極楽戦隊 ゴーストレンジャー
「 第一話 戦え、ゴーストレンジャー! 」
Act.3
「グオオオオオオン、グオオオン」
街に向かったスペクターは咆哮を繰り返す。
それに追い立てられた人々が必死に逃げ惑う。
レンジャーマシンに乗ったゴーストレンジャーは、追撃を開始した。
レッドは急いでC−WWW、レンジャー基地の唐巣隊長に連絡する。
「隊長、魔界獣が出現していますっ!」
『ああ、こちらでも確認した、現在、付近の住民の避難を進めているっ!』
「了解、魔界獣の迎撃を開始します!」
『無理はするなよ!』
「・・・了解、魔界獣は必ず倒します!」
だが、レンジャー基地の唐巣は、レッドの言葉に覚悟のほどを感じた。
しかし、現状ではどうにもならない。
レンジャー達の実力に頼る他、希望はないのか・・・唐巣は唇を噛んだ。
その時、どこからか温かく優しい声が聞こえてきた。
『案ずる事はありません、今、戦士たちは揃いました』
「だ、誰ですか!?」
あわてて唐巣は辺りを見回す。
『神の名の元に人を守護する者』
その声と共に現われた白い霧が、次第に形を露わにしてきた。
「ああっ、貴方はっ!?」
「グオオオオオオン、グオオオン」
市街地に踏み込んだスペクターは、ゆっくりと歩み続ける。
「スペクトル・ハリケーン!!」
コブラファイターに装備されたレーザーが、連続してスペクターに命中する。
が、依然ダメージには至らない。
「インパルス・ソニック!!」
アストロファイターからも攻撃するが、歯が立たない。
「どーすりゃいいワケっ!!」
思い余ったグリーンが、拳を叩き付けた。
一方、崩れ落ちた工場の中、ガレキの山に隠れてマリアが横たわっていた。
静かに、ただ静かに。
そんなマリアの傍に、誰かがすっと現われた。
そして、その慈愛に満ちた細い指で、汚れていたマリアの頬を拭った。
「さあ、勇敢なる戦士よ、今ここに新しい使命に目覚めよ」
ヴーン!
マリアの身体の中の起動プログラムが、静かに稼働しはじめた。
「ギャオオンッ! シャアアッ!」
「きゃああっ!」
スペクターが吐き出した酸の息を避けたコブラファイターが、バランスを崩した。
スピンしたコブラファイターは、道路脇の植え込みに突っ込んで止まる。
「んなろ〜〜!!」
頭に血の昇ったレッドが悪態をつく。
「レッド、もう武器のエネルギーがないよ〜!」
ブルーの泣きそうな声がする。
「ちくしょうっ!」
と、突然レシーバーから唐巣隊長の声が響いた。
『みんなっ! オペレーション・アルファが実行可能になった! すぐに準備を!』
「・・・オペレーション・アルファ・・・!?」
メンバー全員がきょとんとした。
「・・・あれって、5人揃わないと出来ないんじゃあ・・・?」
レッドのつぶやきに、唐巣は応える。
『ああ、そうだ、その5人目が揃ったんだ!』
「ええっ!?」
「驚くのは後だっ、今は時間がない、早く!!」
「ラ、ラジャー!・・・みんな、聞いた!?」
「もちろんっ!」
「当然なワケ!」
「は〜い、ばっちり〜!」
レッドは、興奮を隠さずに思いっきり叫んだ。
「ゴーストレンジャー、オペレーション・アルファ、ゲットオン!!」
グォン!ブォォォォォンッ!
コブラレンジャーと、アストロレンジャーのエンジンが吠える。
5人目のゴーストレンジャーが一体どんな人物なのか、メンバーは期待していた。
二台並んで走りながら、互いのエネルギー密度を高めるレンジャーマシン。
そこに、一台のバイクが後ろから割って入ってきた。
「これだっ!」
レッドはそのバイクにまたがる娘を見た。
フルフェイスのヘルメット越しの表情は見えない。
しかし、その波動が自分たちと同じ「スピリット」である事に安心した。
「グリーン、いくわよ!」
「おっけーっ!」
『キングファイターGS、チェィンジ・コラボレーション!!』
レッドの声に、三台のマシンが光の珠に包まれた。
それは空中に浮かび上がると、次第に輝きを増し、高貴な光を放った。
そして、光が収束すると、巨大ロボットが出現していた。
『キングファイターGS、見参!!』
スペクターと対峙するキングファイターGSのコクピットには、ゴーストレンジャー
たちが勢ぞろいしていた。
レッド、ブルー、グリーン、ピンク・・・・そして、最後の一人。
「マ、マリア!?」
「イエス、ミス・レイコ・・・ノン! レッドレンジャー!」
「ど、どういうワケェ!?」
グリーンが目を見張って驚く。
コクピットのメインモニターの脇に唐巣の映像が開いた。
『みんな驚いただろうが彼女、マリアが新しい仲間、パープルレンジャーだ』
「パープルレンジャー!? どうしてマリアさんが・・・!?」
ブルーもさすがに驚きを隠せない。
『全てはリサーチの結果だ、間違いなく彼女は「資質」を持っている』
「あ〜、魔界獣がこっちに来る〜〜」
ピンクの声に、一同は我に返る。
そうだ、今はスペクターの退治が先なのだ。
『レッド、エネルギーは充分だ、あれを使え!』
「了解、みんなっいくわよっ!」
「ラジャー!!」
突然、目の前に現われたロボットに興奮したスペクターが襲いかかってきた。
「ギャオオンッ! シャアアッ!」
「ジャスティス・サンダー!!」
キングファイターGSの腕から、強烈な電撃波が発せられた。
たまらずスペクターはたじろいだ。
だが、まだ酸の息を辺りに撒き散らして暴れている。
「よし、今だ、ペンタグラム・フォーメーション!!」
ゴーストレンジャー達がコクピット内でポーズをとる。
「炎よ!」
「水よ!」
「大地よ!」
「風よ!」
「宇宙よ!」
『聖なる神々の力よ、今ここに現われたまえ!』
この言葉にキングファイターGSの胸部が輝きに満ち、五芒星が出現した。
『ペンタグラム・フォーメーション、浄霊エネルギー放射!!』
胸の五芒星から、溢れんばかりに光線がほとばしる。
スペクターに叩き付けられた光は、その勢いでスペクターを呪縛した。
「やったっ! 今よ、レッド!!」
「分かってるわよ、グリーン!」
そして、キングファイターGSは脚部から巨大な剣を取り出して構えた。
聖なる光剣の華麗なる輝き。
「光は光にっ! 闇は闇に還れっ! 必殺・神通剣!」
光の呪縛にもがくスペクターに向かって神通剣は振り降ろされた。
「魂核」を貫かれたスペクターは一瞬にして消滅した。
「やった〜〜〜っ!! 勝利!!」
喜びに沸くゴーストレンジャー達、手に手を取ってはしゃぎあう。
『良くやった、みんな』
唐巣もほっとした表情で健闘を称える。
「ゴーストレンジャー、ただいまより帰還しますっ!」
肩の力を抜いたレッドは、笑って唐巣に告げた。
「とにかく、彼女は正式にパープルレンジャーとして承認を受けた」
唐巣は、レンジャー特別基地の作戦室でメンバーを前に、マリアの肩を叩いた。
「イエス、マリア、ゴーストレンジャーになりました」
「・・・・まぁ、ね、最初はびっくりしちゃたけど」
令子は複雑な表情で笑う。
「でも、マリアさんなら大丈夫ですよ、私そう思ってますから!」
おキヌの優しい言葉に、マリアはその深く青い瞳を向け、軽くうなずいた。
「でもぉ、カオスの〜命令は〜、残ってないかしら〜〜!?」
冥子もやはり、それが気になっていたのだ。
「ああ、それに関しては『本部の担当者』が責任を持って検査した結果、全ての記憶装
置においてオールグリーンの太鼓判を押している、大丈夫だ」
「ああ〜、そうなの〜〜、それじゃぁ、改めてよろしくね〜〜マリアちゃん」
冥子が求めた握手に、マリアは素直に応じる。
だが、一つ、納得行かない表情でマリアを見ている視線があった。
「・・・エミ、まだ何か不安?」
とうに気付いていた令子が問いただした。
「まぁね、経緯が経緯だけに、ちょっと時間がかかりそうなワケね、自分的に」
「確かに、彼女の出どころが敵であるカオスの元である事は事実だ、しかしエミくん、
君にも分かるだろう? マリアのスピリットが決して異質なものではない事を」
「ええ」
言われるまでもなく、エミは承知していた。
ゴーストレンジャーの資質があるものだけが持つ「スピリット」
その波動に同調すれば、とりもなおさずそれは「仲間」なのである。
「ま、邪魔だけはしないでねじゃ、後はよろしく〜!」
「エミ!」
令子が止めるのも聞かず、エミはとっとと作戦室から出て行った。
「ミスター・カラス、わたしではダメですか?」
「いやマリア、気にしなくていい、エミくんもちゃんと分かってくれるさ」
「イエス、ミスター・カラス」
「まったくもー、わがままなんだから、あいつは」
令子は腕を組んでふくれっ面で憤慨した。
「・・・・冗談じゃないわ、何考えているワケ! まったく!」
作戦室を後にしたエミは、抑え切れない感情を拳に込めて壁を殴りつけていた。
「ふぅむ、まさかマリアが謀反を起こすとは思ってもみなんだわい」
カオス党の地下アジトで、カオスは愚痴る。
「はっ、おまけにゴーストレンジャーの一人になったそうで・・・」
「のぅ、タイガー、飼い犬に手を噛まれるとはこの事かのぅ」
「そうですノー、わはははは」
どげしっ!
人ごとの様に笑うタイガーに、カオスの杖が飛んだ。
「ばかものっ、笑い事じゃないわいっ!」
「ス、スマンでっす、カオス様」
「でだ、次の作戦は何かいいアイデアはないのか?」
ふと尋ねたカオスに、タイガーは心得たとばかりに進言する。
「は、それについてはいいのが一つありますデッス」
「ほう・・・それは何かな?」
「ごにょごによ・・・」
「・・・・なるほど面白い、やってみよタイガーよ」
「はは〜〜っ!」
平伏したタイガーに、カオスは満足げにほくそえんだ。
「 第一話 戦え、ゴーストレンジャー! 」 <おわり>
[ Go Ending ]
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