西条は受話器を手にしたままデスクに腰を下ろした。
「あ―わかったわかた、こっちで何とかするから・・・・・何? そっちに間に合わせがある? あ―え―、じゃあ、それで何とかしといてくれ。 ・・・・・・・ああ・・・・ああ、よしじゃあ頼むぞ。」
かちゃ
「はあっ、しかしよく3億もあったなあ・・・・・・いったい何で・・・・・・あああああああああああああっ!!!?」
頭をかきむしる西条の目の前で、がらっと窓が開いた。
「何、どうかした?」
「タ、タマモ君、ここ3階・・・・」
「外まで奇声が響いてきたわよ?」
「・・・・・・・そうだタマモ君!! 力を貸してくれっ!」
「何取り乱してんのよ?」
きつねレポート
トリッキー・ハウス
「飲めば?」
「ああ、すまない。 ありがとう。」
西条はタマモがデスクに置いたコーヒーを口に運んだ。
「・・・・ふうっ。」
「で?」
「この間の仕事・・・・覚えてるかな?」
「ああ、暴走トラック追っかけたやつ? あれはなかなか愉快だったわ。」
「そ、そうかい?」
「横島が3回踏み潰されてシロが崖からダイブしておキヌちゃんが爬虫類専門店に飛び込むはめになって美神さんもコブラ潰されて足を骨折してたわね。 いや〜あれはおもしろかった。」
「ど、どこがおもしろいんだい・・・」
「写真あるけど見る?」
「いや、いい・・・・きみはいったい何してたんだ?」
「撮影班。」
「まずいよな〜・・・・」
「どしたの?」
「今日払うはずだったそのギャラ、今本庁が使っちゃってるんだよ〜。」
「3億も何に使うの?」
「誘拐事件がおきてるらしくってな〜、それでその場に用意しておいたの使ってるらしい。」
「あ―あ―。」
「令子ちゃんお金が絡むと容赦ないからな〜。 今日だって随分引き伸ばしての約束だったから・・・・・何とか誤魔化さないと。」
「・・・・・・で?」
「横島君とシロちゃんは令子ちゃんのペットだから頼めないし、おキヌちゃんではうっかり喋ってしまう可能性が高い。」
「・・・・・・で?」
「頼む〜〜っ! 時間を稼いでくれタマモ君―――!!」
「何でアタシが・・」
「むこう1ヶ月油揚げご馳走するから!!」
「・・・・少ない、プラスお願いがあるんだけど。」
「わかったわかった、何でもするからっ・・・!!」
「オッケー、商談成立ね。」
「何とか今日1日時間を稼いでくれ。 早急にお金を持ってくるから。」
「はいはい。」
タマモは西条の手をがしっと握った。
「・・・・というわけなの、人工幽霊1号。」
タマモは玄関の戸にもたれて小声で口を動かした。
『わかりました、協力しましょう。』
「とにかく、どこからばれるかわからないから、西条が来るまで4人を引き付けて事務所から出さないこと。 あと電話線切って電波も届かないようにできる?」
『任せてください。』
「んじゃ、作戦開始といきますか。」
『はい、隊長!』
「のってるわね。」
タマモは笑って戸を開けた。
屋根裏部屋
「お散歩〜お散歩〜先生とお散歩ふんふふんふふ〜〜ん!」
シロはトレーニングウェアに着替えていた。
「シロ。」
「せ、先生っ!? 今着替え中・・・・っ!?」
「今日は散歩は中止だ。」
「って、ええっ!? 何ででござるかっ!? というか今着替えてるでござるにっ!」
シロは服で前を覆った。
「シロ・・・」
「せ、先生・・・っ!?」
つかつか歩み寄った横島はシロをベッドに押し倒した。
「ちょっ、先生そんなまだ日も高いのに拙者心の準備がでも先生ならわお〜〜ん!!」
横島はぺしっとシロのおでこに『散歩禁止』のお札を張り付けた。
「え?」
ばりばりばりっ!
「あぎゃおえおうわ〜〜〜〜〜っ!!?」
「一丁上がりっと。」
横島は立ち上がってぼひゅんと変化を解く。
「タ、タマモきっさま〜〜!」
「そこでいい夢みてなさい。 屋根裏部屋ロックね?」
『了解です。』
「ああ〜! 散歩に行きたいのに行けない〜〜〜〜!! 横島先生―――!!」
おキヌの部屋
「どれ着てこっかな〜。」
クローゼットをがさがさやる後ろで携帯が光る。 ぴるるるる ぴるるるる ぴる・・
「もしもし、あ弓さん? どうしたんです?」
『ごめんなさい氷室さん、今日はお買い物中止にいたしません?』
「え、どうしてです?」
『ちょっと急用が入ってしまって、ごめんなさいね。』
「いいですよ、一文字さんと私で行きますから。」
『それなんですけど、あの人も行けなくなったから、あなたに伝えてくれって言われてるんですの。』
「ええ〜? 一文字さんもですかあ?」
『ごめんなさい、氷室さん。 この埋め合わせはしますから。』
「そんないいですよ、じゃあまた今度行きましょう。」
『じゃあね、氷室さん。』
「はい、じゃあ。」
ぴっ
「はあ・・・・つまんないなあ。」
かちゃっ
「おキヌちゃん、ちょっといいかな?」
「横島さん?」
横島が青色にラッピングされた箱を持って入ってきた。
「どうしたんです?」
「いいから、これ開けてみて。」
「は、はあ。」
ぱかっ ぼふんっ!!
「な、何い・・・!?」
もうもうと立ち込める煙に包まれ、おキヌはベッドに倒れこんだ。
「はにゃ〜・・・むにゃむにゃ―・・・・・・」
「ごめんおキヌちゃん、埋め合わせは多分するから。」
タマモはぼしゅっと元に戻った。
『タマモ隊長、おキヌさんは幽体離脱の恐れがあります。』
「そっか、じゃ呪縛ロープでぐるぐると・・・」
簀巻きにされたおキヌはベッドに固定された。
「えへへ〜、横島さ〜ん・・・・くか―・・・・」
「この幸せ者。」
キッチン
「ちぇっ、何か食いもんねえのかよ〜。」
横島は冷蔵庫をがさがさあさっていた。
「ねえ横島。」
「タマモか? ちょっと待て今何か食うもん探してんだよ。 このまま散歩なんか行ったら死んじまう。」
「一緒にお風呂入らない?」
がちゃんっ
「・・・・今何つった?」
「背中流してあげる。」
「さあ行こう直ぐ行こう何ならここでもオッケー!!」
「あん、ちょと待って。 シャワールームまで、が・ま・ん。」
「うおおお〜〜〜タマモ〜〜〜〜っ!!」
ガレージ
「ああ―っ、もうっ! これも交換か、ったく〜〜!!」
作業着でコブラのボンネットを開いてがちゃがちゃやっていた。
「たいへんよ美神さん!」
「何タマモ・・・? 今忙しいんだけど・・」
「横島がバスルームをあさってるわよ?」
「なっ・・・・あんのガキ〜〜〜!!」
美神は階段をどかどか駆け上がっていった。
「ふう、やれやれ。」
『タマモ隊長、弓さんと一文字さんが事務所に接近中! あと20秒で入口に到着します!』
「よし、追い返すわよっ!」
『了解ですっ!』
事務所前
「ほら、急がないと氷室さんに悪いですわよ?」
「わかってるって。」
事務所前にやってきたかおりと魔理は玄関から飛び出てきた美神と鉢合わせる。
「美神さんっ!?」
「お、お姉さま!?」
「!? 2人共ちょうどいいわ、仕事を手伝って!」
「え、はい! でもっ・・・・・ええ!!?」
「落ち着け弓!」
「今から人骨温泉に向かって欲しいの。 詳しいことは現地で話すわ。」
「って、おキヌちゃんの実家の近くの・・・?」
「お願い、おキヌちゃんは先発して向かったわ。 私は直ぐには行けないの。 あなた達の力を、私に貸してっ!」
美神は2人の手をぎゅうっと握った。
「「は、はいっ!!」」
頬を赤くした2人は反転して駆け出した。
「行ってらっしゃ―い。」
美神は笑顔で手を振った。
バスルーム
「横島―――っ!! あんた脳みそついとらんのか―――っ!!?」
「ちがうんや〜〜〜〜、俺は何もしてないんや〜〜〜っ!!」
「この状況でまだ言うか――っ!?」
ぐるぐる巻きにされた横島は重石をつけられ、煮えたぎった湯船に放り込まれた。 どぼんっ
「あっぢ〜〜〜〜〜っ!!」
警察庁本庁 誘拐事件対策本部
ばんっ
「な、何だねきみは・・・!?」
ドアを蹴飛ばし、西条はずかずか部屋に入り込んでばんっとデスクを叩いた。
「捜査状況は? 犯人の目星は・・・?」
「オカルトGメンを呼んだ覚えはないっ!」
「早く出て行きたまえっ!」
後から両手を押さえつけられる西条はそれを振り払う。
「僕の3億を返してくださいっ!!」
「緊急事態なんだ勘弁してくれ西条君。」
「必ずGメンに返すから・・」
「それに誘拐されたのは本部長の娘さんだ。 きみだって我々の苦労はわかるだろう?」
「・・・・・・3億の要求は警察に対して・・・?」
「そうだ。」
「・・・・・」
西条はデスクの上の拳を握り締める。
ぷるるるる ぷるるる・・
「はい、美神除・・・・・・・うん・・・・・はあっ!? ちょっとちょっと待ってよアタシは・・・・・・・・・あのね〜、いい加減に・・・・・・コラ聞いてんのっ!? いい? アタシはそんなの興味ないしどうでもいい・・・・・・・・・・・・・・・ええ・・・・・ええ・・・・・・・・わかった、待ってなさい。」
がちゃん
「だ〜〜・・・・・・」
受話器に体重をかけ、タマモはかくっと頭を垂れた。
「・・・・・アタシの馬鹿・・・・」
かちゃっ
「何? 電話誰からだったの?」
「・・・・・」
「タマモ?」
タマモの背中に手を伸ばす美神の腕を、タマモはくるっと反転してがっと掴んだ。
「ごめん美神さん。」
「は・・・?」
ぺしっ びゅびゅうん・・・・・・
「な・・・・!?」
額を叩かれ、美神は床に転がった。
「人工幽霊1号、ちょっと出るわ。」
『わかりました。 オーナーは私に任せてください。』
「お願い。 横島は・・・・?」
『バスルームで眠っておられます。 問題ありません。』
「うし、予定通りね。 じゃあ、よろしく。」
『行ってらっしゃいませ、どうかお気をつけて。』
ぶろろろろろ・・・・・・・!! 通り過ぎようとするオープンカーにタマモは飛び乗る。
「すまないな。」
「・・・・・まったくよ。」
ぶっちょう面のタマモを、西条は運転しながら横目に見る。
「で?」
「これが資料と誘拐された子の持ち物だ。」
「ふ―ん・・・」
「・・・・・いけそうかい?」
「まだ新しいしね。」
「これから誘拐されたと思われる現場に行く。」
「これが最後よ? 今後一切、こういうのはシロでやって。」
「・・・・・ありがとう。」
「・・・・・」
タマモはドアに肘をついて西条から顔を背けた。
「一応、鑑識が調べた後なんだが・・・・」
「いいから黙ってなさい。」
道路の十字路にしゃがみ込むタマモは目を細めながら口元を押える。
「・・・・・多分さらったのは2人か3人組ね。」
「どっちに行ったかわかるか?」
「待って。」
タマモはすっと立ち上がり瞳を閉じる。
「・・・・・車で・・・こっちへ・・・」
タマモの指が1方向を指す。
「・・・・・追えそうかい?」
「・・・・なんとか。 急がないと追えなくなる、車を!!」
「よおしっ!!」
「んぎぎぎ〜〜〜〜〜・・・・!!」
シロは固まった体で立ち尽くしたまま歯を食いしばっていた。
『シロさん、あまり無理をなさらないほうが・・・』
「何の!! 拙者の散歩への思いはこんなお札ごときで・・・」
ばりばりばりっ!!
「んぎゃ―――――っ!!?」
『ああああああ・・・』
ばったん 黒焦げになったシロは仰向けに引っくり返った。
「・・・・・ここなのか?」
「ええ。」
タマモと、作業服姿に帽子を被った西条は高いマンションを見上げる。
「部屋もわかるのかい・・・?」
「行くわよ。」
タマモは足を進め、入口に立つ。 西条もそれに続いた。
「これは・・・オートロックか・・・・・どうするか・・・」
「・・・・・」
タマモはインターホンに手をかざす。 ばりっと霊波が飛び散る。
「なっ!?」
ぶい―――・・・ん
「い、いいのかな・・・? 壊したんじゃないかこれ。」
「いいんでない?」
開いた扉に、タマモと西条は中へと歩いていった。 ぽんっ 開いたエレベーターに、タマモと西条は乗り込む。
「・・・・・いいの? 応援とか呼ばなくて。」
ボタンを押し、タマモは閉まる扉から西条に目を移した。
「きみを警察仲間に紹介する気はないよ。」
「それは助かるけど・・・」
「だろ?」
にっと笑ってくる西条に、タマモはつられて頬を緩める。
「でも、僕も一警察官として事件をほっとけない。 僕が出来ることをしたいんだ。」
「ご立派なこって。」
「そういう性分なんだよ。 変かな?」
瞳を閉じたタマモは白い歯を除かせて微笑んだ。
「1番奥の部屋よ。 さっさと終わらせて美神さんにお金持っていきなさい。」
ぴんぽ――ん ぴんぽ――ん 西条はダンボールを両手に持ってドアから1歩下がった。 『はい、どなたでしょう・・・?』
西条はインターホンに顔を近づける。
「宅急便です、印鑑をお願いしま〜す。」
『はあ・・・』
「警察か・・・・?」
「いや、何か送られてきたぞ。」
「何だそりゃ?」
ダンボールを抱えて部屋に戻った男は、テーブルにどかっとそれを置いた。
「フィリピン・・・・?」
「親戚か何かか?」
「知り合いも何もいないはずだが・・・」
3人の男はダンボールに視線を集める。 ぼしゅんっ!
「なっ・・・!?」
「いいっ!?」
人型に戻ったタマモは、テーブルの上に手をつき、屈んだまま360度回転して3人を蹴り飛ばした。
「げはっ!」
「ぶっ!」
よろめく1人の顎をさらに蹴飛ばして壁に叩き付ける。 がんっ!
「ふっ!」
ぶんと振り回した後髪の1つが伸び、2人目をなぎ倒す。
「この化け物―――っ!」
ナイフを突き出してくる3人目に、タマモはテーブルから飛び降りる。 顔に向かってぶんぶん振り回されるナイフを後に歩きながらかわし、タマモはぶっと炎を吹き付けた。
「うわっ・・・!」
炎によろめく男は、炎を突き破って迫る拳に顔を殴られた。 ばきっ
「・・・・・はいお終い。」
右手をぷらぷら振り、タマモは廊下に出て奥の部屋に入り、クローゼットを開いた。 縛られている少女が転がり出てくる。
「・・・・・囚われのお姫様発見、と。」
かちゃっ
「タマモ君っ!?」
玄関から出たタマモに西条は駆け寄った。
「お姫様は中にいるわ、後はあんたの仕事ね。」
「無事なんだなっ! 良かった・・・」
「じゃあ、アタシ帰るから。」
「ちょっと待ったっ。 顔切れてるぞ・・・!!」
「え・・・?」
西条はハンカチをタマモの左頬に当てる。
「すまない僕が頼んだばっかりにっ!」
「いいって、自分でも気付かない程度のものだし。」
タマモはハンカチで血を拭って西条に押し返す。
「しかし、きみがこんな傷を負うなんて・・・」
「・・・・・・」
タマモは血のついた指をぺろっと舐める。
「・・・・やる気なかったせいかな? 自業自得ね。」
「・・・・すまない。」
うつむきかける西条に、タマモはべしっと西条の腕を叩いた
「気にしないの、あんたは自分の仕事を優先しなさい。 さっさとやれば今日中にお金持って来れるでしょ?」
「・・・・ああ、そうだな。 協力ありがとうタマモ君。」
「アタシの仕事はまだ終わってないわ。 美神さん達化かしとくから、さっさとしなさいよ。」
「ああ、もちろんだ!」
『お帰りなさい、タマモさん。』
「・・・・・」
事務所の前に立ったタマモはそれを見上げた。
「皆は?」
『まだ皆さん変わりありません隊長!』
ふっと笑いが漏れる。
(やっぱこっちのほうが性に合ってるわ。)
「よし、じゃあ現状維持ね。 お茶の時間には多分お仕事終了よ。 それまで皆を食い止めるわよ。」
『了解です。』
タマモは軽い足取りで中へと入っていった。
「・・・・ん?」
瞳を開いた美神はソファーから体を起こした。
「あっれ・・・・・何だっけ?」
「あ、起きた美神さん?」
頬に大きなバンソウコウを貼ったタマモが、お盆にカップをのせて部屋に入って来た。
「ん、タマモ・・・・私いったい・・・・・・・あっ!! タマモあんたどういうつもりよっ!?」
「待った待った、説明するから!」
お盆をテーブルに置いたタマモは、詰め寄る美神に湯気の立つカップを手渡す。
「美神さんには見せない方がいいと思ってね。 ちょっと寝てもらったのよ。」
「って、何を・・・?」
「ゴキブリ。」
「ぶ――――――――――っ!!」
美神は紅茶を噴出す。
「で、出たのっ!? また出たの・・・・!!?」
「大丈夫、ちゃんと処理したから。」
「な、何てこと・・・・・また建て替えが必要かしら・・・・!?」
がたがた震える美神に、タマモは苦笑した。
「こんちわ――――。」
「お邪魔します――――。」
薄緑色の作業服の集団がずかずか入って来た。
「え、え、いったい何!?」
「よう――し、じゃあこの部屋から始めるぞ。」
「「「うぃ―――っす。」」」
「あんたら何なのよ・・・?」
美神は壁や床に青いビニールシートを広げる集団に詰め寄った。
「あ、美神令子さんですね? ご注文通り事務所の改装に来ました。」
「はあ?」
「えっと、とりあえず壁紙の交換に外壁の色塗り、屋根の補修と・・」
「待ってよ、そんな注文した覚えは・・」
「いいんだよ令子ちゃん、代金は僕がもう払ってある。」
「おに・・・・西条さん!?」
大きなスーツケースを引きずり、大きな花束を抱えた西条が部屋に入って来た。
「はいこれ、遅くなったけどこの間のギャラ。」
「あ、ありがとう・・・・・でも何で西条さんが家の補修をしてくれるの?」
「何、この間のお詫びさ。 皆に苦労かけたからね。」
西条は美神にスーツケースを渡した。
「み、美神さん何事ですかこの人達は!?」
「工事するんですか・・・!?」
横島とおキヌが部屋に入って来た。
「あらおキヌちゃん、買い物行くんじゃなかったの・・・?」
「あ、えっと・・・・ちょっとうたた寝しちゃって・・・」
「ん、西条てめえ――っ! そんな花束持ってしょうこりもなく美神さんをデートに誘いに来やがったな―――っ!? そんなこと俺が許さ―――んっ!!」
「やめんか――っ!」
がんっ
「ぶはっ!?」
「ったく、ごめんなさいね西条さん、この馬鹿が・・・」
花束を受け取ろうと手を伸ばす美神に、西条は1歩後退した。
「あ、いや・・・・ごめん。 これは、令子ちゃんにじゃないんだ。」
「え?」
西条は椅子に座って紅茶をすするタマモに歩み寄る。
「はいタマモ君。」
「ん?」
西条はタマモに花束を差し出した。
「個人的にお礼がしたいんだ。 今晩夕食でもどうかな?」
「・・・・・」
タマモは西条から、口をあんぐり開けている美神、横島、おキヌにちらっと目をやる。
(これはこれでおもしろい、かな。)
「いいわ、行きましょう。」
立ち上がったタマモは花束を受け取った。
「今からでもいいかな?」
「ええ。」
「じゃあ令子ちゃん、タマモ君借りてくよ。」
「えっ!? え、ええ・・・」
「行ってきま〜す。」
タマモはけけけと笑って、西条と部屋を出た。
「な、何で・・・・・どして・・・・・っ!?」
「おんのれ西条―――――っ!!」
「タマモちゃん・・・・?」
ぷるるるる ぷるるるる ぷるるるる ぷるる・・・ おキヌは慌てて受話器に駆け寄った。
「はい、美神除霊事務所・・・・・・あ、弓さん・・・・・えっ!? 人骨温泉!!? 何でそんなとこいるんですかっ!!?」
「いいの? 美神さん誘わなくて?」
事務所から出たタマモは足を止める。
「言っただろ、きみにお礼がしたいんだ。 このぐらいやらせてくれよ。」
「いいけど。」
花束を担ぐタマモは、車のドアを開けて先に乗るように勧める西条に笑った。
『行ってらっしゃませ、タマモさん。』
「ん。」
『お心遣い、ありがとうございます。 とても嬉しいです。』
「・・・・ふっ。」
タマモは事務所に向かって手を軽く振った。
「きみは人工幽霊1号が好きなんだな。」
運転席に座る西条は、キーを挿しながらタマモを横目に見る。
「うるさいな〜、早く出しなさいよ。」
「はいはい、お姫様。」
「さ、散歩・・・・・・!!」
上半身がほぼ真っ黒に焦げたシロは、這うように屋根裏部屋をドアへと進んでいた。
「散歩〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
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【次回予告】
シロ 「美神殿っ、いいかげん拙者に仕事を・・・!!」
美神 「駄〜目。 あんたにゃこれはまだ早い。」
シロ 「しかし急がないと・・」
横島 「シロ、焦ったってしゃ―ないって。 気楽にやろうぜ。」
シロ 「でも・・」
おキヌ「シロちゃん、皆でやればいいじゃない。」
シロ 「けど・・」
タマモ「・・・・・・」
シロ 「何か喋れでござるっ!!」
タマモ「犬。」
シロ 「何だとこのクソ狐〜〜〜〜〜っ!!」
横島 「こらシロっ、お座りっ!」
タマモ「次回、『持てる者持てない物』」
シロ 「このぐ―たら狐奴っ・・・!」
タマモ「頑張れ。」
シロ 「ん?」