜っ!!
   
  キンッ!  パシッ!
  振り下ろされた霊剣を、サイキックソーサーで受け止める横島
西条 「ふっ、腕を上げたな。 横島くん…」
横島 「ふっ、腕が落ちたな。 西条…」
   
西条 「き、きさまになんか、令子ちゃんとつきあう資格などない〜〜〜っ!」
横島 「ふんっ。 みじめなもんだな、敗残者ってのは…」
タイガー 「さすがにこ〜ゆう容赦ない言葉遣いは、美神さんの彼氏だけのことはあるノ〜。」
西条 「うがぁ〜〜〜っ!!」
ピート 「さ、西条さん、落ちついてっ!」
  あばれる西条を羽交い締めにしてなんとか落ち着かせようとするピート…
   
  美神事務所 隣の音が良く聞こえている…
近畿 「………、横っち、元気みたいやね…。」
令子 「………、ごめんね、近畿くん。 あのバカ、すぐ逃げちゃうんだから…
  戻ってきたら、とっちめとくから。」
   
   
  ICPOオフィス 西条は腹を立てながら外出
横島 「ところで、おまえの方は、なんでここに居るんだ?」
タイガー 「わっしは、ピートさんに相談が有って…」
横島 「ピートに〜? こいつ、無駄に長生きしてるだけだぞ?」 
タイガー 「それはそうじゃが、エミさんのことなら、わっしの次に詳しい人ですケン。」
ピート 「なんか、すごく失礼な言われ方なんですけど…」
   
横島 「エミさんのことでの相談? エミさん、どうかしたのか?」
タイガー 「美神さんと横島サンがつきあってるのを知ってから、なんか気の抜けたように
  なってしまったんジャ〜。」
   
横島 「う〜ん、エミさん、俺のことが好きだったのかぁ〜
  なのに、俺がライバルの美神さんを選んじゃったもんだから…
  そりゃ〜、ショックも受けるだろうな…。
  なんて罪作りな男なんだろう、俺ってばっ!」
タイガー 「本気でそう思っていそうなところが怖いノ〜。 この人の場合…。」
   
横島 「なんだよ、違うとでもいうのか?」
タイガー 「よくそんなことが言えるノ〜。 わっしが思うところ、わっしと横島サンは、今までずぅ〜っと、
  よく似た立場だったのに、結果はまったく逆になってしまったせいで…」
横島 「ちょっと待てっ! 俺たちの、どこが似てるというんだっ!?」
タイガー 「それはですノ〜…」
   
  タイガーの話によると…
  美人で、金持ちで、性格の悪い、年上の超一流GS上司(令子:エミ)がいて、
  タフで、薄給にも耐えて、上司に憧れている優秀なGS助手(横島:タイガー)が自分たちで、
  可愛くて、性格も良く、自分たちを慕ってくれる、年下の一流GS(キヌ:魔理)がいるところ…
   
横島 「違う〜〜っ! 断じて違う〜〜〜っ!
  なんだか、絶対、違うぞぉ〜〜〜〜!!!!」
タイガー 「一緒ジャ〜〜! わっしと、横島サンは、一緒なんジャ〜〜〜ッ!!」
ピート 「似ているところは、有りますけど……」
   
  ひと騒ぎして、落ち着いたあと…
横島 「でも、その話と、エミさんとが、どう繋がるんだ?」
タイガー 「わからんですカイノ〜? それじゃ〜、順を追って話しますケン。」
横島 「ああ、聞かせろ。」
   
タイガー 「まず美神さんじゃが、性格の悪さはエミさん以上ジャろ〜?
  そんな女性とつきあえるのは、奴隷扱いされても耐えれる横島サンぐらいなもんジャ〜。」
横島 「う〜む、たしかに、そう思っている……」
   
タイガー 「エミさんも性格の悪さのせいで、まともにつきあえる男などどこにもいないっ!
  エミさんの仕打ちに耐えて、つきあえるのは、わっししかいないんジャ〜っ!」
横島 「それは違うっ! 絶対、違う〜〜っ!!」
ピート 「ま、まぁまぁ、続きを聞きましょうよ…」
   
タイガー 「で、横島サンの場合、性格が良くて可愛いおキヌちゃんに好かれていたにもかかわらず、
  並みの男なら引いてしまうような美神さんを選んだわけジャ。
  ところが、わっしの場合、性格が良くて可愛い魔理に好かれたために、
  エミさんを選ばず、魔理を選んでしまったんジャ〜!!」
   
横島 「な、なに〜っ!? 魔理だとぉ〜!? 呼び捨てていいと思ってんのかぁ〜〜〜っ!?」
タイガー 「魔理が、そう呼べって言ったから、いいんジャァ〜〜ッ!!」
横島 「ゆ、許せん〜〜〜っ!!」
ピート 「なんか、揉めるポイントが、違っているような気が……」
   
  もうひと騒ぎして、落ち着いたあと…
横島 「ぜぇ〜、ぜぇ〜、それでっ!?」
タイガー 「ぜぇ〜、ぜぇ〜、だから、エミさんが落ち込んでるのは、美神さんが横島サンを選んだのを
  知って、わが身を振り返ったとき、選べる男はわっししかいないのに気付いたけれど、
  わっしにはすでに彼女がいて、どうしようもなかったからなんジャ〜〜ッ!」
   
横島 「違う〜〜っ! エミさんは、俺に惚れてたんだぁ〜〜っ!!」
タイガー 「エミさんは、わっしの重要性に気付いたんジャ〜〜〜っ!」
ピート 「あの〜、エミさんが好きだったのは僕だと思うんですけど……」
横・タイガ 「そんなこと、始めっからわかっとるわいっ!!」
ピート 「え゛っ!?」
   
  真顔に戻って、話し出すタイガー
タイガー 「横島サンのせいで、話が変な方にいってしまっただけですケン。」
横島 「俺のせいにするなよな。 おまえも、妄想を膨らまして楽しんでたじゃね〜かよっ!」
タイガー 「だって、横島サンの妄想に対向するには、それしかないケン…」
   
ピート 「なんだぁ〜、二人とも本気で言ってたんじゃなかったんですねっ?」
横島 「てめ〜、何年俺たちとつきあってるんだ?」
タイガー 「無駄に長生きしてるというのは、当たってるみたいだノ〜」
ピート 「うっ!」
   
タイガー 「それはともかく、下手な推測をするよりは、ピートさんに、エミさんの気の抜けてる訳を
  本人にそれとなく聞いてもらって、エミさんを励ましてもらいたいんジャが〜」
ピート 「でも、僕にはもうその役は……」
横島 「エミさんが、こいつをあきらめたのって、いつ頃だっけ?」
タイガー 「ピートさんがICPOに入ってから、半年ぐらいたった頃ジャ〜。」
   
横島 「そうか、その頃だったな…。 美神さん、容赦せんかったもんなぁ〜」
タイガー 「エミさんが、ピートさんに会いにここに来るのはいいんじゃが、ピートさんとの仲は
  ちっとも進展せんかったジャろ〜? そんなときに、うっかり隣の美神さんに
  会おうものなら、冷ややかな言葉の機関銃をあびせられてノ〜…。
  その反動が、翌日わっしに振りかかって大変だったんジャ〜…。」
横島 「やっぱ、あきらめたのは、それが原因なんだろうな〜」
   
ピート 「いえ、そうじゃないんです。 隊長に、僕にその気がないのなら、エミさんにきちんと
  話をしてケジメをつけなさい、って言われたので…」
横島 「えっ? 隊長がっ!?
  自分の娘には、ちっともケジメをつけさせないくせに、他人には言うんだな…」
   
美知恵 「あ、あら〜、横島クン、令子とつきあえるようになったんだから、い〜じゃん!!
  男が細かいこと気にしちゃ、ダメ!!  もぉ〜〜っ!」
横島 「隊長……、聞いてたんスか…。」
美知恵 「狭いオフィスだもの、聞こえるわよ。 横島クン、令子をよろしくねっ!」
横島 「あっ、はいっ! じゃあ、隊長も美神さんに、西条への最後通牒を渡すように
  言ってもらえませんか? あのやろ〜、結構、しつこいから…」
美知恵 「ん〜、それは令子にまかせるわっ!」
横島 「あのぉ〜…」
   
   
タイガー 「でも、ピートさん、ケジメがついてるなら、逆に励ましやすいんではないですカイノ〜?」
ピート 「う〜ん、仕事のことなら問題ないですけど、プライベートのことですからね〜…」
   
横島 「ところでピート、おまえ、モテてるくせに、なんで彼女を作らないんだ?
  やっぱ、あっち方面に、気があるのか?」
ピート 「横島さんっ! じょ、冗談はやめてくださいっ! 変な噂がたっちゃうじゃないですかっ!」
   
タイガー 「魔理の話だと、六道女学院の霊能科では、そうだと信じられてるそうジャ。」
横島 「うんうん。 そのほうが、彼女たちのためになるっ!」
ピート 「そ、そんなぁ〜っ!」
横島 「だったら彼女を作っちゃえよ。 色男がフリーなのは、男も女も迷惑なんだよっ!」
   
ピート 「でも僕は…、人間の彼女を持たないと決めているのです…。
  エミさんにも、そのように伝えてますし…。」
横島 「へぇ〜、なんで?」
   
ピート 「やはり、人間との時間の感覚が違い過ぎてしまいますので…。
  自分にとっての50年は、あまりにも短すぎて…」
横島 「じゃあ、好きな女の血を吸って、吸血鬼にしちゃえばいいんじゃないの?」
ピート 「出来ませんよ、そんなことっ! 島のみんなに、血を吸うなって言い続けてきたのに、
  自分がそうするわけにはいかないでしょ?」
横島 「じゃ、島に帰れっ!」
ピート 「ブラドーがいるんですよっ!?」
   
横島 「えっ? やっつけたんじゃなかったっけ?」
ピート 「僕に血を吸われて、絶対服従してますが、いたって元気です…
  命令したのは、島を出るな、血を吸うな、ということだけで、性格はあのままなので…」
横島 「う〜ん、恥ずかしいオヤジだからなぁ〜…」
   
ピート 「それに…… 今では、世界中の子供たちの人気者なんだそうです…
  なんでも、島の子供たちによる『ブラドー観察日記』が島内でウケたため、
  若い連中が面白がってインターネット上に掲載してしまって…。
  それを読んでみると…  あああぁぁぁ〜〜〜っ!!」
横島 「そりゃ〜、帰りたくねぇよなぁ〜…」
   
  苦笑しながら席を立つタイガー
タイガー 「わっしは、そろそろ帰ります。 魔理と約束しとりますケン。
  ピートさん、エミさんのこと、出来たらお願いしますケン…」
ピート 「まあ、話す機会があれば、それとなく励ましてみますね。」
横島 「銀ちゃん、もう帰ったかな? 帰ってたら俺も事務所に戻ろう…」
美知恵 「ピートくん、そろそろ現場に向かう時間よっ! 用意は出来てるわよねっ?」
   
   
  その頃、仕事をキャンセルして、自宅でゴロゴロしているエミ…
エミ 「あ〜あ、なんだか面白くないわね〜。
  私の最大のライバルの令子が、横島程度で満足しちゃうワケ?
  横島が悪いってワケじゃないんだけど、なんか気が抜けちゃうのよね〜
  ん〜… 結局、私の場合、横島に甘える令子なんか見たくない、ってことなワケ?」
   
   
  タイガーたちの帰った後、車で霊障現場に向かう美知恵とピート
  そこに西条から連絡が入る
西条 「ピートくん、今、都庁にいるんだが、霊障排除の依頼が入ったんだ。
  僕一人では手が足りないので、こちらに来てもらえないか?」
ピート 「う〜ん、僕の方も、今抜けると隊長と立てた計画が狂ってしまうんで…
  あっ、そうだ。 今、エミさん、仕事をキャンセルして家にいるそうなんです。
  お願いすれば、来てもらえると思いますよ?」
   
西条 「エミさんか。 彼女に来てもらえるなら、大歓迎なんだが…。
  でも、仕事をキャンセルしたということは、体調がすぐれないからじゃないのかい?」
ピート 「いえ、タイガーさんの話によると、美神さんと横島さんがつきあってるのを知って、
  気が抜けちゃってるだけなんだそうです。
  できれば、西条さんに励ましてもらえればと思って…  あっ!!」
   
西条 「ほぉ、そうかいっ… わかった、そうするっ!」 (ピキピキ)
  プッ! 西条に携帯を切られてしまったピート…
ピート 「あああ…、西条さん、すいません〜〜〜!」
  切れた携帯に向かって謝るピート…
美知恵 「あ〜あ、しょうがないわね〜、ピートくん… そのことで落ち込んでるのは西条クンの
  方なのに…  西条クンなら、仕事はキッチリこなすでしょうけど、しばらくは彼の
  刺の有る言葉を聞かされるはめになりそうねっ…。」
ピート 「あああ………」
   
   
  気を落ち着かせるために深呼吸一つしたあと、エミに電話する西条
西条 「やあ、エミさん。 西条だが…」
エミ 「あら、西条さん。 まだ、生きてたワケ? 令子にふられて、とっくに成仏してしると
  思ってたんだけど。」
西条 「うっ…! きょ、今日は仕事の依頼で電話したんだ。
  今から、都庁に来て手伝ってもらいたいんだが…」
   
エミ 「仕事〜? 今日は、なんだかやる気がしないワケ〜。 ほかを当たってくれる〜?」
西条 「う〜ん、それなら僕の自腹で1千万だそうっ!」
エミ 「お金で私を釣ろうっていうワケ〜? おたくも進歩ないわね〜。
  令子じゃあるまいし、お金で簡単に気を変えるほど困ってないワケ〜。」
   
西条 「………。  ふふんっ、そんなこと言ってるから、いつまでたっても令子ちゃんに
  勝てないわけだなっ!」
エミ 「なっ!? い、いつ、私が負けたっていうワケっ!?」
西条 「こなしている仕事の質、量ともに、負けてるだろっ?」
エミ 「くっ…! あ、あっちは、人数が多いだけなワケっ!」
西条 「でも、事務所に住む3人は、令子ちゃんが仕事中に見つけてきた人材だよっ?
  君のところに、そういう人材がいないというのが、仕事の質の差じゃないのかな?」
   
エミ 「うぅ〜…、痛いとこ突いてくるわねっ… わかったわっ! 手伝ってあげるわよっ!」
西条 「ありがとう、エミさんっ!」
エミ 「ふんっ! 横島に負けるような男には、手助けが必要だからねっ!」
西条 「うっ…!」
   
   
  都庁で仕事の打ち合せをする西条とエミ
エミ 「あら、さすがに少しやつれてるわね?」
西条 「た、たいしたことはないさっ。」
エミ 「ふ〜ん、ふられた相手があんな女だから、どうってことないだろうと思ってたけど、
  奪い合って負けた相手があんな男だから、さすがにこたえてるワケね?」
西条 「エ、エミさんっ、し、仕事の内容なんだがっ!」
   
  西条の話によると、都の遺跡発掘現場で悪霊が多数発生し、手のつけられない状態に
  なっているそうである…
エミ 「なるほど…。 古代の悪霊が目を覚ましたとなると、少々やっかいな仕事になりそうね…」
西条 「装備の方は心配せずに、最高の物を使ってくれればいい。」
   
   
  発掘現場に来てみると… 大量に飛び交う悪霊を呆然と眺める二人
エミ 「どうするワケ? 普通の除霊じゃ、危険過ぎるわよっ?」
西条 「でも、エミさん、これぐらいの悪霊なら、いつも霊体撃滅波で退治しているんだろ?」
エミ 「そうだけど… おたく、タイガーの代わりをやるつもりなワケっ!?
  知ってると思うけど、30秒間、私の盾になってもらわないとなんないのよ?
  タイガーは、精神感応で霊をだまして時間稼ぎが出来るけど、おたく一人で大丈夫なワケ?」
   
西条 「そんなに僕を見くびらないで欲しいな。 霊圧をコントロールすることぐらい簡単だ。
  僕の発する霊気の中に居れば、この程度の悪霊なら近寄れないはずだ。
  それでも襲ってくるやつは、僕の霊剣で叩き切ってしまえばいいから。」
エミ 「でも、霊が近づいて来てくれないと、霊体撃滅波も効かないワケ…」
   
西条 「それも、問題ないよ。 最初は強めの霊圧で悪霊の注意を引いて、それから徐々に
  霊圧を落として行けば、悪霊はこっちが弱ってきてると勘違いして、一斉に襲って
  くるはずだ。 そこをエミさんの霊体撃滅波で退治すればいい。」
エミ 「なるほど…。 机上の計算では、うまくいきそうね。 やってみるか…」
   
  カッ!! 西条の発する霊気に気圧されて退く悪霊たち…
エミ 「えこえ〜こ あざら〜く…」
  西条の霊気に守られて、呪的踊りをするエミ 30秒経過…
エミ 「霊〜体〜撃滅波ぁ〜っ!!」  バシュッ!  しゅるるぅ〜〜っ!
  その場にいたすべての悪霊が、エミの一撃で退治される
   
エミ 「ふぅ、うまくいったわね。 この手は、これからも使えるわよ、西条さん。
  えっ? どうしたワケっ? 大丈夫っ!?」
西条 「あ、ああ、大丈夫だ…。」
  腰を抜かして、尻餅をついている西条… 霊力を使い過ぎたらしい…
   
エミ 「悪霊にやられたワケじゃあなさそうね…。」
西条 「いつもだったら、全然問題ないんだが…。 今日はなぜか…。」
   
エミ 「あ〜あ、いい男が情けないわねっ。 ほら、手を貸すから起きなさいよっ!
  どうせ、あれ以来ろくなもの食べてないんでしょっ?
  そんなことしてるから、霊力が続かないワケ。
  今夜の夕食、つきあってあげるから、いい物食べて体力回復させなきゃ!
  もちろん、おたくのおごりでよっ?」
西条 「ああ…。 すまない…。」
  西条を慰めてあげたいと思っているエミ 彼女なりの精一杯の西条への思いやり
  いい人な役回りのときは、どうしてもぎこちなくなってしまう…
   
  高級レストランで食事をする二人…
  トリュフをほお張りながら話をするエミ  もぐもぐ…
エミ 「そりゃ〜、おたくにしてみれば辛いかもしれないけれど、私からみれば、この方が
  良かったと思うワケ。 おたくみたいに正義感の強い人間が、令子と一緒になって、
  うまくいくと思ってたワケ?」
西条 「それは、そうなんだが…」
   
エミ 「令子の反則技と、おたくの正義感とじゃ、勝負は見えてるワケ。
  おたくが令子の悪の道に巻き込まれて、ICPOを首になったら、日本の心霊捜査は
  10年は後戻りしちゃってたわよ?」
西条 「仕事のことを考えると、そのとおりなんだが…」
   
エミ 「それに…、令子がおたくを向いてないのはわかってたと思うんだけど…
  もっと早く、他の女性に気を向けてもよかったんじゃない? おたく、モテるんだから…。」
西条 「もちろん、それも考えた… 考えたんだが…
  令子ちゃんの気持ちが向いているのが、あの男だと思うと……」
  パリンッ! 西条の握り締めてたワイングラスが砕け散る…
   
  カタンッ… 何も言わずに席を立ち、割れたグラスで怪我をした西条の右手を
  手当てするエミ 自分のハンカチを包帯にして…
西条 「あっ…。 すまない…。 ありがとう…。」
  再び、何事も無かったかのように、自分の席に戻るエミ…
   
エミ 「ふぅ…、結局、おたくの場合、横島へのライバル意識が邪魔してたワケね…。
  ま、その気持ちもわかんないではないけどね。
  それでも、決着がついただけでも良かったかもよ。
  令子も、おキヌちゃんの決断がなければ、いつまでもずるずると前のような状態を
  続けていたと思うから。」
西条 「………、そうだな…。」
   
  もぐもぐもぐ…  しばらくは食事に集中する二人…
   
西条 「ところで… エミさんの仕事のやる気が起こらない理由なんだが…」
エミ 「えっ? 私の? 私の場合は、たいしたワケじゃないわよ?
  ライバルの令子が、横島に甘えるのを見たくないと思ってるだけなワケ。
  数日すれば、もとに戻るけど?」
   
西条 「いや、違う。 もっと別の理由だと思ったんだ…。」
エミ 「ふ〜ん、どんなワケ? 聞かせてもらえる?」
   
西条 「さっき、タイガーの代わりにエミさんの盾となったんで気付いたんだが…
  エミさん、タイガーのことを… いや、より正確に言えば一文字さんのことが気になって
  仕事が出来ないでいるんだね?」
エミ 「!!」
   
西条 「タイガーの任されている仕事は、エミさんを命懸けで守ることだ…
  この仕事は、生半可な気持ちでは勤まらない。 タイガーは、はじめからエミさんのことを
  崇拝してたから、なんの疑問も抱かず、その役割に徹していた。 エミさんも、タイガーの
  気持ちがわかっていたからこそ、安心してその役割を任せたわけだ…。」
   
  西条の話をうつむきながら聞いているエミ…
   
西条 「ところが、タイガーにも一文字さんという彼女ができた。 彼女が普通の女の子なら
  エミさんも、さほど悩むことも無かっただろう…。 危険な仕事ということを、その子に
  伝えて納得してもらうだけで、よかったはずだから…。
  だが、彼女もGSだ。 GS同士のカップルなら、命懸けの仕事は二人一緒にお互い助け
  合えるようにするのが自然な状態なのは、誰もが感じるところだ…。
   
  エミさんも、いずれは二人をそうさせたいとは思いつつ、仕事だからと割り切って、
  今までどおりタイガーに危険な役割を続けさせていた。
  エミさんの心の逃げ道として、令子ちゃんも、彼氏ではない横島を危険な目に遭わせ
  続けてきたという事実が、存在していたから…。
   
  だが、令子ちゃんが奴とつきあうことになり、逃げ道が塞がってしまった。
  今、エミさんは、一文字さんのことを思って、タイガーを自分を守るために
  命を張らせていいのかどうか、それを悩んでいるんだと思う…。」
   
エミ 「令子と違って…」
  西条の言葉を聞き終えて、重い口を開くエミ…
   
エミ 「令子と違って、タイガーは私の恋愛対象なんかにはならなかったけど…
  あいつは私の、たった一人の家族だと思っていたワケ…
  今でもそう思っているけど、彼女がいることを無視するわけにはいかないワケ…
  おたくの言うとおり、もう私のために危険な目には遭わせたくないワケ…」
   
  それだけを言うと、再び口を閉ざすエミ…
  ぽとり。 彼女の手元に落ちたのは、人前では見せたことのない涙…
   
西条 (えっ!? どういうことだっ? タイガーを危険な仕事からはずすだけなら、
   ここまで感情を動かすはずは無いのだが…
   …………、はっ! そうかっ!
   彼女は一人になるのを恐れている…。 また、一人っきりになってしまうことをっ!)
   
  警視庁に保管されているGS経歴ファイルのエミの項目を思い出した西条…
  それとともに、自分が令子を想う呪縛から解き放たれて行くことに気付く…
   
  今度は自分のハンカチを彼女に手渡しながら話しかける西条
西条 「もう、心配いらないよ。 君を一人になんかしないから。」
エミ 「………、えっ?  どういうこと…?」
   
西条 「僕が君を守るということさっ!」
エミ 「えっ? 西条さん? 仕事で…、ということ?」
西条 「仕事でだけなら、君を守りきれないだろ?」
   
  ようやく西条のいわんとすることを理解したエミ
エミ 「ふんっ。 あいかわらず、尊大な言い方をする男ね…。 ほんとに、それでいいワケ?」
西条 「もちろんさ。 君にも異存はないだろっ?」
エミ 「そのあたりの自信過剰なところは気に食わないけど…
  おたくらしさには違いないわね……」
   
   
  翌日 ICPOオフィスの前にエミが一人で立っている
  エミを見つけて事務所から出てきた令子と、令子についてきた横島…
令子 「あら、エミ、久しぶりね? そんなとこで、何やってんの?
  ピートにふられたくせに、まだあきらめきれないのっ?
  そんなことやってると、あっというまにオバサンになっちゃうわよ〜?」
横島 「それを言うだけのために、出てきたんスか…」
   
  令子の言葉を聞き流す余裕のあるエミ
エミ 「おたくには、関係ないワケ〜」
令子 「なっ? あんた、その態度、何か隠してるなっ!? 白状しなさいっ!」
エミ 「ふんっ。 すぐにわかるわよっ!」
   
  ICPOオフィスから出てきた西条
西条 「エミさん、お待たせっ!」
エミ 「西条さん〜〜!」
  西条に抱きつくエミ
令子 「え゛っ!?」
横島 「エ、エミさんが、西条とぉ〜〜〜〜っ!?」
   
西条 「あっ? 令子ちゃん?」
エミ 「西条さん〜、令子なんかほっといて、仕事に行きましょう〜!」
西条 「えっ、あっ、そうだな。 じゃ、令子ちゃん、こういうことなんで…」
エミ 「んべ〜〜〜!」
  令子に向かって舌を出すエミ…
  呆然とする令子たちを無視して仕事先に向かう二人…
   
   
  美神事務所
キヌ 「すいません、すいません。 その、今日はとても仕事の出来る精神状態じゃなくって…」
  今日の仕事をキャンセルするおキヌちゃん…
  次の仕事をいつまで延期するかが、今の彼女の一番の悩みだったりして…
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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