『 わが青春の学園祭 』

著者:まきしゃ


    某日 横島の通う高校の休み時間
横島 「なんで俺が、日曜に学校に出てこなきゃなんないんだよっ!」
愛子 『美神さんに横島さんの都合を聞いたら、日曜日は空いてるっていうから…』
横島 「うちの学校の学園祭って、参加するのは希望者だけでいいんだぜっ!?
  俺は、全然希望してね〜っつ〜のっ! 愛子が勝手に申し込んだだけなんだろっ?」
愛子 『うう〜 青春なのに〜〜!! 学園祭なのに〜〜!!』
   
  横島のクラスは、愛子の強い希望により、学園祭に参加することになっていた。
  催し物は、昔懐かしい駄菓子屋さん。 日曜担当の販売員には横島も選ばれていた。
  もちろん、横島が早退したあとのクラス会で決められたことなんだけど…
   
ピート 「いいじゃないですか、横島さん。 僕も初めての学園祭なので、楽しみにしているんです。」
横島 「あ〜ゆ〜、ガキ臭いお祭りは、俺は興味はね〜の。」
ピート 「やはり来られないのですか…?」
横島 「そう言ってるだろっ?」
タイガー 「う〜ん…、困ったノ〜 
  わっしも同じ日曜日担当なんで、横島サンが来るのをあてにしとったんジャが〜」
横島 「あてがハズレて悪かったなっ。」
   
ピート 「タイガーさん、なにか問題でも?」
タイガー 「実は一文字さんが、日曜日に学園祭に遊びに来たいと言ってるんジャ〜」
ピート 「ああ、クリスマスの合コンのときに来ていた、おキヌちゃんの同級生ですね?」
タイガー 「そうなんジャ〜 それで、おキヌちゃんを誘って二人で来ようと思ってるそうなんジャ〜
  もし横島サンが日曜に来てくれれば、わっしと交代で校内を案内できると思っていたんジャが〜」
   
ピート 「そうですか。 横島さんが来ないようでしたら、僕が代わりをやりますよ。
  僕はお客さんの呼び込み誘導担当なんですけど、少しぐらいなら大丈夫でしょう。」
タイガー 「すまんですノ〜 それじゃ〜、わっしが一文字さんを案内しますケン、
  その間、おキヌちゃんと一緒に、販売を担当してやってください。
  そのあとピートさんにおキヌちゃんの案内をやってもらえれば…」
ピート 「おキヌちゃんとでしたら、僕も安心して案内できますねっ。」
   
  ポンポンっ! 黙って聞いていた横島が、二人の肩をたたく…
横島 「誰が、日曜、来ないって言った…?」
   
愛子 『これって、青春よね〜〜っ!!』
   
   
  こちらは六道女学院 1年G組 ただいま体育館にて除霊実習中…
鬼道 「今日の授業は、霊波を放射する練習や。
  みなもわかっとると思うが、GS資格試験の一次試験はこれや。
  他の技が優れていても、これができへんと試験には受からんから、しっかりやらなあかんで。
  ほな、グループに分かれて、お互いの『気』の発し具合をチェックしあってや。」
   
  「はっ!」 「むんっ!」 「はぁ〜〜っ!」
  ゴゴゴ… ズゴゴゴォ〜〜 ゴオオオ〜〜   ビリビリビリッ!
  生徒たちの発する霊波によって、振動してしまう体育館の窓ガラス。
   
「は〜〜っ!!」   ゴゴゴゴ〜〜!!
神野 「う〜ん、さすがね〜 すごい霊波だわ。」
「だてに、うちの高校に首位合格したわけじゃないわね〜」
「ふふん。 まあ、こんなとこかな。 次はどっちがやる?」
神野 「私がやってみるわね。」
   
  クラス対抗戦の1年生の部で優勝を果たしたG組の三人娘。
  入試の実技試験は弓と同点首位だった触手技を得意とするのが、峰 不二代(みね ふじよ)
  心理攻撃で相手を戦闘不能におとしいれる巫女が、神野 撫子(じんの なでしこ)
  雷獣に変化する能力を持っているのが、条 明日香(じょう あすか)
   
  三人とも、今は素直に鬼道の指導通りに練習しているのだが…
   
神野 「う〜〜〜ん… う〜〜〜ん…」
「えっ? 撫子、あんたもしかして、もう始めてるわけ?」
「何やってんのよ? 霊波が、ちっとも出てないわよ?」
   
神野 「おかしいな〜… えい〜〜っ!」
  シュポポォ〜… 神野から発せられる、かすかな霊波…
「不二代…、こいつって、この程度なの…?」
「つうか…、こいつの精神力の弱さは、ハンパじゃないからね〜
  どうせまた、つまんないことにショックを受けて、精神集中できてないだけでしょ?」
   
「つまんないことって…?」
「海外旅行に行ったことのないことや、見た目のかわいい妖怪を退治できないこととかよ。
  その程度のことで、精神集中できなくなるような娘だからね〜」
「でもそれは、以前のつまんないことでしょ? 今、集中できてないわけは、別にあるの?」
「さあ…? 聞いてみたら?」
   
「ねえ、撫子。 最近、なんかあったの?」
神野 「あ〜ん、明日香〜、聞いてくれる〜? お父さんったら、ひどいのよ〜?
  次の日曜日、男子校の学園祭に行こうと思ってたのに、ダメだっていうの〜!
  その日は、1日中、境内の掃除をしろだなんて〜〜!」
   
「そ、そうなの…」
「な…? つまんないことだったろ…?」
神野 「だって… だってぇぇ〜〜〜!!」 
   
「こいつ、また甘えてるよ… なんか、バカバカしくなっちゃうわよね…?」
「うん… 聞いた私がバカだったわ…」
神野 「な、なによっ。 二人とも、私を慰めてくれないのっ?」
   
「その程度のことで、いちいち慰めてなんかいられないのっ!」
神野 「だって、中学時代の同級生と、前から行く約束をしてたのよ〜? ひどいでしょ〜?」
「そんなに慰めてもらいたいんだったら、彼氏に慰めてもらいなっ!」
神野 「うっ…!」
   
「えっ!? 不二代っ! 撫子って、彼氏がいるのっ!?」
「ん〜? いるわけないでしょ? 学園祭で、男をアサりに行こうとしてるのに…」
「そうよねっ。 あ〜、びっくりした。 なんでこんなのに彼氏がいるんだ?って思ってさ。」
「撫子ぐらいの甘えんぼの相手をしてくれるのは、彼氏ぐらいしかいないと思っただけよ。」
「うんうん、それは言えるわね。」
神野 「二人とも、ひどい〜〜〜!」
   
「でも、男子校の学園祭かぁ〜 ちょっと興味はあるわね。」
「次の日曜だっけ?」
「ねえ、不二代。 二人で行ってみようよ?」
「そうね… 行こっかっ!?」
「よし、決まったっ! なんか、すっごく楽しみになってきたわっ!」
「うん。 なんだか、やる気が湧いてくるわねっ!」
神野 「二人とも、ずるい〜〜 私が行く予定だったのよ〜〜?」
   
「あんたは親のゆ〜と〜りに、おとなしく神社の掃除をしてればいいのっ。」
「そうそう。 そうでなくても、つまんないことで霊波を出せなくなるのに、
  へたに彼氏がいたら、ちょっと冷たくされたぐらいで何も出来なくなるのは目に見えてるわ。
  あんたには、彼氏とかボーイフレンドとかは居ないほうがいいのよっ!」
「とにかく、しばらくはGSの修行に専念したほうがいいんじゃない?
  今のまんまじゃ、男にフラれでもしたら、GSとして再起不能になりかねないわよ?」
   
  がん がん がぁ〜〜んっ!
神野 (プルプルプル…) わ… 私は男の人と遊んじゃいけないわけっ…!?
  そーよっ!! 私は彼氏どころか、ボーイフレンドさえいないわよっ! 悪い!?
  なによ、なによ―っ!! 女子高生は、女子と遊べばいいのよ――っ!!
  男なんて… 男なんて――っ!!」
  わああああぁ〜〜んっ!!
峰・条 「………」
   
「なあ、明日香…、次はあんたの番よ… 霊波を出してみて…」
「ああ… ちょっと待ってね、今、集中するから…」
  神野を無視して、霊波を出す練習を再開しようとする二人…
   
神野 「うう… 二人とも、私を無視するつもりっ?
  いーわよっ、ど〜せ私は、つまんないことで霊波を出せなくなるよ〜な女よっ!
  でもね、あんたたちだって、今のままでいいってわけじゃないのよっ!?
  明日香なんか、一文字に気合負けして、決勝では役に立たなかったくせにっ!」
「なっ、なんだとぉ〜っ!?」
「おいおい、今は授業中だよ?」
  ケンカを止めようとする峰。 でも、キレちゃった神野の口は止まらない…
   
神野 「なによっ。 不二代だって、すました顔ばっかしなんか、してられないんだからっ!」
(ムッ!) あんた…、何がいいたいの…?」
神野 「不二代はたしかに凄いわよ。 ほんと、霊能力はたいしたもんだわっ!
  でもね、私たちが優勝したあと、よその組の連中になんて言われてたか知ってる?
  『これで当分の間、G組の連中にエラソーな態度をされるのか…
  まあ、B組の弓よりは、G組のゴキブリ娘のほうがマシだけどね〜』ってねっ!」
「ゴ…、ゴキブリ娘だとぉ〜〜〜っ!?」
   
  ブチブチブチッ!
  ズゴゴゴゴゴォ〜〜〜〜ッ!!!!
  三人娘から発せられた、強力な霊波…
  ビリビリビリ…  パキ…、パキンッ!  ガッシャ〜〜ン!
  体育館の窓ガラスが、霊波によって砕け散る…
   
  ピピ〜〜〜ッ! ピピピピッ!
鬼道 「はい、スト―――ップ! スト―――ップ!
  そこの三人、君らの霊波が凄いんは、よおわかったら、そこまでやっ!」
   
  鬼道に止められて、なんとか霊波を抑える三人娘
鬼道 「三人とも、まずは深呼吸するんやっ。 ス〜〜ハ〜〜 ス〜〜ハ〜〜
  うん、そうやって、気を落ち着けて…。
  GSは、常に冷静でないと勤まらん仕事や。 口げんかで熱くなっとったらあかんで〜?」
三人娘 「はい… すみません…」
  さすがに叱られてしょぼくれ気味の三人…
   
鬼道 「さてと…、君ら三人には、これからとても危険な仕事をやってもらわねばならんのや。
  集中力を乱したりしたら、怪我してしまう可能性がある。 じゅうぶん、注意してや。」
「えっ? 先生、何をするんですか?」
   
鬼道 「ボクも手伝うさかい、こっちについて来て。
  残りのみんなは、時間がくるまで自習しとってや。」
  鬼道に連れられて、危険な仕事をすることになった三人…
   
「もぉ〜〜っ! 全部、撫子のせいだからね〜っ!」
「これって、撫子の得意技だろ〜? あんた一人でやれよなぁ〜?」
神野 「だって… だってぇぇ〜〜〜!!」 
鬼道 「無駄口たたいてると、ほんまに怪我するで〜?
  とにかく、今日中に全部片付けんと帰れんからな〜!」
   
  ガチャガチャガチャン… 割れてしまった窓ガラスの破片を掃除する鬼道先生と三人娘…
  放課後の部活も終わる時間を過ぎたのに、いまだに片付かなくて…   ひゅぅ〜〜〜
   
   
  てなわけで、次の日曜日…
  男子校の学園祭に行くために、少しだけオシャレをしてきた峰と条
「ねえねえ、明日香。 どうかな、この服?」
「らしくないのを着てきたわね〜… まあ、普段のよりは、マシだけどね。」
「あんただって、かるくルージュを塗ってきてるじゃないの。 驚いたわよっ?」
「ま、まあね。」 (汗)
   
「で、どうする? 直でいっちゃう?」
「う〜ん、それでもいいけど、まずは撫子の様子を見に行ってみない?」
「あはは。 悪趣味ね〜 でも、面白そう。 泣きながら、境内の掃除をしてそうねっ!」
「ガラスの破片を掃除するよりは、気楽だろうしね。」
   
  しゃかしゃかしゃか… ふてくされながら境内の落ち葉を掃除している神野撫子…
「おお〜 やってる、やってるっ!」
「撫子〜〜っ! おっは〜〜!」
   
神野 「うっ… あんたたち…、なにしにきたのよ…」
「私たちって、友達だろ〜? 親のいいつけを、ちゃんと守ってるかどうか見に来てあげたの〜」
「撫子って、マジメでいいコだったのね〜」
   
神野 「だって、掃除しないと、お小遣いをカットされちゃうんだもの〜 ひどいでしょ〜?」
「うんうん、ひどいな〜」
「ほんと、かわいそうね〜」
   
神野 「くっ…! こんなときだけ、慰めてくれたって…!」
「慰めてあげるだけでも、ありがたいと思ってよ。」
「ま、撫子のかわりに、たっぷり学園祭で遊んできてあげるからさっ。」
   
神野 「もぉ〜 あんたたちなんかが行っても、モテるわけないんだからっ!」
「あっ! そ〜ゆ〜こと、ゆ〜のぉ〜?」
「いいのかなぁ〜? そんなこと言っちゃって〜」
   
神野 「なっ、なによっ! その、余裕たっぷりな態度はっ!」
「私たち、これから大勢の男の人に会いに行くのよ〜?
  きっと、合コンの申し込みとか、沢山あるはずよね〜?」
「そうそう。 そんときは撫子も、誘おうと思ってたんだけどな〜 どうしようかな〜?」
   
神野 「あっ、あっ、あっ! 私も誘って、さそってっ! お願い〜〜〜っ!!
  ねっ、ねっ? 私たちって、友達でしょ〜〜〜っ!?」
「あ〜あ、ゲンキンな娘だね〜…」
「でも、誰だってこんな感じじゃないのかな?」
   
「そうかもね。 撫子、心配しなくても、ちゃんと誘ってやっから。
  ま、実際どうなるかはわかんないけどね。」
「とにかく、明日ゆっくり、どんなだったか話してやるよ。」
神野 「絶対よ〜〜〜! 約束だからね〜〜〜っ!」
   
  話を切り上げて学園祭に向かうことにした二人。
  一人取り残された撫子が、ぶつぶつ言いながら掃除を再開しはじめたところに父親がやってくる。
   
神野父 「撫子〜 ちゃんと、やってるかぁ〜?」
神野 「あ〜、お父さん〜! これからも、ちゃんと掃除するから、今日はもういいでしょ〜?
  友達と遊びに行く約束をしていた学園祭って、お父さんの出身校なのに〜!」
神野父 「だからダメなんだっ! 悪いことは言わん。 今日は掃除をしていたほうがいい。」
神野 「え〜? なんで〜?」
神野父 「あの高校には、ちょっと問題が有ってな…」
   
   
  うきうき気分で男子校の学園祭にやってきた峰と条
「私、高校の学園祭に来るの、初めてだわ。 中学とは違うのかな?」
「そりゃ〜違うでしょ? 私も初めて。 ドキドキするわね。」
  まあ、この二人もおキヌちゃんと同じ高校一年生だったりするわけで…
   
  早速、学園祭用に作られた校門前のアーチをくぐり抜けようとする二人… でも…
  キィ〜〜〜ンッ!! バチバチバチッ!!
「えっ!? これってっ!?」
「まさか、結界っ!?」
  アーチに張られた結界に行く手をさえぎられてしまう…
   
「どうして、こんなところに結界が張ってあるのっ!?」
「どうしてって言われても…」
  がっちょ〜〜ん… 校門前に、呆然と立ちすくむ二人。
  ざわざわざわ… すっ、すっ、すぅ〜〜
  でも他の学生たちは、何事もないかのようにアーチをくぐり抜けて行く…
  サァ〜〜 どうやら入れないのは彼女たちだけのようだ…
   
「うう… この結界って、私たちの霊力だけに反応してるみたいね…」
「そんな感じだね…」
「ということは、このままじゃ私たちだけ中に入れないってゆ〜こと…?」
「そ〜ゆ〜ことになるわね…」
   
「霊力を抑えれば、入れるかも… 明日香…、あんた自分の霊力を調整できる…?」
「そんな器用なこと、できないよ…」
「じゃあ、結界を破って中に入る…?」
「こんなに人が見ているところで…?」
「じゃあ、あきらめるしかないわけ…?」
「ほかに、どうしろと…?」
   
  どよよ〜〜ん… 結局、校内に入るのをあきらめてしまった二人… とぼとぼ…
   
  行くあてがなくなったので、とりあえず駅前のマクドに入って緊急作戦会議…
「それにしても、ムカつくわね〜〜っ!! あの高校って霊能者はお断りってわけっ!?」
「そうじゃないだろ? 霊力の強い悪霊よけのための結界だと思うよ?」
「私らは、悪霊かっ? なんで、そんなことしてるのよっ?」
「近所に悪霊でも出て大騒ぎになったんじゃないの? 実際どうだか知らないけど。」
「もぉ〜〜 どっちにしろ入れないんなら、おんなじよぉ〜〜!!」
   
  ぶつぶつぶつ… さんざん文句を言いまくったあと…
「で、これから、どうする…?」
「暇になっちゃったわね〜…」
「このまま何もしないと、明日、撫子になに言われるかわかんないわね〜…」
「ずいぶん、からかっちゃったからな…」
   
「撫子を誤魔化せるような場所ってゆ〜とどこかなぁ〜…」
「どこか、他の高校でやってる学園祭に行ってみる…?」
「う〜ん…、それしかなさそうね… 今日、学園祭やってる学校って、どんな高校が有るの?
  しょ〜もない高校だったら、行きたくないしなぁ〜」
「ちょっと待ってね。 いま、iモードで調べてみるわ。」
   
  しばらく検索し続けて…
「あまり、パっとした高校は、やってないわね〜…」
「あっ! 不二代っ、この高校にしないっ!?」
「ん〜? それって、どんな高校なの〜?」
「どんなとこかは知らないけど、ピートさんが通っている高校よっ!」
「えっ!? ピートって、あの美形のバンパイアハーフっ!?」
「そう。 そのピートさんっ!」
   
「でも、ピートさんって高校生だったの? ほんとに、その高校にいるのかな?」
「間違いないわっ! 先月号の月刊『 霊能者 ai 』に学生服姿で写真が載ってたものっ!
  高校の名前だって、そこに書いてあったから覚えていたんだしっ!」
   
「よしっ! それにしようっ! もう、落ち込んでなんかいられないわっ!
  ピートさんと知り合いになれたなら、さっきの男子校なんか、ペペペのぺーよっ!」
「不二代…。 あんた下品だよ…? 気持ちはわかるけどさぁ〜…」
   
  ポンピロピ〜ン 峰の携帯の着メロが鳴り出す。 どうやら神野かららしい。
「ん〜? あんた掃除中じゃないの? 人が遊んでるのを邪魔しないでよ。」
神野 「だって、気になるじゃない〜 男子校の学園祭の様子がさぁ〜」
「ああ、撫子が行くつもりだった男子校かい? あそこに行くのは、やめたのさ。
  明日香と相談して、もっとイイ男のいる高校に行くことにしたのよ。」
   
神野 「えっ!? あんたたち、あの男子校に行ってないのっ!? なんだぁ〜、つまんない〜
  結界のせいで中に入れずに、入り口で泣いてると思ったのに〜」
「えっ!? あんた、結界のことを知ってたのっ!?」
神野 「なんだ。 やっぱり、男子校に行ってたのねっ!?」
「うっ… しまった…」
   
神野 「ふふんっ! 私をからかったせいでバチがあたったのよっ! いい気味だわっ!
  あんたたちが校門前で呆然としている姿が、目に浮かぶわ〜っ!」
「くっ…! そっ、それよりっ! なんであんたが結界を張ってあることを知ってるのよっ!?」
神野 「だって、あそこの結界を張ったのは、私のお父さんなんだもの。」
   
「そっ、そうなの…? なんでそれを、私たちに黙っていたのよっ!?」
神野 「私も、さっき教えてもらったばっかりなんだもの。 本当は絶対秘密だったんだけど、
  霊能の高いあんたたちが行くことを言ったら、教えてくれたのよ。
  あんたたちが中に入れなくて落ち込んでるかもしれないって、心配してね。」
   
「そうなのか… で、なんで結界を張ったんだって?」
神野 「本当に、誰にも言っちゃダメよっ!?
  実は、あの高校に数年前、理事長の娘さんが、学園祭に遊びに行ったそうなの…」
「理事長の娘って…、GSの六道冥子さん…?」
   
神野 「たぶんね… お父さんは、言葉を濁していたけど…」
「そこで、何がおこったかは、聞かなくてもわかるわ…」
   
神野 「結局、校舎は半壊して、学園祭どころじゃなくなったそうなの。
  それからしばらくは、プレハブの仮設校舎を使っていて、今年ようやく新校舎が完成したんだって。
  でも、また学園祭に霊能の強い人が現れて、校舎を壊されたらたまらないんで、そこの校長先生が
  OBの私のお父さんに頼んで、結界を張ってそういう人が入れないようにしたそうなのよ。」
「なるほど… そういうわけだったのね…」
   
神野 「ところで、これから別の高校の学園祭に行くっていってたけど、どこなの?」
「ピートさんのいる高校だよ。」
神野 「えっ!? ピートさんっ!? 私、ピートさんの大ファンなの〜! 私も行く〜っ!」
「別にかまわないけど… あんた、今日は掃除じゃないの?」
神野 「掃除は、私に結界のことを話したくなかったお父さんの口実よっ。
  その話をしちゃったから、もう私はフリーなの。 今から、私もそっちに行くからね〜っ!」
   
  てなわけで、横島の…、もとい、ピートの高校の学園祭に行くことになった三人
   
   
  その頃、商品の駄菓子をつまみぐいしながらダベっている横島たち。
  そこにいるのは横島、タイガー、ピート、愛子、一文字におキヌちゃんの計6人。
   
キヌ 「そのときの一文字さん、すごかったんですよ〜!
  雷獣になった人とにらみ合って、気合で負かしてしまったんですから。」
タイガー 「そうじゃったんですか〜 凄い人じゃノ〜!」
一文字 「こ、こら、おキヌちゃん、余分なことまで言わないでよっ!」 (汗)
  どうやら、クラス対抗戦の話で盛り上がっているらしい…
   
ピート 「それじゃあ、みなさん、僕はそろそろお客さんを誘導してきますね。」
愛子 『ピートくん、よろしくねっ。』
横島 「あんまり熱心にやらなくていいぞ〜 おまえが客引きやったら、
  女子が大量に押し寄せて来そうだからな。 忙しくなるのはイヤだからな〜」
   
   
  校舎の出入り口で客引きを始めたピート…
  ドドドドド〜〜… ピートの周りに集まりだす女子高生たち…
ピート 「あの〜、みなさん、2年5組の催しに来て欲しいんですけど〜…」
女子A 「きゃぁ〜、ピートさん〜〜!」
女子B 「あとで、行きます〜!」
   
  わさわさわさ… ピートにまとわりついて、離れそうもない女子高生たち…
  そんなところにやってきた、六女の三人娘…
   
「ピートさんを捜すのに苦労するかと思ってたけど…」
「あっさり、見つかったわね…」
「でも、近づくのは大変そうよ…?」
神野 「まかせといてっ! こういうのを扱うのは、得意なんだからっ!」
   
  ブンッ! ピートにまとわりついている女子高生たちに幻術をかける神野
女子A 「あれっ!? あっちに居る人は…?」
女子B 「あれって、近畿剛一じゃない?」
女子C 「そうよっ! 近畿くんだわっ! 近畿く〜〜〜〜んっ!」
  ドドドドド〜〜… 神野の技に操られて、ピートの周りから離れていく女子高生たち…
   
ピート 「あ…れ…?」
  急に誰もいなくなって、あっけにとられているピート
  ササササ〜ッ! すかさずピートのそばに近寄って行く三人娘
「ピートさん、はじめましてっ!」
神野 「私たち、ピートさんの大ファンなんですっ!」
「私たち、GSの卵で、ピートさんにあこがれているんですっ!」
ピート 「えっ? あ、そうなんですか? ありがとう。」
  かわいい女子高生が、また三人近寄ってくれたので、気を取りなおしたピート
   
ピート 「今、僕のクラスでは、駄菓子屋を催しているんです。
  よろしかったら、寄って行ってもらえませんか? ご案内いたしますから。」
「ええ。 よろしくおねがいしますっ!」
  ピートに連れられて2年5組の教室に向かう三人…
   
「あ、あの…、ピートさん、私たち、六道女学院の霊能科の生徒なんです。
  私たちの学校では、ピートさんの人気は、物凄いんですよっ!」
ピート 「六道女学院? おキヌちゃん、一文字さんと同じ学校の生徒さんなんですね。
  ちょうど今、彼女たちが教室に来ているんですよ。
  もしかして、君たちも彼女たちのお知り合いなんでしょうか?」
   
「えっ? おキヌちゃんと一文字さん…?」
神野 「あっ、ほら、たしか私たちとクラス対抗戦の決勝で戦った1年B組のコでしょ?」
「一文字なら、間違い無くそうだよね…」
   
ピート 「決勝で戦った…? ということは、君たちは1年の部の優勝メンバーなんですか?」
「ええ、そうですっ!」
神野 「きゃぁ〜〜っ! ピートさんに、知ってもらってたなんて光栄ですっ!」
「すっごく、うれしいですっ!」
ピート 「君たちの霊能や戦い方とかは、横島さんたちに詳しく教えてもらいましたから、
  よく知っていますよっ! いろいろと凄いらしいですねっ!」
   
「横島…さん…?」
神野 「美神さんと一緒に特別審査員をやっていた人でしょ?」
「そうそう、雑誌にピートさんと同級生だって書いてあったわっ!」
「ああ、そういえばそんなのがいたわね。 どんな風にピートさんに伝わってるのかしら。
  ピートさん、横島さんは、私たちのことを、どんな風に言ってましたか?」
  ドキドキドキッ! 自分たちのことがどう伝わってるのか期待半分、不安半分な三人娘…
   
ピート 「そうですね、横島さんの説明によると…
  一人は、爬虫類みたいなケモノに変身した女の子で、
  一人は、巫女姿で海外旅行に行ったことが無くて泣きわめいていた女の子で、
  もう一人は、ゴキブリみたいな女の子だったそうなんです。
  その…、ゴキブリって、どんな動物なんですか? 僕は、その動物のことを知らないんですよ…」
   
  ピシッ!
  あまりのことに、固まってしまった三人娘…
  お目当てのピートに、自分たちのことが、こんな風に伝わっていただなんて…
  ひゅぅ〜〜〜…
   
ピート 「えっ!? ど、どうしたんですか、みなさん?
  その…、えっと、そこの教室が僕のクラスなんです。
  中に入ってゆっくりしていってくださいね。
  僕は、また出入り口でお客さんの誘導をしてきますから。」
「はっ、はい…」
   
  ピートが立ち去ったあと、泣きそうな顔をして教室内に入っていく三人娘…
  そこには、おキヌちゃんと一緒に駄菓子を売っている横島が…
   
横島 「いらっしゃいませ〜 えっ!? 君たち、たしか六道女学院の…
  ボ、ボク、横島っ! わざわざ、ボクに会いに来てくれたんだねっ!?」
   
  プルプルプル…
「横島… この… 男が…」
神野 「ピートさんに… 私たちのことを…」
「あんな風に… 伝えていた…の…ね……?」
横島 「えっ!? な、なにっ!? ど、どうかしたのっ!?」 (汗)
   
  ブチブチブチッ!
  ズゴゴゴゴゴォ〜〜〜〜ッ!!!!
  ビリビリビリ…  パキ…、パキンッ!  ガッシャ〜〜ン!
   
   
  某日某所…  高校の校長先生たちによる親睦会…
校長 「ほお… あなたの高校では、そのような処置をとられていたのですか…
  それは、なかなかの名案ですな…
  でも、私の高校には、愛子くんやピートくんのように霊能の高い優秀な生徒もいますから、
  結界を張るわけにはいきそうもありません…
  やはり、あの男が卒業するのを待つしかなさそうですな…
  それまで… 私の学校が… 破壊されなければ…です…が… あうっ… あううっ…!」
  ぶし〜〜〜っ!!  血の涙…
   
  どうやらこれで、横島が落第を心配する必要はなくなったよ〜だ…
  もちろん、卒業前に学校が無くなってしまう可能性もあるんだけど
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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