その後のGS美神 2003 リポート2 シロ&タマモ

大人でござるもん!

著者:まきしゃ


    おキヌちゃんが銀ちゃんと一緒に事務所に帰ってきて、
  令子が横島をデートに誘った翌日の朝…
シロ 「おキヌちゃん、おかわりっ!」
キヌ 「ま、またぁ〜? シロちゃん、もう5杯目よっ!?」
タマモ 「あんた、気持ちはわかるけど、やけ食いにも程があるわよっ!?」
   
シロ 「ふんだっ! なにが気持ちがわかるでござるかっ?
  おキヌちゃんは、仕方がないにしても、タマモは許せんでござるっ!
  先生たちがデートに行って、拙者がへこんでるのを知ってたくせに、
  拙者を残して、康則くんに会いに行くなんてっ!」
   
タマモ 「ご、ごめん。 だって、会いたくなっちゃったんだもの…
  で、でも、隣でピートたちに愚痴を聞いてもらったんでしょ?」
シロ 「そんなの、言い訳になんないでござるよっ!」
   
キヌ 「シロちゃん、そのへんにしときなさいっ。
  それはともかく…、シロちゃんが沢山食べたんで、お弁当用のごはん、
  足りなくなっちゃったわよ…?」
タマモ 「なに〜〜っ! あんた、それを狙ってたな〜〜っ!?」
   
シロ 「へへんだっ! 愛妻弁当が作れなくて残念でござったなっ! タマモっ!
  そのへんのコンビニで、弁当買っていけばいいでござるよっ!
  さっ、拙者はもう学校に行くでござるっ。
  王子様の出迎えに、しっぽをパタパタ振るキツネの姿なんか見たくないでござる。
  行ってきま〜すっ!」
  食事の後片付けもせずに、事務所を飛び出すシロ…
  ちなみに、このときのシロは六道女学院の高校一年生
   
タマモ 「あのバカ、やることが、ほんとガキなんだからっ!」
キヌ 「でも、シロちゃんの気持ちも、わかってあげて。
  私の場合は、自分で決断したから、まだ割り切れるんだけど、シロちゃんにとっては、
  突然の出来事だったわけでしょ?」
   
タマモ 「それはそうだけど…。 でも、横島があいつを選ぶのは、おキヌちゃんと美神さんの
  両方に振られたときしかないってことぐらい、わかってたはずなのに…。」
キヌ 「横島さんは、シロちゃんの初恋の人だから…
  タマモちゃん、後片付けしましょ。 早くしないと王子様が来ちゃうわよっ!」
タマモ 「あっ! うんっ!」
  迎えに来た王子様と共に高校に向かうタマモ
  ちなみに、このときのタマモと康則は横島たちの卒業した高校の一年生
   
   
  タマモの高校のお昼休み…
ヒロシ 「へ〜、康則、めずらしいな? 今日はタマモの手作り弁当じゃないのか?」
康則 「えっ? ああ、なんか朝ばたばたしてたらしくて…」
タマモ 「ね〜ね〜、ヒロシくんも聞いてよっ! シロの奴が、ひどいんだからっ!」
  今朝の状況をぶちぶち愚痴るタマモ 大笑いする康則の友人のヒロシ
   
ヒロシ 「あははは、シロちゃんって子、かわいいなぁ〜 朝っぱらからヤケ食いかぁ〜」
タマモ 「かわいくなんかないわよ〜 あいつ、ヤキモチやきだから、これからが大変よっ!
  事務所で横島が美神さんと仲良くするたんびに、カリカリしそうだし、
  やつあたりされるのは、同室の私になるんだから〜」
   
ヒロシ 「あれ? さっきから話に出てる横島って人、もしかしてGSの?」
タマモ 「そうよ? 知らなかったっけ?」
ヒロシ 「ええ〜〜〜っ! GSの横島さんて言ったら、俺の命の恩人なんだぜぇ〜〜っ!?」
タマモ 「そおなの? 美神さんだったらわかるんだけど、なんで横島なわけ?」
   
ヒロシ 「横島さんはな〜、俺がガキの頃、娑婆鬼っていう鬼とミニ四駆で戦ってくれたんだ。
  横島さんは、ミニ四駆の初代チャンピオンで…   あ〜だ、こ〜だ…
  俺も兄貴と組んで『爆走兄弟 哲・エンド・ヒロシ』と呼ばれてて…  あ〜だ、こ〜だ…」
  ヒロシの熱弁を、コンビニで買ってきたいなり寿司を食べながら聞き流すタマモと康則…
   
ヒロシ 「なっ? 横島さんって、すげ〜だろっ!? 俺、あこがれてるんだぁ〜」
タマモ 「ん〜、あれのどこがいいんだか…」
康則 「まあ、ヒロシとは違うけど、俺も横島さんはすごいと思うよっ。」
タマモ 「へぇ〜? どんなとこがっ?」
   
康則 「だってさ〜、俺が初めて会った頃の横島さんって、ほとんど美神さんの奴隷だったろ〜?
  それが今じゃ、美神さんの彼氏だもんな〜 あの忍耐力はすごいよっ!」
タマモ 「今も、奴隷みたいなもんだけど…」
康則 「で、でも、少しはやさしくしてもらえるようになるんだろ?」
タマモ 「ん〜、まだわかんないな〜」
   
ヒロシ 「え〜っと、なんか二人の会話に割り込むのは気が引けるけど…
  タマモちゃん、俺、横島さんに会わせて欲しいんだけど、いいかな〜?」
タマモ 「横島に? ま、話だけはしといてあげるわ。
  横島のやつ、どうせ仕事が暇なときは、事務所でゴロゴロしてるだけだから…」
ヒロシ 「えっ! ほんとっ!? 必ずだよっ!?」
タマモ 「うん…、でも、いまだにそんなに価値のある奴には見えないんだけど…」
   
康則 「会うとなったら、兄貴の方も呼ぶのかい?」
ヒロシ 「ああ、哲か。 あいつはいいやっ。 俺と哲とじゃ、横島さんへの思い入れが違うんだ。
  俺がこの高校選んだのも、横島さんの後輩になりたかったからなのに、
  哲は別の高校を選びやがったからな。
  さっきも言ったけど、横島さんを捜し出したのは俺一人でだし、
  俺は、横島さんに『ラストエンペラー』のセッティングを一緒にやってもらったけど、
  そのとき哲は、尻子玉を抜かれてて…  あ〜だ、こ〜だ…」
康則 「わかった、もういい…」
   
タマモ 「へぇ〜、ヒロシって横島の後輩になりたくて、ここを選んだのっ!?」
ヒロシ 「まあ、こんなこと人に話すことじゃないと思ってたから、誰にも言ってなかったけど…」
タマモ 「そこまで思い入れてるんならしょうがないわね。 毎日せっつかれるのも嫌だから、
  早速、今日の帰りにでも事務所に連れてってあげるわ。 いいでしょ? 康則。」
康則 「ああ。 かまわないよ。」
ヒロシ 「やった〜〜〜っ!!!」
   
タマモ 「あ〜あ、今日のデートの予定が狂っちゃったわね〜。 ま、いっか。
  ところで康則〜、ミニ四駆って、何っ?」
ヒロシ 「あうっ……!」
   
   
  お昼過ぎ、ようやく事務所にやってきた横島…
横島 「うぅ〜〜〜 頭が痛い〜〜〜」
キヌ 「だ、大丈夫ですか? 横島さん。」
横島 「うぅ〜〜〜、おキヌちゃんが銀ちゃんと… まだ、割り切れんな〜〜」
キヌ 「で、でも、横島さん、昨夜は美神さんとデートだったんですよね?」
   
横島 「そうらしいんだけど… でも、昨夜のことはなんにも覚えていないんだぁ〜〜〜!
  おキヌちゃんのことで慰めて貰うために飲みに行ったとこまでは覚えてるんだけど…
  とにかく、ひたすら飲まされて、気がついたら家で一人で寝てたもんなぁ〜」
キヌ 「美神さんも二日酔いで休むって、さっき連絡が有って…」
   
横島 「そっかぁ〜。 じゃあ、今日の仕事はキャンセルなんだな…
  なんか、無理して出てくる必要なかったかな?
  昨夜のこと、美神さんに聞こうと思って来たんだけど…」
   
  しばらくして…
タマモ 「ただいま〜 横島いる〜?」
康則 「こんにちは〜」
ヒロシ 「し、失礼しますっ!」
キヌ 「タマモちゃん、おかえりなさい。 横島さんなら、ソファーで横になってるわよ。
  あら、康則くんも一緒なのね。 そちらの方は康則くんのお友達?」
   
ヒロシ 「あ、あのっ、ヒロシと言いますっ! そ、そのっ、タマモさんの同級生でっ!」
康則 「ずいぶん緊張してるんだな〜 おまえ…」
タマモ 「おキヌちゃん、ヒロシくんって昔、横島にミニ四駆で命を救われたんだって。
  それで、どうしても横島に会いたいっていうから連れてきたの。」
   
キヌ 「ああ、あのときの…。 覚えてるわ。でも、ずいぶん大きくなったわね〜。
  横島さんより大きいかも。 ちょっと待ってね、横島さん、起こしてくるから。」
横島 「ん〜、誰だ〜?」
  話が聞こえて、のそのそとソファーから身体を起こす横島…
   
ヒロシ 「あっ、横島さんっ! 久しぶりです、俺、ヒロシですっ! ミニ四駆のっ!」
横島 「ああ、あんときの…」
ヒロシ 「ええっ! 俺、あのときの感激が忘れられなくて  あ〜だ、こ〜だ…」
横島 「わ、わりい。 俺、今、二日酔いで頭が痛いんだ…
  また今度話してやっから、今日は勘弁してくれ…」
ヒロシ 「あっ、す、すいませんっ!」
   
横島 「おキヌちゃん、俺、今日はもう帰るわ。 じゃあ…」
キヌ 「迎え酒なんかしたらだめですからね…」
   
  横島が退出した後の事務所
キヌ 「ごめんなさいね、ヒロシくん。 いつもは、ああじゃないんだけど…」
ヒロシ 「い、いえ、いきなり押しかけた俺の方が悪いんで…」
タマモ 「いつも、ああだと思うけど…」
康則 「俺やヒロシみたいな、男を相手にするときはね…」
   
   
タマモ 「横島も帰っちゃったし、ここにいてもしょうがないわね。
  せっかくだから、二人とも、私の部屋で遊ぼうよっ。」
ヒロシ 「えっ!? いいのっ?」
タマモ 「ん? なにが?」
ヒロシ 「い、いや、女の子の部屋に入ったこと、1度も無いから…」
タマモ 「へ〜、そうなの?」
   
ヒロシ 「康則っ! お、おまえはどうなんだよっ!?」
康則 「えっ? 俺? 俺は、もう4年も前から、タマモの部屋なら入り慣れてるから…」
ヒロシ 「なに〜〜〜っ!?」
康則 「まあ、シロちゃんとの相部屋だし、普通の女の子の部屋をイメージすると、
  ちょっと違うかも…」
ヒロシ 「そ、そお?」
   
  タマモに連れられて屋根裏部屋に入る二人
  シロのスペースを見てみると…
  壁には『前田犬千代』のでっかいポスターが貼ってあり、本棚には歴史マンガの
  コミックスがずらりと並んでいる。 その中にはMISTERジパング』の単行本も…
  かなり、渋めな雰囲気…
   
ヒロシ 「へ、へぇ〜〜、シロちゃんって、歴史ファンなんだぁ〜」
タマモ 「武士の子だってのが、シロの自慢だからね。 こっちが、私のスペースよっ。」
   
  一方、タマモのスペースとなると、とっても華やかな雰囲気
  壁には『デジャブーランド』をはじめ、いろんなアミューズメントパークの綺麗な
  ポスターが所狭しと貼られている。
   
ヒロシ 「タマモちゃんが遊園地好きなのは、一目でわかるな…」
タマモ 「だって、楽しいでしょ〜?」
ヒロシ 「まあな…。 俺の部屋もミニ四駆のポスターだらけで、人のことは言えないし…
  ところで、ポスターと一緒に何十個も貼ってある、しぼんだ風船って、何?」
   
タマモ 「それはね〜〜 えへへへっ!」
  笑いながら、ちらちらと康則の様子を伺うタマモ
康則 「いや〜、そ、それは…」
  康則も、おもいっきりテレてる様子…
   
ヒロシ 「うっ! もしかして、二人でデートしたときの記念品かっ!?」
タマモ 「当ったりぃ〜〜っ!!」
ヒロシ 「くっそ〜、おまえら、こんなに遊園地でデートしてたのかっ! 俺なんか、
  グループでならともかく、女の子と二人っきりのデートなんて一度もないのにっ!
  聞くんじゃなかったな〜 なんか、くやしいな〜!」
タマモ 「だって、つきあいだしてから、もう4年になるんだもの。
  それくらい有っても不思議じゃないでしょ?」
   
ヒロシ 「4年前っていやぁ、俺がミニ四駆に明け暮れてた頃じゃね〜かっ!
  うぅ〜、後悔はしていないっ! 後悔はしてないが…、この差はなんだぁぁ〜〜〜っ!?」
康則 「ま、まぁまぁ……」
タマモ 「ヒロシ…、あんた、そんなことで血の涙を流すなんて、横島とそっくりね…」
   
   
  そんな感じで3人で雑談してるうちに、やがて、シロも学校から帰ってくる
シロ 「ただいま〜〜〜 あっ、康則くんっ!」
康則 「こんにちは、シロちゃん。 おじゃましてます。」
シロ 「や、康則くん…、今日は、すまなかったでござる…」
タマモ 「へぇ〜、あんたも一応、反省はしてるんだぁ〜」
   
シロ 「せ、拙者は、康則くんまで巻き込んだことを、謝ってるのでござるっ!
  誰が、タマモなんかに謝るもんかっ!」
タマモ 「うっ! かわいくないわね〜っ!」
シロ 「へへんだっ! 友達甲斐の無いことするからでござるよっ!」
康則 「まぁまぁ…。 シロちゃん、タマモのこと許してやってよ。
  もう、仕返しは済んだんだろっ?(笑)」
   
シロ 「うっ、康則くんに言われると… ま、まぁ、許さないでもないでござるが…」
康則 「うん、頼むよ。 そうそう、紹介が遅れたけど、こいつはヒロシと言って、俺たちの
  同級生なんだ。 昔、横島さんに命を救われたそうなんだ。」
ヒロシ 「ヒロシです。 はじめまして。」
   
シロ 「拙者、シロでござる。 さすがは先生でござるな。 人助けは、GSの勤めでござるよっ!」
タマモ 「なんであんたが、偉そうに言うのよっ!?」
シロ 「拙者、先生の弟子でござるものっ!」
ヒロシ 「あ、あの、シロさん、俺に横島さんのこと、いろいろ教えてくれませんかっ!?
  俺、横島さんに、あこがれてるんですっ!」
シロ 「いいでござるよっ! 先生のすごいところを、たっぷり聞かせてあげるでござるっ!」
   
  それまでの鬱憤を晴らすかのように次々と横島のすごさを語り出すシロ
  シロの話を楽しそうに聞いているヒロシ
  その二人を眺めるタマモと康則…
   
康則 「シロちゃんの話だけだと、横島さん、ほんとにすごい人に聞こえるけど…
  実際は、どうなの…?」
タマモ 「まあ、都合悪いとこは、全部省略してるから… せいぜい3割ってとこね…」
   
  いい加減、聞き飽きたところでタマモがシロに声をかける
タマモ 「ねえシロ、あんたたち、なんだか気が合いそうだから、つきあってみたら?」
シロ 「えっ?」
康則 「俺もそんな感じで見てた。 ヒロシはどうだい?」
ヒロシ 「お、俺のほうは…、こんなかわいい子なら、よろこんで…」
シロ 「拙者は……、拙者はまだ先生のことが……」
  ドタタタタタ……! 部屋を飛び出すシロ…
   
タマモ 「まだ、煽るには早すぎたかっ。 しかたないわね〜。」
康則 「言わなきゃよかったかな? ヒロシ…。」
ヒロシ 「いや……、俺も、シロちゃんの話を聞きながら、その気になりかかってたから…」
タマモ 「ヒロシにその気があるなら、話が早いわっ!
  私たちで、なんとかしてあげるからっ!」
   
康則 「私たちって、俺もなんかやるのっ?」
タマモ 「そうよっ! また、コンビニ弁当を食べたいのっ!?」
康則 「うっ…、それは嫌だな…」
ヒロシ 「俺って、弁当と比較される程度なのかな……?」
   
  横島もシロもいなくなったので、一人で帰ることにしたヒロシ
ヒロシ 「今日は、ありがとう。 これ以上、おまえらの邪魔したら、なんだからな。 じゃあな!」
タマモ 「うん、また明日〜!」
   
  ヒロシが帰ったあとの二人…
康則 「あの二人、うまくいくかな〜?」
タマモ 「いってくれなきゃ、困るわっ!」
康則 「まあ、シロちゃんのやつあたりを受ける立場のタマモが、そう思うのは無理ないけど…」
タマモ 「そうじゃないのっ! シロのためなのよ。」
康則 「ん? どういうこと?」
   
タマモ 「シロのやつ、横島を慕って事務所に住むことにしたわけでしょ?
  今まで、ここで経験した多くのことも、全部、横島が絡んでるわけだし…
  そんなシロに彼氏が出来たらどうなると思う?
  シロと彼氏の会話の中に、しょっちゅう横島の話が出てくることになるのよ?
  そんなの、横島のことに興味のない男じゃ、耐えられるわけないわっ。
  それが出来るのは、私の知ってる限り、ヒロシくんしかいないのよっ!」
康則 「そうか〜 そうだよな〜。」
   
タマモ 「それにね、シロにもおキヌちゃんみたいに強くなって欲しくてさ…。」
康則 「そうか…。 おキヌちゃんのほうが、横島さんとの関わりは、もっと深かったもんな…。
  タマモも、みんなのこと真剣に考えてるんだな…。」
タマモ 「まあね…。 だって、みんな私の大事な家族なんだもの。
  この言葉、おキヌちゃんの受け売りだけどねっ! えへへっ!」
康則 ドキッ!! (か、かわいいっ!)
   
  美神事務所の屋根の上で身を潜めて聞き耳をたててるシロ
  人狼のシロの耳でなら、屋根裏部屋の話し声は全部聞こえる…
シロ (うぐぅ〜、タマモのやつ〜っ! 拙者だって、そんなこと頭ではわかってるでござるよっ!
  気持ちの整理がつかなくて、困ってるだけでござるっ!
  もうちょっと、時間が欲しいだけでござる………
  んっ?  あれれっ!?  屋根裏部屋の雰囲気が変わったっ!?)
   
  いつのまにか、メガネをはずしている康則
康則 「タマモ……」
タマモ 「(クスッ)  うん、いいよ……」
  静かに唇をあわせる二人…
   
   
シロ (そ、そこは拙者の部屋でもござるっ! それ以上は許せん〜〜っ!)
  「ワォオ〜〜ン!! ワォワォ〜〜ン!!」
   
タマモ 「きゃっ!?」
康則 「シロちゃんの遠吠えっ!?」
タマモ 「あ、あのやろ〜〜!! 近くで聞いていやがったなっ!?」
康則 「で、なんて言ってたの?」
タマモ かぁ〜〜〜っ! 顔、真っ赤  「い、言えない…」
   
   
  深夜 屋根裏部屋 かなりご機嫌斜めなタマモ
タマモ 「あんたね〜〜、人の邪魔しないでくれるっ!? いい雰囲気だったのにっ!」
シロ 「ふんだっ! 知らないでござるよっ!
  拙者のことは、しばらくほっといて欲しいでござるっ! おやすみっ!」
タマモ 「ほんとに、もう〜〜〜!」
   
   
  翌朝 ろくに会話もせずにさっさと学校に行ってしまったシロ
キヌ 「シロちゃん、大丈夫かしら…?」
タマモ 「あいつ、ヤキモチやきだから、なんかで発散させないと周りが大変だわ…」
キヌ 「そうね…。 タマモちゃん、シロちゃんのことお願いできる?」
タマモ 「うん…。 なんとかしてやりたいとは、思ってるんだけど…」
   
   
  六道女学院の下校時間 校門前
シロ (どうするでござるかな… 今日は先生たち、仕事で帰りが遅いらしいし、
  タマモはど〜せデートだろうし、ひのめでもからかいに行くでござるかな…?)
   
ヒロシ 「あ、あの、犬塚さん…」
シロ 「えっ? ヒロシどのっ!? その装備は…」
  校門前でシロが来るのを待っていたヒロシ
  シロとの散歩用に、自転車とひっぱる紐も用意してきている…
   
シロ 「タマモたちに聞いたんでござるな?」
ヒロシ 「これがないと、犬塚さんをデー…、いや、さ、散歩に誘えないと聞いたんで…」
シロ 「タマモの高校からは、結構、距離があるのに、この時間に来てるということは…
  拙者のために、授業をさぼったんでござるか?」
ヒロシ 「そ、そうなるのかな…?」
   
  しばらくの沈黙のあと…
シロ 「拙者……、まだ、先生のこと、気持ちの整理がついてないでござる…」
ヒロシ 「………」
シロ 「それに、拙者の散歩は、ハードでござるよ…?」
ヒロシ 「あ、ああ…、聞いてるけど…」
シロ 「それでよければ、散歩に行くでござるよっ!?」
ヒロシ 「あ、ありがとうっ! 犬塚さんっ!」
   
  ぱひゅ〜〜〜んっ!! 猛烈な勢いでヒロシを引っ張りながら散歩するシロ
  心に浮かぶ様々な思いをふっきるためかのように…
   
  おかげで、事務所の前で別れるときには、お互い声も出ない状態だったりして…
シロ 「ぜぇ〜、ぜぇ〜、た、たのしかったでござる…」
ヒロシ 「ぜぇ〜、ぜぇ〜」
  ふらふらになりながら帰っていくヒロシを見送ったあと…
シロ 「拙者のために来てくれたのに、あんなハードな散歩をして悪かったでござるな…
  拙者、嫌われちゃったでござろうな……」
  ちょっぴり後悔しているシロ
   
  康則とのデートを終えて、事務所に帰ってきたタマモ
  シロを見るなり、いきなり怒鳴り出す!
タマモ 「あんたっ! ヒロシくんに、なんてヒドイ目に遭わせるのよっ!」
シロ 「もう知ってるんでござるか。 拙者も、悪かったと思ってるでござるよ…」
   
タマモ 「知ってるもなにも、康則が気にしてヒロシくんの携帯にかけてみたら、息も絶え絶えで、
  足腰立たなくて、帰り道の途中でへたりこんじゃってたのよっ!?
  しょうがないから、私たち二人でタクシー拾って家まで送ってったんだからっ!」
シロ 「えっ!? そんなにっ!?」
   
タマモ 「あんた、加減ってものを知らなすぎるわっ! もう、最っ低っ!
  その最低のあんたに、ヒロシくんからの伝言よっ!
  明日は身体が動きそうにないんで無理だけど、あさっては必ず迎えに行くから
  散歩につきあって欲しいってさっ!」
シロ 「えっ!?」
   
タマモ 「ほら、これがヒロシくんの携帯の番号よっ! さっさと、返事してやんなさいよっ!
  そうそう、別れ際にろくな挨拶できなくて、すまなかったって言ってたわ!
  あんたのせいだっていうのにねっ!」
シロ 「うっ!」
   
  タマモの勢いに押されて、ヒロシに電話するシロ
シロ 「ヒロシどのでござるか? 拙者、シロでござる… 今日は申し訳無かったでござる…
  で…、その…、あさってでござるが………
  その…、あさっては、もっとゆっくり走るんで、また散歩に連れてってほしいでござる…」
   
  ヒロシとの電話を終えて…
タマモ 「ふんっ! あんたのために、よかれと思ってヒロシくんを紹介したんだけど、
  あんたには勿体無いぐらい、いい奴ねっ!
  あんたも、いつまでもガキやってんじゃないわよっ!?」
シロ 「うぐっ!」
   
   
  翌日 久しぶりに全員そろっての仕事の予定、その仕事先からの電話を受けてる令子…
令子 「あっ、はい、わかりましたわ。 いえ、追加料金の500万円を払っていただければ。
  それでは、その時間に…」
キヌ 「美神さん、何か、変更でも?」
令子 「うん、現場を案内する係りが、悪霊が怖くて逃げ出しちゃったんだってさ。
  代わりを見つけるまで、3時間ほど来るのを待って欲しいって。
  それだけで、500万円も貰えるなんて、ぼろ儲けねっ!」
横島 「あんたなぁ〜…」
令子 「ま、みんな、3時間は好きにしてていいわよっ!」
   
横島 「そうだな〜、じゃあ、シロ、散歩に連れてってやるぞっ!」
  ピクッ! 横島の言葉に反応するシロ
シロ 「せ、拙者、行かないでござるっ!」
横島 「えっ?」
シロ 「拙者、もう大人でござる! 彼女のいる人と一緒に散歩には行けないでござるっ!」
  横島の顔をまったく見ずに、それだけ言うと事務所を飛び出して行くシロ
  ぴゅぅ〜〜〜っ!!
   
横島 「お、俺、シロに嫌われちゃった?」
令子 「そうじゃないわよ。 ほんとは横島クンと一緒に散歩したくてしょうがないのよ。
  でも、私に気兼ねして我慢したんだわ。
  あのこも、大人になってきた証拠ねっ…」
横島 「そうですか…」
タマモ (クスクスっ!)
   
   
  やみくもに走っているうちに、ヒロシのニオイに誘われるようにして
  ヒロシの家の前に来てしまったシロ
シロ 「うっ、なんか、何も考えずに来てしまったけど、どうすればいいんでござるか…?
  ヒロシどのは、昨日の疲れで家で休んでるはずでござるが…」
   
  しばらく、家のまわりをうろうろしたあと…
シロ 「………、その……、お見舞いってことなら…」
   
  ゴクンッ! 生唾を飲み込み緊張しながらドアのチャイムを鳴らすシロっ!
  ピンポ〜ン!
   
   
  その頃、事務所では…
横島 「では、その3時間を使って、俺とホテルに…  ぶっ!?」
  令子に殴られ横島ダウン… かなり強烈な一撃…
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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