『 進め!魔鈴捜索隊! 』

著者:まきしゃ


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    ギャー ギャー  ビュォォ〜〜〜
  異界空間の朝、魔鈴めぐみの自宅…
魔鈴 「んあ〜〜っ、よく寝たっ! 気持ちのいい朝ね〜〜!」
黒ネコ 『そうかニャ〜…? 風が強くて、なんだか陰気な朝だけどニャ〜…』
魔鈴 「あら、こんな日の方が、楽しいわよ?
  陰気な風に流されて、異界の変わった生き物たちが、やってきそうだわ。
  せっかくレストランがお休みの日なんだもの、異界で楽しい出来事が有った方がいいでしょ?」
黒ネコ 『そういうもんかニャ〜…』
   
  ゲゲッ! ゲゲゲェ〜 ギョワエ〜〜  ばさばさばさっ
魔鈴 「小鳥さん、ちょっと待っててね。 今、あなたの朝食を用意してるから。
  今日は死肉が沢山あるのよ。 ペットショップのおじさんが、安く売ってくれたの。
  ペット用のエサとして売っていた商品なのか、ペットショップで死んでしまったペットの肉なのかは
  わからないんだけど。 うふふ。」
   
   
  朝食後のひととき…
魔鈴 「ちょっと外に出てみましょう。 なにか居そうな気がするの。 なんだかワクワクするわ。」
黒ネコ 『あんまり気乗りしないニャ〜…』
   
  ゴポッ ゴポゴポッ! 家の前の池のところにやってきた魔鈴と黒ネコ
  パチッ! 軽く指を鳴らして、魔法で池に仕掛けていた網を引き上げる魔鈴
  びちびちびちっ! なにやら、いろんな生き物が掛かっているようだ。
魔鈴 「ほら、見てっ! 珍しい淡水メロウが掛かっているわっ!」
メロウ 『てへっ! 捕まっちゃったっ! ボクを助けてくれると嬉しいんだけどっ!』
   
黒ネコ 『美味しそうだニャ〜っ!』
魔鈴 「ダメよっ! 異界のお魚を食べたら、お腹をこわしちゃうかもしれないでしょ?
  普段、あれだけ美味しいモノを食べさせてあげてるじゃないのっ!」
黒ネコ 『美味しいモノったって、お客さんの食べ残しだニャ〜』
魔鈴 「でも、美味しいところだけ選んで食べてるでしょ?」
黒ネコ 『まあそうだけどニャ〜』
   
メロウ 『どうやら、ボク、助けてもらえるんですねっ!?』
魔鈴 「あら、ごめんなさいねっ。 この網に掛かったお魚さんたちは、小鳥さんのエサなのよっ?
  小鳥さんが食べたがらなかったら、植木の有機肥料になってもらうつもりなの。
  でも、心配しなくても大丈夫。 痛くないように殺してあげるからっ!」
メロウ 『うっ…!』
  ぷすっ! 淡水メロウくんのご冥福をお祈りいたしましょう…。
   
  魔鈴がお魚さんたちをエサと肥料により分けていたとき、一陣の強い風が吹きぬける…
  ビュォ〜〜 箒に乗った一人の魔女が、陰気な風とともに魔鈴の家の上に現れた。
  紫色の魔女の服を着た、見た目は中年のオバハン…
魔女 『ん〜? 見慣れない家が建ってるね〜 こんなところに家なんてあったっけかねぇ…
  おや、人間がいるみたいだよ? どっから紛れ込んで来たんだろうかね〜…
  ちょっと、見に行ってみるか…。』
   
  魔鈴のところに降りて行く魔女…
魔女 『あんた、いったい誰だい?』
魔鈴 「あら、こんにちは、魔女さん。 私は、魔鈴めぐみと言います。」
魔女 『ふ〜ん、あんた、人間かい?』
魔鈴 「ええ、そうですわ。」
   
魔女 『そうかい。 なんで人間がこんなところに居るのかは知らないけど、ここはあたしの縄張りでね。
  ま、あんたがここに居ても邪魔だから、あたしが人間界に戻してあげるよ。』
魔鈴 「あら、おやさしいんですね。 でも、心配いりませんわ。
  私は、ここに住んでいるんですから。」
   
魔女 『住んでいる? あんた、自分の言っていることがわかってんのかい?
  ここは魔法使いしか住めないんだよ? あんたみたいな人間が住んでいい場所じゃないんだっ!』
魔鈴 「私は人間ですけど、魔法は使えますよ? それなら、住んでもいいですよね?」
   
魔女 『魔法が使える? ふん、どうせ口先だけだろ?』
魔鈴 「これでどうかしら?」
  パチッ! パチッ! パチッ!
  魔鈴が指を鳴らすと、庭先に転がっていた石ころが、次々ときれいなお花に…
  う〜ん…、違うな…。 魔鈴の趣味同様、不気味な植物に姿を変えていった…。
   
魔女 『なるほど…。 魔法はきちんと使えるみたいだね…。
  あんた、人間には違いないが、祖先には魔女の血が混ざっていそうだね…。
  よしっ、それなら住んでもいいけど、あんたにも、魔女のしきたりに従ってもらうよっ!
  まずは、10年ほど魔法使いの長のところで、下働きをしてもらうからねっ!』
魔鈴 「えっ!? それは、困りますわっ。 人間界で仕事をしてますから、
  ここでは、働く気はないんです。 住むだけにしたいんですけど。」
   
魔女 『なんだい、ずいぶん、わがままな娘だねっ! 
  勝手に人間界からやってきて、家賃も払わず、しきたりも無視して、ここに住もうって気かい?
  そんな奴の言うことを素直に聞くほど、あたしは、やさしくないんでねっ!』
  ボンッ!
  魔女の魔法によって、子ヤギに姿を変えさせられてしまった魔鈴っ!
魔鈴 「めぇ〜〜〜っ!?」
魔女 『ふん、いい気味だよ。 あたしに、たてつくやつは、みんなこうなるのさっ!
  さ〜て、サバトの生け贄にでもするかね〜?
  ま、とりあえずは、長のとこにつれてって、下働きを20年ほどさせてやるさっ!』
   
  ビュォンッ!
  子ヤギになった魔鈴を箒にぶらさげて、飛び去ってしまった魔女…
  魔鈴ちゃん、大ピンチ〜〜!
   
   
  ウニャニャァ〜〜! 大急ぎで、ICPO事務所に駆け込んできた黒ネコ…
  でも、事務所には鍵がかかっていて留守のようだった…。
黒ネコ 『うぅ… やばいニャ〜… オカルトGメンの事務所には、人がいないみたいだニャ〜
  西条さんが留守だとすると、誰に助けを求めたらいいニャ〜?』
   
横島 「あれ? おまえ、魔鈴さんの使い魔じゃね〜か。 こんなところで、何やってんだ?」
  散歩から美神事務所に帰ってきた横島とシロ。
  ICPO事務所前でうろうろしていた黒ネコに、横島が声をかける。
黒ネコ 『おまえには関係ないニャ〜 西条さんに用事があるニャ〜』
   
横島 「(カチンッ!) かわいげのね〜やろ〜だな…。
  そ〜いや〜、てめ〜にはバレンタインの恨みも、まだはらしてなかったなっ!
  シロっ! こいつを捕まえろっ! 事務所で、西条への用事を白状させてやるっ!」
シロ 「なんだかわかんないけど、わかったでござるっ。」
黒ネコ 『うにゃぁ〜っ!?』
   
  美神事務所 鳥かごの中に押し込められて詰問されている黒ネコ…
キヌ 「あああ…」
令子 「魔鈴が西条さんに、どんな用が有るってゆ〜の? あんた、白状した方が身のためよっ?」
黒ネコ 『ここの事務所の人間は、汚れた存在ニャ〜
  そんな人間には、口が裂けたって言うわけにはいかないニャ〜〜っ!』
   
令子 「口を裂くですって? そんな残酷なことなんか、しないわよ?
  言わなければ、言うまであんたのシッポを1cmずつハサミで切っていくだけよ…」 シャキンッ!
黒ネコ 『ふぎゃっ!? い、言うニャっ! 言うからシッポを切らないで欲しいニャっ!』
令子 「素直でよろしいっ。」
   
黒ネコ 『そ、その〜…、魔鈴ちゃんが異界の自宅で魔女に子ヤギにされて、さらわれてしまったニャ〜…
  それで、西条さんに助けを求めに来たニャ〜…』
キヌ 「えっ!? 魔鈴さんがっ!? 大変っ!
  美神さん、助けに… うっ…!」
   
  令子たちの方に視線を移した瞬間、言葉に詰まってしまったおキヌちゃん…
  横島といえば、苦笑いしながら首を細かく横に振っているし、令子の表情といえば…
  いや…、美神さんの表情は、見なかったことにしようと心に誓うおキヌちゃんであった…。
   
キヌ 「黒ネコさん、ごめんなさいね…。
  うちの事務所では、事情があって魔鈴さんを助けにいくわけにはいかないの…。
  私が、他のGSに頼んであげるからね。」
  そういって、黒ネコを自室に連れて行くおキヌちゃん…
   
  おキヌちゃんと黒ネコが退出したあとの事務室…
シロ 「先生…、なんで魔鈴どのを助けに行かないんでござるか…?」
横島 「まぁ、その…、できれば俺も助けに行きたいんだけどね…。
  ほら、魔鈴さんは、美神さんの天敵だから…」
   
シロ 「魔鈴どのを見殺しにするんでござるのかっ!?」
横島 「いや…。 今、おキヌちゃんが他のGSに頼んでくれているから…
  唐巣神父や、エミさんたちが助けに行けば、たぶん大丈夫…
  それに俺が助けに行くには、まず美神さんと戦って倒してからじゃないと無理だし…」
令子 「しっ! 静かにしてっ! おキヌちゃんの電話の声が聞こえないじゃないのっ!」
横島 「あんた…、盗聴してるんかい…」
   
  おキヌちゃんの部屋
キヌ 「もしもし、唐巣神父さんですか? その、魔鈴さんが大変なんですっ!
  自宅の異界空間で、魔女にさらわれちゃったそうなんですっ!」
唐巣 「なにっ!? それは、まずいなっ。 誰か助けに行くことになっているのかい?」
キヌ 「西条さんは、出張中らしいですし、美神さんは、その…、ごにょごにょ…
唐巣 「………、たしかに、美神くんに期待できる用件ではないな…。
  私の方も、今から除霊を始めるところなので、すぐには行けないんだが、
  こちらの仕事は私一人でもできるから、ピートくんを応援にそちらに行かせることにしよう。」
キヌ 「はいっ。 お願いしますっ。」
   
  その他のGSにも電話したおキヌちゃんだったけど、みな仕事中だったり、繋がらなかったりして、
  今すぐ救助に向かえるのは、ピートだけであった…。
キヌ 「ごめんなさいね、黒ネコさん…。 みな忙しいみたいなの…。
  その…、ピートさんだけでは大変だから、私も一緒に助けに行くわね…。」
黒ネコ 『お願いするニャ〜!』
   
  盗聴していた令子たち…
横島 「なに〜〜っ!? おキヌちゃんがピートと二人きりでだと〜〜っ!?
  許せん〜〜っ! 俺も、一緒に行かなきゃっ! ぶっ!?」
令子 「あんたは、私と一緒に行くのよっ!」
横島 「えっ? どういうことっスか…?」
令子 「さすがに、おキヌちゃんが助けに行こうとしてるのを、無理に引きとめるわけにはいかないわ。
  そこまでしたら、おキヌちゃんに嫌われちゃうからね。 魔鈴はどうでもいいけど。
  でも、おキヌちゃんとピートだけでは、なんだか危なっかしいわ。
  だから、おキヌちゃんが異界に行ったら、私たちはその後をバレないようについていくのよ。」
   
横島 「それなら、一緒に行けばいいのに…。」
令子 「なんで? 私の目的は、おキヌちゃんを守ることだけなのよ?
  一緒に行ったら、私も行きがかり上、魔鈴を助けなきゃいけなくなっちゃうじゃないの。
  魔鈴の救助は失敗しちゃって、なおかつおキヌちゃんは無事に戻ってくるのが
  私にとって、一番都合がいいことなんだもの。」
横島 「俺も、魔鈴さんを助けたいっスけど…。」
令子 「だから、私と一緒に行かなきゃダメなのっ!
  おキヌちゃんと一緒に行ったら、あんたまで魔鈴を助けようとしちゃうでしょっ?」
横島 「まあ、そうですが…」
  いざとなったら魔鈴さんを助ければいいやと思って、無理に逆らわない横島…
   
  事務室に戻ってきたおキヌちゃん
キヌ 「あ、あの…、美神さん…、魔鈴さんは、ピートさんが助けに行くことになりました…。」
令子 「ふ〜ん…、そうなの…。」
キヌ 「えっ、えっと…。 その、私、ちょっとお買い物に行って来ますね…。」
令子 「ふ〜ん…、ネクロマンサーの笛を持って…?」
キヌ 「うっ…! い、いえ、ほら、お買い物で遅くなっちゃったら、今日の仕事場に
  直接行かなきゃいけなくなるかもしれないし… (汗)
  あっ、早く戻れるように、すぐ行かなきゃっ。 その、行ってきますっ。」
  パタパタパタッ! 急ぎ足で事務室を後にするおキヌちゃん。
   
横島 「あ〜あ、バレバレのウソついちゃって…」
令子 「さっ、横島クンっ。 私たちも行くわよっ。 シロとタマモは、仕事の方をよろしくねっ!」
シロ 「えっ!? 拙者たちも一緒じゃないんでござるかっ!?」
タマモ 「仕事は、いつもみたくキャンセルするんじゃないの?」
   
令子 「あんたたちまで連れてくと、魔鈴の助かる確率が上がりそうだからねっ!
  それに、今日の仕事は簡単だから、あんたたちに任せるわっ。」
シロ 「でも…、拙者たちだけで行ったら、依頼主から変に思われるでござるよ…?」
令子 「それもそおね…。 そうだわ、タマモっ! あんた、私に化けなさいっ!」
タマモ 「えっ!? 私が美神さんにっ!?」
   
令子 「そうよっ。 あんたが化けたなら、依頼主も騙せるわっ。
  そのかわり、お金の相談は後日ってことで、適当にごまかすのよっ!?」
タマモ 「ま、まあ、やってみるけど…」
シロ 「タマモと二人だけで、やるんでござるか…。 なんか不安でござるが…。」
令子 「今まで通り、普通に除霊すればいいだけよっ。 
  もし失敗なんかしたら、どうなるかはわかっているわよねっ!?」
シロ 「わ、わかってるでござる…。」
   
   
  魔法レストラン・魔鈴
ピート 「他のGSの人たちは、まだですか?」
キヌ 「そ、その…、今来れるのは私たちだけで…」
ピート 「そうですか…。 たしかに美神さんは、恩師の唐巣先生を助けるときでさえ、
  お金にならなければ、手伝おうとしなかった人ですからわかるのですが、
  他のGSの人たちは、もっと、いい人だと思ってたんですが…」
   
キヌ 「あっ、連絡のついた人は、みな仕事が終わったら駆けつけてくれるそうなんです。」
ピート 「そうですかっ! そうですよねっ! ああ、よかった。
  みんなが美神さんみたいにな人になってしまってたら、
  どうしようかと思いましたよ。 ははは…。」
キヌ 「え、ええ…。(汗)」
   
  レストランの外で、中の様子を伺っている二人…
令子 「くっ…! ピートのやつ、私のことをそんな風に見てただなんてっ!」
横島 「そう見るのが普通だと思いますが…。
  でも、美神さん…、ここにも盗聴器つけてたんスか…?」
令子 「レストランにつけるのは、簡単だったわよ?」
   
   
ピート 「それで、どうすれば魔鈴さんのいる異界に行けるのですか…?」
キヌ 「えっと、その…、黒ネコさん、どうすればいいんですか?」
黒ネコ 『ボクの場合は、ボク専用の通路があるニャー
  ただ、人間の大きさじゃぁ、大きすぎて通れないニャー』
   
ピート 「ああ、それなら大丈夫ですよ。
  僕がバンパイア・ミストになれば、おキヌちゃんを連れて行けますから。」
黒ネコ 『わかったニャー。 それじゃー、ボクの後をついてくるニャー』
ピート 「おキヌちゃん、用意はいいですねっ?」
キヌ 「はいっ。 お願いしますっ!」
   
  ボッヒュンッ! 霧になって、黒ネコの後をついていく二人…