『 デジャブーランドでもう一度 』

著者:まきしゃ


    日曜日、開園直後のデジャヴーランドに、とある賑やかなカップルが一組…
「これがおねーさま監修の、マジカル・ミステリー・ツアーですわねっ!
  いったいどんな仕掛けがされているのかしら。 ああ、楽しみだわっ!」
雪之丞 「美神の大将のこった。 出口で金をとられるかもな。」
「まっ、なんて失礼なっ! ほら、伊達さん、混まないうちに入りますわよっ!」
雪之丞 「ああ。 しかたねえな。」
   
  中に入ると、そこは見覚えの有る光景…
雪之丞 「ああ、これは…」
「おねーさまの事務所と同じだわっ! おねーさまのロボットが私たちを案内してくれるのね?」
雪之丞 「まあ、それでもいいけどよっ。」
   
  まずはロボットおキヌちゃんの登場
ロボおキヌ 「こんにちは!! 美神除霊事務所へようこそ!」
「氷室さんっ!? なんであなたが宙に浮いてるわけっ!?」
雪之丞 「幽霊んときのおキヌだろ? でも、ここでおキヌが出るってことは、奴もか…?」
「……、ですわね。 でも、おねーさまが出てくれば、私はかまわないわっ!」
雪之丞 「まあ、どうでもいいけどよっ。」
   
ロボおキヌ 「美神さんからの通信です。」
  ガーーー! 本棚が動き、壁に令子の映像が映し出される。
映像令子 「おキヌちゃん!! 横島クンはいる!?」
「きゃぁ〜〜! おねーさまぁ〜〜〜!!」
雪之丞 「けっ…。」
   
映像令子 「…… 今すぐ私を助けにきて!! お願いーー!!」
「おねーさまっ!! わかりましたわっ! 私が必ず助けにまいりますっ!」
雪之丞 「おいおい、これってアトラクションだろ?」
「そんなこと、わかってますわよっ! でも、おねーさまは、ここでお客さんたちに助けなきゃって
  思ってもらうために演技をされたのよっ!? 私も、そう思い込んであげないと、
  おねーさまの努力が報われないでしょっ!?」
雪之丞 「ふ〜ん、そんなもんかねぇ。」
   
  ウ〜〜ン ロボ横島、登場
ロボ横島 「こんにちは、みなさん! GS見習の横島です!」
雪之丞 「やっぱ出てきたか…。 弓、どうやらこいつに案内してもらうみてーだな。」
「そうみたいね…。 ほんとに、どーしておねーさまは、こんな人を助手にしたのかしら。」
雪之丞 「俺のダチを悪く言うんじゃねえ。 こいつの凄さは俺が良く知ってるからな。」
   
  ウ〜〜ン ロボ横島、応答プログラム作動
ロボ横島 「そうさっ! 心配いらないよ。 こう見えても、僕は日本で美神さんの次に優秀なGSだからねっ!
  他のどんなGSが束になってかかってきても、へっちゃらさっ!」
雪之丞 「なっ!? 貴様、人がせっかく誉めてやったのに、なんて言いぐさだっ!?」
「あら、これはアトラクションですわよ?」
   
   
  ロボ横島、ロボおキヌちゃんの対応に、二人でぶつくさ文句をいいながらも、
  アトラクションは先に進んで行く。
「すごい仕掛けですわねっ! さすがは、おねーさまだわっ!
  普通の人は、とっても怖い思いをしているに違い有りませんわっ!」
雪之丞 「おめーは、ちっとも怖がらねーんだな…」
「しかたありませんわ。 GSが怖がってたら仕事にならないじゃありませんか。」
雪之丞 「まあな…。 でも、面白味がちっともねえな…。」
   
  やがて、最後のアトラクション…
ロボおキヌ 「あれが最後の敵『悪魔アラストル』ですっ!!」
ロボ横島 「みんなで力を合わせて、やっつけよう!!」
ロボおキヌ 「さあ、お客さんも手をかざして念をこめてくださいっ!!」
   
  なにやら真剣な表情の二人…
雪之丞 「おい…、弓…。」
「ええ…。 わかってますわ…。」
雪之丞 「じゃあ、俺は右のやつらをやる。 お前は、左をたのむ。」
「わかりましたわっ。 なぜ、こんなに雑霊が集まってるかは、知りませんけど、
  おねーさまのアトラクションを邪魔するかもしれない連中は、それだけで退治すべきですわっ!」
   
ロボ横島 「みんな、恥ずかしがらずにーー」
雪之丞 「それっ!」
「はいっ!」
  ドドドッ! ボオオーーーーーンッ!!
   
   
  トゥルルルル… トゥルルルル…
キヌ 「はい、美神除霊事務所です。 今日は、お休みなんですけど…
  あっ、デジャヴーランドの社長さん、お久しぶりです。 えっ? どうかしたんですか?」
   
   
  お昼過ぎのデジャヴーランド。 『機械調整中』の札のかかったマジカル・ミステリー・ツアー
  その入り口に居るのは横島とおキヌちゃんの二人だけ…
横島 「………、なんで美神さんは、来てないの?」
キヌ 「その…、お休みだし、もう人間の霊力を吸い取る結界は無いから、私たちだけで対応しろって…」
横島 「また、ずいぶん迷惑な話だよな〜。 自分が監修したんなら、責任持てっつ〜の…
  ところで、シロたちは?」
キヌ 「シロちゃんとタマモちゃんは、朝早くから散歩に出かけていったので…」
横島 「ま、あいつらは、どうでもいいか…」
   
社長 「ああ、横島さんにおキヌちゃん! お待ちしておりました、なんとかしてくださいっ!」
横島 「いったい、何があったんですか?」
社長 「それが、なにがなんだかさっぱりなので、お呼びしたのです。」
キヌ 「その、具体的にいうと、何が起こってるのですか?」
社長 「機械的には説明のつかない誤作動が、頻繁に起こっているのです。
  これはもう、霊的異常しかないと思いまして。」
   
横島 「美神さん、まだ何か霊的処置をしてたんだな…?
  それを俺たちに指摘されるのが嫌で、こなかったに違いない…」
キヌ 「それって、かなり危険なんですよね…?」
横島 「ん…、それは大丈夫だと思うよ。 今度は普通に霊能力を発揮できるし…
  いや…、設備に傷をつけないという条件だと、厳しいかな…?」
キヌ 「そうですよね…」
横島 「うん…」
   
社長 「それでは、お二人で中の様子を見てきてもらいたいのですが…。
  私もついていったほうが、いいのでしょうか?」
横島 「あっ、いえ。 ここは専門家にお任せ下さい。 二度目ですから大丈夫です。」
社長 「そうですか。 それでは、お願い致します。」
   
  アトラクションに入っていく二人…
横島 「さすがに、二度目だと驚かないよな。」
キヌ 「でも、私、かなり恥ずかしいです…」
  誤作動のせいで、蝶のようにパタパタ手を振っているロボおキヌちゃん…
   
  霊視ゴーグルでロボットを見る横島
横島 「ああ、やっぱりだ。 中に低級霊が入って遊んでいやがる。
  でも、さすがにおキヌちゃんの姿だと、手が出せないなぁ〜。
  おキヌちゃん、悪いけど自分で退治してくれる?」
キヌ 「そうですね…。 えいっ!」
  ぽんっ! おキヌちゃんの霊波の一撃で正常に戻ったロボおキヌちゃん
   
キヌ 「横島さん、いったいここで何が有ったんでしょうか…」
横島 「う〜ん、低級霊が悪さをしてるのはわかるんだけど、原因はわかんないな…
  美神さんの細工した何かが、トラブったんだとは思うけど…」
   
  今度は、ロボ横島の登場
  霊視ゴーグルで確認したところ、別に異常はなさそう…
ロボ横島 「こんにちは、みなさん! GS見習の横島です!」
横島 「こいつは問題ないな。 やっぱ、自分で自分をやっつけるのは嫌だからな〜」
ロボ横島 「美神さんは、美しく優しく強くて素敵な女性です!」
横島 「………、美神さんも、よくこんなセリフを言わせるよなぁ〜」
   
ロボ横島 「でも、僕が好きなのは、おキヌちゃんだけさっ!」
横島 「なっ!?」
キヌ 「えっ? えっ?」
  かぁ〜〜〜! 顔を真っ赤に染める二人…
   
   
技術屋A 「おお〜〜! ういういしいな、あの二人っ!」
技術屋B 「ん? あんなセリフ、あったっけ?」
  モニターで、二人の作業を見守っている技術屋たちが声をあげる
   
技術屋A 「ああ、横島ラブバージョンね? あれは、俺がインプットしといたやつなんだ。」
技術屋B 「おまえ、勝手にデータいじったのか?」
技術屋A 「いいだろ? 美神さんからもらったシナリオだけだと、なんか味気なくてさっ。」
技術屋B 「まあ、カップルが喜びそうなシナリオなら、問題ないけどな。」
   
技術屋A 「だろ〜? それに、俺、あの二人のファンになっちゃってさぁ〜
  あの子らのロボットをいじってるうちに、二人をくっつけたくなっちゃってね。」
技術屋B 「ふ〜ん、そのシナリオが今、作動してるってわけか。」
   
技術屋A 「そうなんだ。 本物の二人は、実際には、どういう関係か知らないんだけどね。」
技術屋B 「でも、二人とも顔を真っ赤にしているぜ。 それなりに意識はしてるんだろうな。」
技術屋A 「うん、そんな感じ。 これがきっかけで、付き合うようになったりして。」
   
  技術屋の馬鹿なお遊びに煽られて、ぎこちなくなってしまった二人…
横島 「え、えっと、おキヌちゃん。」
キヌ 「え? あ、はいっ。」
ロボおキヌ 「横島さん、ありがとう。 でも、今はそれどころじゃないの。 美神さんが大変なんです。
   ――― というわけなの。」
   
横島 「そ、そうだな。 今はそれどころじゃないよな。」
キヌ 「そ、そうですよね。 美神さんを助けなきゃ…」
横島 「えっ?」
キヌ 「えっ? あっ、やだ。 美神さんは、今いないんですよね?」   かぁ〜〜〜!
横島 「そ、そうだよ。 あは、あはは…」
   
   
技術屋A 「いいぞ〜! もっと、盛り上がれ〜〜!」
技術屋B 「おキヌちゃん、かわいいな〜 舞い上がってるよっ!」
  無責任に喜ぶ技術屋たち。 ああ、楽しそう…
   
  ロボットたちに誘導されて外国風の路地に出てきた二人…
横島 「こ、ここは、たしか結界が張ってあったとこだよな…?」
キヌ 「え、ええ。 そ、その、前来たときは、ものすごく強い霊気を感じて…
  え、えっと、今は… あっ、やだ、私ったら、なんだかぼ〜っとしてて、わかんない…」
   
横島 「とりあえず、寒気はしないから、美神さんが言ったとおり、結界は解除されてるみたいだ…」
キヌ 「そ、そおですね…」
   
ロボおキヌ 「みんな気をつけて! 悪霊が私たちをジャマしようとしてます!!」
ロボ横島 「くそっ!!  美神さんを捕まえてる奴の手下だな!?」
ロボ悪霊 「シャアアアーッ!! 殺シテ…ヤル……!! GSドモ……!!」
   
横島 「あっ、やばい。 ロボ悪霊の一つに低級霊がっ!」
   
ロボ横島 「これでもくらえっ!!」
横島 「これでもくらえっ!!」
  ズバァーーッ! ロボ横島のアトラクションと同時に、低級霊を退治した横島
   
ロボおキヌ 「きゃ〜〜! 横島さん、ステキ〜〜!!」
  そう叫ぶやいなや、本物の横島に抱きつくロボおキヌちゃん!
横島 「わっ?」
   
キヌ 「な、なにするのよっ! あなたの横島さんは、あっちでしょっ!?
  こっちは、私の横島さんなんだからっ!!」
横島 「えっ?」
キヌ 「あっ!」
  かぁ〜〜〜! 再び顔を真っ赤に染める二人…
   
技術屋たち 「おお〜〜〜!!」
  モニター前の技術屋たちは、やんややんやの大喝采!!
   
ロボ横島 「ありがとう、おキヌちゃん。 でも、まだまだ危険はいっぱいだ。 先へ急ごう!」
横島 「こ、このあたりには、もう低級霊はいないみたいだな…。 先へ急ごう…」
キヌ 「は、はい…」
   
  地下鉄に降りる階段のところに来た二人…
横島 「ここは、たしかエミさんのゾンビが出るところだったよね…」
キヌ 「え、ええ…。」
横島 「エミさんに低級霊が憑依してなきゃいいんだけど…」
   
  そろそろ出そうなところまで降りてきた二人…
  以前出てきた横の壁を気にしていたところ、いきなり頭上からロボットゾンビがっ!
  ガシャーーーーッ!
横島 「どわ〜〜〜っ!?」
キヌ 「きゃぁ〜〜〜っ!?」
  横島に抱きつくおキヌちゃん!
   
ロボ冥子 「令子ちゃんは、どこ〜〜〜?」
横島 「えっ? エミさんじゃなくて、冥子ちゃん?」
キヌ 「そ、そういえば、エミさん、ゾンビにされたことを知って、怒ってましたから…」
横島 「エミさんのクレームで、冥子ちゃんに変更したってことかぁ…」
   
ロボ冥子 「令子ちゃんが、いない〜〜!」
横島 「や、やっぱり、冥子ちゃんのゾンビもプッツンするのかな…?」
キヌ 「な、なんか、そんな感じですね…?」
   
ロボ冥子 「嫌ぁ〜〜!! 令子ちゃん、死んじゃダメ〜〜〜!」
ロボ横島 「みんな、伏せて! じっとしてれば大丈夫だっ!」
横島 「ほ、ほんとかよっ!」
キヌ 「横島さん、ロボ式神に低級霊がっ!」
横島 「ええい、浄化〜〜〜!!」
  キ〜〜〜ンッ! バシュッ!! 文珠で周りに居た低級霊は全滅!
   
横島 「ふう…、結構、大変な仕事だな…」
キヌ 「そうですね…」
  横島と腕をしっかり組んだまま放さないおキヌちゃん
   
   
技術屋A 「なんか、いい感じになってきたなっ!」
技術屋B 「ああ、へたな小説より面白いっ!」
  あいかわらず無責任に喜んでいる技術屋たち。そこに案内係りの女性社員がやって来る。
案内係り 「あんたたち、仕事やってると思って来てみたら、何騒いで遊んでるの?
  アトラクションがなかなか再開しないんで、お客さんたちがじれてるっていうのにっ!」
   
技術屋A 「あっ、仕事をやってる最中だよっ! 今、美神さんとこの横島くんたちが原因を調査しているんだ。」
案内係り 「その割には、あんたたち、大騒ぎをしてるじゃないの。 とても、調査中とは思えないわよ?」
技術屋A 「それが、あの二人が面白くてねっ!」
案内係り 「ん? どういうこと?」
  そんな感じで、賑やかになっていくモニター前。 ギャラリーも増える一方…
   
   
ロボおキヌ 「横島さん、なんだか私、怖いんですけど…」
ロボ横島 「怖がることはないさ。 僕がついているじゃないか。」
ロボおキヌ 「でも…」
  本物の二人の方に視線を移すロボおキヌちゃん、応答プログラム作動…
   
ロボおキヌ 「でも、お客さんも、しっかり腕を組んでいらっしゃるし、私も…」
ロボ横島 「ははは、しょうがないな。 僕たちも、腕を組んでいこうっ!」
ロボおキヌ 「横島さんっ! うれしいっ!」
   
  ロボットに指摘され、改めて自分たちが腕を組んでいることを意識させられる本物の二人
  組んでる腕に全神経が集中しちゃって固まっちゃっている…
  あの〜、一応、仕事中なんですけど…
   
  結局、低級霊のうろうろしている原因がわからないまま最後のアトラクションまで来てしまった二人…
ロボ横島 「みんな気をつけろ!! まわりじゅうから霊の気配がするぞっ!!」
   
キヌ 「横島さんっ! ほんとに、霊の気配がっ!」
横島 「ああっ。 でも、なんでこんなにっ?」
キヌ 「とにかく、先に除霊しないと危険ですっ!」
横島 「そうだなっ! 文珠〜〜〜っ!」
  キ〜〜〜ンッ! バシュッ!! 文珠で周りに居た低級霊は全滅!
   
横島 「ふう…、とりあえず除霊は済んだけど… 原因は、なんだろう…?」
キヌ 「あっ! 横島さんっ! あそこに、結界を張った跡がっ!」
横島 「ん? あの結界は… 美神さんが張ったに違いないんだけど、結界が破られている?」
   
キヌ 「横島さんっ! たった今、除霊したはずなのに、また霊が引き寄せられて来ていますっ!」
横島 「ええっ? 間違って霊を引き寄せるような設計をしてしまったってことなのっ!?
  いや、そんなことに気付かない美神さんじゃないし…  あっ!!」
キヌ 「横島さんっ! もしかして、美神さんがっ!!」
   
横島 「ああ…、間違いない…。 美神さんが霊を引き寄せる設計にしたんだ…。
  霊を大量に引き寄せることで、霊感を刺激して客を怖がらせる。
  その霊に悪さをさせないために、結界で客を守る。 そうするつもりだったんだ。
  だけど、誰かが間違って結界を破ってしまった…。
  美神さんの結界を破るなんて、相当の霊能力者なんだろうけど…」
   
キヌ 「横島さん、どうすればいいんでしょう…?」
横島 「やっぱり、霊を引き寄せるのは間違ってるよな…
  美神さん、低級霊を封印して怖がらせるのに失敗したせいで、こんな方法に変えたんだろうけど、
  この方法も、いつトラブってもおかしくないもんな…」
キヌ 「そうですね…。 霊を引き寄せないようにしないと…」
   
横島 「よしっ! まずは、美神さんが張った結界を、もう一度張りなおそう。
  そのあと、霊を引き寄せる設計にしたところにも結界を張っておけば大丈夫だろう。」
キヌ 「そうしておけば、霊自体も集まらないから、トラブルも起きませんよねっ!」
   
横島 「それじゃあおキヌちゃん、霊をしばらくのあいだ引きつけていてくれる?
  その間に、結界を張っちゃうから。」
キヌ 「はい、わかりました。 気をつけてくださいねっ!」
   
  ピュリリリリ〜〜〜 ネクロマンサーの笛を吹くおキヌちゃん
  笛の音に操られて、霊の動きが鈍っている間に結界を張る横島。 どうやら無事完了!
  残っていた雑霊も、張られた結界と笛の音の影響により、外部に飛び去って行った。
   
横島 「やっと終わったかぁ〜。 毎度のことながら、美神さんには苦労させられるな〜」
キヌ 「ええ、ほんとにっ。 (くすくすっ)」
   
  そんなところに、場内放送が流れてくる
技術屋A 「横島くん、おキヌちゃん、ご苦労様っ! 君たちが作業を始めていたんで、アトラクションを
  停止させていたんだけど、もう、動かしても大丈夫かな?」
横島 「えっ?」
キヌ 「あっ、そういえば、ロボットがみんな止まったままですね。」
   
横島 「はいっ! もう作業は終了しました。 動かしても大丈夫ですっ!」
技術屋A 「了解っ! あとは、君たち次第だよっ!」
横島 「えっ? 何がですか?」
  技術屋は、それには答えずアトラクションを再開させる… ああ、人の悪い…
   
ロボおキヌ 「あれが最後の敵『悪魔アラストル』ですっ!!」
ロボ横島 「みんなで力を合わせて、やっつけよう!!」
ロボおキヌ 「さあ、お客さんも手をかざして念をこめてくださいっ!!」
   
横島 「そういえば、ここらへんはどんなシナリオか知らないままだったな。」
キヌ 「ええ、除霊するのに大変で、ばたばたしてましたから…」
   
ロボ悪魔 「ケケケっ! その程度じゃ、俺を倒せんぞっ!?」
ロボ横島 「みんなっ! もっと念をこめてっ!」
ロボ悪魔 「うおおっ!? な、なんて強いGSたちなんだっ! うぎゃぁ〜〜〜!!!」
ロボ横島 「やったぞ、ついに悪魔を退治したんだっ! みんな、ありがとうっ!!」
   
横島 「ずいぶん、あっさりやっつけちゃうんだな。」
キヌ 「まあ、アトラクションですから…」
   
ロボ横島 「さあ、捕まっていた美神さんを助け出さなきゃっ!」
ロボおキヌ 「横島さんっ!」
ロボ横島 「んっ? どうしたんだい、おキヌちゃん?」
ロボおキヌ 「私、わたし、人間にっ!」
ロボ横島 「えっ!?」
   
ロボおキヌ 「私、あの悪魔のせいで、幽霊にされちゃってて、悪魔を倒したおかげで人間に戻れたんですっ!!」
  ロボおキヌちゃん、ロボ横島に抱きつきっ!!
   
ロボ横島 「おキヌちゃんっ!!」
ロボおキヌ 「横島さん、うれしいっ! これで私も、横島さんのお嫁さんになれる〜〜っ!!」
   
横島 (ドキッ!!)
キヌ (ドキッ!!)
   
ロボ美神 「ふう〜〜、助かった〜〜 みんな、ありがとうっ!
  ほらほら、横島クンにおキヌちゃん、いちゃつくのは後でも出来るでしょ?
  お客さんたちが、お待ちかねよっ!?
  みんな立派なGSね!! 今日の記念に帰りに特製GSメダルを―――」
   
  ロボ美神の言葉など耳に入らず、ぼぉ〜っとしている二人…
   
  アトラクションも終わり外に出てみると、数十人のデジャヴーランド社員によるお出迎えっ!
技術屋A 「お仕事、ご苦労様っ! まだ、君たちは若いから、これからだろうけど、
  みんな、君たちのことを応援してるからねっ!」
横島・キヌ 「えっ? えっ?」
   
社長 「横島さんっ! おキヌちゃんっ! 君たちは、マジカル・ミステリー・ツアーの、
  いや、完璧な夢を提供するデジャヴーランド全体のイメージアップに、
  多大なる貢献をしていただいているのですっ!
  これは、私からのささやかなプレゼント、デジャヴーランドの無期限VIPカードです。
  いつでも、こちらにふたりで遊びに来てくださいっ!」
横島・キヌ 「えっ? えっ? えっ?」
   
社員たち 「わ〜〜〜! いいぞ〜、お二人さん〜〜!!」
  一斉に沸き起こる拍手と歓声に、とまどうばかりの二人…
   
   
  仕事を終えたものの、帰るきっかけもつかめず、デジャヴーランド内を散策する二人…
  何を話せばいいのかもわからず、無口なままで、でも手はつないでいて…
   
「あら、あそこにいるのは氷室さんたち?」
雪之丞 「えっ? あっ、ほんとだ。 横島と二人だけかな? お〜い、横島〜!」
  二人のところに近寄って行く弓と雪之丞
   
横島 「えっ? ああ、雪之丞か…」
雪之丞 「へ〜、おまえら二人だけかぁ〜 めずらしいな、他の連中と一緒じゃねえなんて…」
横島 「いや、今日は急な仕事でな… 美神さん監修のアトラクションがトラブっちゃって…」
   
雪之丞 「ああ、あのお化け屋敷か。 そうだよな、やたらと霊がうろついてたからな。
  俺たちも、出来る範囲で除霊しといてやったが、全部を退治したわけじゃねえしな。」
横島 「なに〜? てめ〜らが、霊波をぶっぱなしたのかっ!?」
雪之丞 「しょーがねーだろ? アトラクションの最中だったし、仕事じゃねえしな。」
   
横島 「てめ〜らが中途半端なことすっからだっ。 てめ〜らのせいで、俺たちが…」
  そこまで言いかけて、言葉を止める横島
   
横島 「いや…、その…、てめ〜らのおかげで……」
  そう言いかけて、再び言葉に詰まる横島
  でも横島の気持ちは、きゅっと強く握られた手からおキヌちゃんに伝わっていて…
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
[ 煩悩の部屋に戻る ]