「18年目の手紙」


ベスパちゃんへ パピリオより     

魔界軍参謀本部情報総局ジークフリード少佐 非検閲配送許可
魔界第二軍特殊連隊長 ワルキューレ准将 直接配送許可
人間界 妙神山より
魔界 第二軍特殊部隊駐屯基地宛

前略   
 べスパちゃん お元気ですか? ご無沙汰していました。
 パピリオは元気です。
 べスパちゃんは今度魔界軍特殊部隊の大尉に昇進したそうですね。
 おめでとうです!
 パピリオも最近、小竜姫師匠から妙神山副管理人という肩書きをもらいました。
 だいぶ身体も大きくなって、術や力のコントロールが出来るようになったので、よく魔力系の修行者の相手をしています。
 師匠が赤ちゃん言葉も卒業しなさいというので、なるだけ使わないようにしています。
 でもべスパちゃんはべスパちゃんと呼ばせてくだちゃいね。
 「副管理人さん」と呼ばれたり、師匠の代わりを勤められるようになったりすると、身体が育った事以上に自分が成長したんだなあと実感できてパピリオはとっても嬉しいです。
 でも時々急にさびしくなる事もあります。
 三人で過ごしたあの頃の事が、なんだかすごく懐かしく思えるんです。
 決して楽しい思い出ばかりじゃないはずなのに・・・。
 そういうときにはべスパちゃんに会いたくてたまらなくなります。
 でも、そんな弱気じゃいけないんだとも思います。
 これが大人になるということなのかなあ・・・。

 そうそう、ところで昨日、久しぶりに修行場へ人間が二人きました。
 両方女の子で、どちらも強い霊能者なのですが、一人はまだ小さいので見学です。
 修行しに来た大きいほうの女の子は今年で18歳、強い発火念力を使います。
 なまえは美神ひのめちゃん。
 あの美神さんの妹です。
 お姉さんに似てちょっと気が強いところのある、でもとっても優しい娘です。
 もう一人の子は今年12歳で、まだはっきりどんな霊能があるかまでは分かりませんが、かなり強い霊力の持ち主なのはたしかです。
 ぱっちりした瞳と綺麗な黒髪の、すごく可愛い女の子で、  名前は横島蛍子ちゃん・・・。
 もうべスパちゃんにも分かるよね。
 この娘はポチ・・・ヨコシマの子供で、ルシオラちゃんの生まれ変わりなんです。
 蛍子ちゃんに最初に会ったとき、パピリオは思わず泣き出しそうになりました。
 でもぐっと我慢して蛍子ちゃんと手をつなぎました。
 蛍子ちゃんの手はルシオラちゃんそっくりで、小さくてやわらかかったです。
 ひのめちゃんの話によると、蛍子ちゃんは女の子なのに理科や機械いじりが大好きなんだそうです。
 そんなところもルシオラちゃんと似てるんですね。
 それに、すごくお父さんっ子なんだって・・・。
 パピリオにははっきり言わなかったけど、ひのめちゃんはポチから小竜姫師匠あてに手紙を預かってきていたみたいです。  たぶん、前世の記憶がよみがえってこないように封印して欲しいと言う手紙だったんだと思います。
 なんだか悲しくなったけど、それも仕方ない事なのかもしれません。
 たとえ生まれ変わりでも、やっぱり蛍子ちゃんはルシオラちゃんじゃないんだから・・・。

 土偶羅様は天界中央情報局のヒャクメのところで大活躍しているみたいです。
 今日情報交換に来たジークフリード少佐がまだ悔しがっていました。
 ヒャクメは千里眼なのにじゃんけんはズルイとかいって。
 この手紙は少佐に預けます。      
 じゃあ またね お姉ちゃん!


※この作品は、A.SEさんによる C-WWW への投稿作品です。
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