| 某日夜、美神事務所 | ||
| 横島 | 「う〜〜ん、う〜〜〜ん…」 | |
| キヌ | 「横島さん…、あんまり無理しないでくださいね…?」 | |
| 令子 | 「横島クンっ! あんた、男でしょっ!? 限界に挑戦するのよっ!!」 | |
| シロ | 「先生っ! あと少しでござるっ! 頑張るでござるよっ!?」 | |
| タマモ | 「残り時間は、あと10分ね…。」 | |
| 横島 | 「うおおぉぉぉ〜〜〜っ!!」 | |
| キ〜ン… コロッ! | ||
| 横島 | 「もうダメだぁ〜〜〜…」 | |
| ぐてぇ〜〜〜 事務所のソファーでぐったりとしている横島… | ||
| 令子 | 「ふ〜ん、2時間で5個かぁ〜。 結構、頑張ったじゃない、横島クンっ。」 | |
| 横島 | 「美神さん…、俺、こんなこと二度とやりたくないっスよ〜…」 | |
| 令子 | 「あら、横島クンの霊能力が向上したかどうかを知るには、最適な方法よ? | |
| 毎年一回は、トライしてみた方がいいわねっ!」 | ||
| 横島 | 「ほんとは、文珠が欲しいだけなんでしょ…?」 | |
| 令子 | 「シロっ! それじゃあ、横島クンに、文珠を5個出せたときの賞品を渡してあげて。」 | |
| シロ | 「わかったでござる。」 | |
| 令子のデスクからシロが持ってきたのは、1枚の写真。 | ||
| 臨海実習のときの、シロとタマモの水着姿が写っているシロモノ…。 | ||
| シロ | 「先生っ、賞品でござるっ! 拙者のプリチーな水着姿が写ってる写真でござるっ! | |
| 大切にして欲しいでござるよっ!」 | ||
| 横島 | 「シロとタマモのじゃなぁ〜…」 | |
| シロ | 「クゥ〜〜ン…、せんせぇ…。 うれしくないんでござるのか〜?」 | |
| 令子 | 「もっといい写真が欲しければ、もっと文珠を出せばよかったのよっ? | |
| そうすれば、美人でセクシーな女性の水着姿が見放題だったのにね〜!」 | ||
| 横島 | 「無理だとわかってたくせに…」 | |
| ちなみに、6個でおキヌちゃん+女子高生、7個で令子+エミ、冥子の水着写真が賞品であった…。 | ||
| キヌ | 「あの〜、横島さん。 霊力回復用に、ヤモリの黒焼きを作りましょうか?」 | |
| 横島 | 「いや、いらない… ヤモリは嫌い…」 | |
| シロ | 「先生っ! 食べなきゃダメでござるっ! 明日は、拙者と散歩する日でござるよっ!?」 | |
| 横島 | 「あのなぁ〜、シロが美神さんに余計なことを聞くから、文珠を搾り出すはめになったんだぞっ!? | |
| てめ〜、わかってんのか〜!?」 | ||
| シロ | 「キャインッ! ご、ごめんなさい…。 | |
| で、でも、拙者、先生のことをもっと知りたかったから、 | ||
| 一度にどれぐらい文珠が出せるのかと思って…」 | ||
| 令子 | 「横島クン、好き嫌いを言ってる場合じゃないわよ? | |
| 食べなきゃ、明日は霊力不足で仕事に使えないから、給料減らすけど、それでもいい?」 | ||
| 横島 | 「うっ…、わかりました…。」 | |
| 令子 | 「それでよしっ!」 | |
| 令子の手の中には、いましがた横島が搾り出した文珠が5個… | ||
| 令子 | 「さてと…、せっかくだから、この文珠、一人に1個ずつあげるわね。 | |
| 無駄遣いをするんじゃないわよっ?」 | ||
| キヌ | 「はいっ、美神さん。 横島さん、ありがとうございます。」 | |
| シロ | 「文珠を貰えるんでござるかっ! 拙者、大切にするでござるよっ!」 | |
| タマモ | 「これって、役に立つのかしら…」 | |
| 横島 | 「あの…、俺のぶんは…?」 | |
| 令子 | 「なんで? あんたなら、いつでも自分で出せるでしょ?」 | |
| 横島 | 「やっぱり、美神さんが2個取るんですよね…」 | |
| その日の深夜… 屋根裏部屋 | ||
| ポ〜ン…、ポ〜ン…。 貰った文珠を、お手玉のように放り投げて遊んでいるタマモ。 | ||
| シロ | 「こ、こらっ! 先生の文珠を、雑に扱うでないでござるっ!!」 | |
| タマモ | 「別にいいじゃん。 これはもう、私のなんだから…。 | |
| あんたが自分の文珠を後生大事に握り締めていたところで、私は何も言う気はないわよ?」 | ||
| シロ | 「そ、そうではござるが、そんなことしてたら暴発してしまうでござるよっ!? | |
| 文珠は、投げたときに効力を発揮するのでござるからっ!」 | ||
| パシッ! タマモの投げ上げた文珠を空中で掴み取ったシロ。 | ||
| タマモ | 「そうだったわね…。 でも、貰ったはいいけど、なんに使えばいいのかなぁ〜」 | |
| シロ | 「そんなの、そのときになってみないとわかんないでござるよっ。」 | |
| タマモ | 「そうだけど…、考えとかないと、もしもの時に、使えないわよ? | |
| 大体、横島は、どんなときにどうやって使ってたっけ?」 | ||
| シロ | 「そういえば…、拙者と一緒のときに、先生はほとんど文珠を使ったことがなかったでござるな… | |
| え〜っと…、覚えているのは…。 うっ…、拙者がタマモの狐火をくらいそうになったとき、 | ||
| 文珠の(壁)で拙者を助けてくれたんでござった…。」 | ||
| タマモ | 「あれって、横島の文珠で防がれたのか〜。 知らなかったわ…。 ほかには?」 | |
| シロ | 「ほかだと…、先生が天星神族の織姫と車で逃げてたときに、 | |
| 追っていたパトカーに向けて、爆弾代わりに使ってたでござるな…」 | ||
| タマモ | 「そうだったわね…。 でも…、私の文珠も、そう使えって言うつもり…?」 | |
| シロ | 「う〜〜…、ほ、ほらっ。 拙者たちが、仕事のお手伝いをするようになったから、 | |
| 先生も、あまり文珠を使う必要が無くなったのでござるよっ!」 | ||
| タマモ | 「だったらなおさら、私たちが貰っても使い道がないじゃない。」 | |
| シロ | 「うぅ〜〜…、え〜っと、え〜っと… | |
| その…、文珠は、むちゃくちゃ強い敵と戦うときに効力を発揮するのでござるっ!」 | ||
| タマモ | 「だから、どう使うのよ…?」 | |
| シロ | 「そうそう、思い出したでござるよっ! | |
| この文珠、1個でもすごいでござるが、2個一緒に使うと、もっとすごいんでござるっ!」 | ||
| タマモ | 「ふ〜ん、2個でも使えるのかぁ〜」 | |
| シロ | 「そうでござるよっ! 2文字の熟語を念じて使えば、ものすごく使い道が広がるんでござる。」 | |
| タマモ | 「たとえば?」 | |
| シロ | 「拙者が知っているのは、(合)(体)でござるっ!」 | |
| タマモ | 「合体?」 | |
| シロ | 「そうでござるっ! 同じぐらいの霊力の人が合体すると、霊力が数千倍強くなるそうでござるっ!」 | |
| タマモ | 「ふ〜ん、すごいのね。」 | |
| シロ | 「先生と美神さんが合体したときは、そのへんの魔族なんかよりよっぽど強かったそうでござるよっ! | |
| 拙者も、先生と合体して強くなってみたいでござるなぁ〜…」 | ||
| キィィィ〜ン! | ||
| タマモ | 「でも、合体なんて美神さんと横島がすればいいだけだし、私にはやっぱり使い道がなさそうね…。 | |
| 熟語で使い道が広がるんなら、私の文珠は、おキヌちゃんにあげることにするわ。 | ||
| おキヌちゃんなら、上手に使ってくれそうだから…。」 | ||
| シロ | 「なに〜っ!? いらないんなら、拙者が貰うでござるっ!」 | |
| タマモ | 「イヤよっ! なんで、あんたなんかにあげなきゃなんないのよっ!? | |
| だいたい、ろくに漢字も知らないあんたが、まともに使えるわけないじゃないっ! | ||
| ほらっ、私の文珠、返してよっ!! おキヌちゃんに、あげるんだからっ!!」 | ||
| シロ | 「拙者が貰うでござる〜っ!」 | |
| キィィィ〜〜〜ンッ! ヴュンッ!! | ||
| シロ | 「えっ!?」 | |
| タマモ | 「きゃぁっ!?」 | |
| 二人で揉みあっているうちに、シロが両手にもっていた文珠の効力が発揮されてしまったようだ… | ||
| もちろん、その文字は、(合)(体)……… | ||
| しゅわっち…。 屋根裏部屋に突如出現した、合体犬塚シロ・タマモ、略して合体白玉。 | ||
| 合体した本体がタマモになり、肩の部分に顔を出すシロ | ||
| 霊力は、どうやらタマモの方が上らしい…。 | ||
| タマモ | 「な、なによ、これっ!? 私たち、合体しちゃったのっ!?」 | |
| シロ | 「うう〜、拙者、タマモより、霊力が下なんでござるのかぁ〜?」 | |
| タマモ | 「そんなことより、どうするのよっ! はやく元に戻しなさいよっ!」 | |
| シロ | 「そ、そんなこと、拙者、知らないでござる…」 | |
| タマモ | 「じゃあ、いつまで合体したままなのよっ!?」 | |
| シロ | 「そ、そんなこと、拙者、知らないでござる…」 | |
| タマモ | 「じゃあ、どうするつもりなのよっ!?」 | |
| シロ | 「そ、そんなこと、拙者、知らないでござる…」 | |
| タマモ | 「…………」 | |
| シロ | 「…………」 | |
| タマモ | 「うぅ……、おキヌちゃん〜〜〜っ!!!」 | |
| ドタドタドタドタドタドタ〜〜〜ッ!! | ||
| 半泣き顔でおキヌちゃんの部屋に駆け込む合体白玉… | ||
| キヌ | 「えっ? タマモちゃん…? シロちゃんと合体しちゃったの…?」 | |
| タマモ | 「も〜、このバカ犬が、変なこと考えるもんだから、巻き込まれちゃって…」 | |
| シロ | 「拙者だって、こんなことに大事な文珠を使いたくなかったでござるっ!」 | |
| キヌ | 「ど、どうやら合体しようと思って合体したわけじゃなさそうね…」 | |
| タマモ | 「うん、そうよっ! 用も無いのにこんな奴と、わざわざ合体なんかしないわっ!」 | |
| シロ | 「拙者だってっ!」 | |
| タマモ | 「おキヌちゃん、どうやったら私たち、元に戻れるのか知ってるっ!?」 | |
| キヌ | 「う〜ん…、私も合体したことがないから、戻り方は知らないんだけど… | |
| でも、美神さんと横島さんのときは、長くても一時間ぐらいで元に戻ってたと思うわ。 | ||
| 文珠の効力が切れれば、元に戻るんだと思うけど…」 | ||
| タマモ | 「ほっ…。 そっかぁ、それくらいで済むのね…? | |
| ああ、よかった…。 これからもずっとこのまんまなんて、想像なんかしたくもないから…。」 | ||
| シロ | 「拙者もでござる…。 今夜一晩寝れば、元通りになるんでござるな? | |
| それなら、こんなに慌てることもなかったでござるな…。」 | ||
| おキヌちゃんの言葉に納得して、屋根裏部屋に戻ってきた合体白玉…。 | ||
| それでも、寝る前にとりあえず分離を試みる二人… だけど、合体したまんま… | ||
| シロ | 「しかたないでござるな…。 まあ、もう寝るでござるよ…」 | |
| タマモ | 「そうね…。 いまさらあがいても、一緒だしね…」 | |
| ちゅんちゅん、ちゅん… 翌朝の屋根裏部屋… | ||
| シロ | 「う〜ん… 朝でござるか… ん…? ここは、タマモのベッド…? | |
| あっ、そうかっ。 合体が解けたんでござるなっ!?」 | ||
| ぴょんっ! 元気よく、飛び起きたシロっ! でも… | ||
| シロ | 「うっ…!」 | |
| 肩の部分には、ス〜ス〜寝息を立てているタマモの顔が… | ||
| どうやら、合体が解けたわけではなく、先に目を覚ましたシロの方が本体となって | ||
| 入れ替わってしまっただけらしい… | ||
| シロ | 「うぅ……、おキヌちゃん〜〜〜っ!!!」 | |
| ドタドタドタドタドタドタ〜〜〜ッ!! | ||
| 美神事務所… おキヌちゃんからの緊急連絡が入り、駆けつけてきた令子と横島 | ||
| でも、予定より数時間も早くたたき起こされて、少々機嫌の悪い令子… | ||
| 令子 | 「ほんっと、あんたたちってバカねっ!」 | |
| 合体白玉 | 「うぅ…」 | |
| タマモも目を覚まし、再び本体はタマモになっていた合体白玉… | ||
| キヌ | 「まぁまぁ…、事故なんですから…」 | |
| 令子 | 「でも、考え様によっちゃあ、いいことかもね。 | |
| 食費はいままでの半分で済むし、霊能力は、いままでの数百倍もあるんだもの。 | ||
| それに、あんたたちの喧嘩で苦労もしなくて済みそうだわっ。」 | ||
| キヌ | 「美神さん…、そういう問題じゃぁ…」 | |
| 横島 | 「まあ、ほっとけば、いずれは分離するはずっスよ。 | |
| 俺の文珠でくっついてるだけだから、効力が切れればそれまでだし…」 | ||
| キヌ | 「私も、そう思ったんですけど…」 | |
| 令子 | 「う〜ん…、やっぱり二人とも犬族の妖怪だから、親和性が高いのね…。 | |
| ほら、妖怪って人間と違ってくっつきやすいのよ。 | ||
| 複合妖獣(キマイラ)って、そんなに珍しいモノじゃないでしょ?」 | ||
| タマモ | 「ええっ!? それじゃ〜、私たちキマイラになっちゃうのっ!?」 | |
| 令子 | 「そうなっちゃう可能性は、あるわね…」 | |
| シロ | 「じょ、冗談じゃないでござるっ!!」 | |
| 令子 | 「そんなこと言ったって、自分たちのせいじゃないのっ!」 | |
| キヌ | 「美神さん…。 私たちで、なんとか元に戻してあげれないんですか?」 | |
| 令子 | 「ん〜…、どうやって…?」 | |
| キヌ | 「えっと、そのぉ〜…」 | |
| 横島 | 「美神さん。 俺の文珠で、(分)(離)させたら戻るんじゃないスか〜?」 | |
| 令子 | 「たしかに、可能性はあるけど、その方法は最後の手段と思った方がいいわ…。 | |
| うまく分離できればいいけど、へたしたらハンパな生き物が2匹できちゃうわ。」 | ||
| 横島 | 「ハンパな…、生き物…?」 | |
| 令子 | 「散歩をしたがるタマモとか、油揚げを食べたがるシロとかね… | |
| 文珠で無理やりくっつけたのを、文珠で無理やり剥がしたからって、 | ||
| 元通りになるとは限らないわ。 | ||
| 癒着している一部分が、分離後も相手の中に残る可能性は、かなり高いはずよ…」 | ||
| 横島 | 「それじゃぁ、キマイラになるのを防ぎようがないんですか…?」 | |
| 令子 | 「キマイラになっちゃったらね…。 でも、その確率が高いわけでもないわ。 | |
| 私たちが合体したときも、シンクロが進み過ぎない限り、自然に分離してたわ。 | ||
| 普段のテンションを保っていれば、文珠の効力が切れれば元に戻るはずよ。 | ||
| ただ、人間より親和性が高いから、効力が切れるまでの時間が人間より長いわけ。」 | ||
| シロ | 「それじゃあ、いつ効力が切れるんでござるのか?」 | |
| 令子 | 「そんなの、私にわかるわけないじゃない。 | |
| くっついてるあんたたち二人の方が、感覚でわかるはずよっ!?」 | ||
| タマモ | 「あんた…、分離しそうな気配、感じる? 私は、感じないんだけど…」 | |
| シロ | 「拙者も、感じていないでござる…」 | |
| 令子 | 「ふ〜ん。 へたしたら、1年ぐらいくっついたままかもね…」 | |
| シロ | 「そ、そんなの、イヤでござるっ!」 | |
| 令子 | 「そんなこといったって、しょうがないじゃない。 | |
| とりあえず、しばらくはそのままなんだから、慣れるしかないわねっ。」 | ||
| タマモ | 「もぉ〜…! こんなことになったのは、全部あんたのせいだからねっ!」 | |
| シロ | 「うぅ〜…」 | |
| 予定より数時間早く事務所に来ちゃったので、のんびりしている令子たち… | ||
| 合体白玉の肩の部分から、横島に声をかけるシロ… | ||
| シロ | 「先生っ! せっかく早く来たんでござるから、これから散歩に行くでござるよっ!?」 | |
| 横島 | 「ん〜…、悪いけど、もう少し、事務所で休ませてくれ… | |
| 昨日は霊力を最大限に使っちゃったし、今朝もまだ熟睡してるときに | ||
| 電話で呼び出されたから、なんか身体が重くってさぁ〜…」 | ||
| シロ | 「え〜? せんせぇ〜〜、拙者と散歩に行くでござる〜。 クゥ〜ン…」 | |
| タマモ | 「シロっ。 あんた、誰の身体を使って散歩に行くつもりなのよっ?」 | |
| シロ | 「誰って、半分は拙者の身体でござるよ?」 | |
| タマモ | 「でも、あんたの意思では、手足は動かないわよ?」 | |
| シロ | 「うっ…!」 | |
| 横島 | 「そういやあ、そうだったな…。 合体したときは、本体の方の意志でしか動けなかったもんな…。 | |
| タマモ、おまえ、俺と一緒に散歩する気はあるの?」 | ||
| タマモ | 「あるわけないでしょっ!?」 | |
| 横島 | 「そうだよな〜。 シロっ、そういうわけだから、合体したままでの散歩はあきらめろっ。」 | |
| シロ | 「ええっ!?」 | |
| 横島 | 「しょうがね〜だろ〜? おまえだって、肩のところで景色を眺めるだけの散歩じゃ、つまらんだろうし…」 | |
| シロ | 「せっ、拙者、合体したままだと、散歩に行けないんでござるのかっ!? | |
| そんなの、イヤでござるぅ〜〜っ!! ワォォ〜〜ンッ!!」 | ||
| タマモ | 「えっ!? ちょっ…、何、このパワー!?」 | |
| キィィィィ〜〜〜〜ンッ! | ||
| シロの散歩衝動全開――ッ!! | ||
| ドビュンッ! | ||
| キヌ | 「あああ…、シロちゃんとタマモちゃん、オーバーフローしてキャラクターが入れ替わっちゃった…」 | |
| 令子 | 「どうでもいいけど…、この先生にして、この弟子ありき…ね…。」 | |
| 横島 | 「なんだか、俺、すっげ〜恥ずかしいっス…」 | |
| シロ | 「あっ! 拙者の意志で、手足が動くでござるっ! 拙者が本体になったんでござるなっ!? | |
| 先生っ! これで、散歩に行けるでござるよっ! 散歩に行くでござるっ!!」 | ||
| 横島 | 「あ、ああ…、しかたね〜な…」 | |
| 令子 | 「ちょっと待ったっ!」 | |
| 横島 | 「えっ?」 | |
| 令子 | 「横島クン、これ持って行きなさいっ!」 | |
| 横島 | 「これって…」 | |
| 令子が横島に渡したモノは、パラシュートとヘルメットと命綱のザイル… | ||
| シロ | 「そうかっ! 合体したら、空を飛べるんでござったなっ! | |
| 先生と二人で空の散歩が出来るなんて、拙者、うれしいでござるっ!」 | ||
| タマモ | 「あんた、私も一緒だってこと、忘れてるでしょ…」 | |
| キヌ | 「横島さん…、気をつけて…」 | |
| 横島 | 「なんか、命懸けだな…」 | |
| しゅわっちっ! | ||
| 合体白玉による、空中散歩が始まる…。 | ||
| 横島は、合体白玉に後ろから抱きかかえられるようにして、ぶらさがっている…。 | ||
| タマモ | 「ふ〜ん、結構、気持ちがいいわね〜。 今度入れ替わったら、私も康則くんと散歩してみよ〜っとっ!」 | |
| シロ | 「なんだかかなり、スピードが出るでござるなっ! ちょっと全速力を出してみるでござるっ!」 | |
| 横島 | 「わっ! バカっ! むちゃするなっ!?」 | |
| ぱっひゅ〜〜〜んっ!!! | ||
| 管制塔 | 「SAL997便、同機に未確認飛行物体が急接近中。 衝突の怖れがあるので上昇せよ。」 | |
| SAL | 「了解。 SAL997便、上昇します。」 | |
| 管制塔 | 「SAL997便っ! 未確認飛行物体も上昇中! 下降に変更せよっ!」 | |
| SAL | 「了解っ! 下降に変更っ!」 | |
| 管制塔 | 「あああっ、今度は上昇に変更。 ついでに右旋回っ!」 | |
| SAL | 「どないせ〜っちゅうんじゃいっ!!」 | |
| 管制塔 | 「きょ、教官っ! どう指示すればいいんスかっ? 俺、わかりましぇん〜っ!!」 | |
| 横島 | 「こら、シロっ! ジャンボジェットと、いつまでもじゃれてるんじゃねぇ〜〜っ!!」 | |
| シロ | 「でも先生、面白かったでござろう?」 | |
| なんとか事務所に無事に戻ってきた横島たち… | ||
| 令子 | 「まあ、生きて帰れただけで、じゅうぶんかもね…」 | |
| シロ | 「せ、先生っ! つ、次のときは、防寒服を着て散歩に行くでござるよっ!」 | |
| 横島 | 「…………、ひ〜っくしゅんっ!」 | |
| シロに富士山頂まで連れて行かれて風邪を引いてしまった横島… | ||
| シロの散歩衝動もひとまず収まり、再びタマモが本体に… | ||
| シロ | 「うぅ〜、それにしても、なんでタマモの方が拙者より霊力が上なんでござるかっ!? | |
| 拙者、納得いかないでござるよ〜〜」 | ||
| タマモ | 「これで実力の違いが、はっきりしたわねっ。」 | |
| 令子 | 「まあね〜、数千年も生きてきた金毛白面九尾の妖狐の生まれ変わりと、 | |
| 大勢いる人狼の中のまだ小さな女の子とじゃ、差があっても当然ね。」 | ||
| シロ | 「で、でも、狼と狐とじゃ、元のパワーは狼の方が上でござるっ!」 | |
| 令子 | 「だからと言って、霊能では、狐の中ではダントツで1位のタマモと、 | |
| 人狼のなかでは、ガキで下っぱのあんたと比べたら、やっぱね〜〜」 | ||
| シロ | 「うぅ〜〜」 | |
| 横島 | 「美神さん、悪霊と戦うときは、どっちかってったらシロの方が役に立ちますけど…?」 | |
| シロ | 「せ、先生っ! そうでござろうっ!? | |
| へへ〜んだっ! 見る人が見れば、違いはわかるんでござるよっ!」 | ||
| 令子 | 「そりゃそうよ。 シロの霊能力は、全部、攻撃用に使われてるからねっ! | |
| シロが昼間も人間形態に変化してるのは、精霊石のエネルギーを使ってるからでしょ? | ||
| タマモは、防御や知能や変化にも、ちゃんと自分の霊能力をまわしているから、 | ||
| 攻撃力の比較だけならシロの方が上になるわ。」 | ||
| シロ | 「先生、これって、拙者、喜んでいいんでござろうか…?」 | |
| 横島 | 「個性的だってことで、いいんじゃない…?」 | |
| しばらくして… | ||
| キヌ | 「そろそろ、お昼の時間なんですけど… あの…、シロちゃんたちの食事は、どうしましょう…?」 | |
| 令子 | 「そおね〜。 どっちか一人が食べれば大丈夫でしょっ? | |
| シロよりタマモの方が食事代は安くて済むから、タマモのぶんだけでいいわっ!」 | ||
| シロ | 「えぇっ!?」 | |
| 横島 | 「美神さん、そりゃまずいっスよ…。 人間だって食い物の恨みは忘れないのに、 | |
| 食い意地のはったシロに、その仕打ちじゃ、一生愚痴聞かされますよ…?」 | ||
| 令子 | 「でも、肉料理を作ったところで、口に入れるのはタマモの方よ?」 | |
| 横島 | 「う〜ん、また身体を入れ替えなきゃいけないのかぁ〜… | |
| シロっ。 おまえ、また散歩のときみたいにパワーを出せるか?」 | ||
| シロ | 「う〜ん、出せるとは思うんでござるが…」 | |
| タマモ | 「どうかなぁ〜…。 私の感じでは、シロの霊力は散歩でだいぶ消費しちゃったみたいだから、 | |
| かなり難しいと思うわ…。」 | ||
| シロ | 「タ、タマモッ! 肉を食べるときは、何があっても拙者と代わるでござるっ! | |
| 拙者の楽しみを奪ったら許さないでござる〜〜っ!」 | ||
| 令子 | 「しかたないわね〜。 タマモ。 あんた自分の霊力を調整できるんでしょ? | |
| 肉を食べるときだけは、霊力をう〜んと下げて、シロに身体を譲ってやんなさい。」 | ||
| タマモ | 「……、わかったわ。 …ったく、世話のやけるバカ犬なんだからっ!」 | |
| シロ | 「た、助かったでござる〜」 | |
| その日の夜、今日の仕事場は、廃ビルの中… | ||
| 令子 | 「シロ、タマモっ。 今日はあんたたちだけで、片付けるのよっ! | |
| せっかくあげた文珠を、そんなことに使っちゃったんだから、ちゃんと元をとらなきゃねっ。 | ||
| おそらく、今のあんたたちの能力は、小竜姫より上だろうから、簡単なはずよ。」 | ||
| シロ | 「わかったでござる。 除霊の仕事は拙者がやるでござるよっ! | |
| タマモは、肩で見ていればいいでござるっ!」 | ||
| タマモ | 「いいわよ。 私は、将来GSになるつもりはないから、あんたに任せるわっ。」 | |
| そんなわけで、シロが本体となって今日の獲物を捜し始める… | ||
| シロ | 「いたでござるっ! 拙者の霊波刀で仕留めるでござるっ!」 | |
| ビシュッ! ドゲンッ!! ガラガラガラ… | ||
| シロ | 「へっ?」 | |
| キヌ | 「あああ…」 | |
| 横島 | 「すさまじいな…」 | |
| 令子 | 「シロ…、それで、どうする気なの…?」 | |
| 合体白玉の霊波刀の先端は、ビルの天井を突き破り、 | ||
| 夜空に向かって果てしなく伸びている… | ||
| シロ | 「せ、先生… これ、振り下ろしたらまずいでござるよな…?」 | |
| 横島 | 「あたりまえだっ! そんな、あぶね〜モノ、さっさと引っ込めろっ!!」 | |
| シロ | 「うぅ…、どうすればいいんでござるのか…?」 | |
| タマモ | 「しょ〜がないわねっ! 私が代わってあげるわっ!」 | |
| ヴュンっ! 本体がタマモになった合体白玉… | ||
| タマモ | 「あんたは、加減ってのが苦手だからねっ。 こうやって、やるのよっ!」 | |
| フッ! 加減したつもりの狐火… でも… | ||
| ゴォ〜〜〜〜ッ! | ||
| タマモ | 「えっ?」 (汗) | |
| 令子 | 「に、逃げるわよっ! みんなっ!」 | |
| キヌ | 「は、はいっ!」 | |
| 焼け落ちた廃ビルの上で、呆然としているシロとタマモ… | ||
| 二人の合体は無事解けたみたいだけど、令子たちが無事かどうかは不明… | ||
| シロ | 「除霊は済んだみたいでござるな…」 | |
| タマモ | 「そ、そおね…。」 | |
| シロ | 「拙者たちも、元に戻れてよかったでござるな…」 | |
| タマモ | 「そおね…。 お互いに、霊能を使ったせいで、分離しやすくなったみたい。 | |
| 狐火を使ったあと、そんな感じがしたわ…。」 | ||
| シロ | 「そうでござるな…。 ところで、先生たちは大丈夫でござろうか…?」 | |
| タマモ | 「だ、大丈夫のはずよ…。 あんたも、霊感、働いているんでしょ?」 | |
| シロ | 「たしかに、働いてはいるんでござるが…」 | |
| タマモ | 「や、やっぱり、あっちの霊感の方…?」 | |
| シロ | 「そ、そうでござるよな…?」 | |
| 令子 | 「よくわかってるじゃないのっ!」 ズゴゴゴゴォ〜〜ッ!! | |
| タマモ | 「あああ…、やっぱりっ!」 | |
| シロ | 「拙者たちに、危険が迫っている霊感でござるよなっ!?」 | |
| キヌ | 「あああ…、シロちゃん、タマモちゃん…」 | |
| 横島 | 「今回ばかりは、あいつらをかばう気には、なれね〜な…」 | |
| 焼け焦げだらけで現れた、令子、横島、おキヌの三人… | ||
| 美神事務所… | ||
| シロ | 「くぅ〜〜ん…」 | |
| タマモ | 「きゅ〜〜ん…」 | |
| 結界を張られた檻の中に、閉じ込められてしまった二人…、いや2匹… | ||
| キヌ | 「あああ…、シロちゃんたち、かわいそう… | |
| 横島さん…、美神さんはいつまでシロちゃんたちをケモノ形態のまま | ||
| 檻の中に閉じ込めておくんでしょうか…?」 | ||
| 横島 | 「決まってるだろ…? 気が済むまでさ…。」 | |
| END |