『ファイアースターター!!』

著者:葉梨らいす


   
 美神事務所 ゲームステーションをしているパビリオと横島クン
 
おキヌ「二人とも、そろそろ休憩しませんか?」
横島「ほら、パビリオ、ちょっと休憩しようっ!なっ!?」
パビリオ「駄目でちゅよ!タダ働きさせた分、次の依頼が来るまで、きっちり遊んでもらいまちゅからね!!約束は約束でちゅ!」
横島「これというのも全部、西条の野郎のせいだ…(涙)」
 
  回想―――机に積まれた依頼書の山
 
西条『断るか…仕方ないね。君にだって理由があるんだろうし。』
横島『!? なんだ、今日はやけに話が分かるじゃねーか。』
西条『僕も忙しいもんでね。話はこれだけさ。帰っていいよ。』
横島『それじゃーなっ!』
西条『中武球場の作戦の報告書は僕が任されていてね。明日が提出期限なんだが、忙しすぎて筆が滑ってしまうかもしれないな……。おっと、君にはもう、関係のない話かな?それと、今日のうちに身辺整理をしておくコトをお勧めするよ。いつでもいいように……ね。』
 
フラッシュバック『でも、おまえが死んでも俺はちっとも……』 等
 
横島『…………。』
 
 再び 美神事務所 
 
おキヌ「横島さん、もう少ししたら、きっとまた依頼が来ますから……。ほら、今日もルシオラさんが美神隊長に会って何とか仕事を回してもらうって……」
横島「学校と寝る時間以外は全部ゲームやってる生活がもう一ヶ月も続いてるんだぞ!おまけに寝てる時までゲームでうなされる始末だし……(涙)」
ルシオラ「ただいまー!」
横島「ル、ルシオラっ!GS本部からの斡旋は!?」
パビリオ「ヨコシマっ!逃げるんじゃないでちゅよ!!」
ルシオラ「それが…」
横島「なかったのか……!?(涙)」
ルシオラ「うん……」
パビリオ「じゃ、ゲームの続きしよっ!!」
横島「こんな生活………。(涙)」
美智恵「ちょっと、おじゃまするわね。」
おキヌ「お久しぶりです。美神隊長。」
美智恵「おキヌちゃん、もう隊長なんてつけなくていいのよ。今の私は産休中――ただの非常勤顧問よ。それより、ごめんなさいね。ホントに本部にも仕事、今は無いのよ。あれだけの霊波がうごいたあとですもの。台風一過でザコはおとなしくしてるわ。一時的な現象で、しばらくすれば元に戻るだろうけどね。」
横島「いつ!いつですか!?」
美智恵「そ、…そこまでは分からないわ。でも、ちょうどよかったわ。もう予定日近いのに、あの人もすぐには帰国できないっていうし…、しばらく手伝ってくれない?」
横島(ぴん!)「よ、よし!みんなで身重の隊長の手伝いをしてあげようじゃないか!」
ルシオラ「私も特にすることはありませんし。よろしかったら。」
パビリオ「はい!はい!パビリオもお手伝いするでちゅ!」
美智恵「みんな助かるわ。ありがと。」
横島(やたっ!)
  
おキヌ「あっ…うごいてますねっ!!」
ルシオラ「ホント……。」
パビリオ「スゴイでちゅ!!あっ!今蹴った!」
横島「あ、あのっ…俺も触ってみたい……!!」
ルシオラ&パビリオ&おキヌ「なんで?」
横島「なんでって……」
ルシオラ「ヨコシマ!!、まさか、この前言ってた『光源氏計画』、まだあきらめてなかったの!?少しは進歩しなさいよっ!!」
横島「ち、違うって!!」
美智恵「いいわよ、横島クン!触ってみる?」
全員「!!」
横島「んじゃ…ちょっとだけ失礼します…!   う…うわああッ!!」
美智恵「臨月だしけっこう大きく動くでしょ?女の人でも最初はびっくりするのよ。」
横島「いや、そうじゃなくて今……」
美智恵「?」
横島「…!?火傷…!?」(シュウウ…)
美智恵「うッ…!?」
全員「!?」
おキヌ「隊長さんっ!?」
ルシオラ「ヨコシマッ!あなたと言う人は―――っ!?」
パビリオ「ヨコシマッ!赤ちゃんに何したんでちゅか―――!!」
横島「ご、誤解だっ!!おれ、何もしてない……!!」
パビリオ「ウソつくんじゃないでちゅよ―――!!火の無いところに煙は立たぬでちゅ―――っ!」
ルシオラ「誤解で人が倒れるわけないでしょ!」
 (ダブルアタ――ック!!)(ドガッ!!)
横島「わ――――っ!!!」
美智恵「平気よ…!陣痛みたい………!」
全員「え。」
 
横島「た……、大変だああッ!!GS本部に連絡をっ!!」
パビリオ「GS本部の番号なんて知らないでちゅよっ!!分かったでちゅ!!あの西条とかゆーヤツの口を割らせてくるでちゅ!!」
ルシオラ「二人とも落ち着いて!!オカルトGメンならすぐとなり……じゃなくて、 冷静に…… れーせーに……。」
横島「分かった……。 とりあえず――――― 出産祝いは何がいーだろーか?」
ルシオラ「実際に使える、離乳食の詰め合わせあたりが妥当なトコじゃない?ラッピングにはこだわりたいわね――――。」
美智恵「少しは緊張しなさいッ!!陣痛が始まってもすぐには生まれないのよ!おキヌちゃん、落ち着いて119番に電話をかけて!」
おキヌ「ハイッ!! もしもし―――――」
横島「わああ―――!」
ルシオラ「きゃ―――っ!」
パビリオ「どーすればいーんでちゅか――――っ?」
美智恵「…………。」
電話『気象部予測の天気予報は、関東地方は全域で晴れ―――』
おキヌ「いえ、そーじゃなくて隊長が――――」
美智恵「…………。(呆)」
  
  で――
 
西条「女の子かぁ………!!おめでとうございます、先生!!」
横島「西条!!貴様、美神さんの生まれ変わりが男だったらよかったのか!!言っとくが今回は『元祖・光源氏作戦』は無しだからな!」
西条「な…何をいっとるんだ!!君は!!」
美智恵「あ…、ありがとう西条クン……… あ、そうそう、主人と相談して、名前ももう決めてあるの。『ひのめ』 美神ひのめ!どう思う?みんな?」
ルシオラ「す、すてきなお名前ですね……?」
おキヌ「お産って時間がかかるんですねえ…!」
パビリオ「赤ちゃん、お手……!(むにゃむにゃ)」
横島「待ってる方が緊張でヘトヘト……」
西条「こんにちは!れ…ひのめちゃん!よろしく――――  つッ…!! !?」
ひのめ「ほわあッ!ほわあッ!ほわあッ!」
美智恵「…そろそろオッパイの時間なのよ。」
西条「あ、失礼…!外へ出てます!起きろ、横島クン!」
横島「ふにゃ!?」
西条「あれは…熱……!?まさかな………!」
  
横島「へええ〜〜〜!!かわいくなったな〜〜〜〜!!一ヶ月もすると顔がかわるもんだな――――!」
パビリオ「えへへ―――パビリオはしょっちゅう会いに行ってるんでちゅよ――!」
ルシオラ「どーしても連れてけってせがむのよ。このコ。」
ひのめ「ほわあッ!ほわッ!!」
パビリオ「パビリオに貸してみるでちゅ!ははーんさてはオシメでちゅね?」
横島「て…手早い……!?」
パビリオ「えへへ――っ!実は何度もやらせてもらってたんでちゅよ――――!!」
横島「で、今日、隊長は?」
ルシオラ「私たちにひのめちゃんを預けて、おキヌちゃんと出かけたわ。この子のパパが帰国するから買い物するって。」
横島「あれ?じゃあまる一日、俺たちだけで預かるのこれがはじめてじゃないか?」
ルシオラ「そういえば…」
パビリオ「大丈夫!パビリオに任せるでちゅ!」
ルシオラ「ふふ、そーね。パビリオ。がんばって。」
ひのめ「うぐっ…ふぎっ…ほああっ!!」
横島「こ…今度は何だ?パ、パビリオ!」
パビリオ「だ、だいじょうぶでちゅ!たぶんミルクでちゅ………!  変でちゅ、飲まない……」
ルシオラ「ゲップでもなさそうね………」
横島「隊長がいないのに気付いちゃったんじゃないのか?」
ひのめ「ほああッ!!ほあああッ!!ほああああッ!!」
パビリオ「ど、どーしたんでちゅか?ホラホラッ、パビリオおねえちゃんですよっ!?」
ルシオラ「パビリオ…このコ…熱いわ!?」
パビリオ「ど、どうしよう?ルシオラちゃん? ひのめちゃんが…ひのめちゃんが… うぐっ……」
ルシオラ「パ、パビリオ!!泣かないで!!」
横島「そ、そーそー、こんなのすぐ治るって!!」
パビリオ(ひっく)「ヨコシマ……、ホントでちゅか?」
横島「あ、当たり前だろ!」
ルシオラ「そーよ。一見高そうに思えても実際は―――」(耳式体温計を持つ)
 (ぼんっ!)(体温計が吹っ飛ぶ)
横島&ルシオラ「…………。」
 
ルシオラ「……ヨコシマっ!文珠でひのめちゃんを凍らせるのよ!」
横島「凍らせてどーするっ!と、とりあえず隊長に電話だ! な、なんかものすごくあつくなって……る!?ぎゃあああッ!?」
ルシオラ「ヨコシマ!?」
パビリオ「ひのめちゃん!!」
ルシオラ「…え、ヨコシマ、どういうこと?わっ!」
パビリオ「どうしたんでちゅか!」
ひのめ「あああああッ!!」
ルシオラ「!!こっ…これは……!?霊波だわ……それも、強力な!!今の――このコがやったの?た、大変!このコ―――」
横島「な…何がどーしたんだ!?」
ルシオラ「このコ…念力発火能力者だわ………!!」
 
ひのめ「だーぱー。」
横島「なんとか収まったみたいだな……。」
ルシオラ「問題はまたぐずり始めたらどうするかね。」
パビリオ「ひのめちゃんはどうなるんでちゅか?」
横島「……大丈夫!きっと何とかなるさ!」
ルシオラ(こくっ)
横島「ところで パイロなんとかって?」
ルシオラ(呆れ)「…………。念力発火能力――――文字どおり精神の力で火を起こす能力よ。普通の燃焼現象とは違って、どんなものでも燃やせるし、消火も難しいの。そして、普通の念力に加えて火そのものの勢いもあるから、なによりコントロールがとても難しい能力なの。「人体発火現象」って知ってるでしょ?あれは、その能力を制御しきれなくて自分自身を燃やしてしまったものなのよ。」
パビリオ「でも、ひのめちゃんはまだ赤ちゃんなんでちゅよ!」
ルシオラ「……うん、ひのめちゃんの年齢ではそんなしつけはまず不可能。とりあえず念力封じのお札か何かで封印しなきゃ!」
横島「お札ならまとめて机の引き出しに――――。」
  (プスプス…プス。)
全員「…………。」
横島「パビリオ!隊長はッ!?」
パビリオ「それが――――」
電話「おかけになった電話は−電源を切っているか電波の届かない場所に――――」
横島&ルシオラ「―――――!!」
パビリオ「わたし、隊長を探してくるでちゅ!」
横島「パビリオ!!  俺も逃げ――――」
ルシオラ (バキッ!!)「逃げてどーすんのよッ!!」
横島「だってコワイやないかーッ!!」
ひのめ「ふ…ふに…!!」
横島&ルシオラ「!!」
横島「こーなったら!」
ルシオラ「何か手があるの!?」
横島「残り時間でできることをっ!」(バッ!!)
ルシオラ「そんなコトしてる場合じゃないでしょッ!」(バキッ!!)
ひのめ「ほああッ、ほあッ!!」
横島「やばい!完全に起きた!」
ルシオラ「おまえがそんなことやってるからっ!!」
横島「えーい!!もーこーなりゃヤケだ!」
 
ルシオラ「ひのめちゃん、ホラッ!!たかいたかーいっ!!」
横島「あっぷっぷっの、ぷーッ!!」
ひのめ「ほああっ、ほああッ。」
横島「イカン!こんなんじゃインパクトが足らんっ!」
ルシオラ「でもインパクトって言ったって!」
  文珠を手にする横島クン
横島「これしかないッ!!」
 
横島「ターラーコッ!!」
ルシオラ「ハァッ!!! タコタコターラッコ!!」
横島「ハアッ!!!」
ルシオラ「…子供を楽しませるって大変なのね……!?」(タコとタラコはにていても――――ッ)
横島「でもホラッ!!こっち見てるぞ!!」(顔やスタイルにてタラコ――――ッ♪)
ひのめ「だ…う…うあ。」
ルシオラ「ヨコシマッ!!」
横島「むうっ!!対象年齢がまだ高すぎたかッ!それならッ……」
 
横島「これでどーだっ!!「ボクは「ばうわ」!!
ルシオラ「かにゃこ」だよーっ!!
ひのめ「あ―――だ―――だ―――」(きゃっきゃっ)
ルシオラ「どーでもいいけど、これって何なの?」
横島「いや、こーゆー幼児番組があるんだ。」
ルシオラ「………。 起きてから四時間、そろそろ眠ってもいい頃だけど……」
ひのめ「(とろん)す−…、す――…」
横島「ふうっ!!これでひとまず安心…!!」
ルシオラ「ずいぶんと派手にやったわねー。」
横島「さすが人口幽霊壱号。これぐらいじゃびくとも―――― !?」
 (バシュッ!!)
ルシオラ「これは!!」
横島「文珠!出ろっ!」『防』
 
横島「ど、どーなってんだ!?人口幽霊壱号!?」
人工幽霊壱号『放出された念波が強すぎて、結界が吸収しきれなくなりました!』
 (ギシッ…ミシミシ ギギギ…)
横島「ヤバイ!建物が変なきしみ方をしとるっ!」
人工幽霊壱号『結界が崩壊しつつあります!!急いで念波を消して下さい!!』
横島「念波を外に逃がすことはできないのか!?」
ルシオラ「ダメよ!念波が外にもれたら大惨事よ!」
横島「だ、大惨事って、どのくらい?」(おそるおそる)
ルシオラ「……、町中に火の手が広がったあと、火災による上昇気流で竜巻が発生して、超高温の気流がすべてを吹き飛ばしながら跡形もなく燃やし尽くすわ!」
横島「それじゃあ――――――、今ここでできることを――――っ!!」
ルシオラ「人の話聞いてるのっ!! 今度は『あー死ぬかと思った』なんかじゃすまないのよ!!」(バキッ!)
横島「どーせ死ぬなら一発やってから――――」
ルシオラ「おまえはドコまでバカなのっ!」(バキッ!)
 
人工幽霊壱号『あ、あの、結界が……』
 
横島「何か念波を打ち消す方法とかはないのか!?」
ルシオラ「逆位相の念波を重ねるとしても、一歩間違えば逆に増幅してしまうわ。そうでなければこの念波を閉じこめなくちゃ――」
横島「念波を……」
ルシオラ「……閉じこめる…!?」
横島&ルシオラ(ぴーん!)「そうか!」
横島「人口幽霊壱号!念波の向きは変えられるかっ!?」
人工幽霊壱号『はい!曲げるだけなら可能です。』
横島「いいか!文珠に念波をぶつけろ!うまくいけば文珠に吸収されるはずだ!」
人工幽霊壱号『分かりました!』
横島「全部で三つか……。たのむぞ!」
 (バシュウウウッ!!)
横島&ルシオラ「………………。」
横島「助かった……。」
ルシオラ「ヨコシマ、やったわ!」
人工幽霊壱号『念波は完全に吸収・消失しました。ご苦労様でした。私からもお礼を申し上げます。』
横島「あとはひのめちゃんが起きるまでに隊長が帰ってくれば――――」
ひのめ「ひぐっ!うう……。」
横島&ルシオラ「!!」
ルシオラ「文珠は!?」
横島「今のところネタ切れ……。」
ひのめ「ひぐっ!あぐっ!」
横島&ルシオラ「!!!」
美智恵「ひのめっ!みんな無事!?」
パビリオ「ルシオラちゃん!ひのめちゃんは無事でちゅか!?」
横島「隊長!!助かった〜〜〜〜。」
ルシオラ「一時はどーなることかと……。」
 
美智恵「よかった……!二人がいなかったら危なかったわね…!」
横島「念を込めて発動する文珠なら、念波も吸収できると思っただけで……。それよりもみんな無事でよかったですよ!!」
パビリオ「ヨコシマ、よくやったでちゅよ!」
横島「そ、そーかな?」
ルシオラ「これでホントに安心ね。」
美智恵「当分はおしめとミルクのほかに、念力の封印もかかせないわね…!」
 
  横島クンのアパート
 
横島「ふう、ひどい一日だった……。」
  (コンッ!)(文珠の落ちる音)
横島「ヤ、ヤバイ!!」(だだだだだ)(ガチャッ!!)
 
 (し―――ん…)
 
横島「あれ!? おさまったのか――――」
 (ガチャッ!!)
 
 (ドガアアアアアアアッ!!)
横島「わ――――――ッ!!」
解説 「バックドラフト現象」――――密閉空間が火災により、極度な低酸素状態になったとき、出入り口等を開けると外部の新鮮な空気により一気に炎が燃え上がり、大爆発を起こす現象をいう。
消防士「要救助者一命確保―――ッ!!」
横島「ふひ…ふひひひ…!!炎だ…!!炎は生きている…!!俺は炎の目を見たぞ――――ッ!!」

※この作品は、葉梨らいすさんによる C-WWW への投稿作品です。
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