その後のGS美神 2003 リポート1 氷室 キヌ

戻ってきます。

著者:まきしゃ


    2003年 令子24歳 横島21歳 キヌ20歳、シロとタマモが居候しはじめてから
  4年の月日が経過していた某日の夜…
  キヌの部屋
タマモ 「おキヌちゃん、ほんとに出ていっちゃうの…?」
キヌ 「うん、ごめんね……。 これしかないと思ったから…」
タマモ 「また、すぐに戻ってくるわよね?」
キヌ 「わかんない…。 でも、さっき話したみたいになれば必ず戻ってくるわ。
  だって、みんな私の大事な家族なんですもの。」
   
タマモ 「そうね、わかったわ。 戻るまで気長に待ってるわね。
  みんなには、どう話すつもりなの?」
キヌ 「直接話しをすると行けなくなっちゃうから、置手紙していくわ…」
   
タマモ 「じゃあ、シロにばれないようにして、事務所を出ないとね。
  私が幻術を使って、シロを化かしておくから、その間に出ればいいわ。」
キヌ 「ありがとう、タマモちゃん…」
   
   
  翌朝 事務所
令子 「おキヌちゃんが家出っ!?」
   
置手紙 『美神さん、横島さん、シロちゃん、タマモちゃん、ごめんなさい。
  しばらく、他所で勉強してきます。
  しばらくしたら、戻ってきます。      キヌ 』
   
令子 「なによっ、この置手紙っ! さっぱり、わけわかんないじゃないのっ!!
  シロっ! タマモっ! あんたたち、同じ屋根の下で暮らしてるんだから、
  昨夜の状況、なんか知ってるわよねっ!?」
   
シロ 「拙者、何も知らないんでござる…。 拙者も朝起きて、おキヌちゃんがいないのに
  気付いて驚いたんでござる…」
タマモ 「私も……」
  そういう二人の様子を、じっと見つめる令子…
  タマモのわずかな表情の変化を見逃さない
   
令子 「シロは、ほんとに何も知らなさそうね…… でも、タマモっ!
  あんたは、なんか隠してるわねっ!? 知ってることを言いなさいっ!」
タマモ 「………、言わないようにと言われてるから…」
   
令子 「ふんっ、おキヌちゃんに口止めされてるのねっ!?
  それなら、言わなくてもいいわよっ!?  言うまで、あぶらあげ抜きだけどねっ!
  とにかく、すぐに見つけ出して、連れ戻すんだからっ!!」
タマモ 「ダメッ!! そんなことしたら、おキヌちゃん、また出ていっちゃうっ!!」
令子 「えっ!?」
タマモ 「美神さんのバカ〜〜〜!!!」
  事務所を飛び出すタマモっ!
   
横島 「ち〜っす。 なにか有ったんスか? タマモが飛び出してったけど…」
シロ 「先生っ! おキヌちゃんが、家出しちゃったんでござるっ!!」
横島 「えぇっ!?」
令子 「連れ戻すかどうかはともかく、居場所を捜してわけを聞かなきゃ話になんないわっ!」
   
   
  キヌの行きそうな場所に、かたっぱしから電話をかける令子
  もちろん、相手先にはキヌが家出したなんてことはおくびにも出さない
令子 「ああ、弓さん? そちらに、おキヌちゃん行ってない? そう、いないのね?
  あのコ、携帯持たずに出かけちゃって、連絡取れなくて困ってるのよ。
  見つけたら、すぐに連絡ちょうだいねっ!」
   
  一方、キヌの匂いをたどって捜しに出ているシロと横島
シロ 「先生、こっちでござるっ!」
横島 「えっ? こっちと言えば… ああっ、やっぱり…」
  JRの駅構内に続いているキヌの匂い…
シロ 「先生… 電車に乗ってたら、拙者にはもう無理でござる…」
横島 「しかたがない、戻るか…」
   
  美神事務所に戻ってきた二人…
令子 「そう…、まあいいわ…。 どこに行くにしても電車を使うのは当然だしね…。
  勉強してくるって書いてあったから、GS関係者のところに行ったに違いないわっ!
  ひととおり近場のGSに電話したけど、いなかったとなると…
  シロっ! 六道女学院の卒業者名簿、持ってきてくれるっ!?」
シロ 「わかったでござるっ!」
   
   
  その頃、大垣行きの夜行列車内で一夜を明かし、電車を乗り継いで
  京都にたどりついたおキヌちゃん 行き先は、神野の実家の神社
神野 「いらっしゃい、おキヌちゃん。 待ってたわっ!」
キヌ 「ごめんね…。 突然、居候をお願いしちゃって…」
神野 「ううん、うちはいつでもかまわないわよ。 親同士も神主組合で知り合いなんだし、
  ゆっくり修行してってね。」
   
  注:神野=六道女学院のキヌの同窓生・巫女姿での心理攻撃を得意とする
       名言 「日本人は日本で遊べばいいのよーーっ!!」 が知られる
   
   
  唐巣神父の教会に駆け込んできたタマモ
  一文字に作ってもらった、『きつねごん兵衛』を食べながら…
タマモ 「ほんっとに、美神さん、自分勝手なんだからっ!! ハフハフッ!
  少しは、おキヌちゃんの気持ちを考えてから動けってぇのっ!」
一文字 「早速、こっちにも美神さんから電話があったよ。
  一応、知らないふりしといたけど、居場所がばれるのも時間の問題だな…」
   
タマモ 「おキヌちゃんの行動パターンは、美神さんにはお見通しだしね…
  それにしても、横島っ! なんで、あんなにモテるのよっ!
  うちの事務所の3人に惚れられてるなんて、信じられないっ!」
   
一文字 「あたしも、あいつのどこがいいのかわかんねぇなぁ〜。
  おキヌちゃんが、あいつをどう思ってきたかは、よく知ってるんだけどね…
  ま、おキヌちゃんも、ずっとあの事務所だけで生活してきたから、
  しばらくの間、環境変えるのも、いいことだと思うよ。」
   
タマモ 「あ〜、一気に話してすっきりした。 魔理さん、また来るねっ!」
一文字 「ああ。 あたしも唐巣先生の弟子だからな。 『よろず相談承ります』 だよっ!」
タマモ 「ん〜、似合わないけど…」
一文字 「このぉ! あははっ。」
   
  その日の夜 仕事先から家に戻ってきた神野とキヌ
神野 「お疲れ様〜。 おキヌちゃんのおかげで、楽できたわっ!」
キヌ 「たいして働いてないんですけど…」
神野 「まあ、新築ビルの起工式のお払いなんて、あんなものよっ。
  別に、ひどい霊障が有って呼ばれてるわけじゃないから…
  あれっ? おキヌちゃんに宅配便だわっ!?」
キヌ 「えっ? 美神さんからっ? もう、居場所がばれてるっ!?」
   
神野 「ノートパソコンみたいね。」
キヌ 「どんなデータが入ってるのかしら……」
神野 「とりあえず、電源入れてみたら?」
   
  ピッ ヴィーン ピポピパポピポ
   
令子 「おキヌちゃんっ? おキヌちゃんなのねっ!?」
キヌ 「えっ? えっ? これって、録画のデータですよねっ?」
   
令子 「何寝ぼけてんのよっ! インターネット通信よっ!
  立ち上げたら、こっちに繋がるように設定しといたの。
  そんなことより、あんた、どうしちゃったっていうのっ? ちゃんと説明しなさいよっ!!」
   
キヌ 「ごめんなさい、ごめんなさいっ!  でも……、今はまだ……」
   
横島 「無理に言わなくてもいいんだよ、おキヌちゃん。
  美神さんみたいな悪どい商売を続けるのが嫌になっ…  ぶっ!」
令子 「あんたは、黙ってなさいっ!」
キヌ 「横島さん……」
   
令子 「わかったわ…。 今日のところは、元気な顔見れただけで我慢しとくわっ!
  あんたにも、それなりの思いが有って、出ていったんでしょうから…
  でもね、必ず戻ってくるのよっ! できるだけ早くっ! いいわねっ、おキヌちゃん!!」
キヌ 「はい…」
   
  事務所との通信を終えたあとの神野の家では…
神野 「そっかぁ〜、ワケありの家出だったんだぁ〜」
キヌ 「ごめんなさい、うそついちゃって…」
神野 「ううん、気にしない、気にしない。 でも…、そのワケって、横島さんのことなのね?」
キヌ 「えっ! えっ? えっ?」
神野 「顔に出てるわよ。 それで、家出ってことは、ふられちゃったのかぁ…
  おキヌちゃんが、横島さんのこと好きだっていうのは、公然の秘密だったもんなぁ〜…」
   
キヌ 「そ、そ、それより、神野さんの彼氏って、どんなひとっ?」
神野 「私の? はい、この写真っ!」
キヌ 「えっ? かっこいいっ? どこで知り合ったの? こんな素敵な人とっ!」
神野 「私の得意技、知ってるわよね?」
キヌ 「ええ、心理攻撃…、あっ!ずっるいんだぁ〜〜!!」
神野 「えへへへへ…」
   
   
  キヌとの通信を終えたあとの美神事務所…
令子 「いったい、なんでなのよっ、おキヌちゃん…」
横島 「俺も、ずっと考えてたんですが、さっき言いかけたことが原因だと…」
令子 「何よっ! 私の仕事のやり方が原因っていうわけ?」
   
横島 「ええ…。 おキヌちゃんが美神さんに文句を言うときって、
  悪どい商売をしたときだけだと思うんですけど…」
令子 「でも、一緒にやりだしてから、もう5年になるのよっ! なんで、いまさらなのよっ!」
   
横島 「おキヌちゃん、今年20歳になったからじゃないですか?
  正義感強いし、大人として、美神さんの悪事を手伝ったり見逃したりするのが
  つらくなったから…… だとしても、おかしくは無いですよね…?」
   
令子 「それじゃぁ、おキヌちゃん、もう戻って来ないってことっ!?」
横島 「いえ…   (悪どい商売、変える気は無いんか…?)
令子 「じゃあ、どうすれば戻ってくるのよっ!?」
横島 「…………」
   
  寡黙になる令子と横島…
  もちろん二人とも、家出の原因は、キヌの横島への思いが関係しているのであろうと
  いうことを、強く感じてはいる… 
  ただ、あまりにもデリケートなことだけに、それを口にすることが出来ないでいた…
   
   
  深夜 自宅のベッドの中でぼんやりと考えている令子
令子 「おそらく、横島クンのことを、あきらめるための家出だとは思うけど…
  タマモがあんなこと言うからには、無理に連れ戻すわけにもいきそうにないし…
  でも… いつになったら戻ってくるのよっ!
  あんたは私の、一番大切な友達なのよっ!?」
   
  深夜 自室の布団の中でぼんやりと考えている横島
横島 「やっぱ、俺、おキヌちゃんにふられちゃったんだよなぁ〜〜?
  おキヌちゃんの心を引きとめるには、俺が京都に迎えに行くしかないんだけど……」
   
  《横島の妄想》
横島 「おキヌちゃん、迎えに来たよ。 一緒に帰ろうっ!」
キヌ 「ごめんなさい、私、帰りません。 美神さんのそばに、いてあげてください。」
  とか言われて、一人で東京に戻ってきたら…
令子 「あら、横島クン、一人でだったら戻らなくてもいいわよっ?
  さんざん私をくどいてきたくせに、あんたの本命は、おキヌちゃんなんでしょ?
  私も、あんたのこと気にせずに、西条さんとつきあうことにしたからっ!」
   
横島 「あああっ、だめだぁ〜〜っ! そんなことになったら、立ち直れん〜〜〜っ!」
   
  結局、おキヌちゃんが自分で帰ってくるまで、ひたすら待つことにした令子と横島…
   
   
  数日後 その日の仕事先の映画撮影所にやってきた神野とキヌ
神野 「今日の仕事は、新作映画のお払いなの。 いろんな俳優に会えるわよっ!」
キヌ 「どんな人が来てるのかなっ? あっ、近畿クンもっ!
  近畿ク〜ン、お久しぶり〜っ!」
近畿 「えっ? あっ? おキヌちゃん!? 久しぶりやね〜。 ってことは、横っちもきとるんか?」
キヌ 「えっ!? いえっ、よ、横島さんは…」
   
神野 「おキヌちゃん、その横島さんにふられて家出してきたとこなの。
  近畿クン、よかったら、なぐさめてあげてもらえる?」
近畿 「なにぃっ!? そやったんかぁ… 知らんかったとはいえ、ごめんな。
  仕事の後、時間とれるやろ? 一緒に食事しよっ。」
   
   
  撮影所のレストラン
キヌ 「横島さん、別に何も私には言ってないんです…
  横島さんが美神さんを好きなのを知ってるので…  そ、それで、わたし…」
   
近畿 「そっかぁ、横っちは美神さんのことが好きやったんかぁ…
  それやったら、しゃあないなぁ。 こんなかわいい子、ふりよるなんて絶対許せんって
  思っとったんやけどなぁ……」
   
神野 (近畿クン、おキヌちゃんのこと、気に入ってるのかな?
  よし、ちょっと、いたずらしちゃえっ!)
   
  ブンッ! 幻術を使う神野
キヌ 「(ぼぉ〜〜〜…)  あれ〜? ここはどこかしら〜 大きな湖〜?」
近畿 「(ぼぉ〜〜〜…)  ん〜… どうやら…、琵琶湖みたいやね〜…」
  神野も日本ではよく遊んでいるらしく、とってもリアルな幻覚…
   
キヌ 「あれ〜? 近畿クン〜? どうしてここに〜?」
近畿 「え〜とぉ〜… 俺たち〜、デートしとるんやろ〜〜?」
キヌ 「そっかぁ〜 デートなんだぁ〜 えへへ、うれしい〜〜」
近畿 「俺もやで〜 なぁ、おキヌちゃん〜 あっちに行ってみようか〜」
  そういって、キヌの手を握る近畿
   
  ブンッ! 幻術を解く神野
キヌ 「あれれっ!? ここはっ? 撮影所のレストランっ?」
近畿 「えっ? なんで? うそやろっ? 俺、たしか、おキヌちゃんとデートしてて…」
神野 「えへへ。 どうっ? 楽しかったっ?」
キヌ 「あっ、神野さん〜〜〜!」
   
神野 「うん、ちょっと幻術使っちゃったの。
  それより、近畿クン、いつまで手を握ってるの? 噂が広がっちゃうかもよっ!?」
近畿 「えっ? あっ、ご、ごめん、おキヌちゃん。」
キヌ かぁ〜〜 顔真っ赤 「い、いえっ。」
   
近畿 「そっか、幻やったんかぁ〜… う〜ん、ええ幻、見せてもろたんやけど、
  かえって、欲求不満になってしまいそうやで…。 あの〜、おキヌちゃん、
  よかったら明日、今見せてもろうた場所に一緒に行きたいんやけど、ええやろか?」
キヌ 「えっ? で、でも、仕事が……」
   
神野 「居候は、仕事なんかしなくてもいいのよっ!
  それより、あとでどんなデートだったか話しを聞かせてねっ!」
キヌ 「えっ! えっ?」
近畿 「よし、決まった。 じゃ、明日もここで待ち合わせやっ!」
   
   
  翌日 近畿とのデートを終えて神野家に帰ってきたキヌ
神野 「で、どうだった? どうだった?」
キヌ 「うん、楽しかった! 神野さんに教えてもらった場所をいろいろ周ってきたの。
  とっても景色が良くって。」
神野 「そうじゃなくって、近畿クンはどうだったのっ?」
   
キヌ 「えっ? えっと、とっても優しくしてくれて…
  で、近畿クンが撮影でこっちにいる間、会って欲しいと言われたの。 どうしよう…」
神野 「え〜〜〜っ! すごいじゃないっ! 会いなさいよっ!」
キヌ 「でも、仕事もしないと…」
   
神野 「あんた、何言ってんのよっ! 仕事が目的で家出したんじゃないんでしょっ?
  私にしたら、あの近畿剛一が、おキヌちゃんとつきあってるってことのほうが、
  仕事手伝ってもらうより嬉しいんだからっ! みんなに、自慢できるし…
  おキヌちゃんっ! 会えるときは全部会いなさいっ!」
キヌ 「えっ? えっ?」
   
神野 「で、いつまでこっちにいるんだって?」
キヌ 「あと、10日ほどだって…」
神野 「10日かぁ…。 おキヌちゃん、頑張って、ものにしなさいよっ!」
キヌ 「えっ、えっと、うん…」
   
   
  翌日のデート 京都観光をしながら…
キヌ 「え〜っと…、いいのかなぁ、近畿クン…」
近畿 「ん? どないしたんや? おキヌちゃん。」
キヌ 「その、近畿クン、仕事が忙しいのに、私のために時間を割いてくれて…」
近畿 「そんな、無理にお願いして、会うてもろうてるのは僕の方やで?」
   
キヌ 「でも…、撮影所には綺麗な女優さんたちが、沢山いるのに…」
近畿 「そんなん、関係あらへん。 僕が会いたいんは、おキヌちゃんだけや。
  おキヌちゃんと一緒にいると、楽しいんや。」
キヌ 「えっ? えっと、私も近畿クンといると、楽しいですっ!」
近畿 「(クスっ!) おおきにな。 いまの表情、とってもかわいかったでっ!」
キヌ 「えっ? えっ?」 かぁ〜〜〜 顔真っ赤
   
   
  深夜 神野家に間借りした寝室でぼんやり考えるキヌ
キヌ 「なんだか、予想もしなかったことになっちゃったけど、いいのかなぁ〜?
  こんなつもりで事務所を出てきたんじゃなかったんだけど…
  でも、近畿クン… 私だけに会いたいだなんて…
  きゃぁ〜〜〜 きゃぁ〜〜〜っ!!」
  しばらく一人でテレまくったあと…
   
キヌ 「そういえば、私、いままでずっと横島さんだけを見ていた……
  横島さんは……、ずっと……、美神さんだけを……」
   
  深くため息をついたあと、深呼吸をするキヌ
キヌ 「ふぅ、もう決断したんだもの。 いつまでも迷ってちゃだめよね?
  ………、近畿クン、私だけを見ていてくれるかな……?」
   
   
  デートの回数を重ねているうちに、世間ずれしてないおキヌちゃんにどんどん惹かれていく近畿
  一方、おキヌちゃんも近畿の自分に対する気遣いを心地よく思っている
  とくに、近畿が自分だけを見つづけてくれることの嬉しさを、強く感じて…
   
  近畿の帰京前日のデート 二人の決断の日…
近畿 「おキヌちゃん、好きやっ! マジでつきおうて欲しいっ!」
キヌ 「えっ!? えっとっ…   はいっ。」
  近畿の告白を素直に受け入れるおキヌちゃん
近畿 「ふぅ〜、おおきにな、おキヌちゃん。 マジでびびったでぇ〜」
  冷や汗でぐっしょりの近畿
キヌ 「ええ〜? 近畿クンがですか〜?」
近畿 「そらそやがな…。 マジな告白っちゅうのは、一世一代の大仕事や。」
キヌ 「そ、そうですよね。」
   
近畿 「それで、明日なんやけど、一緒に東京戻らへんか? 
  おキヌちゃんといる時間を、少しでも多く作りたいんや。
  おキヌちゃんの話からすると、俺と一緒に帰るなら家出の理由も無くなるんやろ?」
キヌ 「はい。 え〜っと…どうなるのかな…? ご、ごめんなさい。 私、ぼ〜っとしちゃって…」
   
近畿 「あはははっ、おキヌちゃんらしいわ。
  よっし、早速、インターネット通信で美神さんたちに連絡しよ。
  顔見せたほうが、話しが早いわ。」
キヌ 「は、はい。」
   
  神野の家にやってきた二人
神野 「おキヌちゃん、おかえり〜。 えっ? 近畿クン?」
近畿 「ども。 おじゃまします。 神野さん、感謝してるで!」
神野 「えっ!? じゃあ、あなたたちっ!?」
キヌ 「うん。」
近畿 「それで、明日一緒に東京に帰ることにしたんや。 例のパソコン、使わせてもらうで。」
神野 「すご〜いっ! おキヌちゃん、よかったね!」
キヌ 「うんっ!」
   
   
  美神事務所
シロ 「美神さん! おキヌちゃんから連絡がっ!」
令子 「あっ! おキヌちゃん? あんた、もっとまめに連絡しなさいよっ!
  どう? 戻る気になったの?」
キヌ 「は、はい」
   
令子 「えっ? マジ? いつ?」
キヌ 「あ、あの、明日なんですけど…」
令子 「明日なんて言わず、今すぐでもいいのよっ! みんな心配して、待ってるんだから…」
キヌ 「そ、それでなんですけど…」
  横を向いて近畿のそでを引っ張るおキヌちゃん 令子には見えていない
   
令子 「ん? どうしたの? おキヌちゃん。 顔あからめて… 横に誰かいるの?」
近畿 「お久しぶりです、美神さんっ!」
令子 「えっ? 近畿クンっ!?」
横島 「銀ちゃん? なんで貴様がそこにいるんだぁっ!?」
   
近畿 「横っちか。 久しぶりっ!
  俺、おキヌちゃんと正式に付き合うことになりました。
  明日、二人で一緒にそちらに戻りますので、よろしくお願いします。」
   
横島 「な、なんだと〜〜〜〜!?  ぶっ!?」
令子 「あんたは黙ってなさいっ! シロっ、こいつを縛って!
  近畿クン、驚いたけど、おキヌちゃんが戻ってくるなら、こちらに異存はないわ。
  おキヌちゃんも、それでいいのね?」
キヌ 「はいっ」
   
令子 「よかった……。 ほんとに心配してたんだぞっ!」
キヌ 「ごめんなさい、ごめんなさい。 あの…、タマモちゃん、います?」
   
令子 「ほら、タマモ、あんただって。」
キヌ 「タマモちゃん、ごめんねっ。 こんなふうになっちゃった…」
タマモ 「ううん、このほうが良かったと思うわっ。」
   
令子 「この子、とうとう口を割らなかったわよ。」
キヌ 「あぁぁ、タマモちゃん、ごめんなさい〜〜」
タマモ 「気にしなくていいわ。 明日から、また一緒に暮らせるんだもの。」
   
近畿 「ほな、今夜はこれで失礼しますわ。
  横っち、人の女に手ぇ出すんやないでぇ〜!」
横島 「ふごご、ふご〜〜〜!!」
令子 「おやすみなさい、お二人さんっ!」
   
シロ 「もう、ほどいてもいいでござろう…」
横島 「ぐが〜〜〜!! 銀ちゃんが、おキヌちゃんとっ!? ゆ、ゆるせ〜〜〜ん!!」
シロ 「先生っ! せ、拙者と散歩っ、散歩に行くでござるっ!!
  外の風にあたって、気分転換するでござるよっ!!」
   
  横島&シロ退出後の事務所
令子 「そっか…。 やっぱり、おキヌちゃん、横島クンのことあきらめたかったんだ…
  それで、他の男の人を捜すつもりで家出したのね…。
  あの子も、大人になったんだなぁ〜
  それにしても、こんなに早く彼氏が出きるなんて、おキヌちゃんもやるわね〜。
  でも、おかげですぐに戻ってきてくれて、よかったわ…。」
   
タマモ ぶちっ!!  「違うっ!!」
令子 「えっ?」
   
タマモ 「全然、違うっ!! 美神さん、なんにもわかってないっ!!
   
  おキヌちゃん、ずぅ〜〜〜っと前から、横島のこと、あきらめてたっ!
  横島が美神さんのこと好きなの知ってたし、
  美神さんが横島好きなのも知ってたからっ!
  それでも3人一緒に働いてたのは、二人のことが大好きだからっ!
  おキヌちゃんの大事な家族だからっ!
   
  それなのに美神さん、ちっとも横島を彼氏にしようとしないじゃないっ!
  おキヌちゃん、『自分がいるから美神さんは横島さんを彼氏にしづらいんだ』って
  悩んでたのっ。 だから、家出したのよっ!!
   
  おキヌちゃん、二人がうまくいくまで帰らないって言ってたわっ。
  うまくいってるようなら帰るから連絡してくれ、とも言われたわっ。
  自分自身のことじゃない、美神さんと横島のことしか考えてないっ!
   
  今日は、いきなり近畿クンが出てきてつきあうことになってて、私も驚いたけど、
  おキヌちゃんの気持ちはよくわかるわ。
  自分が横島を想っているのが美神さんに障害だと考えて出てったのよっ?
  自分が他の人を好きになってれば、美神さんもおキヌちゃんを気にせずに
  横島とつきあえるもんねっ!!
  自分の彼氏を作るために家出したなんて、絶対、違うんだからっ!!
  美神さんのバカ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!
   
令子 「タマモ……」
   
   
  翌日 事務所
令子 「シロっ! 今日は、こいつ、何しでかすかわかんないから、しっかり
  縛っておくのよ、いいわねっ!」
横島 「シロっ! やめろっ! ほどけっ! ほどくんだっ!
  あぁぁぁぁ、おキヌちゃん〜〜〜〜〜  ふごふごふご……」
シロ 「先生、お気持ちはお察しいたしますが…」
   
令子 「タマモ、あんたに言われた言葉、結構こたえたわ…
  私も大人にならなきゃね……
  ま、どれだけできるかわかんないけど、やってみるわね。」
タマモ 「美神さんっ!」
   
令子 「さぁっ、今日はおキヌちゃんが戻ってくる日よっ!
  シロっ、タマモっ! 戻ってくるまで、部屋を片付けるわよっ!」
シロ・タマ 「はいっ!」
   
  夕方 近畿と一緒に事務所に戻ってきたキヌ
キヌ 「ただいま戻りました… みんな、ごめんなさい…」
近畿 「ども、失礼します。 あれっ? 横っちは…?」
横島 「ふごご、ふご〜〜〜〜っ!!」
近畿 「…………」
   
  令子に抱きつくキヌ
キヌ 「美神さん、ごめんなさいっ! わたし、わたし、わぁ〜〜〜んっ!!」
令子 「お帰り、おキヌちゃん!」
   
令子 「私のほうこそ、ごめんなさい。
  あのあと、タマモに全部話を聞かされたわ。 強い口調でね…
  私も頑張るから、あんたも頑張りなさいよっ!」
キヌ 「えっ、それじゃぁ?」
令子 「うん。」
キヌ 「美神さんっ! はいっ、頑張ります!」
   
令子 「近畿クン、どうやらおキヌちゃんも本気のようね。
  こうなった以上、あんたも美神ファミリーの一員よっ!
  おキヌちゃん泣かすようなことしたら、あんた、芸能界追放ぐらいじゃすまさないから、
  覚悟しなさいっ!」
   
近畿 「は、はいっ!
  あと、俺のほうからも横島に話がありますっ!
   
  横っち、俺はおまえのことを友人やと思うてる。
  おキヌちゃんがおまえのこと、どう思うてたかも聞いてる。
  今からの話は真剣なことや。 だから、マジで聞いて欲しい。
   
  おキヌちゃんを守るのは、俺の役目やと思うてる。
  けど、おキヌちゃんの仕事はとても危険や。
  俺が守ってやれればええんやが、そういうわけにもいかん…。
   
  そやから、俺は信じる。 おまえや事務所のみんなが守ってくれることをや。
  今まで通り、おキヌちゃんを家族のように扱い、守ってやってほしい。
  横から出てきてこんなこと言えた義理でもないこと承知のうえでの話や。
  頼むっ!!」
   
   
横島 「ふご………  」
   
キヌ 「あ、あの、横島さん……、私、なんて言っていいのか、その…」
令子 「いいのよ、おキヌちゃん。 こいつのことは、私がなんとかするからっ!」
キヌ 「はいっ」
   
令子 「さぁ、近畿クン、あんた忙しい身でしょ。 じゅうぶん挨拶したんだから、
  さっさとおキヌちゃん連れて、デートしてきなさいよっ!」
   
近畿 「すいません、ありがとうございます。 じゃぁ、おキヌちゃん、行こう!」
キヌ 「は、はい、銀一さん。 それじゃぁ、ちょっとだけ行って、すぐ戻ってきます。」
令子 「時間なんか、気にしなくていいのよ。 もう、大人なんだからっ!」
   
  近畿&キヌ退出後の事務所
令子 「いい男じゃないの。 おキヌちゃんが惚れるのも無理ないわね。」
横島 「ふご………  」
令子 「さてと、ほどいてやるか…」
   
横島 「うぅ…… おキヌちゃん……」
令子 「横島クン…… あんた、今夜は飲まずにいられないでしょ?
  私がつきあってあげるから、着替えてらっしゃい…… 」
横島 「………?」
   
シロ 「せっ、拙者も、一緒にっ!」
令子 「ダメッ! あんたは未成年でしょっ!」
   
横島 「…も、もしかして、それって俺と二人っきりでのデート…  ぶっ!?」
令子 「何も言うな、聞くなっ! 言われたとおり、着替えて来いっ!」 顔真っ赤
タマモ (クスクスっ)
   
  令子&横島退出後の事務所
シロ 「結局、なんだったんでござるか…?」
タマモ 「ん〜、カップルが2組できた…ってことでしょ?」
シロ 「タマモ、拙者にわかるように、始めから説明して欲しいでござるよ…」
   
タマモ 「ごめん、シロ。 私、康則に会いたくなっちゃった。 ちょっと、出かけてくるねっ!」
シロ 「えっ? それじゃ、拙者1人になってしまう…」
タマモ 「隣に行ってくればぁ? まだ、みんないるはずよ。 じゃぁね〜!」
シロ 「そ、そんな、殺生な…」
   
  ICPOオフィス
シロ 「ワオ〜〜〜ン、ワォォォォ〜〜〜ン!!
  拙者以外、みんなデートに行ってしまったでござる〜〜〜〜〜っ!
  拙者もデートしたいでござる〜〜〜〜〜っ!
  横島せんせえ〜〜〜〜〜〜、ワオ〜〜〜ン!!」
   
美知恵 「令子も、ようやくその気になったみたいね。」
ピート 「シロちゃんも、早く彼氏が出来るといいんですけど…」
   
ひのめ 「ずいぶん、ごきげん悪そ〜でちゅね。 元気だせっ! 西条っ!」
西条 「……… (ケッ!!)」
   
END  
   

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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