『 三流GS兄妹 』

著者:まきしゃ


    一人の若いGSが悪霊を除霊しようとしている、とある建築現場での出来事…。
数太郎 「ふふふふふ。 うふうふ、うふうふ。」
  不適な笑みを浮かべ、算盤(そろばん)を操るGS… その名は算・数太郎(さん・すうたろう)
  パチパチ、パチパチ チ〜〜ンッ!
数太郎 「計算完了―――!!
  私の計算では、君は8分40秒で消滅するっ!
  私の計算は完璧イイイ―――っ!! もらったアアア―――――!!」
   
悪霊 『………』 (ぼぉ〜〜〜) この悪霊、どうやら何も考えていない模様…
   
数太郎 「ハァ〜〜ッ!  トゥ〜〜〜ッ!  ヤァ〜〜〜ッ!!」
  なにやら叫びながら、悪霊に霊波を浴びせ続ける数太郎…
   
悪霊 『………、ん〜〜、なんだぁ〜〜?』
数太郎 「おおっ!? こっ、この悪霊、しゃべれるのかっ!?
  しまったぁ〜〜! 予想外の因子だっ! 計算やり直しイイイ―――っ!!」
  冷や汗を浮かべ、ふたたび算盤を操る数太郎… パチパチ、パチパチ チ〜〜ンッ!
   
数太郎 「よ、よしっ! それでも、23分10秒で除霊できるぞっ!
  悪霊め――っ! 覚悟しろ―――っ!!」
   
  3時間経過…
悪霊 『あ〜〜〜、うざいな〜、こいつ… 成仏すりゃ〜いいんだろ? 成仏すりゃぁ〜!
  オレは、ただここで、ぼぉ〜〜〜っとしてたかっただけなのによぉ〜
  成仏すりゃ〜、また、ぼぉ〜〜〜っと出来るのかなぁ〜〜?
  ま〜、天国ってところがありゃ〜、ぼぉ〜〜〜っと出来そうだけどなぁ〜〜』
  シュウゥゥゥ〜〜〜〜 成仏していく悪霊
   
数太郎 「ぜぇ〜 ぜぇ〜 ぜぇ〜 ス〜〜 ハ〜〜 ス〜〜 ハ〜〜〜 フゥ〜〜〜…
  よしっ! 私の完勝だっ! キツイ戦いではあったが、完璧にやっつけたぞっ!」
依頼主 「ご、ご苦労さまです……」
  建築業者の依頼主に、自信たっぷりに話しかける算数太郎。
数太郎 「これで、もうこの場所では悪霊に悩まされることもないはずです。 ご安心ください。
  また、次の機会も私をお呼びしていただければ、一発で解決してみせますよっ!」
依頼主 「う〜ん…、どうしようかなぁ〜…」
   
数太郎 「えっ!? な、なにか、ご不満でもっ!?」
依頼主 「いえね…、こんなに時間がかかるとは思っていなかったもんだから…
  美神さんに頼んだときなんか、ものの5分もかからなかったしね…」
数太郎 「うっ…! 美神…令子…、ですか…?
  そ…、その…、超一流と比べられても…、その…、あの…」
   
依頼主 「ああ、比較の相手が凄すぎたな。 すまん、すまん。
  そのぶん、君への支払いも少なくてすむしな。
  ほんとに10万円でいいのかい? 美神さんなら、500万は取るところだろうけど。」
数太郎 「はっ、はい。 その…、まだ私も駆け出しですし、実績を積み重ねてからになりますから…
  ですので、出来れば次の機会も、お願いしたいのですが…」
   
依頼主 「そうだな〜…、安さは魅力なんだけど、もうちょっと力をつけて欲しいところだなぁ〜
  GSが除霊に失敗して大怪我なんかされてしまったりすると、
  次に頼むGSに、危険手当とかで、ものすごく高い金額を支払わされるからね。」
数太郎 「そ、そこを、なんとか…」 (汗)
   
依頼主 「う〜ん…。 そうだっ! 君、妙神山で修行してきなさいっ! そうすれば、使ってあげるよっ!」
数太郎 「えっ!? 妙神山…、ですか…?」
依頼主 「うん。 あそこは、なかなかいいところだよっ。」
数太郎 「ええっ!? あ、あの険峻な霊山に、行かれたことが有るんですかっ!?」
   
依頼主 「仕事で2度ほどね。 美神さんに頼まれて、壊れた社殿を建て直しに行ったんだ。
  あそこの管理人の小竜姫さんは、美人でかわいらしいお嬢さんだったなぁ〜
  空気もきれいだし、一度は行ってみる価値のあるところだよっ!」
数太郎 「は…、はあ…」
  ほとんど観光地気分で妙神山行きを勧める依頼主。 まあ普通の人じゃ、しょうがないか…。
   
   
  そんなわけで、妙神山に修行しに行くことにした算数太郎…
数太郎 「ああ…、仕事欲しさについつい来ちゃったけど、とんでもないところだよなぁ〜
  一流のGSでさえ、命を落としかねない修行場だというのに…
  オレ、大丈夫なのかなぁ〜…?」
   
  深い谷底にびびりながらも、修行場を目指して妙神山に登っていく算数太郎。
  やがて、鬼門の前に到着…。
数太郎 「うう…、怖そうな門だなぁ〜…
  なになに…? 汝 一切の望みを捨てよ …?
  そんな殺生な…。 一縷の望みをかなえるために、やってきたのに…。
  どうしようかなぁ〜 やめようかな〜…」
   
右の鬼門 『おいっ! 貴様っ!』
数太郎 「わわっ!? 門がしゃべったっ!?」
右の鬼門 『さっきから、一人で何をぶつぶつ言っておるのだっ!?
  用があるなら、はっきり申せっ! 修行に来たのかっ? それとも別の用件かっ?』
数太郎 「そ、その… 修行に…」
   
左の鬼門 『ならば、話は簡単っ! その方、我らと手あわせ願おうかっ!!
  勝たぬ限り 中へは入れ… あぅ…』
  ぎ〜〜〜〜 門が開いてしまう… もちろん、開けてしまったのは小竜姫…
   
右の鬼門 『小竜姫さまぁ〜〜 またですかぁ〜? えっ…? どうされたのですか? そのお顔…』
  目の下にクマを作ってしまっていた小竜姫… げっそり…
小竜姫 『どうもこうも…、パピリオのせいで…』
右の鬼門 『また、なにかイタズラを…?』
小竜姫 『イタズラはいつものことなんですけどね… 今日はお師匠様がキレてしまって…
  私の管理がなってないということで、お師匠様の説教をずっと聞かされていたところなんです…』
   
  ぐちぐちと自分のかわいそうな状況を、鬼門にぐちる小竜姫…
  よっぽど、たまっていたみたい…
   
小竜姫 『ぐちぐちぐち……  そんなときに、表にお客様が見えている気配がしたので、
  ちょっと息抜きができると思って、こちらに来てみたのですが…
  あっ、そうでした。 お客様が見えていたのでしたね?』
数太郎 「あ…、ど、どうも…。」
   
小竜姫 『すみません、お待たせしました。 どのようなご用件でしょうか?』
数太郎 「そ、その… 修行に…」
小竜姫 『修行…、ですか…?』
  怪訝な顔をする小竜姫。 数太郎がとてもGSとは思えなかったからだ。
   
小竜姫 『あなた、名はなんといいますか? 紹介状はお持ちでしょうね。』
数太郎 「わ、私は、算数太郎…。 しょ、紹介は、その…、えっと…、美神令子…」
小竜姫 『えっ!? 美神さんの紹介っ!?』
   
数太郎 (し、しまった。 紹介状がいるなんて知らなかったから、口からでまかせ言ってみたけど
  この反応、美神令子じゃ、まずかったのかなっ?)
   
小竜姫 『そ、その…、算さん…。 その…、失礼ですが、美神さんから、紹介料をいくら取られましたか…?』
数太郎 「えっ!? い、いえ…、ただ普通に紹介されただけで…」
小竜姫 『タダですってっ!? そっ、そんな、まさかっ!?』
   
右の鬼門 『小竜姫さま…。 どうやら、この男、ウソをついているようですね…。』
小竜姫 『そうですね…。 美神さんがタダで紹介するなんて、絶対にあり得ないことです。』 (キッパリ)
数太郎 (そ、そうだったの…?)
   
小竜姫 『算さん、正直におっしゃってください。』
数太郎 「も、申し訳ありません。 私の顧客から、妙神山で修行をしてきたら仕事を与えると言われて、
  誰の紹介も無く、直接ここに来てしまいました…。」
   
小竜姫 『そうですか…。 それでは、残念ですが、あなたを修行させるわけにはいきません…。
  実際、あなたから感じられる霊能は、ここの修行に耐えられるほど強くないようですし…。』
数太郎 「やはり、ダメですか…。 とほほ…」
  がっくり肩を落とす数太郎…。
   
小竜姫 『そんなに気を落とす必要はありませんよ。 ここは超エリートだけが修行できる場所なのです。
  あなたのような一般の霊能者も、人間界では役に立っているのですから。』
数太郎 「はぁ… (やっぱりオレって三流なのね… しくしく…)
   
小竜姫 『そうですね…。 もし、人間界で修行を積み重ねて、ここに来る力がついたと思ったら、
  唐巣神父を尋ねてみるのがいいでしょう。 彼なら真摯に話を受けとめてくれるはずです。』
数太郎 「そうですか…。 アドバイス、ありがとうございます…。」
   
小竜姫 『あと、これも差し上げますわ。』
  ぽんっ! 突如、小竜姫の手に一冊の本が現れる…
  そのタイトルは、「あなたもGSになれるっ!」(監修:美神令子)
数太郎 「これは…?」
小竜姫 『美神さんの書かれた本のようです。 役に立つかもしれませんから、お持ち帰り下さい。』
数太郎 「そうですか…。 ありがとうございます…。」
  結局、本をもらっただけで、修行もできずに妙神山をあとにする算数太郎… とぼとぼ…
  ちなみにこの本、美神令子から着払いで1000冊ほど強引に妙神山に送りつけられたモノである…。
   
   
   
  ところかわって、六道女学院のお昼休み。
  パタパタパタ… カバンを抱えて廊下を急ぎ足で出口に向かうおキヌちゃん。
美恵 「あら、あなたはB組の氷室さん? 今日は早退するの?」
キヌ 「えっ? あっ、はい。 これから、お仕事なもんですから。」
美恵 「仕事?」
キヌ 「ええ。 美神さんのお仕事のお手伝いなんです。」
美恵 「じゃあ、除霊の現場に?」
キヌ 「はい、そうです。 あっ、すみません。 あまり時間がないんで、これで失礼しますね。」 ぺこり
美恵 「そう…。 気をつけてね。」
  パタパタパタ… 出口に向かって走り出すおキヌちゃん。
美恵 「いいなぁ〜、氷室さん。 私も早く除霊の現場に出てみたいなぁ〜」
   
令華 「美恵〜、あんた廊下で何やってんの〜? もうお弁当食べ始めちゃうわよ〜?」
芽衣 「あら、美恵さんなら、食べるのは犬のように早いですから、先に食べ始めても大丈夫ですわよ?」
美恵 「あっ、ひどいわね〜。 ぽくチャンに、そう言われるとは思わなかったわ?」
芽衣 「わっ、わたくしっ、ぽくチャンじゃありませんっ! いい加減、その呼び方、やめてもらえますっ!?」
美恵 「へいへい。 もう少し修行をつんで強くなったらね、ぽくチャンっ!」
芽衣 「もぉ〜〜っ!」
   
  ここは1年D組、クラス対抗試合の代表になった三人娘が一緒にお弁当を食べているところ。
  目が隠れるほど前髪を垂らしていて正攻法を得意としているのが、美恵(ミエ)
  4鬼のキョンシーを操る中華娘が、令華(れいか)
  「無敵の盾(イージス)」理論のもと非武装結界を創り出す結界娘が、芽衣(めい)
   
  ちなみに、芽衣が美恵に「ぽくチャン」と呼ばれているのは、クラス対抗戦で一文字に
  ボディーに軽〜く一発くらっただけで、ぽくッ と、やられちゃったためらしい…。 ひでぇ…
   
  もぐもぐもぐ… お弁当をほおばる三人娘。
美恵 「あ〜あ、私もB組の氷室みたいに、美神さんみたいなすごいGSと一緒に
  除霊現場に出てみたいなぁ〜 経験値が一気に上がるもんなぁ〜」
芽衣 「あら、それでしたら、あなたのお師匠さまにお願いしてみたらいかがですか?」
   
美恵 「うちの師匠〜? ムリムリ。
  うちのチームには、GS試験に何度も落ちてる、ゆ〜しゅ〜な助手が5人もいるからね〜。
  師匠も、そいつらを合格させないことには、自分の能力まで疑われるから、つきっきりで指導してるんだ。
  私みたいに学校に通ってる弟子を、現場に連れてく余裕なんて、あるわけないよ。
  私が師匠の事務所に行っても、雑用しかやらせてもらえないんだもの。」
   
令華 「ふ〜ん。 その助手って、何浪してるの?」
美恵 「7浪。」
令華 「えっ!? なな浪…?」
美恵 「そっ。 7年連続不合格。 い〜加減、いい年のオバチャン(25歳)なんだから、
  さっさとGSになるのをあきらめて、結婚退職しちゃえばいいのに。
  それ以外の助手は、2〜3浪ぐらいで合格したなら独立するし、不合格なら転職してるんだけどね〜」
   
令華 「ふ〜ん。 そのオバチャンも、しぶといわね〜。 試験では、結構いいとこまでいってるの?」
美恵 「まあね〜。 霊力の審査は7年連続で合格だし、実技も3年連続で初戦は突破しているわ。」
令華 「あと、一息なのかぁ〜」
美恵 「それに、そのオバチャン、うちを首席で卒業したしね〜」
令華 「えっ!? 首席っ!? な、なんで、うちの首席で受かんないのよっ!
  うちの卒業生って、毎年10人前後、受かってるのにっ!」
   
美恵 「そんなの、私も知らないわよ。 実技で落ちてるんだから、よっぽどクジ運が悪いんでしょ?
  もう、女の意地だけで、受け続けてるって感じね。」
令華 「たしかに、受からないことには同窓会には出れないわね〜」
美恵 「受かっても、いまさら出れるとも思えないけどね…
  学生時代、見下していた連中が、GSとしては大先輩になっちゃってるし…」
令華 「う〜ん、みじめなオバチャン…」
   
  もぐもぐもぐ… お弁当をほおばる三人
芽衣 「令華さん、あなたの修行先では現場に出ることがあるのですか?」
令華 「ん〜、うち〜? うちは、師匠が香港在住だからね〜 日本支部は指導教官だけで
  現場に出るGSは一人もいないから、私も除霊の現場に出る可能性はゼロだわ。」
美恵 「あんたも、実戦経験はゼロなのか〜 現場に出たいよな〜?」
令華 「まあね〜」
   
芽衣 「そのてん、私は恵まれていますわっ。 現場には、いつも両親と一緒に出ていますもの。
  あなたがたとは、経験値が全然違うってことになりますわね。」
令華 「はあ?」
美恵 「あんたが、何を経験したってゆ〜のよっ!?」
   
芽衣 「ですから、お仕事の現場を…」
令華 「あんたの両親って、単なる結界屋だろ〜?」
美恵 「私らの言ってるのは、除霊の実戦現場よっ!?
  新築のマンションとかに、魔除けのお札をぺたぺた貼るだけの現場に居ただけで、
  それがなんの経験値になるってゆ〜のよっ!?」
   
芽衣 「けっ、結界を張るだけですけど、地縛霊が邪魔しようとすることがあるのですっ!」
令華 「ふ〜ん…。 その除霊現場にあんたも立ち会ったわけ?」
芽衣 「い、いえ…、その…、私は、まだ…」
令華 「な〜んだ。 やっぱり、経験値はゼロと一緒じゃん。」
芽衣 「うっ…」
美恵 「でもなぁ〜、それでも何度か親についていけば、除霊現場に出る可能性はあるわけだ。
  家族と一緒に現場に行けるのは、ちょっと、うらやましいよな〜。
  あっ、そ〜いえば、令華の兄貴って、今年GS免許とって独立したんだっけ?」
   
令華 「えっ? ええ…。」
美恵 「なら、あんたの兄貴に頼んで、一緒に現場に出れるんじゃないの?」
令華 「まっ、まだ、独立して間もないから、頼みにくいのよ…」
  本音は、兄の除霊スタイルが恥ずかしくて、一緒にやりたくないからだったりする…
   
美恵 「ふ〜ん…。 でもさっ、助手とかが居た方が便利だろっ!?
  なっ、令華っ! こんど、お兄さんに頼んで、私と一緒に現場に連れてってもらおうよっ!?」
令華 「う〜ん…」
美恵 「令華、頼んだよっ!」
令華 「う〜ん… あまり気乗りしないなぁ〜…」
   
美恵 「なんだよ、ケチっ! お兄さんを、自分だけで独り占めする気なのか?」
令華 「独り占めって…、なによ、それ?」
美恵 「だって、GS試験に1浪で合格した、優秀なお兄さんなんだろ?」
令華 「ベスト32で、最下位合格なんだけど…」
美恵 「何、言ってんのよっ! 1800人以上の受験者の中のベスト32よっ!?
  あんただって、7浪してもおかしくない、超難関なんだよっ?」
令華 「ちょっと、あんたんとこのミジメなオバチャンの例を出さないでよっ! 縁起でもないっ。」
   
美恵 「でも、ほんと、すごいよなぁ〜 たった1年浪人しただけでGS試験に合格した令華の優秀なお兄さまっ。
  なんだか、あこがれちゃうなぁ〜」
芽衣 「そうですわね。 きっと、ステキな方に違いありませんわ。」
令華 「ううっ… あんたらなぁ〜…」
   
美恵 「だからぁ〜、令華は、私にステキなお兄さまを取られるのがイヤで、独り占めしてるんだろっ?
  この、ブラコン娘がっ!」
令華 「あんた…、ほんとにそう思う…?」
美恵 「じゃあ、なんだってゆ〜のよっ?」
令華 「なんだといわれても… うう…」
   
美恵 「じゃあさ、せめてお兄さまの写真を持ってきてよっ。 気になるからさっ。」
令華 「ううう… そんな恥ずかしいこと…」 (しくしく…)
美恵 「それって… あまりカッコよくないってこと…?」
令華 「あうっ、あううっ…!」 
  ぶし〜〜〜〜っ! 血の涙…
美恵 「………そうか、すまん…。 悪かった…。」
   
   
   
  数日後… 算・数太郎、算・令華兄妹の自宅。
  令華の部屋にやってきた数太郎
数太郎 「令華、ちょっとお願いがあるんだが…」
令華 「ん? なに…?」
数太郎 「以前からお願いしていた、オレの助手になってもらう話なんだけど…」
   
令華 「………、お兄ちゃん…、その話は何度も断ってるよね?
  お兄ちゃんの除霊方法って、カッコ悪いんだものっ!
  お兄ちゃんとだと、カッコ良く除霊するっていう私の夢がぶち壊しになっちゃうのっ!」
数太郎 「………、そうか…。 そうだったよな…。」   どよよよ〜ん…
   
令華 「…? どうしたの? いつもより、ずいぶん雰囲気暗いけど…?」
数太郎 「すまん…」
令華 「別に私に謝らなくてもいいけどね…。 妙神山で門前払いされたのが、尾を引いてるの?」
数太郎 「それなんだが…」
   
  数太郎の話によると、妙神山行きを勧めた建築業者には、修行してきたとウソをついてしまったらしい。
  そのため、次の仕事も廻してもらえることになったのだが、下見をしてきたところ
  Bクラスの悪霊らしく、数太郎の腕では、命を落としかねない相手だというのだ。
   
令華 「あ〜もう、そんなウソをつくからよ〜
  命のほうが大切なんだから、仕事を断ったほうがいいんじゃないの?」
数太郎 「そうは言っても、断ったら信用無くして仕事がこなくなってしまうし、
  師匠や先輩に応援を頼んだら、依頼先との契約金額が安いから赤字になってしまうし…
  だから、今回だけでも令華に手伝ってもらいたいんだけど…」
令華 「う〜ん…」
   
  バカ兄貴のピンチに、今回だけは手伝おうかと考えている令華。
  そんなとき、令華の携帯の着メロがなりだす。 ポンピロポロ〜ン
令華 「美恵かぁ〜 なに〜?」
美恵 「勉強するのに飽きちゃってさ〜 あんたは、なにやってんのかな〜と思ってね。」
令華 「私〜? 私は今、兄貴と話をしてたとこなんだけど…」
美恵 「えっ!? お兄さん、近くにいるのっ!?」
令華 「うっ…! いるけど…」
美恵 「じゃあ、電話、代わってよっ! お兄さんの声、聞きたいっ!」
令華 「いいけど… あんたの妄想上の人物とは別の生き物だからねっ!」
   
  憎まれ口をたたきながら、携帯を数太郎に渡す令華。
美恵 「令華のお兄さんですかっ!? 私、令華のクラスメイトで美恵といいますっ!」
数太郎 「はじめまして。 令華の兄の数太郎です。」
美恵 「きゃぁ〜っ! こんばんわ〜っ! 令華から、優秀なGSだと、お話は伺ってますっ!」
数太郎 「えっ? ほんと? そっ、それは、どうも…」
美恵 「それで…、えっと、その…、もしよろしかったら、その…、
  今度、お兄さまが除霊するところを、見学させていただきたいんですけど。」
   
数太郎 「見学ですか…? う〜ん、次の仕事は、かなり危険な相手だからなぁ〜
  僕一人では退治しきれないんで、ちょうど今、令華に応援を頼んでいたところなんだ。
  そんな危険なところに、いきなり連れて行くわけには…」
美恵 「応援ですかっ!? 私にもやらせてくださいっ! 私のことなら、心配いりませんっ!
  私の除霊スタイルは、正攻法ですから、助手として令華より役に立つぐらいですわっ!
  お願いしますっ! お兄さま、是非、私も連れてって下さいっ!」
   
数太郎 「令華…、この子、次の仕事の助手をしたいと言ってるんだけど、大丈夫かなぁ〜?」
令華 「しょ〜がないわね〜、携帯かしてっ!」
  数太郎から携帯を奪い取る令華
令華 「あんた、次の仕事はほんとに危険なんだよっ? わかってるのっ!?」
美恵 「そうらしいけど、あんたを助手に頼めるぐらいの相手だろ?
  あんたで役に立つなら、私が役に立たないわけがないわっ?」
令華 「もぉ〜〜 どうなったって知らないからねっ!?」
   
   
  てなわけで、2日後。 学校を早退して除霊現場に向かう1年D組の三人娘。
令華 「なんで、芽衣までついてくるのよっ!?」
芽衣 「あら、仲間はずれはひどいですわ? 私も除霊現場を経験したいですもの。」
美恵 「まあ、いても邪魔にはなんないから、いいんじゃない?
  いざとなったら、芽衣の結界で悪霊を弱らせれば、みんなの安全も確保できるしさ。」
令華 「そうね。 それは心強いかも。」
   
芽衣 「それって、非武装結界空間のお話ですか? その道具は、今日は持ってきていませんわ。」
美恵 「えっ? なんでっ?」
芽衣 「だって、その結界を創る書物は、お値段が高いんですもの。
  昨晩、お父さまにお願いしたら、見学だけなら不要だと、断られてしまいましたの。
  ですから、今日は安全に見学できる普通の防御結界だけを用意しましたの。」
美恵 「こいつ… ほんとに見学だけしか考えてないのな…」
   
   
  やがて廃屋の除霊現場に到着。
数太郎 「やあ、令華。 それに、君たち。 待ってたよっ!」
令華 「これが、私の兄貴。 算数太郎よ。」
美恵 「美恵です。 よろしくお願いしますっ!」
芽衣 「芽衣といいます。 よろしくお願いいたしますわ。」
   
  ひそひそ声で話す美恵と芽衣
美恵 「ちょっと個性的だけど、令華が泣くほどヒドイ男でもないよな?」
芽衣 「まあ、カッコイイとは言いにくい人ですけど…」
  美恵にとっては、男は顔より能力の方が重要らしい。
  できる女性にありがちな傾向ではある…
   
  打ち合わせを始める数太郎と三人娘
数太郎 「うん。 君たちの能力のことは、だいたいわかった。
  僕が真正面から攻撃するから、令華と美恵さんは、左右に別れて援護して欲しい。
  芽衣さんは、後ろで結界を張って見ていてくれればいいから。
  令華と美恵さんも、危なくなったら芽衣さんの結界に逃げ込んでくれよな。」
三人娘 「はいっ。」
   
   
  いよいよ除霊開始っ!
  さすがに三流GSチームも、緊張のおももち。
  対する悪霊は、霊力はBクラスのちょっとだけ狂暴な元サラリーマン
数太郎 「みんなっ。 準備してっ!」
三人娘 「はいっ!」
  キンッ! 早速、神通棍を構える美恵っ!
  芽衣も少し後ろで防御結界を張る。
   
令華 「イー、アル、サン、スーッ!!」
  ボッ! ボヒュンッ! 封じられていたお札から飛び出す4鬼のキョンシー
令華 「あんたたちっ! あの悪霊のスキを狙うのよっ!」
   
キョンシー 「ガッ ガッ ギィ?」
  ギロリッ! 令華の指示を無視して、美恵にキツイ視線を送るキョンシーたち
美恵 「な、なによっ?」
   
キョンシー 『このネーチャンやっ! わてらに破魔札、投げつけたんわっ!』
キョンシー 『そやっ! コイツや。 やってまえ〜っ!』
  ぐわぁ〜〜〜っ! 美恵に襲いかかる令華のキョンシー
   
美恵 「ひゃぁっ!」
  あわてて芽衣の作った防御結界の中に逃げ込む美恵。
美恵 「この馬鹿キョンシーっ! あんたたちが、氷室に操られて私を襲ってきたからでしょっ!?
  自分らが裏切ったくせに、逆ギレしてるんじゃないわよっ!
  令華っ! あんたも、こいつら、なんとかしなさいよっ!
  できないんなら、また破魔札、投げつけてやるわよっ!?」
   
令華 「あんたら、いい加減にしなさいっ! ボケかましてる暇なんてないのよっ!?」
キョンシー 「グギ… グギギ…」
  なんとか令華の言うことを聞いて、美恵を襲うのをあきらめたキョンシーたち…
  除霊する予定の悪霊は、令華たちのやってることを不思議そうに眺めてたりする…
   
数太郎 「ど、どうやら、みんな、準備ができたみたいだな。 あは、あはは… コホン。 ではっ!」
  気合を入れる数太郎っ!
数太郎 「ふふふふふ。 うふうふ、うふうふ。」
  パチパチ、パチパチ いっちゃってる雰囲気で算盤を使って計算している数太郎
   
美恵 「おっ、おい令華… あんたの兄さん、どうしちゃったの…?」
令華 「うう… 聞かないで… いつも、こんな感じで除霊してるの…」 (涙)
美恵 「そ、そうなのか…」 (汗)
   
数太郎 「計算… うおおっ? 計算が完了しない―――!?
  令華ぁ〜っ! 美恵さんの霊力って、どれくらいに見積もればいいんだぁ〜?」
令華 「わかんないけど、私と一緒でいいわよっ!」
数太郎 「そ、そうか。 よしっ、これで計算可能っ!」
  パチパチ、パチパチ チ〜〜ンッ!
数太郎 「計算完了―――!!
  私の計算では、君は65分30秒で消滅するっ!
  私の計算は完璧イイイ―――っ!! みんなぁ―! いくぞぉ―――――!!」
   
悪霊 『おおっ!? こいつら、ほんとにオレを除霊しに来てたのかっ!?
  てっきり、コントの練習でもやってるのかと思ったぞっ!?』
令華 「なっ、なによっ! 失礼な悪霊ねっ!
  イー、アルッ! 二人は、奴の弱点をさがしてっ!
  サン、スーは、お兄ちゃんの援護よっ!」
   
  どうやら、ようやく除霊が始まったみたい…
   
  しばらくバタバタ戦っていたが…
悪霊 『うがぁ〜〜〜っ!!』
  ガラガラガラッ!
美恵 「わぁっ!?」
  ゴツンッ! きゅるるるるぅ〜〜〜〜 パタン…。
  悪霊の投げ散らかした瓦礫が頭に当たってしまい、気を失ってしまった美恵…
   
芽衣 「美恵さんっ!?」
令華 「芽衣っ! あんた、美恵を結界の中で手当てしてやってっ!
  それと、誰でもいいから、GSの応援を呼んでもらえるっ!?」
数太郎 「令華、なんとか俺たちだけで…」
令華 「お兄ちゃん、むちゃ言わないでよっ! この場で一番使える美恵が、怪我しちゃったのよっ?
  このままじゃ、逃げるか殺られるかのどちらかしかないわっ!」
数太郎 「くっ… しかたない… 芽衣さん、頼むっ!」
芽衣 「わかりましたわっ!」
   
   
  トゥルルルル… トゥルルルル…
キヌ 「はい、こちら美神除霊事務所です。 あっ、西条さん。 美神さんにかわりますねっ!」
令子 「ん…、西条さん、どうしたの?」
西条 「令子ちゃん、緊急事態が発生したんだっ!
  今、民間のGSが悪霊に殺されそうになっていて、応援要請をうけたところなんだっ。
  でも、今僕がいるところから2時間以上かかる場所なんで、間に合いそうも無い。
  令子ちゃん、お願いできるかな?」
   
令子 「ふ〜ん、そうなの…。 で…?」
西条 「うっ…! オカルトGメンからの正式な応援要請費とは別に、僕の自腹で一千万。」
令子 「さすがは西条さん、対応が早いわねっ!」
西条 「人命がかかっているからね…。 詳細は、通報者と直接話してほしい。
  通報者の電話番号は…」
   
   
  ブロロロ〜ンッ! 車を猛スピードで飛ばして救助に向かう美神除霊チーム!
令子 「芽衣さん、話はわかったわ。 その場所なら10分もあれば、着くわねっ!
  おキヌちゃん、電話は繋ぎっぱなしにして、芽衣さんから逐次、情報収集してくれるっ!?」
キヌ 「はいっ、わかりましたっ!」
  携帯を令子から受け取るおキヌちゃん
   
キヌ 「芽衣さん、いま現場の様子はどうなっていますか?」
芽衣 「えっと、令華さんと、そのお兄さまが必死で悪霊と戦っていますわ。
  令華さんのキョンシーが、悪霊の攻撃を邪魔してますので、こちらのダメージは少ないんですけど、
  お兄さまの霊波攻撃も、あまり悪霊に効いていないみたいで…」
   
キヌ 「美恵さんの怪我の具合はどうですか?」
芽衣 「美恵さんは、私の結界の中で、のびたままですわ。
  大きなたんこぶができてますので、逆にあまり重傷ではないんじゃないかと…」
   
  パシッ! 携帯をおキヌちゃんから奪い取る横島
キヌ 「あああ…、横島さん…」
横島 「やはッ! 芽衣さん、君のことは、よ〜く覚えているよっ!
  なにしろボクは、クラス対抗戦の特別審査員だった、横島だからねっ!」
芽衣 「は、はあ?」
   
横島 「君の (相手の服を破る) 戦い方は、とっても魅力的だったよ。
  おキヌちゃんとは敵チームだったから応援するわけにはいかなかったけど、
  ボクは、君にもっと強くなってもらいたいと思っているんだ。
  今度、ボクが丁寧に指導してあげるから、一度お茶でも…  ぶっ!?」
  キキキキィ――ッ!
令子 「さっ、ついたわよっ! こんな仕事、さっさと片付けるわよっ!」
   
  廃屋の中で悪霊と必死に戦っている三流GS兄妹…
悪霊 『がぁ〜〜〜っ!』
数太郎 「くっ…!」
令華 「イー、アル、こらえてっ! もう少しで、美神さんたちが助けにくるからっ!」
   
  やがて美神除霊チームが現場に到着する!
キヌ 「美恵さん、大丈夫ですかっ!?」
横島 「芽衣さん、ボクが横島ですっ!」
令子 「何をしとるか、何をっ!」
  倒れている美恵にヒーリングをするために駆け寄るおキヌちゃん
  結界の中に立っている芽衣を口説きにいくために駆け寄る横島
  そんな横島をしばくために神通棍をふりかざして駆け寄る美神令子
   
令華 「その…、美神さんたちって、私たちを助けるために来たんじゃないの…?」
  悪霊を無視してドタバタしている令子たちの行動に、とまどっている令華。
  しかたなく、あとからのんびり入ってきたシロとタマモに声をかける…
シロ 「そのはずなんでござるが…」
タマモ 「みんな、中に入るまでに、悪霊の能力を見切っちゃってたからね〜」
   
令華 「そ、そうなの…?」
シロ 「相手が強ければ、すぐに退治したとは思うんでござるが…」
タマモ 「そうね。 こんなに弱い悪霊が相手なんだもの、緊張感が全然ないわ。
  除霊しようと思ったら、5秒もかからないんじゃないのかな?」
令華 「うっ…!」
   
  芽衣にちょっかいをだそうとした横島をしばくのに夢中の令子に、声をかけるシロ
シロ 「美神さん、この悪霊、拙者が退治しちゃってもいいでござるか?」
令子 「ん〜、ちょっと待って。 除霊じゃなくて、呪縛ロープで動きを封じてくれる?
  この子たちの、いい練習台になりそうだから。」
シロ 「わかったでござるっ!」
   
  パシッ! ぐるぐるりんっ!
  横島から呪縛ロープを受け取り、あっというまに悪霊の動きを封じてしまったシロ
  美神除霊チームの早業を、呆然と眺めるだけの三流GSチーム…
   
令子 「さてと、これであとは除霊するだけでいいんだけど、
  あんたたち高校生三人がいるってことは、現場で実戦経験を積みたかったわけでしょ?」
令華 「は、はい…」
令子 「それじゃあ、それぞれ、あの悪霊の倒し方を考えて、実行してみてっ!」
   
  おキヌちゃんのヒーリングで回復した美恵も加わって、即席美神除霊講座が始まる。
  悪霊の急所の見極め方とか、道具の使い方とかを指導する令子。
  ビシッ! バシッ! うぎゃあぁ〜〜〜…
  呪縛ロープで身動きが取れない悪霊は、ほとんどなぶり殺し状態… かわいそうな悪霊さん…
   
キヌ 「あの…、その…、美神さん… 悪霊さんが、泣いているんですけど…
  その…、そろそろ、とどめを刺して上げたほうが、いいと思うんですけど…」
   
令子 「ん〜、悪霊に情けをかける必要なんか、これっぽっちもないんだけどね〜
  ま、ひととおり説明したから、もういいか。
  じゃ、ゴーストスイーパー美神令子が、極楽に行かせてあげるわっ!」
   
悪霊 『おねげえしますだ、ゴーストスイーパーさまぁ〜!』
令子 「ああ、もう、気合がそがれるわね〜 吸印っ!」
  バシュゥ〜〜 悪霊の望みもかない、無事、除霊終了。
   
令子 「シロっ! わかってるわねっ!?」
  パシッ! 悪霊に巻きつけられていた呪縛ロープを、シロに手渡す令子
シロ 「うっ… わ、わかったでござる…」
キヌ 「あああ…」
   
  ぐるぐるりんっ! 横島の身体に呪縛ロープを巻きつけるシロ…
横島 「えっ!? こらっ、シロっ! なにするんだっ!?」
シロ 「せ、先生、ちょっとの辛抱でござるよ…」
   
令華 「その、美神さん… 横島さんは、どうかしたんですか…?」
令子 「あっ、こいつのことは、ほっといていいから。
  仕事が終わった状態で、こいつを放置すると、あんたたち三人娘が襲われるからね。」
令華 「そ、そうなんですか…」
   
令子 「じゃ、みんな、帰るわよっ!」
キヌ 「はい。 それじゃあ、みなさん、また学校でお会いしましょう。」
横島 「あああ、女子高生のみなさん〜〜 せめて携帯の電話番号〜〜〜っ!」
  ズルズルズル… 横島を引きずりながら帰って行く美神除霊チーム…
   
  ブロロロ〜ンッ! 車を猛スピードで飛ばして次の仕事場に向かう美神除霊チーム
令子 「ちょっと、時間を使いすぎちゃったわね。 おキヌちゃん、間に合いそう?」
キヌ 「あっ、はい。 たぶん、大丈夫です。
  でも、美神さん、やっぱり、やさしいんですね。 あんなに丁寧に指導してあげるなんて、
  令華さんたち、とってもよろこんでいると思いますよっ!」
   
令子 「まあね〜 あの子たち、特に美恵って子は強くなるわよ〜
  私と同じ正攻法だし、5年後には強力なライバルになってると思うわ。
  だから、今のうちに恩を売っておけば、私のシマを荒らすようなアコギなことはしないだろうと思ってね。」
横島 「あんたなぁ〜…」
キヌ 「あああ…」
   
   
  し〜ん… あとに残された数太郎と三人娘…
  実力の差をまざまざと見せつけられたこともあり、みな、寡黙… どよよ〜〜ん…
   
数太郎 「やはり…、超一流は違うよな…。
  君たち、三流の僕のせいで危険な目に遭わせてしまい、すまなかった…。」
美恵 「い、いえ…。 むりやりお願いしたのは、私のほうだし、
  私も、結局なんの役にもたたなかったし…」
   
令華 「お兄ちゃん… これからは、私たちの実力に見合った悪霊を退治すればいいよ…
  三流は、三流らしくさ…」
数太郎 「三流かぁ〜… つらいけど、それが現実なんだよなぁ〜…」
   
   
   
  数ヶ月後… 六道女学院のお昼休み
  パタパタパタ… カバンを抱えて廊下を急ぎ足で出口に向かうおキヌちゃん。
キヌ 「あっ、美恵さん、こんにちは。 美恵さんも、早退ですか?」
美恵 「うん。 これから、除霊のお手伝いさっ。」
キヌ 「令華さんのお兄さんとですよね? 令華さんは、一緒じゃないんですか?」
美恵 「ああ。 令華は、学校で勉強していたいんだってさ。」
   
キヌ 「わぁ〜、いいなぁ〜。 彼氏と二人っきりで、お仕事ができるってことですよねっ!」
美恵 「ば、ばかっ。 そ、そんなんじゃないわよっ! こ、これも、修行の一つなわけで…」
  ぼっ! 赤くなった顔は正直だったりする…
   
  一方、1年D組の教室では…
芽衣 「いいんですか? 令華さん。」
令華 「なにが〜?」
芽衣 「美恵さんは、お兄さまのお手伝いをされに帰られたんでしょ?
  あなたも、一緒に行かれて経験を積まれたほうがいいんじゃないんですか?」
令華 「冗談じゃないわよ〜 バカ兄貴とバカ娘の除霊につきあってたら、
  こっちまでバカが移っちゃうじゃないのっ! あんなのと一緒に、やってられっかぁ〜〜っ!」
   
   
  三流ゴーストスイーパー、算・数太郎
  美恵とともに、実力に見合った除霊を繰り返して行くうちに、少しずつ実力は向上し、
  やがて同業者からは、二流の人材として認知されるようになったという…
   
  ま、GS美神的には、ど〜でもいいんだけど
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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