my graduation
著者:KAN
「ふうっ・・・。明日でいよいよ高校ともお別れかあ・・・。」
(なんだか卒業するのに8年くらいかかったような・・・?)
いつになくセンチな気分にひたっている青年の名前は横島忠夫。歳は今年で(やっと?)18になった。
(俺・・これからどうするんだろう。やっぱり今の仕事をつづけるのかなあ・・・。)
彼は今時めづらしい苦学生などというものをやっている。一応、親からの仕送りはあるのだがかなりきりつめられている。
当然バイトをしているのだが、そのバイト先の雇い主というのが世界一というくらいのがめつさ、守銭奴というほどのものではないのだが、
お金に物凄い執着しているので、彼のバイト料というものは超薄給なのである。その薄給ぶりといったらやはり世界一というくらいで、 そのためにやっとのことで生活しているのである。
(やっぱり時給あげてもらわんとなあ・・・。このままでは飢え死にしてしまう。)
当たり前のことを当たり前のように考えていると電話の呼び鈴がなった。
ジリリリリリン・・ガチャッ
「はい、横島っすけど。」
「忠夫かい?」
「なんだ、おふくろかあ」
電話の主は彼の母親、百合子である。彼女は今、夫である大樹、つまり横島の父親の赴任先であるナルニアに居る。帰国は来年の予定。
「あんた、母さんに向かってなんだとはなにさ!」
「そんなことより何の用だよ。」
「あんた明日は卒業式でしょ?母さんは行かなくても良いのかい?」
「い、いいよ、恥ずかしいから」
「恥ずかしい・・?母さんがかい・・・・?」
「ちちち、違うって!断じてそのようなことは。」
「ならいいけどね。それからあんた、卒業したあとはどうするつもりなんだい?やっぱりGS(ゴーストスイーパー)になるのかい?」
「ああ、そのつもりだけど・・?」
「あんたがそんな仕事にねえ・・。我が息子ながら信じられないよ!」
「大きなお世話だ!」
「あとそれから、・・・。」
「なんだよ、まだあるのかよ?」
「あんたもこれからは立派な社会人になるんだから、しっかり”自立”して”自分”で生活するんだよ。」
「えっ・・?ということは・・。」
「そう、仕送りはもう無し!」
「なにーーーっ!ち、ちょっと待ってくれよ母さん!これ以上収入が減ると死んでしまうやないか!」
「何言ってんだい!GSってのは儲かる仕事なんだろ?だったら問題ないじゃないかい。」
「そ、それはそうだけど俺の場合はまだ見習というか、助手というか・・・」
「まっ、頑張りなさいよ!それじゃっ!」
「こらーーっ!オバハン!まだ話は・・・・。」
ツーツーツー。
「チッ、きりやがったか・・。」
(しっかし困ったことになったぞ・・。唯一のまとまった収入が途絶えてしまった。こうなったら時給をあげてもらうしかてはない。しかし、あの女がそんなことしてくれるだろうか・・・?・・・・無理だ・・・あの女に限って時給を上げるなんてこと天変地異が起こってもしてくれないだろう。
だがそんなこと言ってる場合やない!こっちは命がかかっとるんじゃ!何としてでもあげさせなくては!それに、本気で頼んだらあの人だって・・。
俺だって役に立ってきてるんだから大丈夫だよな・・・?)
などと都合のいいように考えていた。
「もう、寝よっ。」
そして次の日・・・卒業式を終え校内は当然のように騒々しくなっていた。みんなで写真を撮ったり、寄せ書きをしたり、ムカツク先公を殺したり・・
まあこれはないことを願うが、こういうことは卒業式のきまりごとのようになっている。
横島の教室では・・・
”ピートくーん” ”ピート先パーーイ!”
「ちくしょう!ちくしょう!なんでピートばっかり・・。なんだかとってもちくしょう!」
ガンガンガンガン!横島はピートのワラ人形を突いている。
ピート・・本名ピエトロ・ド・ブラドーは超美形のバンパイアハーフである。なんとあの有名なドラキュラ伯爵の遠縁にあたるらしい。横島とは何度も悪魔と戦った仲でもある。普段はそうでもないのだが、こと女のことになるといつもこうである。
つまり横島はモテないのである。この表現は必ずしも的を得てはいないが一般的にはそうなる。
「ハアハアッ・・。苦しい!」
”キャー、ピートくん大丈夫?”
「あっ、くっそー!」
「横島さん・・。そんなんじゃ甘いですけえのー」
突然現れた2メートルはあるかというほどの男は、横島から杭をぶん取り力まかせにワラ人形を突いた。
「グハーっ!」・・・バタリ・・・
”ピートくーーーん!”
「フハハハハーーー!ざまあみさらせ!おいタイガーっ!おれにもやらせろっ!」
”ちょっとあんたたちー!”
横島&タイガー「ひいーーーーーーーー!」
”今度やったら唯じゃおかないからね!”
横島&タイガー「ハイ」・・・・・パタム・・・・横島たちは女性徒たちにボコにされた。
「横島さん。大丈夫ですか?」
「うるせー、俺に話しかけんな!ハっ!美形サマはよーございますなー。モテモテで」
「何言ってるんですか。それを言うなら僕より横島さんの方が・・・・。」
「ああーっ!俺がどうしたって?」
「いえ・・。そんな事より横島さん、これからどうなさるつもりなんですか?もし決めていらっしゃらいなら僕とGメン(ICPO超常犯罪課)の試験、一緒に受けません?」
「Gメン?遠慮しとくよ、俺の頭じゃ絶対無理だしな。それにあいつとだけは一緒に仕事したくないしな!」
「ハハ・・。そうですか。」
「そおそお、あっ!俺こんなことしてる場合じゃなかった。んじゃなピート!おまえなら絶対入れるさ」
そう言うと横島はいそいで校門を出ていった。
(さあ、早く帰って事務所に行かないとな。)横島は昨夜考えていたことを頭に巡らせながら足早にアパートに向かった。
・・・と、突然見知った顔が現れた。
「よお!久しぶりだな。」
男は黒のスーツにネクタイをしており、頭にはハットを被っている。普通の人なら少しひいてしまうような格好だが、横島にとっては慣れた ものだった。
「なあーんだ。雪ノ丞か。」
「なんだとはごあいさつだな。せっかくダチが会いに来てやったっていうのに・・。」
「会いに・・・?フっ、よく言うぜ!本当は俺に飯をたかりにきたんだろう。」
「さすがライバル!よくわかってるじゃねえか。」
雪ノ丞とはGS資格取得試験以来の知り合いである。雪ノ丞はその時から彼をライバル視していたのだが、(当時はもちろん勘違い)
今にして思えば、彼だけが横島の才能を見抜いていたのだ。
「だが、今日はそれだけじゃないぜ!実は話があって来たんだ。」
「・・・金ならねえぞ。」
横島は嫌そうに言った。
「そうじゃねえって!・・まあここじゃなんだ。早いとこおまえん家に行こうぜ。実は腹が減ってしにそうなんだ。もう3日何も食ってねえよー。」
「・・やれやれ・・・・。」
バクバクっ・・ズズズズー。ゴキュゴキュ、ごっくん。
「おい!雪ノ丞、お前俺に話があってきたんじゃなかったのか?」
「ハアハへ・・、ズルズルズル。ハハハヘッヘハヒフハハヘヒフッヘフーヒャハイカ?(まあ待て、腹が減っては戦はできぬっていうじゃねえか?)」
「何言ってんだかわかんねえよ。俺は忙しいんだ。」
ズゾゾゾゾゾー、ごっくん。
「ふう・・、食った食った。さて、話って言うのはな、仕事の事だ。おめえこれからのこと考えてるのか?」
「いや、まあ今まで通りでいこうかと・・・。」
「だったらよ、俺と組まねえか?」「・・・?・・・」
「だからよ、俺と一緒に仕事しねえかっていってるんだよ。」
「いや、俺は今の事務所で・・・」
「でもよ、いいのかこんな暮らしで・・・。GSってのは儲かる仕事なんだぜ!」
「お前が言っても説得力ないぞ。」
「なに言ってやがる、おれに金がないのはなあ、“モグリ”だからだよ!おめえは免許持ってるんだろう?だったら大丈夫だって、俺だって資格もういっぺんとりにいくしよ。俺達二人で組んで出たら間違いなく儲かるぜ。お前んとこの旦那より名前だって売れるさ!」
「ううーん。でもあの人を敵に回すのはちょっと・・・。」
「それによっ、お前のことも認めてくれるようになるんじゃないか?」
「・・・・えっ・・?」
横島の心は揺らいだ。彼にとってその女は果てしなく無理目の女で、彼女が彼のものになるなどということは、アリが恐竜に勝つくらい ありえないことなのである。そんな女が彼を認めてくれるなどという話に、彼は心弾ませた。
(あの人が俺を認める・・・?そんなこと考えもしなかった。ということは、当然しかるべき関係になって、こーんなことや、あーんなことも・・。)
「グフッ、グフフフフ・・。」
妄想の世界に行ってしまっている横島に、雪ノ丞は声をかけて正気に戻した。
「はっ、俺は一体何を・・・。」
「どうやら決まった様だな!」
「ち、ちょっと待ってくれ!少し考えさせてくれないか?」
「ああ、だがあんまり待てねえぞ」
「・・・・わかった・・。」
ガタンゴトン・・ガタンゴトン・・
横島は電車に揺られながら考えていた。
(そうだよな、雪ノ丞の言う通りこのまま続けてもあの女が俺のもんに成る筈ないもんなあ。でも、ほんとの所はあそこで働いていたいんだよなあ・・。うーーん・・。そうだ!こうしよう・・、もし俺の給料をあげてくれるなら断ろう。そして、上げてくれなかったら雪ノ丞についていこう。それにあの人だってやさしいところもあるんだ。きっとあげてくれる・・・・たらいいなあ・・。)
不安を残しつつ、目的地は近づいていった。
ここは東京のとある一等地にある事務所。所有者の名は美神令子。GS業界では超有名で、その実力は世界でもトップクラスである。さらに、外見も、非の打ち所のないまさに世の男の憧れの女性なのである。・・・ただし性格をのぞいてだが。
そんな女の容姿に騙されてこき使われているのが、横島忠夫なのである。
「今日、確か横島さんの卒業式でしたよね?。」
美神と話している女の子の名前は、氷室キヌ、通称おキヌちゃん。彼女は複雑な事情の持ち主で、なんと2年前まで300年もある事情から幽霊をしていたのである。こちらは、美神とは違い美人というよりかわいいといった感じで、性格もいいのである。なんと、横島に好意を持っている女性の中の一人なのである。
「そうだったっけ?」
「そうですよ!美神さん。そういえば横島さん高校でたらどうするつもりなんでしょうね?やっぱりここに毎日くることになるのかなあ?」
「さあね!・・でもそうなったら毎日あの馬鹿の顔を見なきゃならなくなるわね。」
「またまたあ、本当は嬉しいくせに・・。」
「そっ、そそっ、そんなわけないじゃない!いやあねーおキヌちゃん。」
「そうですか・・。私は嬉しいけどなあ。」
「いい?おキヌちゃん。あんたが誰を好きになろうと構わないけど、横島君だけは考え直しなさい。」
「どうしてですか?」
「だって、あいつ馬鹿だし、将来性ゼロじゃん?」
「そ、そこまで言わなくても・・・。」
その時、部屋のドアが開いた。
「誰が、馬鹿で将来性ゼロですって・・(怒)」
「よ、横島さん!?」
「あら、いたの?」
「いましたよっ!」
横島の顔は強張っている。
「ホーーッホッホッホ!何怒ってるのよ、私は真実を述べただけじゃない?」
「(こ、この女ーっ!。(怒))」
おキヌは、二人を仲裁するように話し始めた。
「まあまあ、・・・。それより横島さん、確か今日はお休みじゃありませんでした?」
「そうそう、美神さん!実は美神さんにお話があって来たんです。」
「なーに?まっ、あんたのことだからどーせ『卒業祝いに一発ーーー!』とかでしょ?!」
「違いますよ!今日は真面目な話です。」
「そ、そう」
「あっ、それじゃあ私、お茶いれてきますね。」
おキヌはキッチンに行くために部屋を出た。
「で?話って?」
「実はですね、俺、仕送りがもうなくなっちゃうんですよ。」
「それがこの私となんの関係があるっていうの?」
「だからですね、このままだと俺は生活できないんですよ。」
「ふむふむ、それで?・・・(ジロリ)」
「そ、それでですね、すーはーすーはーっ(言え!言うんだ横島忠夫!ここで怯んだら負けだ!頑張れ俺!)
お、俺の給料を上げてください!最低でも時給千円!!この条件を飲んでくれなきゃ俺、ここを辞めます!!!」
「じゃ、辞めれば?・・・(ニッコリ)」
「(ガーーン)・・・・・。ちょ、ちょっと待ってくださいよ!なんでなんすか、なんでなんすか?俺、役にたってるっしょ?!
ちょっとぐらい上げてくれたって・・・・」
「あのねえ、家には飼い犬が二匹もいんのよ!?だから、これ以上あんたに出すお金はないってわけ、おわかり?」
「・・・・(ぼそっ)、美神さんにとって俺の存在はその程度だったんすね?」
「ん?なんか言った?」
「い、いえなんでも・・・。」
「あれ?!もう帰るの?せっかくおキヌちゃんがお茶入れてくれてるってのに・・。」
「待たせてる奴がいるもんで。」
「そ、そう・・」
「それじゃあ失礼します・・・・(グスッ)」
ガチャ
「お茶入りましたよ!あれ?横島さん、もう帰っちゃうんですか?」
「・・・・・・・・・。」
「横島・・・・・さん?」
バタンッ
「み、美神さん!?一体何したんですか?」
「なにって・・・、別に何もしてないわよ。」
「で、でも、横島さん、なんだか泣いていたような・・・・?」
「あいつが?!そんなはずあるわけないじゃない。」
「本当ですって!・・・・美神さん、横島さんと何を話してたんですか?」
「えっとね、あいつが給料上げてくれなきゃ辞めるって・・・」
「それで、美神さんは何て答えたんですか?」
「もちろん、断ったわ。」
「・・・えっ!?ど、どど、どうして断っちゃったんですか?横島さん、辞めちゃったんですか?!」
「なにいってんの、あいつが辞めるわけないじゃない。いつものことでしょ?」
「でっ、でも、もしホントに辞めちゃったら・・・・・・。」
「大丈ー夫だって、考えすぎよ、おキヌちゃん。」
「・・・・だといいですけど。」
とぼとぼとぼ・・
横島の足取りは重かった。自宅までの距離は電車で二駅といったところだが、今の彼にははるか遠いように感じられた。
(ちくしょー!ちくしょーーう!!さんざん尽くしてきたのに、この仕打ち・・・・・。見返しちゃる!絶対、見返しちゃるーー!!)
「ただいまー!おい、雪ノ丞、おれ、お前と組むことにしたからな・・・・・・?」
「うーーん、なーーにママ。・・・むにゃむにゃ、スースー。」
「こ、こいつ・・おい!起きろ!てめえは何ひとんちでくつろぎくっさっとんねん!」
横島は雪ノ丞の頭をポカリと叩いた。
「う、うーーん、お、横島じゃねえか!なんだ?いつ帰ったんだ?」
雪ノ丞は、寝ぼけた顔で答えた。
「ついさっきだよ!」
「さすがだな!この俺に気配を感じさせないとは・・・!。さすが俺の見込んだ男だ!!」
「・・・・(さっきまで寝てたくせに)・・・」
「それより、考えてくれたのか?」
「・・ああ、お前とやることにするよ!」
「・・・そうか!おめえならそう言ってくれると思ってたぜ。んじゃ、膳は急げだ!早速、荷支度しろよ。」
「え?ここから通えないのか?」
「あったりめえだろ!?こんなボロアパートにはもうおさらばさ!さっさとしろよ、出発は明日だからな。」
「明日かぁ・・。えらく急だな・・。(あっ、そういえば明日はバイトの日だ・・・いや!俺はもう辞めたんだ!関係ない!見てろよ、ぜってー見返しちゃる!)」
チュンチュンチュン・・・・・
「ふわーあ、なんだもう朝か。・・・おい!起きろ横島!!」
「うーーん、うーーん、あ?やめて美神さん!!それだけは!・・・」
「おい!!起きろって!」
「うーーん、・・・・・・・は!?なんだ、夢か・・・・」
「おい、急いで支度しろよ、もう出るからな。」
「なんだよ・・・、そんなにいそがなくたって・・・。」
「なにいってんだよ?飛行機に乗り遅れちまうだろう!」
「・・は?」
「ほら、急げって!」
「・・・あ、ああ・・・。」
横島は、僅かに戸惑いを感じたが、雪ノ丞の勢いにはなんだか逆らえなかった。
「よっしゃ!!いくぜ!」
「(一体何処にいくんだ?)」
「へい!タクシー!」
“どちらまで?”
「成田空港までいってくれ。」
“わかりました”
「ほらよ!これがおめえのチケットと、あとパスポ−トだ・」
「(成田?パスポート?・・・どうなってるんだ?)・・・おい!雪ノ丞!一体何処いこうってんだ?」
「あ?何言ってんだ!昨日ちゃんと言っといただろう?!」
「・・え?!」
ところ変わってこちらは、美神除霊事務所。
「・・横島さん、遅いですね・・・。」
「そんなのいつものことじゃない?」
「・・でも・・。」
「それより、横島め!社会人一日目にして、いきなり遅刻とは!・・・・これは、厳しくお灸を据える必要があるわね・・。」
「・・・ははは。」
おキヌは苦笑した。
「そんなことより、あの馬鹿はほっといて仕事に行くわよ、おキヌちゃん!」
「は、はい!?」
一方、成田に着いた横島たちはというと・・・・
「うわあああ!!いやだーーーー!!!」
ズルズルズル・・・・、横島は襟をつかまれ引きずられていた。
「香港に行くなんてきいてねえぞーーー!!」
「何いまさら言ってやがる!!・・まあ、行き先言ってなかった俺もワリイがよ。でもよ、おめえだって、納得して俺と行くことにしたんだろう?」
「そ、それはそうだけど・・・だけど、日本から離れるなんておれはいやじゃーー!」
「何言ってんだよ!お前はあの美神令子に認めてもらいたいんじゃねえのかよ!」
「べ、別に日本でも良いじゃねえかよ!」
「日本なんかに居たら、すぐに見つかっちまうじゃねえか!!」
「(たとえ地の果てでも見つかると思うが・・・・)」
美神の性格をよく知っての考えである。
「別に、俺はいいんだぜ!?来なくても・・・。その代わりちゃーーンとおいていけよ、チケット代・・。」
「くっそーー!!俺がそんな金持ってるわけないじゃねえか・・・!?」
「(にやり)」
雪ノ丞は不適な笑みを浮かべた。
「は!?しまったーー!こ、こいつ・・(図りやがったな・・)」
「ん?どうした、払えねえのか?・・だったらくるしかねえな!」
「(こんなん詐欺じゃーー!!助けてーー!美神さーーん!!おキヌちゃーーーん!)」
「・・・はっ!み、美神さん!!今、横島さんの声しませんでした?」
「んなわきゃないでしょ?!それより、早くこいつら片付けるわよ!」
「は、はい!」
「・・この世に未練があるのは勝手だけど、ちょっと悪さが過ぎたようね!この、ゴーストスイーパー美神令子が、極楽に・・逝かせてあげるわ!『吸引』!!」
美神の手の御札に悪霊が吸いこまれる。
“ぐわああああ!!”
「ふう、一丁あがり!!」
「今回はてこずりましたね、・・・横島さんがいないから・・」
「何いってんの?あのバカが居ようと居まいと大して変わらないわ・・・。まあ、強いて言うなら、荷物もちがいないことね!」
「・・・・・・・・。」
「ほ、ほらおキヌちゃん!帰るわよ、・・・あいつ、きてるかもしれないしね。」
「・・・はい。」
そのころ、そのバカはというと・・・・・
「スッチャーデスさーーん!!こっちきてーー!」
“きゃあーーー”
スチュワーデスをナンパしていた。
「・・フッ、どうやら気に入ってもらえたようだな。」
「ただいまー!」
「おかえりでござるー!」
出てきたのはシロ、人狼の子供である。歳は人間にして中学生くらいだろうか。実はこの少女、横島の弟子なのである。
どうしてそうなったかは、コミックス18,9を参考。
「あ!シロ!!あんたどこにいってたのよ!?仕事手伝わせようと思ってたのに・・。」
「それはゴメンでござる!実は拙者、ちょっと散歩に出てたんでござるよ。」
「・・横島君と一緒に?」
「違うでござる、今日は横島先生がいなかったから、タマモと一緒だったでござる。」
「・・あら?あんた達、いつからそんなに仲良くなったの?」
「ち、違うでござる!あいつが『油揚げが食べたい』、とかいって泣いて頼むから仕方なく・・・。」
「誰が泣いて頼んだって・・?・・。」
現れた少女は、不愉快そうな顔をしている。束ねた九つの髪が怒りで逆立っていた。
「タ、タマモ、起きてたでござるか!?」
「あんたがうるさいからから、目が覚めちゃったのよ!・・・それより、泣いて頼んだのはあんたの方でしょ!?
『油揚げ食べさせてやるから、いっしょにいってほしいでござる!』とかいってさ!。」
「そ、そうでござったかな・・。でも、ちゃーんと食べさせてやったでござろう?」
「・・・確かにね!でも、そのためになにも大阪まで行くことないじゃない?!おかげでこっちはくたくたよ!!」
「なるほど、あそこがおおさかでござったか。」
「なーにが、『なるほど』、よ・・・・。まあでも、きつねうどんが食べれたから良いけどね!ちょっと味が薄かったけど・・・」
「なーに!?あんた達、大阪までいってたの!?」
「そうでござる!あ、それからこれ、お土産のたこ焼きでござる!」
シロは満面の笑みで言った。
「・・・・・呆れてものもいえないわ。」
「えへへー、誉められたでござる!」
「・・誉めたんじゃないと思うけど・・・。」
妖狐の少女はやれやれといった顔をしている。美神も呆れていたが思い出したように話し始めた。
「そんなことより、横島君来なかった?」
人狼の少女は、不思議そうに答えた。
「さっきも言ったでござるが、拙者横島先生には、会っておらんでござる。帰ってきた時も、ここには居なかったでござるよ。」
「タマモ、あんたは見なかった?」
「あたしも、知らないけど・・?」
「先生がどうかしたんでござるか?」
シロはなんだかわからない、といった顔で質問した。今まで黙って聞いていたおキヌが答えた。その表情は暗い。
「・・・・横島さんが、ここを辞めちゃったかもしれないの。」
「へ?!・・ま、まさか先生が辞めるなんて、そんな事あるわけないでござる!」
シロは驚いた顔で答えた。
「や、やあねえ。そんなことないっていってるでしょ!?おキヌちゃん。」
「で、でも、無断で休むなんて・・・・、も、もしかしたらなんかあったのかも・・・。」
おキヌは心配そうに言った。そんな様子をつまらなさそうに見ていたタマモが口を開いて言った。
「・・・横島のアパートに行ってみれば良いじゃない。」
タマモの提案に、真っ先に答えたのはシロだった。
「・・拙者が行ってくるでござる!」
「ま、待って!私も行くわ。シロちゃん!」
続いておキヌが答えた。
「ま、待ちなさい!わかったわよ、私も行くわ!車があったほうがいいでしょ?」
「は、はい!ありがとうございます!美神さん。」
「まったく、心配ないって言ってるのに・・・。世話が焼けるわね!」
「すいません・・・。でも、美神さんも横島さんのことが気になるんでしょ?」
おキヌは少し笑いながら尋ねた。
「な、なななななな何言ってるのよ、どうしてこの私が横島のことなんか気にしなくちゃならないのよ!」
美神は、顔を真っ赤にして答えた。
「ふふふ、素直じゃないんだから。」
「わ、私はただおキヌちゃんが夜道で襲われ