『 複合妖獣 (キマイラ)

著者:まきしゃ


    某日夜、美神事務所
横島 「う〜〜ん、う〜〜〜ん…」
キヌ 「横島さん…、あんまり無理しないでくださいね…?」
令子 「横島クンっ! あんた、男でしょっ!? 限界に挑戦するのよっ!!」
   
シロ 「先生っ! あと少しでござるっ! 頑張るでござるよっ!?」
タマモ 「残り時間は、あと10分ね…。」
   
横島 「うおおぉぉぉ〜〜〜っ!!」
  キ〜ン… コロッ!
横島 「もうダメだぁ〜〜〜…」
  ぐてぇ〜〜〜 事務所のソファーでぐったりとしている横島…
   
令子 「ふ〜ん、2時間で5個かぁ〜。 結構、頑張ったじゃない、横島クンっ。」
横島 「美神さん…、俺、こんなこと二度とやりたくないっスよ〜…」
令子 「あら、横島クンの霊能力が向上したかどうかを知るには、最適な方法よ?
  毎年一回は、トライしてみた方がいいわねっ!」
横島 「ほんとは、文珠が欲しいだけなんでしょ…?」
   
令子 「シロっ! それじゃあ、横島クンに、文珠を5個出せたときの賞品を渡してあげて。」
シロ 「わかったでござる。」
  令子のデスクからシロが持ってきたのは、1枚の写真。
  臨海実習のときの、シロとタマモの水着姿が写っているシロモノ…。
   
シロ 「先生っ、賞品でござるっ! 拙者のプリチーな水着姿が写ってる写真でござるっ!
  大切にして欲しいでござるよっ!」
横島 「シロとタマモのじゃなぁ〜…」
シロ 「クゥ〜〜ン…、せんせぇ…。 うれしくないんでござるのか〜?」
令子 「もっといい写真が欲しければ、もっと文珠を出せばよかったのよっ?
  そうすれば、美人でセクシーな女性の水着姿が見放題だったのにね〜!」
横島 「無理だとわかってたくせに…」
  ちなみに、6個でおキヌちゃん+女子高生、7個で令子+エミ、冥子の水着写真が賞品であった…。
   
キヌ 「あの〜、横島さん。 霊力回復用に、ヤモリの黒焼きを作りましょうか?」
横島 「いや、いらない… ヤモリは嫌い…」
シロ 「先生っ! 食べなきゃダメでござるっ! 明日は、拙者と散歩する日でござるよっ!?」
横島 「あのなぁ〜、シロが美神さんに余計なことを聞くから、文珠を搾り出すはめになったんだぞっ!?
  てめ〜、わかってんのか〜!?」
シロ 「キャインッ! ご、ごめんなさい…。
  で、でも、拙者、先生のことをもっと知りたかったから、
  一度にどれぐらい文珠が出せるのかと思って…」
   
令子 「横島クン、好き嫌いを言ってる場合じゃないわよ?
  食べなきゃ、明日は霊力不足で仕事に使えないから、給料減らすけど、それでもいい?」
横島 「うっ…、わかりました…。」
令子 「それでよしっ!」
   
  令子の手の中には、いましがた横島が搾り出した文珠が5個…
令子 「さてと…、せっかくだから、この文珠、一人に1個ずつあげるわね。
  無駄遣いをするんじゃないわよっ?」
キヌ 「はいっ、美神さん。 横島さん、ありがとうございます。」
シロ 「文珠を貰えるんでござるかっ! 拙者、大切にするでござるよっ!」
タマモ 「これって、役に立つのかしら…」
   
横島 「あの…、俺のぶんは…?」
令子 「なんで? あんたなら、いつでも自分で出せるでしょ?」
横島 「やっぱり、美神さんが2個取るんですよね…」
   
   
  その日の深夜… 屋根裏部屋
  ポ〜ン…、ポ〜ン…。 貰った文珠を、お手玉のように放り投げて遊んでいるタマモ。
シロ 「こ、こらっ! 先生の文珠を、雑に扱うでないでござるっ!!」
タマモ 「別にいいじゃん。 これはもう、私のなんだから…。
  あんたが自分の文珠を後生大事に握り締めていたところで、私は何も言う気はないわよ?」
シロ 「そ、そうではござるが、そんなことしてたら暴発してしまうでござるよっ!?
  文珠は、投げたときに効力を発揮するのでござるからっ!」
  パシッ! タマモの投げ上げた文珠を空中で掴み取ったシロ。
   
タマモ 「そうだったわね…。 でも、貰ったはいいけど、なんに使えばいいのかなぁ〜」
シロ 「そんなの、そのときになってみないとわかんないでござるよっ。」
タマモ 「そうだけど…、考えとかないと、もしもの時に、使えないわよ?
  大体、横島は、どんなときにどうやって使ってたっけ?」
   
シロ 「そういえば…、拙者と一緒のときに、先生はほとんど文珠を使ったことがなかったでござるな…
  え〜っと…、覚えているのは…。 うっ…、拙者がタマモの狐火をくらいそうになったとき、
  文珠の(壁)で拙者を助けてくれたんでござった…。」
タマモ 「あれって、横島の文珠で防がれたのか〜。 知らなかったわ…。 ほかには?」
   
シロ 「ほかだと…、先生が天星神族の織姫と車で逃げてたときに、
  追っていたパトカーに向けて、爆弾代わりに使ってたでござるな…」
タマモ 「そうだったわね…。 でも…、私の文珠も、そう使えって言うつもり…?」
   
シロ 「う〜〜…、ほ、ほらっ。 拙者たちが、仕事のお手伝いをするようになったから、
  先生も、あまり文珠を使う必要が無くなったのでござるよっ!」
タマモ 「だったらなおさら、私たちが貰っても使い道がないじゃない。」
   
シロ 「うぅ〜〜…、え〜っと、え〜っと…
  その…、文珠は、むちゃくちゃ強い敵と戦うときに効力を発揮するのでござるっ!」
タマモ 「だから、どう使うのよ…?」
シロ 「そうそう、思い出したでござるよっ!
  この文珠、1個でもすごいでござるが、2個一緒に使うと、もっとすごいんでござるっ!」
タマモ 「ふ〜ん、2個でも使えるのかぁ〜」
シロ 「そうでござるよっ! 2文字の熟語を念じて使えば、ものすごく使い道が広がるんでござる。」
   
タマモ 「たとえば?」
シロ 「拙者が知っているのは、(合)(体)でござるっ!」
タマモ 「合体?」
シロ 「そうでござるっ! 同じぐらいの霊力の人が合体すると、霊力が数千倍強くなるそうでござるっ!」
タマモ 「ふ〜ん、すごいのね。」
   
シロ 「先生と美神さんが合体したときは、そのへんの魔族なんかよりよっぽど強かったそうでござるよっ!
  拙者も、先生と合体して強くなってみたいでござるなぁ〜…」
  キィィィ〜ン!
タマモ 「でも、合体なんて美神さんと横島がすればいいだけだし、私にはやっぱり使い道がなさそうね…。
  熟語で使い道が広がるんなら、私の文珠は、おキヌちゃんにあげることにするわ。
  おキヌちゃんなら、上手に使ってくれそうだから…。」
   
シロ 「なに〜っ!? いらないんなら、拙者が貰うでござるっ!」
タマモ 「イヤよっ! なんで、あんたなんかにあげなきゃなんないのよっ!?
  だいたい、ろくに漢字も知らないあんたが、まともに使えるわけないじゃないっ!
  ほらっ、私の文珠、返してよっ!! おキヌちゃんに、あげるんだからっ!!」
シロ 「拙者が貰うでござる〜っ!」
  キィィィ〜〜〜ンッ!  ヴュンッ!!
   
シロ 「えっ!?」
タマモ 「きゃぁっ!?」
  二人で揉みあっているうちに、シロが両手にもっていた文珠の効力が発揮されてしまったようだ…
  もちろん、その文字は、(合)(体)………
   
  しゅわっち…。 屋根裏部屋に突如出現した、合体犬塚シロ・タマモ、略して合体白玉。
  合体した本体がタマモになり、肩の部分に顔を出すシロ
  霊力は、どうやらタマモの方が上らしい…。
   
タマモ 「な、なによ、これっ!? 私たち、合体しちゃったのっ!?」
シロ 「うう〜、拙者、タマモより、霊力が下なんでござるのかぁ〜?」
タマモ 「そんなことより、どうするのよっ! はやく元に戻しなさいよっ!」
シロ 「そ、そんなこと、拙者、知らないでござる…」
タマモ 「じゃあ、いつまで合体したままなのよっ!?」
シロ 「そ、そんなこと、拙者、知らないでござる…」
タマモ 「じゃあ、どうするつもりなのよっ!?」
シロ 「そ、そんなこと、拙者、知らないでござる…」
タマモ 「…………」
シロ 「…………」
   
タマモ 「うぅ……、おキヌちゃん〜〜〜っ!!!」
  ドタドタドタドタドタドタ〜〜〜ッ!!
   
  半泣き顔でおキヌちゃんの部屋に駆け込む合体白玉…
キヌ 「えっ? タマモちゃん…? シロちゃんと合体しちゃったの…?」
タマモ 「も〜、このバカ犬が、変なこと考えるもんだから、巻き込まれちゃって…」
シロ 「拙者だって、こんなことに大事な文珠を使いたくなかったでござるっ!」
   
キヌ 「ど、どうやら合体しようと思って合体したわけじゃなさそうね…」
タマモ 「うん、そうよっ! 用も無いのにこんな奴と、わざわざ合体なんかしないわっ!」
シロ 「拙者だってっ!」
タマモ 「おキヌちゃん、どうやったら私たち、元に戻れるのか知ってるっ!?」
   
キヌ 「う〜ん…、私も合体したことがないから、戻り方は知らないんだけど…
  でも、美神さんと横島さんのときは、長くても一時間ぐらいで元に戻ってたと思うわ。
  文珠の効力が切れれば、元に戻るんだと思うけど…」
タマモ 「ほっ…。 そっかぁ、それくらいで済むのね…?
  ああ、よかった…。 これからもずっとこのまんまなんて、想像なんかしたくもないから…。」
シロ 「拙者もでござる…。 今夜一晩寝れば、元通りになるんでござるな?
  それなら、こんなに慌てることもなかったでござるな…。」
   
  おキヌちゃんの言葉に納得して、屋根裏部屋に戻ってきた合体白玉…。
  それでも、寝る前にとりあえず分離を試みる二人… だけど、合体したまんま…
シロ 「しかたないでござるな…。 まあ、もう寝るでござるよ…」
タマモ 「そうね…。 いまさらあがいても、一緒だしね…」
   
   
  ちゅんちゅん、ちゅん… 翌朝の屋根裏部屋…
シロ 「う〜ん… 朝でござるか… ん…? ここは、タマモのベッド…?
  あっ、そうかっ。 合体が解けたんでござるなっ!?」
   
  ぴょんっ! 元気よく、飛び起きたシロっ! でも…
シロ 「うっ…!」
  肩の部分には、ス〜ス〜寝息を立てているタマモの顔が…
  どうやら、合体が解けたわけではなく、先に目を覚ましたシロの方が本体となって
  入れ替わってしまっただけらしい…
   
シロ 「うぅ……、おキヌちゃん〜〜〜っ!!!」
  ドタドタドタドタドタドタ〜〜〜ッ!!
   
   
  美神事務所… おキヌちゃんからの緊急連絡が入り、駆けつけてきた令子と横島
  でも、予定より数時間も早くたたき起こされて、少々機嫌の悪い令子…
令子 「ほんっと、あんたたちってバカねっ!」
合体白玉 「うぅ…」
  タマモも目を覚まし、再び本体はタマモになっていた合体白玉…
キヌ 「まぁまぁ…、事故なんですから…」
   
令子 「でも、考え様によっちゃあ、いいことかもね。
  食費はいままでの半分で済むし、霊能力は、いままでの数百倍もあるんだもの。
  それに、あんたたちの喧嘩で苦労もしなくて済みそうだわっ。」
キヌ 「美神さん…、そういう問題じゃぁ…」
   
横島 「まあ、ほっとけば、いずれは分離するはずっスよ。
  俺の文珠でくっついてるだけだから、効力が切れればそれまでだし…」
キヌ 「私も、そう思ったんですけど…」
   
令子 「う〜ん…、やっぱり二人とも犬族の妖怪だから、親和性が高いのね…。
  ほら、妖怪って人間と違ってくっつきやすいのよ。
  複合妖獣(キマイラ)って、そんなに珍しいモノじゃないでしょ?」
タマモ 「ええっ!? それじゃ〜、私たちキマイラになっちゃうのっ!?」
   
令子 「そうなっちゃう可能性は、あるわね…」
シロ 「じょ、冗談じゃないでござるっ!!」
令子 「そんなこと言ったって、自分たちのせいじゃないのっ!」
キヌ 「美神さん…。 私たちで、なんとか元に戻してあげれないんですか?」
令子 「ん〜…、どうやって…?」
キヌ 「えっと、そのぉ〜…」
   
横島 「美神さん。 俺の文珠で、(分)(離)させたら戻るんじゃないスか〜?」
令子 「たしかに、可能性はあるけど、その方法は最後の手段と思った方がいいわ…。
  うまく分離できればいいけど、へたしたらハンパな生き物が2匹できちゃうわ。」
横島 「ハンパな…、生き物…?」
   
令子 「散歩をしたがるタマモとか、油揚げを食べたがるシロとかね…
  文珠で無理やりくっつけたのを、文珠で無理やり剥がしたからって、
  元通りになるとは限らないわ。
  癒着している一部分が、分離後も相手の中に残る可能性は、かなり高いはずよ…」
横島 「それじゃぁ、キマイラになるのを防ぎようがないんですか…?」
   
令子 「キマイラになっちゃったらね…。 でも、その確率が高いわけでもないわ。
  私たちが合体したときも、シンクロが進み過ぎない限り、自然に分離してたわ。
  普段のテンションを保っていれば、文珠の効力が切れれば元に戻るはずよ。
  ただ、人間より親和性が高いから、効力が切れるまでの時間が人間より長いわけ。」
シロ 「それじゃあ、いつ効力が切れるんでござるのか?」
令子 「そんなの、私にわかるわけないじゃない。
  くっついてるあんたたち二人の方が、感覚でわかるはずよっ!?」
   
タマモ 「あんた…、分離しそうな気配、感じる? 私は、感じないんだけど…」
シロ 「拙者も、感じていないでござる…」
令子 「ふ〜ん。 へたしたら、1年ぐらいくっついたままかもね…」
シロ 「そ、そんなの、イヤでござるっ!」
令子 「そんなこといったって、しょうがないじゃない。
  とりあえず、しばらくはそのままなんだから、慣れるしかないわねっ。」
タマモ 「もぉ〜…! こんなことになったのは、全部あんたのせいだからねっ!」
シロ 「うぅ〜…」
   
   
  予定より数時間早く事務所に来ちゃったので、のんびりしている令子たち…
  合体白玉の肩の部分から、横島に声をかけるシロ…
シロ 「先生っ! せっかく早く来たんでござるから、これから散歩に行くでござるよっ!?」
横島 「ん〜…、悪いけど、もう少し、事務所で休ませてくれ…
  昨日は霊力を最大限に使っちゃったし、今朝もまだ熟睡してるときに
  電話で呼び出されたから、なんか身体が重くってさぁ〜…」
シロ 「え〜? せんせぇ〜〜、拙者と散歩に行くでござる〜。 クゥ〜ン…」
   
タマモ 「シロっ。 あんた、誰の身体を使って散歩に行くつもりなのよっ?」
シロ 「誰って、半分は拙者の身体でござるよ?」
タマモ 「でも、あんたの意思では、手足は動かないわよ?」
シロ 「うっ…!」
   
横島 「そういやあ、そうだったな…。 合体したときは、本体の方の意志でしか動けなかったもんな…。
  タマモ、おまえ、俺と一緒に散歩する気はあるの?」
タマモ 「あるわけないでしょっ!?」
横島 「そうだよな〜。 シロっ、そういうわけだから、合体したままでの散歩はあきらめろっ。」
シロ 「ええっ!?」
横島 「しょうがね〜だろ〜? おまえだって、肩のところで景色を眺めるだけの散歩じゃ、つまらんだろうし…」
   
シロ 「せっ、拙者、合体したままだと、散歩に行けないんでござるのかっ!?
  そんなの、イヤでござるぅ〜〜っ!! ワォォ〜〜ンッ!!
   
タマモ 「えっ!? ちょっ…、何、このパワー!?」
  キィィィィ〜〜〜〜ンッ!
  シロの散歩衝動全開――ッ!!
  ドビュンッ!
   
キヌ 「あああ…、シロちゃんとタマモちゃん、オーバーフローしてキャラクターが入れ替わっちゃった…」
令子 「どうでもいいけど…、この先生にして、この弟子ありき…ね…。」
横島 「なんだか、俺、すっげ〜恥ずかしいっス…」
   
   
シロ 「あっ! 拙者の意志で、手足が動くでござるっ! 拙者が本体になったんでござるなっ!?
  先生っ! これで、散歩に行けるでござるよっ! 散歩に行くでござるっ!!」
横島 「あ、ああ…、しかたね〜な…」
   
令子 「ちょっと待ったっ!」
横島 「えっ?」
令子 「横島クン、これ持って行きなさいっ!」
横島 「これって…」
  令子が横島に渡したモノは、パラシュートとヘルメットと命綱のザイル…
   
シロ 「そうかっ! 合体したら、空を飛べるんでござったなっ!
  先生と二人で空の散歩が出来るなんて、拙者、うれしいでござるっ!」
タマモ 「あんた、私も一緒だってこと、忘れてるでしょ…」
キヌ 「横島さん…、気をつけて…」
横島 「なんか、命懸けだな…」
   
  しゅわっちっ!
  合体白玉による、空中散歩が始まる…。
  横島は、合体白玉に後ろから抱きかかえられるようにして、ぶらさがっている…。
タマモ 「ふ〜ん、結構、気持ちがいいわね〜。 今度入れ替わったら、私も康則くんと散歩してみよ〜っとっ!」
シロ 「なんだかかなり、スピードが出るでござるなっ! ちょっと全速力を出してみるでござるっ!」
横島 「わっ! バカっ! むちゃするなっ!?」
  ぱっひゅ〜〜〜んっ!!!
   
管制塔 「SAL997便、同機に未確認飛行物体が急接近中。 衝突の怖れがあるので上昇せよ。」
SAL 「了解。 SAL997便、上昇します。」
管制塔 「SAL997便っ! 未確認飛行物体も上昇中! 下降に変更せよっ!」
SAL 「了解っ! 下降に変更っ!」
管制塔 「あああっ、今度は上昇に変更。 ついでに右旋回っ!」
SAL 「どないせ〜っちゅうんじゃいっ!!」
管制塔 「きょ、教官っ! どう指示すればいいんスかっ? 俺、わかりましぇん〜っ!!」
   
横島 「こら、シロっ! ジャンボジェットと、いつまでもじゃれてるんじゃねぇ〜〜っ!!」
シロ 「でも先生、面白かったでござろう?」
   
  なんとか事務所に無事に戻ってきた横島たち…
令子 「まあ、生きて帰れただけで、じゅうぶんかもね…」
シロ 「せ、先生っ! つ、次のときは、防寒服を着て散歩に行くでござるよっ!」
横島 「…………、ひ〜っくしゅんっ!」
  シロに富士山頂まで連れて行かれて風邪を引いてしまった横島…
   
  シロの散歩衝動もひとまず収まり、再びタマモが本体に…
シロ 「うぅ〜、それにしても、なんでタマモの方が拙者より霊力が上なんでござるかっ!?
  拙者、納得いかないでござるよ〜〜」
タマモ 「これで実力の違いが、はっきりしたわねっ。」
   
令子 「まあね〜、数千年も生きてきた金毛白面九尾の妖狐の生まれ変わりと、
  大勢いる人狼の中のまだ小さな女の子とじゃ、差があっても当然ね。」
シロ 「で、でも、狼と狐とじゃ、元のパワーは狼の方が上でござるっ!」
令子 「だからと言って、霊能では、狐の中ではダントツで1位のタマモと、
  人狼のなかでは、ガキで下っぱのあんたと比べたら、やっぱね〜〜」
シロ 「うぅ〜〜」
   
横島 「美神さん、悪霊と戦うときは、どっちかってったらシロの方が役に立ちますけど…?」
シロ 「せ、先生っ! そうでござろうっ!?
  へへ〜んだっ! 見る人が見れば、違いはわかるんでござるよっ!」
   
令子 「そりゃそうよ。 シロの霊能力は、全部、攻撃用に使われてるからねっ!
  シロが昼間も人間形態に変化してるのは、精霊石のエネルギーを使ってるからでしょ?
  タマモは、防御や知能や変化にも、ちゃんと自分の霊能力をまわしているから、
  攻撃力の比較だけならシロの方が上になるわ。」
シロ 「先生、これって、拙者、喜んでいいんでござろうか…?」
横島 「個性的だってことで、いいんじゃない…?」
   
   
  しばらくして…
キヌ 「そろそろ、お昼の時間なんですけど… あの…、シロちゃんたちの食事は、どうしましょう…?」
令子 「そおね〜。 どっちか一人が食べれば大丈夫でしょっ?
  シロよりタマモの方が食事代は安くて済むから、タマモのぶんだけでいいわっ!」
シロ 「えぇっ!?」
   
横島 「美神さん、そりゃまずいっスよ…。 人間だって食い物の恨みは忘れないのに、
  食い意地のはったシロに、その仕打ちじゃ、一生愚痴聞かされますよ…?」
令子 「でも、肉料理を作ったところで、口に入れるのはタマモの方よ?」
横島 「う〜ん、また身体を入れ替えなきゃいけないのかぁ〜…
  シロっ。 おまえ、また散歩のときみたいにパワーを出せるか?」
シロ 「う〜ん、出せるとは思うんでござるが…」
   
タマモ 「どうかなぁ〜…。 私の感じでは、シロの霊力は散歩でだいぶ消費しちゃったみたいだから、
  かなり難しいと思うわ…。」
シロ 「タ、タマモッ! 肉を食べるときは、何があっても拙者と代わるでござるっ!
  拙者の楽しみを奪ったら許さないでござる〜〜っ!」
   
令子 「しかたないわね〜。 タマモ。 あんた自分の霊力を調整できるんでしょ?
  肉を食べるときだけは、霊力をう〜んと下げて、シロに身体を譲ってやんなさい。」
タマモ 「……、わかったわ。 …ったく、世話のやけるバカ犬なんだからっ!」
シロ 「た、助かったでござる〜」
   
   
  その日の夜、今日の仕事場は、廃ビルの中…
令子 「シロ、タマモっ。 今日はあんたたちだけで、片付けるのよっ!
  せっかくあげた文珠を、そんなことに使っちゃったんだから、ちゃんと元をとらなきゃねっ。
  おそらく、今のあんたたちの能力は、小竜姫より上だろうから、簡単なはずよ。」
シロ 「わかったでござる。 除霊の仕事は拙者がやるでござるよっ!
  タマモは、肩で見ていればいいでござるっ!」
タマモ 「いいわよ。 私は、将来GSになるつもりはないから、あんたに任せるわっ。」
   
  そんなわけで、シロが本体となって今日の獲物を捜し始める…
シロ 「いたでござるっ! 拙者の霊波刀で仕留めるでござるっ!」
  ビシュッ! ドゲンッ!! ガラガラガラ…
   
シロ 「へっ?」
キヌ 「あああ…」
横島 「すさまじいな…」
令子 「シロ…、それで、どうする気なの…?」
   
  合体白玉の霊波刀の先端は、ビルの天井を突き破り、
  夜空に向かって果てしなく伸びている…
   
シロ 「せ、先生… これ、振り下ろしたらまずいでござるよな…?」
横島 「あたりまえだっ! そんな、あぶね〜モノ、さっさと引っ込めろっ!!」
シロ 「うぅ…、どうすればいいんでござるのか…?」
   
タマモ 「しょ〜がないわねっ! 私が代わってあげるわっ!」
  ヴュンっ! 本体がタマモになった合体白玉…
タマモ 「あんたは、加減ってのが苦手だからねっ。 こうやって、やるのよっ!」
  フッ! 加減したつもりの狐火… でも…
  ゴォ〜〜〜〜ッ!
タマモ 「えっ?」 (汗)
   
令子 「に、逃げるわよっ! みんなっ!」
キヌ 「は、はいっ!」
   
  焼け落ちた廃ビルの上で、呆然としているシロとタマモ…
  二人の合体は無事解けたみたいだけど、令子たちが無事かどうかは不明…
シロ 「除霊は済んだみたいでござるな…」
タマモ 「そ、そおね…。」
シロ 「拙者たちも、元に戻れてよかったでござるな…」
タマモ 「そおね…。 お互いに、霊能を使ったせいで、分離しやすくなったみたい。
  狐火を使ったあと、そんな感じがしたわ…。」
   
シロ 「そうでござるな…。 ところで、先生たちは大丈夫でござろうか…?」
タマモ 「だ、大丈夫のはずよ…。 あんたも、霊感、働いているんでしょ?」
シロ 「たしかに、働いてはいるんでござるが…」
タマモ 「や、やっぱり、あっちの霊感の方…?」
シロ 「そ、そうでござるよな…?」
   
令子 「よくわかってるじゃないのっ!」  ズゴゴゴゴォ〜〜ッ!!
タマモ 「あああ…、やっぱりっ!」
シロ 「拙者たちに、危険が迫っている霊感でござるよなっ!?」
   
キヌ 「あああ…、シロちゃん、タマモちゃん…」
横島 「今回ばかりは、あいつらをかばう気には、なれね〜な…」
  焼け焦げだらけで現れた、令子、横島、おキヌの三人…
   
   
  美神事務所…
シロ 「くぅ〜〜ん…」
タマモ 「きゅ〜〜ん…」
  結界を張られた檻の中に、閉じ込められてしまった二人…、いや2匹…
   
キヌ 「あああ…、シロちゃんたち、かわいそう…
  横島さん…、美神さんはいつまでシロちゃんたちをケモノ形態のまま
  檻の中に閉じ込めておくんでしょうか…?」
   
横島 「決まってるだろ…? 気が済むまでさ…。」
   
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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