NexStage:family-prot [in the positive-side]
great mothers strike-back ,another storys
first-part
literary-work:iky


転ばぬ先の用語解説:以下の文章チョット頭に入れといてください。
雷様って知ってますか?いえ、高木ブーさんの事じゃ無いですよ(笑)←好きやなあこのネタ。
古来から日本では天候を操る神通力に秀でているとされている神様です。
風に改元とかでお馴染みに、脇に抱えた大きな袋から北風を吹かすような事をしている、
まあこの作品の中では天気の神様だと考えてください。


a street wear

  「おつかれさんで〜す」
  「はい、おつかれさん。ごくろうさん」
 今日は土曜で午前に一件だけの仕事であった。それも朝早くであったし、以外と呆気なくかたずいたので昼前には就業終わりであった。お陰で横島にとっては不幸だが、時給で計算しているので美神は嬉しそうにしている。
 かせいだ額から考えると横島に渡すのは雀の涙以下にしかならないのだが、それでも自分から離れないというのは自分を大事に考えてくれているとの立証だと嬉しい・・・・・根性のネジ曲がった彼女の愛情の確認であった。


  「さあせんせえ、行くでござる」
 シロが横島の手を取り早くに外に行こうと誘う。いつもの風景なので美神も気にした様子は・・・・・。
 しかし他人が(いくらシロでも)目の前で楽しそうにしているのは嫌い。特にこれから裏表の帳簿の擦り合わせという、シチ面どい仕事が残っている自分と違っている脳天気なシロに腹を立てる。それならちゃんと申告 納税すればいいではないかと言う事は頭の片隅にも無く、自分だけが過労死直前の労働災害の被害者だとでも思いつつ、それならば当然の権利だと思い能天気に人生を謳歌しているシロに嫌みを言うのは当然の権利だと思った。
  「あんたもタフね。確か朝も(散歩)だったでしょう。あんたと違って一応横島君人間だから仕事に響かないようにしてよね」  散策散歩だか?トライアスロンだが知らないが、えらくハードな鍛練に突き合わされる彼に多少同情して?シロに少し釘を差すのも兼ねて皮肉っぽく言う。しかし、シロはアッサリと散歩では無いと否定する。
  「じゃあ何・・・・まさか(デート・・・・・・・・)」
 ピクリと、ちょっと眉が動いた。

 散歩とデートの区別が彼女の中でどう区分されるのか知らないが少し苛立つ。よく考えれば自分は仕事以外にはビタ一文横島といたことが無い。それに比べてシロは仕事プライベートの区分無くいつも横島に引っ付く行動を旨としているし、無論それは実践されている。
 まだ恋愛感情を云うには幼いし、横島も別段シロに何か邪な感情を抱いているようには思えない。というよりも、弟子として大事にしているので女性としてすら見ないようにさえしているのが脇にいれば汲み取れる。自分を尊敬し、敬愛してくれているのでその気持ちを裏切らないようにと思っているようだ。本人が自覚しているかは甚だ疑問だが、師事している対象として見られているようで自覚もあるらしい。
 以前はいきなり外見だけはお年頃になったシロの扱いに異性としての目で見てしまう事に戸惑いがあったようだが、今の彼からは何の躊躇いすら消失している。それはシロの対してだけでなく、ありとあらゆる・・・・・・女性にだけは、もう以前を知る者からすれば目を疑うように落ち着いた感さえ伺える。しかし以前記憶喪失の時のように別の人格では決して無い。あくまで人間的に成長しているといったものだと母は言っていたのを思い出した。
 それを思いかえしてその時の情景がフラッシュバックした。

[recollection scene]

  『愛し愛された人(女性)がいるんだから・・・・・多分女性限定でしょうけど、相手に無責任でいられないのが分かったんじゃないのかしら。まだ若いのに流石百合子さんの息子さんってとこかしら』
 今ではまるで長年の親友のように成った感のある横島の母百合子を引き合いに出すのは令子の母美智江。合ったことは数度しかないらしいが、国を隔てたので電話が多いようだが女は兎も角電話で喋る方が会って喋るより多いので旧知と言ってもあまりあるようで年月も逢瀬の回数も隔絶の感は無いらしい。その長電話の舞台が主に娘の事務所であるのが、娘としては目の玉が飛び出る電話代の請求書で頭が痛いと言う苦情は無視して・・・・・。
  『いつまでも子供だと思ってると足すくわれるわよ。成長始めた男の子は立ち止まってはくれないからね。そうなったら、いつまでも金だ金だと意地ばかり張ってて引くこと知らない、成長しない女にいつまでも固執なんかしないわよ。いつまでも男の子だってデカイオッパイとお尻だけに魅力を感じるワケじゃ無いんだから気をつけなさい。当面あんたからそれを除いたら後は骸骨しか残らないから、それが通用する今の内に何とか性格と生活態度変えなさい。まあ、つうっても女の心と体の成長期は15〜6歳だから、あんたは当に盛り超えてるんだけどねもう手遅れかもね。スイーパーとしてもだけど、まあ、人間的にもね。まだまだこれから伸びそうな彼に自分を比べて考えると気の毒かもね〜・・・・・』
 母の目尻の端に皮肉と混じって哀れみが浮かんだように感じた。
  『うぐっ』
 いつもなら強がりと意地っ張りで必ず出る筈の準拠の無い論理に裏打ちされた反論にさせ窮する。

 女はよく言われるように同年代の男より大人びている。これは当たり前で、女は生まれた時から本能で動く割合が高い為にある程度は既に完成しているのだ。
 対して男は生まれた時はあくまで少年という名の餓鬼。餓鬼は苦労して苦労して男になる。対して初めから殆ど完成している女性は楽な代わりに変われない。生物的に予定があるだけと、まるでナウシ○に出てきたヒドラのようですらあるのだ。女は子宮で考えると言うのは、肝心な時には頭では無くて本能で動く事の割合が男と比べて顕著であることに付随しているのだ。
  『じゃあどうすればいいのよ』
 今まで生きてきた仕切りを今更変えろと言われても、路傍の石でも蹴っ飛ばす意外に辺り所の無い子供のように途方にくれるしかないのが本当の所。物質主義を心の寄り所だと信奉してきた、その権化には進める筈もない選択でもあった。

fishing pond

  「釣堀?この寒空に」
 行き先を聞くと散歩の道すがらにある商店街では人気者であるシロ(今時珍しく純で天真爛漫であるので人気がある)が、いつも買い食いしている肉屋(コロッケ等)でタダ券を貰ったので暇な時に行くことにしていたらしい。
  「美神殿も行かないでござるか?一人持ち帰りは3匹まではオッケーらしいでござるから、夕食は自分の釣った物をオキヌ殿に・・・・」
  「タンマ!!」
 しかし先んじて手をかざしてシロの誘いを断る。窓を見る間も無く木枯らしに揺れる外は冬の盛り。日は照っているようで、確かに今日は冬の合間には珍しい小春日和といってもいいだろう。が、冬のうすボンヤリとした陽射しだ程度で、まだまだ冬は来てはいるが、実際問題春遠からじという風情に寒そうな釣堀の水面を見るのは絶対趣味では無い。
  「そうでござるか・・・・・・・」
 シロが本当に残念がる。甲斐甲斐しく「では美神殿の分は張り切って拙者が釣ってくるでござる」とまで言うシロにちょっと悪いと心がチョット痛む。
 狼らしく群れを大事にする本能もあれば、まだ中身ガキなのでお出かけは皆一緒が嬉しいのだろう。自分も母が病気(のフリ)をして入院していた時に一人きりの家に帰るのは寂しくて堪らなかったのを思い返してしまった。

 しかし寒いのは絶対嫌だから、何か他に用があるからとシロの落胆を慰める理由を探そうとした・・・・・・・が。他人に掛ける思いやりの感情よりもっと心中に穏やかざる感情が生まれた。
 美神の受け答えに呼応して、その際横島の奴が『ほらな。言ったろう。誘うだけ無駄だって』と予め予測したと云う素振りでシロを諭したのが気に入らない。
   ムカッ        ピキッ
 額に青筋バッテンが浮かぶ。予め、まるで出不精なオバサンを誘っても無駄だと言っているみたいな口調であったのだ。大人らしくシカトしようか、大人げなく殴ろうかどうしようかと迷う。
  (何よ!あたしをまるで若さが無いように言っちゃってくれちゃってさ。あたしだって小竜姫の修業であんたにも絶対負けてないように成長したんだぞ)
 修行で小竜姫の予想を超えてパワーアップした美神はそれを楯にし、自分はまだ若いしまだまだ力も心も成長していると思いたかった。自分でも儚い抵抗だとは思っているだけに虚しかったが。


   ガチャ
  (ん。おっしゃあ)
 ドアが開いて、すわ飛び込みの客だと嬉しがる。
金もそうだが、何故なら二人のお出かけを"仕事"を理由に邪魔出来るからだ。まあ、チョット意地悪したら不要だから開放してやろうとは思っていたが・・・・・・・・・・・。
  「お待たせしました横島さん シロちゃん。さあ行きましょうか」
 オキヌとタマモが開けたドア向こうから二人を呼ぶ。二人は滅多に見ないがデニムのズボンに動き易そうなユニクロのエアジャケットとアウトドアな服装だ。
  「ん」
 二人だけだと思っていたので意外であった。まだオキヌは分かるがタマモまで行く様子。美神程では無いが面倒くさがりの彼女も今日の釣りが楽しみであったようだ。肉が主食で獲物より皆でお出かけが嬉しいシロとは別に、狐は狼よりは雑食なだけに魚も好物らしい。

  (ちょっと待ってよ)
 今一度考える。つまり二人まで予め約束が取り決められていたということは、事務所の面子では自分だけ誘われなかったということ。
  (なによ、あたしだけ誘われなかったの、どういう了見よ)
 何やら自分の事務所で自分だけが疎外されたような気になって顔には出さぬが不貞腐れる。その気が伝わったのだろうか?シロに続いてオキヌが美神を今一度美神を誘う。
  (よし よし オキヌちゃん偉い えらい。流石ミス気配りね)
 勝手におかしな名称を付けながらも感謝し、しょうがないと嘆息をしながら保護者ずらして付き合って上げると立ち上がる。
  「あんたはしゃいで池に落ちないでよね。この寒空なら幾らあんたでも凍死するかもしれいんだからね」
 素直に喜ぶシロを理由の盾に取り心中ニンマリした。


  「あっ!でも美神さん」
  「ん?はや・・・・・・な 何オキヌちゃん」
 多少語尾が晴れ晴れとした気持ちに吊られて明るくなりそうなので、思わずルンルンを押さえてため息を混じらせて誤魔化すように吐くと・・・・。
  (?)
 オキヌと横島が見慣れている自身の服装(ボディコン)に視線を走らせていた・・・・・。横島はまだ分かるが、何故にオキヌが凝視しているのかと不思議がる。
  (あ・・・・・)
 小さく叫び、チョット腰がオキヌに対して引けた。
 まさか、たまにやってくるので知っているが、オキヌの級友の弓かおりから可笑しな趣味を伝染されていないかと不安がった。美神は素行に言動が下手な男より同性には感じるものがあるらしく、妙な感情の対象に祭り上げられているのを知っているので・・・・・・・・対岸の火事は構わないが、今では誰も借家出来ない彼女としては一つ屋根の下にそんな趣味を持ちこまれても"と〜〜〜〜ても困る"と冷たい汗が光った。

 無論そんなワケは無かった。なんでもこれから行く釣堀の亭主が釣り道を我が人生と志す、いわゆる精神論的な釣り信奉者で(魚神さんが憧れの人らしい)あったので美神の格好は問題になるだろうと言う。
  「何それ?」
 幾ら気軽な遊び場である釣堀とて、最低のTPOを弁えないと追い出されるらしい(まあ頑固ラーメン屋の釣堀版のようなモノ)。大きな声で騒いだり、自らはろくに釣ろうとしないくせにやたら弁を語ったりする迷惑な連中は有無をいわさず叩きだされるそうだ。服装もスカートの丈の短い夜の六本木系の美神の物は、多分釣堀の向う岸の男らにとっては嬉しいが、釣り信奉者にとっては邪念雑念の対象は迷惑だと入れてくれない恐れがあると言う。

  「確かに、どう見ても釣りには向かないよな〜。どちらかと言えば夜の六本木か銀座だもんな。多分そんな頑固な親父だったら『お嬢ちゃん!来るところ間違えているよ』とでもいいそうだな。何しろ自分が磯釣りに行く日の前には禊(みそぎ)して、日本刀で竿振る練習するって、昔の王(貞治)さんのような事までやってる親父だからな〜〜」
 横島も頷いたのが、オキヌの言葉に輪を掛けて気に入らない。
 この格好に釣られてバイトを始めたクセに・・・・・。何故か?この頃は美神がどんなに超ミニだろうが、ヘソを出そうが半チチ出そうが興味を魅かれた素振りを見せないのだ。

[recollection scene]

  『見慣れたんじゃないの〜。まあ発情期の猿じゃないんだから、出会ったときから恥ずかしげもなく四六時中オッパイにオシリ出してれば男なんて冷めるものよ。それが証拠にこの頃あんたの風呂を覗きに来ないんでしょう?幾らラーメンが好きでも毎週毎日毎食だと飽きるものね。で、食べ過ぎて嫌いになると後引くのよね。そうなると可愛さ余ってなんとやらで、下手すると一生見たくも無くなる事だってあるんだから』
   グサッ
 母のつぶやいた言葉に、ドラキュラ 狼男 フランケンシュタイン ふんがーふんがー(は置いといて)でも即死しそうな大きな杭がデカイパイオツと一緒に、机で不機嫌に帳簿をつけていた美神の心臓に突き刺ささる。

   《き 気にしてることなのに》
 何とか付けていた帳簿を楯に狼狽を悟られないようにするが、震える肩は隠しようが無かった。せせら笑いが帳簿の向こうから聞こえてくる。
 母の言う通り、以前とは打って変わり、何故かこの頃自分の格好には殆ど興味を示さないのだ。まるで自分には興味が無いとばかりに・・・・・・・。
 悪い物でも食べたのかしら?等と思っていると、下界に良く来るようになっていた小竜姫らが大人しめのミニスカや、あらんやスーツ姿のワルキューレには素直に感銘を表わす。もし、仕事の間に四六時中付き合わせていた顔を見慣れたので興味を失ったのならば、この間除霊の時にオキヌの長袴が強風で捲れ上がった時には行き成り(煩悩?)霊波が上がったのが説明出来ない。

  『ソープ嬢は裸を見せるだけではお金は取れないけど、清純イメージのアイドルならちょっと際どい服でお金取れるのと同じよ。あんたはソープ嬢でオキヌちゃんや小竜姫さまは清純アイドルってとこかしらね』
  グッサーーーーーーーーーーーーーー
 実の娘を風俗嬢に例えるなと怒った。自分だって昔の格好はどうみても・・・時代を考えると今の娘よりずっと際どい筈だと反論する。しかし・・・・・
   ふんっ!!
 と、母は勝者の冷たい笑みで反論を一蹴、娘の反論をシレっと受け流す。

 旦那(公彦)を掴まえた(落とした)後は貞淑に徹した、見せたい相手にだけ見せればいいんだと言う。
  『遊びなら女がどんな格好で他所の男に色目使おうと構わないけど・・・・男は本気な相手が他所の男に色目を使うのは許さないのよね〜。実は公彦君もあたしが派手に露出した服を着るのを嫌がったのよ〜。真剣な顔して頼むもんだから、あたしもコロっときちゃって思わず「あなた以外にはもう見せない」って・・・・・・・だから思わずその後は全部見せちゃうことになっちゃって・・・・・・・・・・・・・・うふふふふふうふ。あっ!!もう嫌だこの娘ったら、なんて事言わせるのよ』
 顔を真赤にして恋に恥らう女子高生か、ルーキー新一さんの様にイヤンイヤンをする・・・・・・・もう良い年の筈の母に対してその娘は・・・・・・・・。
  『・・・・あ  あのね』
 きっとお互いが若い時の甘く酸っぱい思い出でも思い出しているんだと・・・・・娘は身心共に全身致死量の筋肉弛緩剤を点滴に入れられたようにダランとへたる。取り分け顔は愛想笑いを浮かべる気力も無くなった。

*

   コホン
 と嬉し恥かしな過去を自ら暴露してしまった母は娘の手前ワザとらしく深呼吸して襟を正し、人生の先輩たる威厳を取り戻そうとする。しかし、タレパンダのように机に片頬を着きヘタレている娘の顔を見ればチョット・・・・・・威厳回復は駄目かなと思った。
  『いい機会じゃない。もういい加減止めたらその格好。パラパラも山姥も遥かに超えた浦島太郎のように時代遅れなんだし、昔なら馬鹿っぽい女が着てても流行って事で多めに見られたけど、今着てるのは流行遅れとか、ゴージャス馬鹿姉妹達だけでしょう。あんたが幾ら「自分は違う」って言っても世間はそうは見ないわよ。単なるひと山幾らの馬鹿女の一人だってしか見ないモノよ。横島君だってそうじゃないの』
 当人には、非常に辛い正論を冷たく笑顔で諭す。
  『だ だってアイツだってこの格好に釣られてバイト始めたのよ。例え流行が終わっても嫌いなワケが・・・・・・』
 例え怖い&大好きな母に言われても意地っ張りであるので娘はまだ過去の栄光?に縋る。例え確かに時代遅れのきらいはあるが、男は口では何と言ってもこんな格好は好きなのだ。

  『あっ!!』
 だから"アイツ"だって嫌いなワケが無い!!・・・・・・・・・・・・・・・・・と言った口を思わず慌てて押さえた。
  (しまったあ・・・・・・・くう)
 口を押さえている娘をニヤニヤと笑う母。今の言葉は取りも直さず、着ているボディコンが実は横島の目を気にしているんだと、相変わらずに策士である母の誘導尋問によって露見したに過ぎない。
 取り繕い、これは商売上の商談相手の男の相好を崩して自分の有利に話を進める為の武器なのよ、と必死に弁明を訴える娘に哀れな瞳を向け・・・・・・・・・・反論を冷たく無視した。
  (うぐっ)
 自らが相好を崩すのであった。


  『愛し愛された事も無い男の子ならそれで騙されるでしょうけど、横島君にはこれ以上無いくらいの女性がいたのよ。例え"今"は居なくても、その事で自信もあれば余裕もあるのよ。もう異性を馬鹿みたいに追い駆けたり、彼女が欲しいなんて焦る必要なんか無いわよ。出会う女性全てが以前のように嚇亦(目を惹く)たる存在じゃないもの、今の彼にはね。そうね、食事に例えると・・・・・・・・・まあ男は女の子にナニをしてナニをしてナニするのは、女の子を食べるって言うから同じだとして・・・』
 なんで食べ物に一々例えるのか分からない娘。実は食欲と性欲は非常に因果関係が深く、実際食べ物で女性の嗜好まで分かるとさえ言われていた。
  『でも〜〜?本当に食べるかどうかは別にして○○○○や○○に□□□□を△△たり、×××させたりするから、食べると食べられる立場はどうも逆のような気がするけどな〜。どう思う令子?』
 幾ら伏字でも危ない言動を吐く母であった。ちなみに18歳以下で伏字を全て埋められる者は唐巣神父の教会に懺悔に行くように。
  『あ あのね。ママ・・・・・・・・・・・・』
 段段と生臭くなる話に、まだ一応?自称乙女であるし、中学生から疎遠であったので恋の悩みさえ打ち明ける事も無かったので、行き成り振られても困る種類の母との会話には違和感があって、素直にY談には応じられなかった"自称"乙女の娘であった。そんな娘の気持ちを知らずに母は続ける。

  『以前は目の前のショーケースに並んだメニュウを見るだけで憧れていたから何が何でもって気持ちがあったけど、食べた経験があればそれに会うだけの代金の価値があるかどうかも考えるようになっているわよ。男が女を口説くのはとかくにエネルギーも要るんだからね。その代価に女が価値があるかどうかも考えるから、ただ色っぽい格好なだけの女に無駄な代価は払うのは馬鹿らしいと思うんじゃないかしらね。特に赤貧の今はね。まあ、もう少し懐と経験に余裕があれば、彼のお父さんの大樹さんも百合子さんと結婚した後のほうから手をつけられなくなったって悔やんでおられた様だから・・・・・・横島君もお父さんに似ているようだから同じように見境無く口説くようにはなる危惧はあるけど』
 以前会った時に横島の母百合子から、美知恵の色んな事情こそあるが貞淑な亭主を羨ましいと愚痴を聞かされた事を思い出す。オバさんが集まれば兎角始まるのは旦那の悪口と相場は決まっていた。その際の百合子側の悪口で、悪いと思ったが美知恵は思わず心の中で安堵の吐息を吐く。
 我が家族は多少変わった形態だと思っていたが、アッチ(横島家)に比べればまだマトモだと、他人の不幸を見て己が幸福を噛み締める美智恵であった。親友と言いつつも、やはり自分の家庭だけは他とは違うと思いたいというオバさん特有の根性は抜けること無いらしい。

*

  『まあ、それは好いとして・・・・・』
 多分娘にとっては将来の危惧がある問題だとは思うが、取り敢えずは将来の事よりも当面の問題に居を移す。
  『だから外面だけが体裁を繕っている女に騙されるのも終わりなんじゃないからしら。まあヤリ逃げならばまだしも、本気で付き合いたい、一緒に歩いて行くなら三日で飽きる美人よりも、終生心を惹きつける中身が一番と悟ったんじゃないの〜〜。特に将来"彼女"の母親になる女性には優しく素直な方が好いに決まっているでしょうからね。子供にとって容姿や財産よりも大事なのは暖かい家庭を作れる、優しく母性溢れる性格だからね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
 妙に間延びした語尾と一緒にチラと我が娘を見る。
  『ぐっ・・・・・・・・・』
 まるで娘には後半の部分が無いと言っているような口調だ。

 確かに・・・・・・・・・・子供は嫌いだし、家事も嫌いだ。なんで他人の為に甲斐甲斐しく家事や子育てをしなくてはならないのだと思うが、流石に長年女と母をやっている言葉だけに重い。
  『そ・・・・・・そうなのかしら』
 まだ納得しがたい表情を、先ほどのナマメカシイY談のジメっとした雰囲気も思い出した承伏し難かった。しかし女らしいのは格好だけと見きっている娘の儚い抵抗など女を長年、先ほどのY談も実際に実践した母には通用しなかった。
  『そうよ。多分ね。だからこの頃は綺麗な女性とか依頼人を見ても以前のようにモーションを掛けたりしないんでしょう。以前だったら考えられなったんじゃ無いの?』
  『う うん』
 承服し難くはあるが小さく頷く娘であった。

 しかし、思い返しても本当に横島のこの頃の様子はおかしかった・・・・・・・・・・・・・。

to be continud


[ 中編へ ][ 煩悩の部屋に戻る ]