約2ヶ月前(『道場破りのススメ』) 妙神山
「おい。」
「ん?」
老子に声をかけられ、縁側に座るタマモは膝で寝ているパピリオの髪を撫でながら振り返る。
「お前は・・・・力をどうする?」
「・・・・は?」
「は、って・・・・ここではお前の潜在能力が極限まで高められるんじゃぞ? 500年も居れば居過ぎなくらいじゃ。 パピリオにはリミッターをかけてあるが・・・・・聞いとらんのか?」
「全く。」
「・・・・・・まあよい。 つまり、パワーアップするってことじゃ。」
「あっそ。」
タマモはふいと顔を戻す。
「あっそ、って・・・・興味ないのか?」
「ないわね―。」
「・・・・変わっとるなお前は。」
「そ―お?」
きつねレポート
学園祭ヘブン −グルメ・ビジタ―−
「・・・・・・・で?」
デスクに座る美神は、タマモに首根っこを掴まれている少年を怪訝そうに見る。
「今後、24時間お好きなように過重労働を押し付けていいわよ。 もちろんただでね。」
「ちょっ、ただでですか!?」
「文句ある?」
「・・・・・ないです。」
首に爪を突き立てられ、少年は小さくなる。
「この坊やがいったい何したっての?」
「アタシに喧嘩売ってきた。」
「へ〜、いい度胸ね。」
目を丸くする美神に、少年は引きつって笑った。
「そ―いう訳よ。 好きに使っていいわ、なんせ文珠が使えるしね。」
「文珠がっ!? ほんとなの!?」
「は、はあ・・・・まあ・・・」
「へ―・・・・・あんた、名前は?」
「久保・・・・健介・・・・です。」
「歳は?」
「14・・・」
「若いのにたいしたもんね〜・・・・・っへ〜〜〜・・・・」
立ち上がった美神はじろじろと健介を見る。
「14って、横島より幾つ若いわけ?」
「4、5歳くらいじゃない?」
「ふ〜ん・・・・もしかしたら、横島より使えるガキかもね。」
タマモは健介の首から手を離す。
「じゃ、あとよろしく。」
「ん、サンキュ―タマモ。」
「あ、あのっ・・・」
部屋から出て行こうとするタマモに、健介は声をかける。
「何・・・?」
ぎろっと睨み返され、健介は後ず去る。
「き・・・・昨日は、すみませんでした・・・・俺・・・」
かちゃっ
「はよございま――っす。」
「ああ、おはよ。」
入って来た制服の横島に、タマモは軽く手を挙げる。
「ん、誰こいつ?」
「新しい丁稚かな?」
「なっ、何――――――――――っ!!?」
横島は健介に飛び掛った。
「ひいっ・・・!?」
「何だ貴様は誰の許可を得てここで働こうってんだ歯ぁ、食いしばれおら――――――っ!!」
「わ――!!」
「やめんかっ!!」
ばきっ 拳を振り上げる横島に、美神は脳天に神通棍を叩き付ける。
「私がこいつを使うってのに何であんたの許可がいんのよ!?」
「なっ・・・・俺をさんざん弄んでこいつにのり返る気ですかっ!?」
「誤解を招くようなこと言うなっ!」
「・・・・・・・じゃ、あとよろしく。」
タマモはドアを押し出て行く。
「あ、おい待てってタマモっ!! やいてめえっ! 夕方また来るから逃げんなよっ!!」
横島も慌ててタマモを追った。
「・・・・・聞いていいですか?」
「ん、何・・・?」
健介はドアを見つめたまま呟く。
「タマモさんって・・・・学校行ってるんですか?」
「は? あの子はただぶらぶらしてるだけ、学校妖怪に友達がいるだけよ。」
「が、学校妖怪・・・・?」
「そんなことよりっ、仕事に行くわよ!? そこの荷物もつっ!」
「でか・・・」
テーブルの上の巨大なリュックに、健介は頬を引きつらせた。
横島の高校
「せ―んせ――い・・・しくしくしく・・・・・」
「よ、横島さん、あれ・・・」
教室の入口の影から、髪を咥えて泣きながら覗いているシロを指差すピートは横島の肩を揺する。
「馬鹿、見るんじゃない。 目をあわすな。」
「でも・・・」
「先生は拙者の物でござる――・・・・・しくしくしく・・・・」
「怖いですよはっきり言ってっ! 何とかしてしてくださいよ!」
「どないせ―っちゅうんじゃ!? いいから目を合わすなっ!」
「ところでタマモさんはどうしたんじゃ?」
「あ―? 何か来る途中でどっか行っちまったよ。 俺が知るかいっ!」
「何怒っとるんじゃ横島さんは?」
「さあ・・・?」
「愛子っ、さっさと始めろっ!」
教壇の愛子はこほんっと咳払いをする。
「と、いう訳で、厳正なる論議の結果、我が除霊委員は占い喫茶をやることに決定しました。」
「占い喫茶ですか・・・?」
「・・・・と言うか、いつ厳正なる論議があったよおい?」
「わ、わっしの寝ずに考えた案は・・・・?」
「シャ―ラップ!!」
愛子はばんと黒板を叩く。
「ひら委員はうだうだ言わないっ!」
「「「は、はい・・・!」」」
男3人はきちっと背を伸ばす。
「文化祭まであと1週間を切っており、準備期間はぎりぎりぎりです。 各自、私の指示に従ってきびきび準備を行うこと! 何か質問は?」
「あの〜・・・」
ピートがおずおず手を挙げる。
「はいピート君?」
「占い喫茶って・・・・・具体的には何を・・・?」
「お客さんにメニューと一緒に占いをするのよ。 それだけ。」
「それだけって・・・・僕ら占いなんて出来ませんよ、ねえ?」
ピートは横島とタイガーに顔を向ける。
「おう。」
「出来んの。」
「その辺は、はったりです。」
「はったりって・・・」
「言い切ったぞこいつ・・・」
「何か不安じゃのう―・・・」
「だいたい、俺らだけで喫茶店ってのも無理じゃねえのか?」
横島は机に足を乗せてふんぞり返る。
「簡単なのでいいのよ。 コーヒーとかサンドイッチとか。 メインは占いだもん。」
「それにしたって誰が・・・・あ・・・」
「え?」
横島に顔を凝視され、ピートは思わず体を引く。
「ま、まさか・・・」
「客呼びも兼ねて、やるのはピート君がメインよ。」
「そ、そんなっ・・・!!」
「「ほ―、やっぱりな。」」
しらけ顔の横島とタイガーは足でピートを突付く。
「へっ、これだから美形様はよ〜。」
「せいぜい頑張ってもらおうかの〜。」
「ひいっ!」
「やめなさいっ! あなた達は調理の仕事もあるのっ! わかってんの!?」
「へ―へ―。」
「せいぜい頑張りますけん。」
「んで、お前とタマモは?」
「ウェイトレスよ、決まってるじゃない。」
「ま、そ―なるわな。」
胸を張る愛子に、横島はあくびを押さえる。
「拙者も〜・・・・・拙者も〜〜・・・・・拙者もぉ〜〜〜・・・・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
かりかりドアに爪を立てるシロに、4人は冷や汗を流す。
「愛子さん、入れてあげたらどうです・・・・?」
「私はいいけど・・・・先生達誤魔化せるかな? 美神さんとかに聞いたりとかもしないといけにでしょうし・・・」
「いろいろ面倒じゃのう。」
「タマモさんなら心配ないんですが、ね・・・・どうしましょう横島さん?」
「俺に言うな、俺に。」
日本GS教会本部、の食堂
「何だ、じゃあもう知ってるのね?」
眼鏡を外す美智恵に、美神は資料から目を離す。
「細かいことはしらないけど、Gメン回りになったの?」
「本部には、私の意見が聞きたいって呼ばれたのよ。 まだ通知はきてないわ。」
美智恵はコーヒーにミルクを零す。
「そう。」
美神は再び資料に目を落す。
「チャクラ・イーター・・・・・か。 他に言い方もなさそうね、だいたい資料が少なすぎるのよ。」
「正体不明って言われれば仕方ないでしょう? 犬井君の報告書がなかったら、もっと正体不明になってるわ。」
「ま、クロもあれで私らより経験は少ないでしょうしね・・・・・・対応し切れなかったんじゃない?」
「それはあるけど・・・・あまり油断しない方がいいわよ。 今までにどれだけの人間や能力者を襲ったかがわからない以上、どんな特技を持ってるかわからないわ。」
「そうね・・・・・それに総合霊力もどれだけあるか・・・・・そういやクロは霊力食べられなかったの?」
「大丈夫みたいよ。」
「ふ〜ん・・・・単純にGSへの恨みって訳でもなさそうね・・・」
「わからないけど、あなたも気を付けなさいよ? 特殊な能力者を好むとは言っても、それに合うだけの霊力も求めるはずよ。」
「わかってるわ、ママこそ気を付けてよ。 ところで西条さんは?」
「今別件で出かけてるのよ。 それより、その子は・・・・?」
美智恵は美神の隣で黙ってコーヒーをすすっていた健介に目をやる。
「ああ、新しい丁稚よ。」
「は、初めまして・・・・久保健介です。」
「初めまして久保君、この子の母で、Gメンに務めてる美神美智恵よ。」
「ねえママ、この子文珠が使えるらしいのよ。」
「本当に!? 凄いじゃない!」
「これ・・・・そんなに凄いものなんですか・・・・?」
健介はばしゅっと手に文珠を出した。
「ま―ね、家の横島君がそれ使えるようになるのにどれだけ苦労したか・・・」
「横島って、今朝会った男の人・・・・?」
「ええ。」
「久保君、あなたGSになるといいわ。 なんならちゃんとした先生を紹介するわよ?」
美智恵は健介の顔を覗き込む。
「俺が・・・・GSに・・・・?」
「考えてみるといいわ。」
「GS・・・・」
健介は手にある文珠を見つめた。
六道女学院
校舎の天辺に立つタマモは、ポケットに手を突っ込んだまま目を閉じていた。 髪が風に引っ張られ揺れる。
「・・・・・・・」
どくんっ どくんっ どくんっ すっと右手が胸を押さえる。
「――――っ! 来た。」
目を開いたタマモは校庭を見下ろした。 校門から入ってくる男は、紺のスーツ姿の白髪の男だった。 タマモは大きく跳び、男の10メートル前くらいにずざっと着地する。
「っ!?」
「待ってたわ。」
にっと笑いかけるタマモに、白髪の男は緑色の目を見開く。
「質が低いとは言え、ここにはメニューが多いからね。 この国で1番、グルメなレストランかしら・・・?」
「そうだな。」
後ろ指で校舎を指すタマモに、男はがぱっと口を開け、牙を覗かせ笑った。
「おまけに、滅多にない食材もいるようだ。 狐を食うのは初めてだ・・・・・・感謝するぜ・・・・?」
「メインディッシュは高いわよ?」
「あいにく料金を支払ったことはないんでね。」
白髪頭の口が耳まで裂けた。
「まあ待ちなさいって。 話があるの。」
タマモは1歩下がって両手を降参ポーズに軽く挙げる。
「何だ?」
「霊力が欲しけりゃあげるわよ。 ただアタシも生きてく上での最低限のものはいるから・・」
「ごちゃごちゃうるせえ・・・!」
男はタマモに飛び掛った。
「ったくマナーを知らない男ね・・・!」
じゃかっと爪を伸ばし、タマモは身構える。
「!? あれ・・・!」
教室の窓から外を見たおキヌは立ち上がる。
「タマモちゃん・・・・?」
「どうしたおキヌちゃん?」
「何ですのあれっ?」
弓と魔理も窓に張り付いた。 ひょいひょい身をかわすタマモに、腕を伸ばして捕まえようと白髪頭が飛び掛っている。
「ま、まさかあれがクロさんの言ってた・・」
「禍々しい霊波だ、ありゃ人間じゃねえ。 とにかく助けないと・・・・行くぞ弓っ!」
「わかってますっ、あなたが仕切るんじゃありませんっ!」
「あ、待って2人共・・・っ!!」
教室から駆け出て行く弓と魔理に、おキヌは携帯を手にして続く。 ぴっぷっぱぱっ・・・
「もしもし美神さんですかっ!? 急いで学校に来てくださいっ、タマモちゃんが、タマモちゃんが・・・・っ!!」
「!?」
校舎に振り返ったタマモはちっと舌を打つ。 校舎から武器を手にぞろぞろ出てくる生徒達が見える。
「あ―れあれ、血の気の多い嬢ちゃん達だわ・・・」
首に向かって突き出されてきた手をかわし、大きく飛び上がったタマモは白髪頭の後、校門の方に着地する。
「・・・逃げるのか?」
白髪頭はタマモに体を向ける。
「なるべくこことは関わりたくないんでね。」
「ここの生徒を守るんじゃないのかよ・・・・?」
「そ―いう趣味はないのよ。 あんた人の話も聞かないし・・・・じゃねっ。」
ごばっと炎を吹き上げ、タマモは消えた。
「・・・・・ふんっ・・・所詮は狐か・・・」
「おいお前っ!」
鬼道を先頭に走ってきた生徒達に、白髪頭はぐるっと取り囲まれた。
「・・・・・」
「ここは一応、女子高やっ。 無闇な立ち入りはお断りやで・・・!」
「ほ―お・・・・貴様面白いものを飼ってるな・・・」
「・・・・っ何?」
鬼道は思わず後ず去る。
「安心しろ・・・・・そんなペットは望んでいない。 が・・・」
にやけた白髪頭の口は再び大きく裂ける。
「「「「!?」」」」
「面倒だ。 全員まとめて食ってやる。」
「――――っ!」
おキヌは手にしていたお札をぐっと握り締めた。
「そ―簡単にはいきませんわっ!」
「おうよっ、返り討ちにしてやるぜっ!!」
突き出される武器に囲まれながら、白髪頭はゆっくりと歩き出した。
「あ―あ――・・・・最近の女子高生ってのは喧嘩っ早いわ・・・」
校舎の天辺から座って見下ろしていたタマモは、右手のCR−117をぺしぺし足に叩きつけながらため息をつく。
「わ―!」
「きゃ―っ!!」
殴りかかる生徒を千切っては投げ、白髪頭は1人の生徒の頭を掴んだ。 怯えた顔のその生徒の頭から光る球が抜き取られた。 生徒を放り投げ、白髪頭の口が巨大にぐぱっと裂けた。
「な―るほど、ああして食べるのね。」
神通棍で後から殴られ、白髪頭は光の球を落した。 それは抱き起こされた生徒の中にすっと戻る。 同時に4方からお札が投げつけられる。 が、白髪頭はそれを振り飛ばした。
「こりゃ全滅も時間の問題ね・・・・・・美神さんは・・・まあ、来るのにもうちっとかかるか。 しゃ―ない、おキヌちゃんもいることだし、あんたには廃品回収をして欲しかったけど・・・」
銃口を白髪頭に向け、きりきり撃鉄を起こす。
「ほ―らどきなさいって。 一緒に撃っちゃうわよ・・・?」
ゆらゆら動く銃口が白髪頭を捕らえたとき、白髪頭は校舎の上のタマモに顔を向けてきた。
「っ!?」
笑ってくる白髪頭に、タマモは引き金を引いた。 どこん・・・っ! 白髪頭の額に穴がいた時、白髪頭はぱんっとはじけて消えた。
「何っ・・・・・!?」
タマモは立ち上がっていた。 どすっ
「!」
口から血をこぼしたタマモは、震える右手から銃を落した。 からんっ からっ・・・・・ それは校舎の下に落ちていく。
「余裕だな。 屋上からのんびり高みの見物か・・・・?」
「ごはっ・・・」
口から血が溢れかえった。 白髪頭の右腕は背中からタマモの胸に突き刺さっていた。 左腕で金髪の頭を押さえ、白髪頭は右手を引き抜く。 ぶちぶち・・・っ!
「ぐああああっ・・・・!!!」
「さすが妖狐、心臓がとれてもまだ生きてるか。」
白髪頭は右手にあるそれをぽんぽん放り、赤い液体がびちゃびちゃと垂れる。
「・・・・・けけけ。」
「いかれたか・・・? まあいい。 この心臓からお前の力を頂く。 死ね。」
男は屋上からタマモを突き落とした。
「・・・・ふっ、ハズレ・・・」
しゅごっ 白髪頭の右手にあるそれは炎を放ち、青い石に戻る。
「なっ、精霊石・・・・!?」
頭から落下するタマモはにっと笑った。
「・・・どかん・・・」
どっこおおおんんっ・・・・・・!!!
30分後
「「あ―らら―・・・・」」
美神と美智恵は半倒壊した校舎を見上げる。
「恐ろしい敵のようね。」
「敵って言うか・・・・・恐ろしいのはタマモよ・・・・・ここまでする普通?」
美神は頭をかく。
「こ、これをタマモさんが・・・・?」
「た―ぶんね―。」
健介は頬を引きつらせる。
「お、俺・・・・とんでもない人に喧嘩仕掛けちゃったんですね・・・」
「生きててよかったわね久保君。」
「は、はい・・・」
「美神さん・・・・」
走り回る警官をかき分け、おキヌが歩み寄った。
「おキヌちゃん、当のタマモは?」
「それが、どこにも・・・」
「ったく、やり逃げかぁ・・・・・・・しょ―がない、ここは1つ、タマモは関係なかったってことで・・・」
くるっと反転して帰ろうとする美神を美智恵が捕まえる。
「まあ待ちなさい。 六道女学院がここまで壊されたとなると、Gメンとしてもほっとけないわ。」
「いや、だから私は関係ないから・・」
「敵がここまでの奴だと、報酬は5億くらいかしら・・・・」
「うっ・・・・そ、そんな手にはのらないわよ・・・?」
「優秀なエミさんに頼もうかな〜・・・?」
「ぐっ・・・・わかったわよ・・・・ただし正式な仕事としてよ?」
「もちろんよ。 娘だからって、ひいきはしないわ。」
おキヌと目が会い、健介は頭を下げる。
「は、初めまして・・・・」
「あ、どうも・・・・・あなたは・・・?」
「久保健介です。 ちょっといろいろありまして・・・」
「あの〜美神さん?」
おキヌは美神の袖を引っ張る。
「ん? ああ、この子? 新しい丁稚よ。 久保君、この子は家で預かってるおキヌちゃん。 ま、仲良くね。」
「よ、よろしくお願いします。」
「こ、こちらこそ・・・」
健介とおキヌはぺこっと頭を下げた。
「あら―、令子ちゃんにおば様〜・・・・?」
「げっ、冥子・・・? あんたここにいたの・・・?」
「お久しぶり冥子さん。」
冥子がてけてけやってきた。
「お久しぶりです〜。 ねえ令子ちゃん凄いと思わない〜? あの校舎、精霊石1個で吹き飛ばしたんだって〜、怖いわね〜。」
「私はあんたが爆発する方が怖いわ。」
「もう〜、令子ちゃんったら意地悪〜。」
令子の腕に絡み付いてくる冥子に、美神はしっしっと手を払う。
「冥子さん、生徒達の怪我はいいの?」
「ああ―、えっと、全員生きてますよ〜、多分〜。」
「そう・・・・・じゃあ、お母様にくれぐれもよろしく伝えてくださいね。」
「わかりました〜。」
「令子、私は本部に掛け合って、今回の事件を回してもらえるように頼んでみるわ。 あなたも準備を。」
「オッケー。」
美智恵が歩いていき、美神は改めて校舎を見る。
(やったのはタマモ・・・? それとも・・・・)
「あ、そうそう令子ちゃん、私こんなの拾ったんだけど〜・・・・」
冥子は美神に銀色の銃を見せる。
「これっ・・・!」
「これ、タマモちゃんの銃ですよ美神さんっ!」
「・・・・・」
美神はそれを手に取った。
「・・・・ありがと冥子。」
「いい〜え〜。」
「・・・・おキヌちゃん、久保君も一旦帰るわよ。」
「は、はい。」
「あ、私かばん取ってくるので、ちょっと待っててくださいっ。」
その夜 美神除霊事務所
「・・・・・タマモがぁ?」
「そ、クロの言ってた奴が早くも東京に来たって訳よ。」
「んで、タマモは・・・?」
「さあ。」
「はあ・・・・」
横島はソファーに腰を下ろす。
「ところで美神殿、こいつは・・・?」
シロが健介に顔を向ける。
「新しい丁稚。」
「久保健介です。 よろしくお願いします。」
健介はシロに頭を下げる。
「ふ〜ん、まあ、しっかり頑張るでござるよ。 拙者は犬塚シロでござる。」
「ご、ござる・・・?」
「何でござるか?」
「い、いえ別に・・・・」
健介は美神に顔を向けた。
「気にしなくていいわ。 ただの武士マニアよ。」
「はあ・・・」
「マニアではなく本物でござるっ!」
「は―いはい。 ともかくそ―いうわけよ。 六道女学園はしばらく休校になっちゃったし、横島君も気を付けなさいよ? それから久保君、あんたも。」
「は、はい・・・」
「美神さん、こいつほんとに雇う気ですか〜・・・?」
「そうよ、文句ある?」
「ありますよっ、荷物持ちなんてシロがいれば十分足りるでしょうがっ!!」
「拙者荷物持ちでござるか!?」
「久保くんは文珠が使えるのよ? もしかしたらあんた以上に使えるんだからっ!」
「「えっ!?」」
横島とシロはばっと健介に顔を向ける。
「えっ・・・? あのっ、す、すみません・・・!」
「いや、謝られても・・・・」
「やい貴様っ、本当でござるか!?」
「は、はい・・・」
健介はばしゅっと文珠を作った。
「ほ、ほんとだ・・・」
「そ―いうわけよ。 横島君、今日からあんたが久保君の面倒見なさい。 文珠については、あんたが先生になっていろいろ教えてあげるのよ。」
「ええ〜っ!」
「意義あり――――っ! 拙者以外に先生の弟子はいらんでござるよ―――――っ!!」
「はい、これが久保君の生活費とその他もろもろの費用ね。」
美神が横島に封筒を渡す。
「さっ、30万っ・・・!?」
「久保君、しばらくは横島君家にやっかいになりなさい。 いいわね。」
「は、はい・・・・よろしくお願いします、横島さん。」
「先生っ、そんなお金に先生は誘惑されな・・」
「さあ、俺達の家に帰るぞ健介っ!!」
「は、はい・・・!」
「じゃあ美神さん、また明日っ!」
ばたんっ
「ああっ、先生―――っ!!?」
シロは慌てて部屋から飛び出た。 かちゃっと入れ替わりにおキヌが入ってくる。
「皆さん―、ご飯できまし・・・・た・・・・あれ? 横島さん達は?」
「ごめんおキヌちゃん、話すのはご飯の後にすればよかったわね。」
「?」
ぺろっと舌を見せる美神に、おキヌは首をかしげた。
「でええいっ、帰れ帰れっ! お前なんか泊めたら美神さんに殺されんだろうがっ!」
「嫌でござる〜〜っ、先生は拙者の――っ、拙者の――――っ!」
「やかましい――っ!」
ドアにしがみつくシロを、横島はげしげし踏ん付ける。
「あおおおお―――んっ!」
「こ―なりゃ最後の手段っ!」
横島は文珠をシロに叩き付ける。
『帰』
「ぎゃわわ・・」
ぱしゅううんっ、とシロは消えた。
「ったく、手間のかかる・・・」
横島は部屋の中に入った。
「よう、悪かったな健介。 汚いとこだけど、まあかんべんな。」
「い、いえ・・・」
正座をしている健介に、横島もどっかと腰を下ろす。
「正座なんかすんなよ、楽にしろって。」
「あのっ・・・」
「ん――?」
ごろんと横になった横島はテレビをつける。
「シロさんは・・・・・横島さんの恋人なんですか?」
「はあ〜・・・? 何でんなこと聞くよ?」
「いえっ、事務所の人間関係を知っとかないといけないかな〜って・・・」
「シロは俺の霊波刀の弟子、俺はロリコンじゃないんでね。」
「はあ・・・・じゃあ、横島さんは、誰か好きな人とかいないんですか・・・?」
「美人がいいね〜、この世の美人は全て俺の恋人だな、うん。」
「・・・・じゃあ、タマモさんも・・・?」
「・・・・・」
横島は目を細めて健介を振り返る。
「何だよお前、タマモに惚れたのか?」
「えっ、違っ・・・!」
「ほ―、そっかそっか。」
「だから違いますって!!」
「照れんな照れんな。 タマモならしょうがねえって。」
「・・・・・」
「でもまあ、あれも俺のだからな。」
「・・・・・彼女なんですか?」
「いんや。」
「??? じゃあ、何で横島さんのなんですかっ!!?」
「熱くなんなよ・・・・事務所の女は全部俺のなのっ! 文句あっか!?」
「ありですよっ! そんないいかげんな・・」
「やかましいっ。 てめえ、中坊のくせに俺に逆らう気か!?」
「そんなの関係ないだろっ!?」
「んだと〜〜? 喰らえ――っ!!」
「そっちこそ――っ!!」
2人の手から文珠が出る。
『爆』
『滅』
ばきどかぐぐしゃ・・・・・ずずんっ!
次の日
「横島さ―ん、煮物作ってみたんです・・・・け、ど・・・・」
鍋を抱えてドアを開けた小鳩は立ち尽くした。
「な、何これ・・・?」
ちらかりまくった部屋の中、横島と健介は白目をむいて転がっていた。
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【次回予告】
シロ 「くっ、このままでは拙者の立場が危ういでござるっ!!」
愛子 「何、タマモちゃんどっか行っちゃったの?」
横島 「まあ・・・」
愛子 「文化祭の準備どうするのよっ、もぉ!」
ピート「とか言ってるうちにもう当日ですよ?」
愛子 「あああああああんっ、もう〜〜〜〜!!」
美智恵「令子、イーターの手掛かりは?」
美神 「それが全然・・・」
おキヌ「美神さん、横島さんとこの文化祭行きましょうよ〜。」
美神 「横島君とこの・・・・? あっ、まさか・・・!!」
愛子 「次回、『文化祭ヘブン −スキル・ロスト−』」
シロ 「先生と拙者の運勢を〜〜〜!!」
ピート「こ、ここの占いははったりですよ・・・?」