その後のGS美神 2003 リポート4 弓&一文字

話になりませんわっ!

著者:まきしゃ


    おキヌちゃんが事務所に戻ってきてから、8日目…
  ってゆ〜よりは、令子が、エミと西条の二人がくっついたのを目の当たりにした当日…
   
  キヌの部屋でお茶をしている、キヌ、シロ、タマモの3人…
シロ 「意外でござったな。 エミさんと西条さんだなんて。」
   ドゴンッ!
タマモ 「二人とも、行き遅れるかと思ってたから、ちょうどよかったんじゃない?」
   ガッシャーーンッ!!
キヌ 「タマモちゃん、その言い方は、ちょっとひどいかも……」
   バリバリバリッ!
タマモ 「そお? 美神さんよりは、柔らかい言い方だと思うけど?」
   ズドドドドッ!!
シロ 「それにしても…、美神さん、いつまで暴れてるつもりなんでござろうか…?」
   バッゴ〜〜〜ンッ!!
タマモ 「さあ…?」
   
  事務室では、納得できない令子が一人で暴れている…
  横島は、ずいぶん前に血まみれになってダウン…
   
  コンコン キヌの部屋を静かにノックする音が…
キヌ 「いらっしゃい。 待ってたわ。」
一文字 「それにしても、想像以上の荒れ方だな、美神さんは…」
タイガー 「おじゃまします…」
  やってきたのは、タイガーと一文字の二人…
   
キヌ 「美神さん、エミさんと西条さんが一緒に居るのを見てから、ずぅ〜っと、あんな感じなの…
  はやく、立ち直ってもらいたいんだけど…」
タイガー 「わっしも、今朝は驚いて、しばらく不機嫌だったんジャが、エミさんのわっしたちへの配慮に
  感動して、今では頭が下がる思いなんジャ〜。」
キヌ 「じゃあ、さっき電話で聞いた話は、正式にっ?」
   
一文字 「ああ。 私も今日から『小笠原エミGSオフィス』の正式メンバーさっ!」
キヌ 「おめでとうっ! よかったねっ!」
一文字 「それに、タイガーもなっ!」
キヌ 「えっ? タイガーさんはっ?」
タイガー 「一応、肩書きがついて、所長代理に…」
キヌ 「へえ〜、すごいですねっ!」
   
タイガー 「ただ、これって、西条さんが初めて隣にやってきたときの横島サンと、同じ状態ですケン…」
キヌ 「あっ、そういえば… でも、たぶんうまくいくと思いますよ?
  タイガーさんが、西条さんを襲わなければですけど。 (クスっ)」
一文字 「えっ? それって、横島が西条さんを襲ったってこと?」
キヌ 「ええ。」
   
一文字 「なんか、ここの実態を聞けば聞くほど、自信なくしちゃうよなぁ〜。
  一般常識が、まったく通用しない世界にきちまったみたいだもんな…」
キヌ 「でも、慣れれば自然に感じるわよ?」
一文字 「慣れるのも、怖いけどなっ。」
   
   
キヌ 「ところで、お仕事の方なんだけど……」
一文字 「ああ。 山ほどあるぜっ。 どれから手をつけていいのかわかんないから、
  割り振りの方はたのんだぜっ。」
キヌ 「ええ。 ちょっと資料を見せてくれる?」
  しばらくの間、エミと美神の2つの事務所に来た仕事を、今キヌの部屋にいるメンバーだけで
  協力して処理していくつもりらしい…
   
シロ 「タイガーさん、拙者たちと一緒に仕事をするんでござるのか?」
タイガー 「えっ? ああ。 一緒にすることも有るかもしれんノ〜。
  ここんとこ、エミさん、ずっと仕事をキャンセルし続けてたし、美神さんも、この状態のせいで
  キャンセルしてるジャろ〜? 超一流のこの二人が働かないと、他に引きうけ手の無い
  危険な仕事が、溜まる一方なんジャ〜。」
シロ 「結構、世間に迷惑をかけてるんでござるな…。 美神さんとエミさんって…。」
   
  さくさくと仕事を割り振るおキヌちゃん
キヌ 「えっと、これとこれは、タイガーさんと一文字さんでお願いしますね。
  こっちの3件は、私とシロちゃん、タマモちゃんでやりましょう。
  この1件は、全員でやったほうが良さそうだわ。」
シロ 「あれ? 横島先生には、仕事をまわさないんでござるのか?」
   
キヌ 「横島さんには、美神さんをなだめる役をやってもらわないと…
  美神さん一人を残して、みんなが仕事にいっちゃうと、美神さんの機嫌が、ますます
  悪くなっちゃうでしょ?」
シロ 「ずいぶん手間のかかる人でござるな…」
タマモ 「あんたも、人のこと言えないわよっ?」
シロ 「うぐっ!」
   
一文字 「おキヌちゃん、この仕事はどうするんだい?」
  割り振られていない1件の仕事の資料を手にする一文字
キヌ 「そのお仕事は、さすがに私たちだけじゃ、危険そうなの。
  美神さんと横島さんが、正常に戻ったら、お願いしようと思って…」
一文字 「でも、緊急の印がついてるぜ?」
キヌ 「そうなんだけど…」
   
タイガー 「それなら、雪之丞にやらしてみてはどうかいノ〜?
  最近、弱い相手ばかりでつまらんって、ぼやいてたから…」
一文字 「そうだな、伊達さんと、弓となら、なんとかなるだろ?」
キヌ 「そうね… いつまでも放置するわけにもいかないし…
  あの二人、引きうけてくれるかしら?」
タイガー 「その心配はいらんジャろ〜。 強い相手で困ってるって言えば一発でOKジャ。」
キヌ 「じゃあ、これは、弓さんたちにお願いしちゃいますねっ。」
   
   
  全員でやる仕事は、翌日実施ということにして、今日はそれぞれの案件を
  処理していくことに…  おキヌちゃんチームでは…
シロ 「仕事をするのはいいんでござるが、必要な道具は事務室に有るでござるよ?
  あの状態の美神さんがいる所に、取りに行くのは嫌でござるが……」
キヌ 「そおね… 私もちょっと… そうだわ、タマモちゃん、お願いできるっ!?」
タマモ 「え〜〜っ? 私も嫌よっ!?」
キヌ 「そうじゃないの。 幻術を使って欲しいのっ。」
   
  事務室のドアの前で、中の様子を伺う3人…
令子 「エミのやつめ〜〜〜〜っ!!」
キヌ 「………」
シロ 「まだ、機嫌が直ってなさそうでござるな…」
タマモ 「横島の気配がしないけど、死んじゃったのかな?」
キヌ 「横島さんは、生き延びるために、自分で気配を消してるはずなの。
  そのへんは、経験豊富な横島さんだもの。 心配いらないわっ!」
シロ 「…………、あまり、豊富になりたくない経験でござるな…。」
   
  ギィ〜〜〜 ドアをそっと開ける3人
令子 「誰っ!? 何しにきたっ!?」
キヌ 「あああ、やっぱり平穏に入るのは無理だわっ。 タマモちゃん、お願いっ!」
タマモ 「しかたないわねっ!」
   
  カッ! もわわわ〜〜〜ん タマモの幻術に化かされた令子…
令子 「はっ…? ここは…? そうだ!! 私は歌わなきゃっ!!」
   
キヌ 「さっ、シロちゃん、今のうちに道具を取ってきてっ!」
シロ 「わかったでござるっ!」
タマモ 「おキヌちゃん、こいつはどうするの?」
   
横島 「おキヌちゃん……、助けて……」
  血まみれで床に転がっている横島… 生きているのが不思議なぐらい…
キヌ 「あああ、横島さんっ! 今、ヒーリングしてあげますからっ!」
横島 「ありがとう…。 助かった…。」
   
タマモ 「おキヌちゃん、こいつ助けるのはいいけど、助かったら逃げちゃうわよ?」
キヌ 「そうね…。 タマモちゃん、横島さんにも、術をかけてくれる?」
横島 「えっ!? なんでっ!? おキヌちゃんっ!?」
キヌ 「美神さんをなだめるのは、横島さんの役目じゃありませんか…。」
横島 「そ、そうだけど、今の美神さんはっ!」
キヌ 「大丈夫ですよっ。 そんなに心配しなくてもっ。」
横島 「で、でもっ!」
   
タマモ 「ごちゃごちゃ、うるさいわねっ! もう、かけちゃうからねっ!」
横島 「あっ! 待てっ! タマモっ!」
  カッ! もわわわ〜〜〜ん タマモの幻術に化かされた横島…
   
令子 「みなさ〜〜ん、私たちの解散コンサートにようこそ〜〜〜
  私たち、明日から、ふつうの女の子に、もどります〜〜〜っ!!」
横島 「わぁ〜〜!! ランちゃ〜〜ん!! ス〜〜ちゃ〜〜〜んっ!!」
   
シロ 「また、ずいぶん古いネタで化かしたんでござるな…?」
タマモ 「美知恵義母さんが、GS協会のカラオケ大会で真似してたの、あんたも見たでしょ?」
   
   
  仕事先のビルにやってきた、おキヌちゃんチーム
キヌ 「手順はわかった? はじめてもいいわね?」
タマモ 「私、吸印札は、使ったことないんだけど…」
キヌ 「大丈夫よっ。 もし使えなさそうだったら、私が吸印するから。」
タマモ 「わかったわ。 やってみるわね。」
キヌ 「じゃあ、はじめるわよっ。 シロちゃんも、準備いいわね?」
シロ 「いつでもいいでござるよ〜〜!」
   
  ピュリリリリ〜〜〜 ネクロマンサーの笛を吹くおキヌちゃん
  隠れていた悪霊が、笛の音に操られて姿を現す…
  カッ! もわわわ〜〜〜ん タマモが幻術を使って悪霊から3人の姿を隠す…
   
シロ 「拙者が見えてないようでござるなっ! そんな敵など、倒すのは楽ちんでござるよっ!」
  ビシ〜〜ッ!!  シロの霊波刀に切り付けられた悪霊
キヌ 「さっ! タマモちゃん、今よっ!」
タマモ 「うんっ! 吸印っ!!」
  バシュッ〜〜!!  タマモのかざした吸印札に吸い込まれる悪霊
   
タマモ 「うわ〜っ! すごい〜〜!」
キヌ 「どお? 簡単だったでしょ?」
タマモ 「うんっ! なんか、すっごく爽快だったのっ! 美神さんが、いつも自分でやりたがってる
  わけが、よぉ〜くわかったわっ!」
シロ 「えっ!? そんなに楽しいんでござるかっ!? どんな感じなんでござるのか?
  拙者も、やったことないんで、わかんないでござるよっ!?」
   
タマモ 「ほら、冷えすぎたシェイクをストローで吸ってて、なかなか吸い込めなくてイライラ
  するんだけど、最後の方になって一気にズズズズゥ〜! って、吸い込めた感じっ!」
   
シロ 「え〜〜っ! 面白そうでござるなっ!? 次は、拙者がやるでござるよ〜〜っ!」
タマモ 「ダメッ! あんたは、攻撃担当でしょっ!? 私が吸印するのっ!!」
シロ 「拙者もやってみたいでござるよ〜〜っ! 次は拙者でござるぅ〜〜!!」
   
キヌ 「あの〜〜〜、シロちゃん、タマモちゃん?
  これって、お仕事なんだけどぉ〜〜〜…」
   
   
  一方、タイガー・一文字チームは、二人っきりでの初仕事
  さすがに最初から失敗したくはないので、一文字の師匠の唐巣神父に相談しにやってきた…
   
唐巣 「初仕事の前に、相談しにくるとは、君たちにすれば賢明な判断だね。
  どんな仕事を引き受けたんだい?」
一文字 「先生、この2件が、この数日の間に除霊する予定の仕事の資料なんですけど…」
唐巣 「ふ〜む… おお、これはっ!」
タイガー 「な、なにか、問題でもっ!?」
   
唐巣 「いや、君たちの適性にぴったりの仕事だったもんだから、驚いたんだ。
  君たちで考えて、この仕事を選んだのかい?」
一文字 「いえ、おキヌちゃんに割り振ってもらったんです。」
   
唐巣 「なるほど。 さすがは、おキヌちゃんだな。 君たちのことをよくわかっている。」
一文字 「へえ〜、どんな仕事なんですか?」
唐巣 「んっ? 資料を見てないのかいっ!?」
一文字 「そ、その〜 これから見ようかと…」
唐巣 「困ったもんだな。 ちゃんと自覚してやってかないと、命がいくつあっても足りないぞっ?」
   
一文字 「は、はい。 気をつけます…。 で、どんな仕事なんですか?」
唐巣 「これは、どんなに賢いGSでも、霊力が弱ければ解決出来ない仕事だっ!」
一文字 「えっ!? そんなにすごい仕事なんですかっ!?」
唐巣 「ああ。 並みのGSでは、大変過ぎて手を出せないだろうな。」
タイガー 「そんな仕事を、わっしたちだけで解決出きるんですカイノ〜?」
   
唐巣 「ん? そんな心配はいらないよ。
  言いかえれば、どんなに馬鹿でも、霊力が強ければ解決出来る仕事だから。」
一文字 「は、はあ?」
   
唐巣 「まず、こちらの案件だが、『漬物石の除去』だろ? 資料によると、江戸時代から
  使用されてる漬物石に霊が宿って『ツクモガミ』になってしまったらしい。
  そのせいで、石がとてつもなく重くなって、動かせなくなってしまう霊障なんだ。
  老舗の漬物屋では、ときどき起きてる霊障だな。」
   
タイガー 「どうすれば、いいんですカイノ〜?」
唐巣 「うん、タイガーくんが霊波を石に集中して浴びせれば、石から『ツクモガミ』が
  出てくるから、そこを一文字くんが吸印すればいい。」
一文字 「なんか、簡単なんですね…。」
唐巣 「でも、霊力が弱ければ、石から追い出せないんだよ?
  決して、馬鹿にするような仕事ではないんだ。」
   
タイガー 「もう1件は、どんな感じですカイノ〜?」
唐巣 「え〜っと、こっちは… うん、一文字くんにぴったりの仕事だなっ!」
一文字 「やっぱり、馬鹿でも出来る仕事ですかぁ〜?」
   
唐巣 「いや、そうではないよ。 不正輸入されて死亡してしまった『動物霊の除去』だからな。
  動物霊は、霊力も強いし動きも敏捷だから、最初に目を合わせたときに、
  射すくめないと危険だぞっ!?」
一文字 「ええ、わかってます。 なんか、やりがいが有りそうで、ドキドキするよなっ?」
タイガー 「ああ、そうジャノ〜。」
   
一文字 「で、どんな動物なんですか? やっぱり、虎とかライオンとかの猛獣ですか?」
唐巣 「ん…、どこに書いてあるのかな…?」
  資料をぺらぺらとめくる唐巣
   
唐巣 「あっ!?」
一文字 「どうしたんですかっ?」
唐巣 「い、いや…、その、動物が『ナマケモノ』だったんで…」
一文字 「ナマケモノ〜〜?」
   
唐巣 「ま、まあ、動きはほとんどないだろうけど、霊力は強いはずだから…」
一文字 「つまりこれも、どんなに馬鹿でも霊力が強ければ解決出来る仕事…なんですね…?」
唐巣 「あは、あはは、いや〜、その〜…
  で、でも、いいんじゃないのかな? 初仕事は、命の危険の少ないほうが…」
   
タイガー 「そうじゃノ〜。 唐巣先生のおっしゃるとおりジャ〜。
  今後、嫌でもそういう仕事をやっていくわけなんジャから…
  魔理も、おキヌちゃんが好意で選んでくれた仕事に、文句を言うんじゃないぞ〜?」
一文字 「わかったよ、タイガー。 たしかに、おキヌちゃんらしい選び方だよな。
  じゃあ、早速、仕事に取り掛かります。 先生、ありがとうございました。」
唐巣 「ああ。 また、いつでも相談にのるから。」
   
   
  仕事先の老舗の漬物屋にやってきた二人
  唐巣神父の助言通りに対処して、あっというまに無事解決っ!
   
漬物屋 「ありがとうございますっ! これで、ようやく店を改築できますっ!」
一文字 「いえ、これが私たちの仕事ですから。」
  そういいながらも、二人だけでの初仕事を無事終えて、満足感に浸っている一文字
   
漬物屋 「いえいえ、他のGSにもお願いしたのですが、断られてばかりいまして…
  あっ、そうだっ。 これは、当店自慢の漬物です。 どうぞ、お持ち帰りくださいっ!」
一文字 「えっ、あっ、はい。」
  一樽まるごと、漬物をもらってしまった二人…
   
一文字 「おキヌちゃん… 恨むよ〜〜…」
  初仕事の記念の品が漬物〜っ! っていう事実が、なんとなく情けなくて、
  漬物樽を抱えたタイガーとともに、うなだれながら家路に向かう一文字…  とぼとぼ…
   
   
  その頃、弓の実家、闘龍寺のガレージで、なにやらゴソゴソしている雪之丞…
雪之丞 「おうっ! 哲っ! そこの、スパナとってくれっ!」
「はいっ! 伊達さんっ!」
  どうやら、仕事用のランクルを、いろいろ改造してるらしい…
   
「伊達さん、どんな感じになりそうですか?」
雪之丞 「そうだな〜、俺様の『翼竜X2号』も、これだけ手を加えりゃ〜、ちゃちな崖なら
  一気に駆け上れるぜっ!」
「すごいっ! あとでいいですから、俺、横にのっけてくださいっ!」
雪之丞 「おうよっ! まかせなっ!」
   
  改造も終わり、一息いれてる雪之丞たち
雪之丞 「ところで、おめ〜の弟の彼女って、横島んとこのシロだって?」
「ええ、そうなんですよ。 ヒロシのやつ、横島さんに会いに行った時、知り合ったらしくて。
  かわいい子なんで、うらやましいけど、デートの後は、いつものびてるんです。
  なんでも、体育会系の部活よりハードな散歩らしくて…」
雪之丞 「あははは。 人狼が相手じゃ、きついだろうなっ。」
   
  そこにやってきた弓…
「雪之丞さんっ! 車の修理は終わったのですかっ!?」
雪之丞 「しゅ、修理じゃねぇっ! 改造だと言ってるだろっ!?」
「車の調子が悪いから直すって言ってたじゃありませんかっ!
  そういうのを修理と言うんでしょっ!?」
雪之丞 「調子が悪いとは言ったが、そいつは、ポテンシャルが低くて話になんねぇって意味だっ!
  別に故障したわけじゃねぇっ!」
   
「もぉっ! ほんっとに強情なんだからっ!」
雪之丞 「どっちがだっ!」
   
「それはともかく、直ったのなら、仕事に行きますわよっ!
  おねーさまの体調がすぐれなくて、氷室さんが、わざわざ私に廻してくれたお仕事ですもの。
  おねーさまに、恥をかかせないよう、きっちり処理しませんとっ!」
雪之丞 「ああ、わかってるよっ! じゃ、哲、そういうわけだ。 またこんどなっ!」
「はいっ!」
   
  改造ランクルで仕事先に向かう二人…
  ガガガガガガ……  何やら異音を発しながら走行する翼竜X2号…
「ずいぶん、賑やかな車ですことっ!」
雪之丞 「あ、あれっ? おかしいな〜 さっき、いじったところかな…?」
「たしかに直っていませんから、修理とは言えませんわねっ!」
雪之丞 「くっ…! ちくしょ〜……
   
   
  賑やかながらも、止まることなく仕事先にたどりついた雪之丞のランクル
  その仕事先は、大手家電メーカーの生産工場…
雪之丞 「で、どんな相手なんだいっ!?」
「やっぱり、資料をぜんぜん見てなかったのですねっ!?」
雪之丞 「それを見るのは、おめ〜の仕事だろっ!?」
「少しは見ていただかないと、私も困りますっ! 特に、今回みたいな、強い相手だとっ!」
   
雪之丞 「強いってのは、知ってるぜっ! タイガーから聞いたからな。」
「それだけじゃ、知ってるうちに入りませんっ!」
雪之丞 「ああ、もう、わかったから、どんな奴か教えろっ!」
「ええ。 グレムリンっていう妖怪なの。」
雪之丞 「なんだ、そりゃ?」
   
「いたずらと機械いじりが大好きな妖怪で、凶暴性は無いわ。
  MHKが飼ってたんだけど、それが最近、逃げ出しちゃったそうなの。」
雪之丞 「凶暴性がないなら、強い相手といえねえんじゃねえのか?
  ま、そいつを、やっつけりゃあいいんだろ?」
「違うわっ! だから、資料を見てくれないと困るのよっ!」
   
雪之丞 「じゃあ、どうしろっていうんだよっ!」
「生け捕りにするのよ。 いままで、人間に飼われていたとはいえ、妖怪だから野生は
  残っているわ。 捕まえようとすると暴れるんで、並みのGSには手を出せないのよ。」
雪之丞 「生け捕りかぁ。 めんどくせぇな。 なんで、殺しちゃあいけねぇんだ?」
   
「機械いじりが好きだと言ったでしょ? 廃パソコンや廃家電の山の中に
  グレムリンを一晩放置すると、全部解体してくれるのよ。」
雪之丞 「ちっ、妖怪に解体屋をやらせてんのか。 MHKも、せこいなっ。
  で、そいつの弱点とかは、なんだ?」
   
「きれいな歌声が苦手とはあるけど… それを聞いたら逃げ出すらしいから、
  生け捕りには、役に立ちそうもないわね…。」
雪之丞 「ま、おまえには無理だからな。」
「な、なによっ! 私の歌を聞いたことなんかないくせにっ!」
雪之丞 「聞いたことないから、言ってんだよっ! うまけりゃ、カラオケ行きたがるはずだろっ!?」
「うっ!」
   
雪之丞 「ほかに、なんかねえのか?」
「翼のある妖怪だから、空を飛べるわ…。 でも、私たちの前に来たGSが、この工場内で
  遊んでたグレムリンを、お札で閉じ込めたとあるから、逃げ場はないわね。」
雪之丞 「なんだ、じゃあ、この工場の中で飼えばいいんじゃねえかよ?」
「あなた、工場1つ、いくらすると思ってるの? 話になりませんわっ!」
雪之丞 「あ〜、うるせえなっ。 わかったよ、もう捕まえにいくぜっ!」
「殺しては、だめですからねっ!」
   
   
  ようやく打ち合せも終わり、仕事にとりかかる二人…
雪之丞 「ふん、あいつだな? ぐずぐずして、怒らせたらやっかいだ。
  最初っから、全力で行くぜっ!」
「ええっ! 雪之丞さんは、あいつを後ろから抑えつけてください。
  その間に、私は前にまわって、封魔札を貼り付けますっ!」
雪之丞 「わかったっ!」
  ヴンッ! 魔装術と「水晶観音」で変化する二人
   
  早速、グレムリンを後ろから抱え込む雪之丞
グレムリン 『ギャ〜〜?』
雪之丞 「このっ! 暴れるんじゃねぇっ!」
グレムリン 『ギャ〜〜 ギャ〜〜〜 ギャァ〜〜!!』
  雪之丞から逃れようと、必死に抵抗するグレムリン
雪之丞 「ゆ、弓っ! 早くしろっ! こいつ、結構、力が強えっ!」
「わかってますっ! グレムリン、あなたは、私に服従なさいッ!!」
  ドウッ!  どうやら、無事終了した模様…
   
雪之丞 「へっ! たいした奴じゃなかったなっ!」
「そういう割りには、ずいぶん汗をかいてますわねっ?」
雪之丞 「ウォーミングアップみたいなもんだぜっ。 んっ?」
「じゃ、帰りますわよっ!」
  雪之丞を残して、車に向かう弓
  雪之丞の手元には、弓から手渡されたタオルがひとつ…
   
  帰り道…
「もう、タオルは渡しませんからねっ!!」
雪之丞 「くっ…! ちくしょ〜……
  結局、動かなくなってしまった翼竜X2号…
  仕方なく、魔装術で変化して、ランクルを後ろから押して帰る雪之丞…  とぼとぼ…
   
   
  懐かしの(?) 美神事務所
横島 「わぁ〜〜!! ミキちゃぁ〜〜〜ん!!  ぶっ!?
令子 「いい加減に、目を覚まさんかいっ!」
横島 「えっ? あっ? 美神さんっ?」
令子 「私たち、どうやら、タマモに化かされてたみたいね…」
   
横島 「そ、それは、美神さんが暴れてたから…」
令子 「たしかにねっ… この惨状を見れば、自分でも呆れるわ…」
  室内の割れる物はすべて割れ、物という物がすべて床に散乱している…
   
横島 「やっと、落ち着いてくれましたか…。 よかった…。」
令子 「でも、まだ、腹の虫はおさまらないわっ!
  エミのやつに、仕返しをしないわけにはいかないわよっ!」
横島 「仕返しって、なんのですか…?」
   
令子 「決まってるじゃないっ! 私の目の前で、西条さんとイチャイチャしたことへの仕返しよっ!」
横島 「じゃあ、エミさんの前で俺たちがイチャイチャすればいいんじゃないっスか?」
令子 「あんたじゃ、エミにショックを与えることにはなんないじゃないっ!
  なんか、手があるはずよっ!!」
   
  そんなところに仕事から帰ってきたおキヌちゃんチーム…
キヌ 「ただいま帰りましたぁ〜 横島さん、美神さんの機嫌、どうなりましたぁ〜?」
横島 「あっ、おかえり。 一応、少しは落ち着いたけど、まだ…」
   
令子 「んっ!? タマモっ!? そうか、こいつの幻術を使ってエミの奴を…
  あんた、ちょっと、こっち来なさいっ!」
キヌ 「あああ……、タマモちゃん。」
   
  やがて、西条とエミがICPOオフィスに帰ってくる…
  ビルの影で待ち伏せしている令子たち…
シロ 「美神さん、二人が戻ってきたでござるよっ!」
令子 「いいわね、タマモっ! 言った通りにやるのよっ!?」
タマモ 「………、わかったわ…」
   
  エミが令子に負けてくやしがってた数々の出来事を、タマモの幻術で、
  西条とエミの二人に見せようという魂胆らしい…  ちと、えげつない…
   
  カッ! もわわわ〜〜〜ん タマモが幻術をかける…
   
令子 「おっ! 効いてる、効いてるっ! なぁ〜に、あのエミの悔しそうな顔っ!
  ぷぷっ! それよっ! その顔が見たかったのよっ!」
   
エミ 「んっ? おたくら、何やってるワケ?」
キヌ 「エミさんっ! し〜〜っ! 静かにっ!
  あとで説明しますから、今は静かにオフィスに戻ってください。 お願いします。」
エミ 「ふ〜ん、どうやら、令子に関係ありそうね。 ま、おキヌちゃんのお願いだから、
  素直に従ったほうがよさそうね。 戻りましょう、西条さん。」
西条 「ああ、そうしよう…。」
   
  タマモの幻術に化かされたのは、エミたちではなく令子だけ…
  おキヌちゃんたちが機転を効かしてタマモにそうさせたためだった…
   
  で、翌日… 前夜の真相が知れ渡り、事務所に再びカミナリが落ちる…
   
令子 「だって〜〜〜〜っ!!」
美知恵 「だってじゃありませんっ!! 恥を知りなさい、恥をっ!!」
   
シロ 「美神さんを叱れるのは、母上しかいないでござる。 やっぱり、親って大切でござるなっ!」
タマモ 「でも、あ〜ゆ〜ふうに育てたってのは、誰のせいになるの…?」
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
[ 煩悩の部屋に戻る ]