“A pox on him…” (William Shakespeare)

著者: Predator


    朝、横島のアパート
横島 「......う”ー ... 頭いてー...
  風邪を引いたみたいだな...
  仕方がない今日は休むと美神さんに連絡しないいと...」
   
  美神事務所
  トゥルルルル… トゥルルルル…
おキヌ 「はい、美神除霊事務所です。あ、横島さん?!...
  え?!今日 風邪で休む?!大丈夫ですか?......
  分かりましたそう美神さんに伝えておきます。」
  電話を切るおキヌ
   
  後ろで話を聞いていたシロ。
シロ 「先生がどうかしたのでござるか?」
おキヌ 「シロちゃん、今日 横島さん風邪で休むって?」
   
シロ 「クゥ〜ン 今日は先生が拙者を散歩に
  連れて行く日でござるよ。」
   
おキヌ 「シロちゃんそんな無茶言わないで」
  (横島さんだって一応人間なんだから...)
   
タマモ 「珍しいわね...バカは風邪を引かないと言うのに。」
シロ 「こ、こらっ!! タマモ、先生のことをバカというなっ!!」
   
おキヌ 「まあまあ、シロちゃん落ち着いて。
  美神さんが来たら横島さんの伝言
  伝えなくちゃいけないんだから。」
   
  ガチャ...
美神 「おはよう。」
   
おキヌ 「あ、美神さんおはようございます。
  今、横島さんから連絡があって今日は風邪で休むそうです。」
   
美神 「あのバカ、この忙しい時に風邪ひくなんて!
  給料下げてやるわ!」
   
おキヌ 「まあまあ」
   
タマモ 「シロ、美神さんが横島をバカと呼ぶのはいいの?」
シロ 「美神殿が言う分にはいいでござるよ。」
   
タマモ 「なんで?」
シロ 「うぐっ! それは...」
   
美神 「当たり前じゃない!
  私は横島クンの飼い主であって
  横島クンは私の奴隷なんだから!」
   
シロ 「そうでござる...
  言いたくは無かったのでござるが...」
   
タマモ 「分かってるわよ、シロをからかって見たかっただけ。」
シロ 「うぅ〜〜〜、タマモ酷いでござる!
  拙者をからかうなんて!」
   
美神 「なに、バカやってんの二人とも!
  今日の仕事の説明するからこっち来なさい。」
   
  こそこそとシロにしゃべり出すタマモ
タマモ 「私達 今、美神さんにバカって言われたはよね?
  もしかして 私達って美神さんの奴隷?」
   
シロ 「うーん......」
   
シロ・タマ 「.........」
   
タマモ 「深く考えるの止めよう...」
   
シロ 「そうでござるな ...
  拙者自分が情けなく思えるでござる...」
   
シロ・タマモ 「ハアー ......」どんより...
   
  ため息をつくタマモとシロ。
  そんなフインキに気づかず、今日の仕事を説明し始める美神。
美神 「今日は仕事が3件入っているの。それほど難しい除霊
  では無いから四人とも来る必要は無いわ。だからシロ、
  S県のY町に行って、あるお店から頼んでおいた霊薬を
  至急、取りに行ってくれる?」
   
シロ 「え、拙者がでござるか?!」
   
おキヌ 「あのう、美神さんお使いでしたら私が行きますけど?」
   
美神 「交通費もったいないでしょ!それにシロはタダで
  居候しているんだから、これくらいはしてもらはなくちゃ!」
   
シロ 「S県まで走るのでござるのか?!さすがにそれは拙者でも
  疲れるでござるな...」
   
美神 「あら、べつに行きたくなかったら行かなくてもいいのよ。
  その代わり交通費で使った金額分あなたの食事、
  抜くけどいいの?」
   
シロ 「わ、分かったでござる!行くから食事抜きにはしないで
  ほしいでござる!!!(汗)」
   
美神 「分かればよろしいっ!」
   
おキヌ 「あのう、美神さんそれでしたら宅急便で送ってもらえば
  良いんじゃないんですか?」
   
美神 「貴重な薬だから送っている最中中の液が漏れたり
  ビンが壊れたりしたら困るのよ!はいシロ、これが小切手と
  店への地図だから無くすんじゃないわよ!」
   
  小切手を見るシロ。その額なんと「二千万円」!!!
   
シロ 「に、二千万円!?美神殿、頼んでおいた霊薬
  とは一体どういう薬なのでござるか?」
   
美神 「飲めばすぐに霊力が回復する秘薬よ。
  ヤモリの黒焼きを100匹食べるよりも効果があるわ。
  ただその代わりその薬は年に十数個しか作れないの。
   
  いつもなら厄珍の所で仕入れておいてもらうんだけれども、
  今回は厄珍の手違いで仕入れられなかったの!
  あ〜、 思い出したらムカムカしてきたわ!
  いつもどうりなら二週間前に手に入っていたのに!!!!」
   
シロ 「へ〜〜、世の中には面白い薬があるんでござるな!?」
   
美神 「ほら!シロ、関心してないでさっさと行きなさい!!!」
シロ 「キャインッ! 行ってくるでござる!」ダダダダダダー
   
  逃げる様に事務所を後にしたシロ。
  シロが出ていった後、考え込むタマモ。
   
タマモ 「やっぱり、私達って横島と同様、美神さんの奴隷じゃ
  ないかしら...」
  不雑な気持ちで考えていたタマモであった...
   
   
  数時間後...
  午後3時、美神事務所
シロ 「ただいまでござる!」
   
  し 〜〜ん …
   
シロ 「誰も居ないのでござるか?」
   
  予想よりも少し早く帰って来たシロ。
  事務所には誰も居なくシーンと静まり返っていた。
  シロがうろうろと台所をうろついているとテーブルの上に置いてある
  二つのメモに気がついた。
   
シロ 「メモでござるな。 何でござろう?」
   
メモ1 「シロ今夜 もう一つ除霊が入ったから帰るのは12時頃
  になるわ。 夕食は出前でもとって食べてなさい。
  by 美神令子」
   
シロ 「出前の代金は自払いでござるか!?どっちにしろ拙者
  の夕飯は抜きではないでござるか!!!」(ピキ)
   
  不愉快な気持ちを残しながら次のメモを読むシロ。
   
メモ2 「シロちゃん 横島さんの事が心配だからお見舞いに行って
  上げて。ただし私達が帰ってくる12時前には帰ってきてね。
  by おキヌ」
   
シロ 「お見舞いでござるか!?先生に会えるでござる!!!」
  ドピューン
   
  さっきまでの不愉快な気持ちはどこに行ったのか、
  シロは買ってきた霊薬をテーブルに置いてお見舞いの用意をすると。
  一直線に横島のアパートの方へ走っていった...
   
   
  そのころ、美神達は...
  「吸印!」
  ズビュウウウ〜〜〜  すぽんっ!
   
美神 「さっ、除霊は終わったわっ。 次の仕事に行くわよっ!」
   
おキヌ 「あのう、美神さん...横島さん大丈夫だと思いますか?」
   
美神 「大丈夫よ! あいつはゴキブリ並みの生命力の持ち主
  なんだから! それにおキヌちゃん横島クンの事が心配だった
  からシロをお見舞いに行かせたんじゃないの!?」
   
おキヌ 「そうなんですけど...何か変に胸騒ぎがして...」
美神 「そう?」
   
おキヌ 「...美神さんって案外、冷たいんですね......」
   
美神 「ち、ちょっと?!横島クンがいつも私がお風呂に入ってるの
  を覗くからって、別に横島クンがひどい病気にかかって、
  苦しめって言ってる訳じゃないのよ!...」
   
おキヌ 「分かってます。冗談です、冗談!」
   
美神 「それなら良いんだけど...」
  (この子が言うと冗談に聞こえないのよね...)
   
  と言いつつ次の仕事のギャラと出費を電卓で計算している美神であった...
   
   
  一方...
  横島のアパート
   
  コンコン
シロ 「横島せんせえ〜, プリチーな拙者がお見舞いに来たでござる!」
   
シロ 「..........」30秒経過...
   
シロ 「先生、寝ているのでござろうか?...」
   
  ...ガチャ
横島 「あ、シロ!?お見舞いに来てくれたのか!?...
  部屋、汚いが入るか?」
   
シロ 「そうするでござる!」
   
  部屋に入るシロ
シロ 「本当に汚い部屋でござるな...」
   
  部屋はまさに足の踏み場もないほどゴミやくちゃくちゃになったティッシュ
  で埋もれていた。
   
横島 「風邪のせいか鼻水が出過ぎてな...」
   
シロ 「先生、拙者が先生の風邪を治してあげるでござる!!!」
  ぺロペロろ横島の顔を舐め、ヒーリングを始めるシロ...
   
横島 「やっ、やめんかー!風邪が移っても知らないぞ!...」
   
シロ 「大丈夫でござる!移っても大丈夫なように念のため霊薬
  『倍櫓』をもって来たでござる!!!」
   
横島 「そういう所はしかっりしているな...(汗)
  あ、そうだ電話回線 抜いておいてくれないか?...
  頭が痛くて電話に出るのも楽じゃないんだ...」
   
シロ 「抜いたでござる! 先生熱はどの位あるのでござるか?」
   
横島 「さっき計った時は38.7C° あったな...(汗)
  ごほっ、ごほっ...」
   
シロ 「先生 大丈夫でござるか?」
   
横島 「大丈夫...じきに治るさ...こんなもん!......
  はあ、はあ.......」バタッ
  いきなり布団の上に倒れ込む横島。
   
シロ 「よ、横島先生!?」
  横島の所に駆け込むシロ...
   
   
  時は過ぎ、数時間後...
  夜、12時近く、美神事務所
おキヌ 「ただいま。シロちゃんまだ起きてる?」
   
  し 〜〜ん …
   
おキヌ 「あれ!?シロちゃん寝てるのかしら?」
タマモ 「私、ちょっと見てくるわ!」
  トントントン、階段を上がっていくタマモ。
   
  数秒後...
  ダダダダダダー
タマモ 「シロが居ないわ!!!」
おキヌ 「え”!?」
   
タマモ 「あの、バカ犬...いったいどこに行ったのかしら!?」
おキヌ 「まさか、まだ横島さんの所に...」
   
タマモ 「え!? どうして?」
   
  メモの内容を説明するおキヌちゃん...
   
タマモ 「それなら、横島の所に電話して確かめてみたら?」
おキヌ 「あ、そっか!?」
   
  電話を横島の所にかけるおキヌちゃん。
   
  ツー、ツー...
おキヌ 「つ、つながらない!?...」
タマモ 「でも、どうして!?」
  最悪な事態を想像する二人。二人の目線が合った...
   
おキヌ 「...だ、大丈夫ですよ...い、いくら何でも横島さん
  はそんな事をシロちゃんにするほど変態じゃありません
  から......」
   
タマモ 「でも...もしも...」
おキヌ 「も、もしも...」
   
おキヌ・タマモ 「........」(汗)...
   
  愛車コブラを車庫に入れてきて戻ってきた美神。
美神 「え、なっ、何このフインキ!?」
  おキヌとタマモの見て後ず去りする美神...
   
おキヌ 「み、美神さん!!!今すぐ車を出してください!!!」
美神 「き、急にどうしたの!?」
   
おキヌ 「車の中で説明します!タマモちゃん早く!!!」
美神 「わかったわ!」
   
  一体、何が起きてるのか分からず、
  彼女達の勢いに負けて珍しく素直に車を出す美神であった...
   
   
  一方...
  横島のアパート
横島 「......」
   
横島 「......う、...くっ...何が...逢ったん
  だっけ?...たしか、シロが見舞いに来て...その後
  熱で気が遠くなって!?...」
   
  何があったか思い出してゆっくりと体を布団から起こす横島。
  熱のせいか、かなり汗をかいており。
  布団は自分が寝ている間に蹴飛ばしたのか、かなり乱れていた。
  時計を見ると12時過ぎ。
   
横島 「シロはもう帰っちまったのかな?」
   
  暗い部屋を見渡す横島。
  ようやく目が暗さに慣れてきて、横島が目にしたものは、
  濡れタオルを片手に持って畳の上で寝ているシロだった。
   
横島 「こいつ...
  俺の事ずっと看病してくれたんだな...
  ありがとう、シロ...」
   
  映画の様に軽々とは言えないが、
  横島はシロを抱きかかえてさっきまで自分が寝ていた布団で
  シロを寝かすことにした。
   
横島 「ふう、けっこう重いなコイツ!?...
  熱も下がって腹も空いた事だし夜食にパンでも食うか。」
   
  パンを取ろうと戸棚に向かう横島。
  地面は横島が鼻を拭く為に使ったティッシュやゴミだらけで
  足の踏み場もない...
   
横島 「それにしても汚いな...部屋、ちょっと片づけな
  くちゃな。」
  床に散らばったティッシュ拾い始めていく横島。
   
  コンコン、ドアを叩く音
横島 「こんな時間に誰だろう?誰ですか?」
   
おキヌ 「おキヌです。 お休みのところすみません。あの...」
横島 「あ、おキヌちゃん。今ドア開けるね。」
  (おキヌちゃん?!一体どうしたんだろうこんな時間に?)
   
  ガチャ
おキヌ 「横島さん、シロちゃんここに居ません?
  事務所に帰ってきたら居なかったので!?...」
   
  言葉を失うおキヌ。
  彼女が見たものは、パンツとT−シャツだけ着て汗ぐだの横島。
  横島の左手には、何故かくちゃくちゃになったティッシュ。
  部屋の奥を見ると乱れた横島の布団でうつ伏せになって寝ているシロ。
  布団のまわりには、くちゃくちゃになった大量のティッシュ。
  そして布団の隣りには霊薬『倍櫓』...
   
おキヌ (ぷるぷるぷる怒) 横島さん不潔っ、最低っ!!!!」
横島 「え”? どうしたのおキヌちゃん?」
   
タマモ・美神 「ま、まさか...」
   
  状況をイマイチ理解できない横島と、
  予想はしているがおキヌの後ろにいるので何が起きているのか
  分からないタマモと美神...
   
おキヌ 「見れば分かります!!!」(怒)
   
  部屋を覗くタマモと美神。
  そして自分を振り返る横島。三人とも状況を理解...
   
タマモ 「あ”、あんたシロに一体何をしたの!!!!(怒)」
  怒っているが、顔が真っ赤なタマモ。 かぁ〜〜〜 顔真っ赤…
   
横島 「あっ、あっ、ご、誤解だぁ〜〜〜〜!!!」
   
美神 「まさかとは思ったけど...よ・こ・し・ま・ク・ン、
  どういう事か説明してくれるわよね!!(怒)ピキピキ
   
横島 「こっ、これは、ご、誤解です!
  えっ、あっ、えっと...(汗)」
   
シロ 「...よ、横島先生ぇ〜......」
  布団の中から寝言を言うシロ...
   
  ブチッ!!
   
  横島、臨死体験 秒読み開始。
美神 「横島ぁぁぁ〜〜、このロリコンがぁ〜〜〜〜!!!」
横島 「ぎゃああああぁぁぁぁ〜〜〜〜.......」
   
  「お年寄りと病人は大切に」って言う言葉無かったけ?
  自分の走馬灯を見つめながら、その言葉を思い出していた横島であった...
   
THE END  
 
   
   
  あとがき:
  最後まで読んで、タイトル、“A pox on him…”の意味が分かったで
  しょうか?
   
  “A pox on him…”は ウィリアム・シェイクスピアが好く演劇の脚本に書いた台詞です。
   
  “A pox on him…”を直訳すると“梅毒にかかれ...”と言う意味に
  なってしまいますが。この場合は、意味がちょっと違います。“Pox”は
  色々な意味を持っており“梅毒”だけではありません。
   
  Poxの仲間は...
   
  Syphilis=梅毒
  Smallpox=天然痘
  Chickenpox=水疱瘡
  Plague=ペスト
  などなど...
   
  特にシェイクスピアの時代はペストと天然痘が流行していたので“Poxに
  かかってしまえ!”と言う台詞の意味は“ひどい病気にかかって、
  苦しめ!”と言う呪い文句になります。べつに美神が横島とシロが
  できていたと勘違いして、美神が横島に梅毒(性病)にかかってしまえと
  言ってる分けではありませんから、あしからず...
   
  と、言う分けで題名の和訳は“ひどい病気にかかって、苦しめ...”と
  言う意味です!(この台詞、この物語中で、一度美神さんがおキヌちゃんと
  話している時に言っています。)(Predator)