『文珠のヨロイ』

著者:まきしゃ


美神事務所
  六道母 「令子ちゃん〜、お願いよ〜。
おキヌちゃんが入学して以来、生徒たちが令子ちゃんの実技指導を
いつ受けられるのか、首を長くして待ってるのよ〜。
そろそろ、来て欲しいんだけど〜」
  令子 「そうですね、それでは来週にでもお伺いしますわ」
  六道母 「ありがとう、令子ちゃん〜〜〜」
 
  キヌ 「えっ、美神さん、講師で来てくれるんですか〜。わ〜い、楽しみ〜!」
  横島 「うぐ〜、じょしこーに、行きたい〜〜〜行くんだ〜〜〜
美神さん、お、俺も連れてってください〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 
  令子 「いいわよ。来るなと言っても、物理的に不可能だしね。
助手がいたほうが、便利だから」
  横島 「や、やったー!じょしこーせーに会える〜〜〜〜!!」
 
  キヌ 「うっ。横島さんが来てくれるのは嬉しいんだけど、なんだか不安!」
  令子 「心配ないわ、おキヌちゃん。シロとタマモも連れて行くから」
  六道母 「私は心配です〜〜〜〜」
 
六道女学院正門
    手錠と首輪をかけられている横島:首輪の鎖を持っているシロ
  横島 「こんなん詐欺やぁ〜〜〜ナンパしに来たのに〜〜〜」
  令子 「あんたねぇ、これは仕事なのよ。仕事しないなら帰すからね」
  六道母 「これなら安心ですわ〜。よろしくお願いしますわね、令子ちゃん〜」
 
  横島 「シロ、おまえ俺の弟子だろ?見逃せ〜」
  シロ 「横島先生を見張るのが、美神さんから与えられた拙者の仕事で
ござるから…それに拙者も、じょしこーせーを追い掛け回す先生を
見たくないでござる…」
 
  横島 「タマモ〜、ビデオ撮ってるんじゃね〜俺は犯罪者じゃないんだぁ〜」
  タマモ 「私の仕事は、これだって言われたの…」
  令子 「私が講師をするビデオよ!GSファンには2〜3万円で売れるのよ!」
 
  横島 「うぅ…、ヒーロー伝説が、これから始まる予定だったのにぃ…」
  令子 「ま、あんたにもヒーローになるチャンスをあげるから、しばらくは
おとなしくしてなさい」
  横島 「信用できんわ!」
 
テニスコートの魔法陣の前 体操服の生徒達
  令子 「みなさん、こんにちは。今日は攻撃系の道具の使い方を指導しますね」
  「おねーさま…(ぽ〜)」
  一文字 「おい、あそこに居る奴、横島か?」
  キヌ 「ああぁぁ…」
    テニスコートのネット用鉄柱に鎖を繋ぐシロと、つながれている横島
  横島 「俺は飼い犬かぁ?」
  シロ 「…せ、せんせい、ご同情申し上げるでござる…」
 
  令子 「まずは神通棍ね。普通に使うなら棒状なんだけど、
私が念を込めて使うと…」
    横島に向かって伸びるムチ状の神通棍
  生徒達 「おぉ〜〜〜!!」
  「すごいわ、さすがだわ!!」
 
    ムチをよける横島
  横島 「キャイ〜ン〜〜〜!!」
  シロ 「先生、犬じゃないんでござるから…」
  キヌ 「よこしまさ〜ん…」
 
  令子 「じゃぁ、一文字さん、ちょっと来てくれる?」
  一文字 「えっ、わ、わたし?」
  ムッ(なんで、私でなくてあなたなの?)
  令子 「一文字さんは、霊的格闘で角材を使ってたわね。
神通棍は、そういう人に向いている武器だわ。ちょっと、念を込めてみて」
  一文字 「は、はい」
  令子 「ん〜、まだ霊力が伝わりきってないみたいね。
もっと、自分の体の一部だと思って!」
 
  一文字 「はい」 キン
  令子 「うん、そんな感じね。そのまま思いっきり、横島クンを殴り倒してみて」
  一文字 「えっ?」
  横島 「美神さん〜、そんな恐ろしい事をさらっと言わんでくれ〜〜〜」
  令子 「あんたは黙って殴られてなさい。反撃しちゃだめよ」
  横島 「ひ〜〜ん、あんたは鬼じゃ〜」
  シロ・キヌ 「あぁぁぁぁ…」
 
  一文字 「思いっきりで、いいんですか?」
  令子 「思いっきりじゃないと、練習にならないでしょ?
横島クンのことは心配いらないわ。殴られるのは慣れてるから」
  一文字 「わかりました。では、横島さん、覚悟!」
 
  一文字 「うおらあぁぁぁ〜〜〜」
  横島 「ひぃぃぃ〜、サイキック・ソーサー…」
    ぼんっ 神通棍を霊的盾で防がれ、はじき飛ばされる一文字
 
  令子 「一文字さん、大丈夫?」
  一文字 「だ、大丈夫です」
  令子 「そぉ?よかった」
 
  令子 「こらっ、横島!」
  横島 「だってだって、怖いじゃないっスか〜。殴られたら痛いんですよ〜!
俺、自分を守ろうとしただけっスよ〜!」
 
  令子 「だからといって、まともにはね返す奴があるか。こんバカッ!
こういう場合は、斜めに受けて力を横にそらすのよ。
次もミスったら、ただじゃすまないからねっ!」
  横島 「うぅぅ…」
 
  令子 「次は、弓さん」
  「はいっ(どきどき キンッ!)どうでしょうか」
  令子 「さすがね。霊波がそれぐらい出てれば、実戦でも使えるわよ。
じゃぁ、殴ってきて。」
 
  「一文字さん、私の実技をよく見て参考になさってくださいね!」
  一文字 「へいへい。わかってるよ。」
  「行きます!」
  横島 「またまた、ひぃぃぃ〜」
    素早く動く横島
  (えっ?フェイント?!)
 
    あっさりかわされ、ころぶ弓  ズザザザァァァ〜
  「そ、そんな?」
  一文字 「おいおい、参考になんねぇぞ〜」
  キヌ 「横島さん、すごい。」
 
  シロ 「さすが先生でござる。相手を欺く動きは、拙者にも予想がつかなか
ったでござるよ。」
  横島 「いやぁ〜、最初は神通棍を避けることしか考えてなかったんだけど
迫り来る弓さんの太ももに、思わず目がいっちゃって…」
  全員 「……」
 
  令子 「次は、おキヌちゃん」
  キヌ 「えっ、私、神通棍は…」
  令子 「いざというとき、使えないと困るでしょ?」
  キヌ 「はい・・えい!……あれぇ?」
  令子 「遊びじゃないのよ!もっと、気を入れてっ!!」
  キヌ 「は、はいっ!」 キン
 
  令子 「やればできるじゃない。じゃぁ、殴ってきて!」
  キヌ 「えっ?私もですかっ?」
  令子 「そうよ?前の二人のを見てたでしょ?」
  キヌ 「え、えっと、そういうことじゃなくてぇ…」
  令子 「やりにくいのはわかるけど、あいつも盾で防いでるんだから心配無いわよ。
嫌なら、私がかわりに思いっきり殴るけど、いい?」
  キヌ 「あぅ…、や、やります…」
 
  横島 「うわっ、おキヌちゃんだけには殴られたくない〜〜〜!!
シロっ!どうにかしてくれ〜〜〜〜!!」
  シロ 「拙者に言われても…文珠でなんとかならんのでござるか?」
  横島 「そ、そうかっ!」
 
  キヌ 「横島さん、ごめんなさい〜〜〜!」
  横島 「い、いまだっ!」 ぼんっ
  キヌ 「きゃあ?」    ズルッ! ぐしゃっ!
  シロ 「せ、先生?」
 
  令子 「あんたね〜、いくらおキヌちゃんに殴られたくなかったとはいえ、
こんなにでかい落とし穴、あけることないんじゃない?」
  シロ 「先生、文珠で地面に穴をあけて隠れようとしたんでござるか。
おキヌちゃんに殴られなくて、よかったでござるなぁ〜〜」
  タマモ 「でも、しっかり踏まれてるわよ。」
 
  キヌ 「あぁぁ、横島さん、大丈夫ですか?」
  横島 「おキヌちゃんに殴られなかったら、それでいい…」
    穴は文珠の(戻)で、元通りに
 
  令子 「次!」横島「ひぇ〜」令子「次!」横島「うわ〜」
 
  横島 「ぜぇぜぇぜぇ〜」
  シロ 「先生、さすがでござる。全員の攻撃をよけ切ったでござるよっ!」
  横島 「うぅ、でもこんなんじゃ、ヒーローへの道が遠のく〜〜」
  シロ 「そうでもなさそうでござるよっ」
 
  キヌ 「横島さんって、すごいでしょっ!?」
  一文字 「ああ。バカでスケベなだけかと思ってたけど、あれだけ攻撃を
かわせるなんて、たいしたもんだぜ。」
  「まぁ、美神さんの助手ですからあの程度は出来て当然ですわね。」
 
  横島 「おぉ、じょしこーせーのヒーロー横島…ぶっ」
    美神に殴られる横島
  令子 「シロ、横島クンに変なこと言わないほうがいいわよ。
こいつの仕事は、これからが本番なんだから」
 
  雪之丞 「よっ、面白い見世物みせてもらったぜ」
  横島 「ゆ、雪之丞…」
 
  横島 「貴様、なんでじょしこーに居るんだ〜〜〜〜?
じょしこーせーは、み〜んな俺んだからな〜〜〜〜!!」
  雪之丞 「ん?美神の大将、こいつにまだ話してねぇのか?」
  令子 「先に話すと、逃げちゃうでしょ?」
  横島 「えっ?なに?」
 
  鬼道 「みんな〜、観客席に移動しろ〜。美神さん、ええやろか?」
  令子 「ええ。いつでもはじめて」
 
  鬼道 「はい。みんな〜注目〜〜〜
こちらのお二人が、本日の霊的格闘の模範試合を行ってくれる、
伊達さんと横島さんや」
  横島 「えぇ?」
  雪之丞 「ふふふ。久々に、腕がなるぜ!」
 
  鬼道 「みなも知っとるとは思うが、この二人は全国でもトップクラスのGSや。
みな、トップレベルの格闘をよく見て参考にしてや」
  横島 「おぉ、ヒーローの予感が!」
 
  鬼道 「ほな選手紹介や。こちらが伊達雪之丞さん。
現在、弓かおりの実家で仕事をされている」
 
  横島 「なにぃ〜〜?おまえ、いつのまに入り婿なんかになったんだぁ〜?
弓さんは、俺のもんやぁ〜〜〜!」
  雪之丞 「ち、ちがっ…お、俺一人で仕事を捜すのがめんどうなんで、
弓んとこから、仕事を回してもらってるだけだ…」
 
  一文字 「へぇ、あんたら結構うまくいってるんだ」
  キヌ 「うらやましいんだぁ〜」
  「な、そんなんじゃありませんっ!仕事が無くて困ってらしたから、
うちの仕事を少しわけてあげてるだけですわっ!!」
 
  鬼道 「伊達さんの得意技は、魔装術や。霊力を物質化してヨロイに
変える技で防御能力が抜群や。
 
    こちらが横島忠夫さん。さきほどから手伝っていただいとるように、
美神さんの助手をされている。
    得意技は文珠で、霊力を文字に込めて使い分けることができる。
うまく使えば、天下無敵や。」
 
  キヌ 「横島さんが先生に誉められてるっ。えへへ、なんかうれしいなぁ〜」
 
  シロ 「なんか、二人ともすごい人間に思えるでござるよ」
  令子 「すごい奴らと思われといた方が、ビデオは高く売れるからね。」
 
  鬼道 「ほなお二人さん、実戦に入る前に生徒にも真似の出来るような技を
1つずつ実演してもらえんやろか」
  雪之丞 「おぅ、いいぜ。おい、横島。そこで的になってろ」
  横島 「えっ?わわっ!」
    いきなり強力な霊波砲放射、サイキック・ソーサーでよける横島
 
  横島 「ひ、ひぇ〜、いきなり何するんだぁ〜〜〜」
  雪之丞 「てめ〜なら、簡単によけれるのはわかってたから、思いっきり
やらせてもらったぜ、いいだろ?」
    生徒達に向かって
  雪之丞 「おう、おめ〜ら、今俺がやった攻撃の意味、わかるか〜?
敵に会ったら、はなっから全力で戦えってことだ〜!」
 
  シロ 「なんか、拙者に向いてる戦い方でござるよ」
  令子 「あいつらしいわね。たしかに、この方法は戦いの基本だわ。」
 
  横島 「今度は、俺の番だぜ」
  雪之丞 「おう、やってみな」
  横島 「あっ、弓さんの太もも!」
  雪之丞 「えっ!」
    横を向いた雪之丞の鼻先をかすめて飛んでいくサイキック・ソーサー
 
  横島 「てめ〜なら、簡単によけれないのはわかってたから、少しだけ
はずさせてもらったぜ、いいだろ?」
    (クーッ、なんてかっこいいんだ、俺ってばっ!!)
  雪之丞 「て、てめぇ〜」
 
  生徒達 「な〜に、いまの。すっごくヒキョーじゃない?」
  生徒達 「汚いわよね〜」
  生徒達 「あんな手、使いたくないわよね」
    ブーイングの嵐…
  「最っ低!」
  キヌ 「は、恥ずかしい…」
 
  横島 「あ、あんたらヒキョーとか言うけどな〜、実戦で負けたら死ぬんだぞ〜!
死んだり、痛い目に会うぐらいなら、ヒキョーのほうがいいんだ〜〜〜!!」
    ブーイングの嵐…
  横島 「そ、それに、この戦い方は美神さんに教わったんだぁ〜!
美神さんは、自分が生き延びるためなら他人を盾に使うんだぞ〜!
    魔族も舌を巻くほど悪どい戦い方をするのが、美神さんなんだぁ〜〜!!」
    ざわざわざわ…