escape from gravity
「よ〜し、これでヤンキー共と話しも通じる事になったな」
浪速弁と山形弁と博多弁、あと鹿児島弁も飛び交うシャトルという不思議な空間で事情を説明し始めるヨコシマン(仮名)。
「すいません毛利さん(仮名)と向井さん(仮名)。実は、俺には月に離れている恋人がいるんです、その恋人が逢いたいのでこんなことを(以下略)」
「え?どういうことなんだね」
どうみても地球人のヨコシマン(仮名)に何故に月に恋人がいるのかと問いに、某国からロケットで月に行って悪魔と戦った事を説明する。
流石に人知れず、しかも僅かな人員だけで月まで行き、人類の為に戦った戦士がいた。こんな美談に偽善大国アメリカは弱かった。本当は皆どうでもいいようと思ってる、キューバの鼻たれ小僧にあれだけ国を上げて騒ぐのだ。実は人知れずに人類を救っていた英雄が女性の為に罪を冒してまでも・・・・・・。
感動と傍沱の涙にくれたキャプテン以下は、月への進路変更を確約してくれた<補足1>。
それならまだ良かったのだが、地球の美神達にはまだ・・・。その時、月に残れなかった原因を説明したのが不味かった。
月も残れなかったのは、人道的に問題があるほどの薄給で鬼のように自分を働かせている日本でナンバーワン強欲ゴーストスイーパー美神令子(仮名)が己のドジで負傷してしまったので、流石にどんな人非人とは言えども女を見捨てる理由にもいかずに、おまけに見捨てると七代祟りそうな執念深い蛇のような女の事。月に残した彼女も一緒に呪われては大変と、彼女の為にも涙を呑んで、彼女を守る為に地球に帰還した事を思い切り美談にして聞かせる。
ドグワシャーン バチバチバチ
同じ頃、人間の皮を被った鬼だ 畜生だ カネゴンだと、世界中継で思い切り暴露された人物が所長をしている事務所のテレビが、霊力全開の神通昆の一閃で爆発四散していた。
おまけに横島は自身の置かれている労働環境を世界に知らしめられたので、アムネスティ(世界人権擁護団体)や労働基準監督所から呼び出しの電話がひっきり無しに鳴り響いていていた。
「うふふふっふふふふふうふふふふふふふふふふ」
電話線を全てハサミで切った事務所に、とっても無気味な笑い声が聞こえ、運悪く戻って来ていたシロとタマモは思わず壁まで後ずさった程だ。
恐怖の元は無論人間の皮を被ったと言われた美神令子その人。意地っ張りで良い格好しいで、体裁と対面を気にする彼女が宇宙中継でそんな事を言われたらばどうなるか・・・・・・・。
カチャカチャカチャカチャ
パソコンのキーを鬼々迫る表情でタイピングする。尚この場面は[虫よさらば]参照の事。
「あの美神さん」
何とか気力を搾って美神に進言する。
「多分以前のようにICBM(大陸間弾道弾)で攻撃を考えているんじゃないかと思うんですけど・・・」
前述[虫よさらば]参照。
「でも、ICBMは地上の非戦闘員だけは虐殺出来ますけど、高度約350キロを周回軌道マッハ23で飛んでいるシャトルを撃ち落とす兵器はどこを探してもありませんよ。TMD(ICBM迎撃ミサイル構想)の配備は10年以上先ですから、幾ら軍事コンピューターに不正ハッキングしても駄目だと思いますけど」
やたら詳しいオキヌに見守っていたシロとタマモが「オキヌちゃん兵器オタク?」と精神的距離を取ることにする。
しかし美神はオキヌの目の前で、ヤンキーのように人差指を チッチッチとワイパーのように振って見せる。
「ふっふっふ。甘いわねオキヌちゃん。石橋を叩いて渡るあたしが用意していないと思っているの」
「でも現在の科学では・・」
オキヌを制する。
「よ〜く考えてよオキヌちゃん。あの今回の事件で横島の馬鹿が向かおうとしている月の迦具夜姫は誰に似ていたかしら」
「え?似ているというよりは、あからさまにイスカ○ダルのス○ーシャのパクリだと思いますけど。それが何か?」
「その通り。じゃあ行くわよオキヌちゃん シロ タマモ。さて問題です、早押しです」
「え?」
「え?」
「なんでござる?」
行き成りクイズ番組が始まって着いていけない三人だが、サッと美神が振り上げた手に持った物には見覚えがあった。
「そ それは伝説のゴ ゴ ゴ 」
「そうよ、銀一さん経由で手に入れたのよ。柳○博さんの使っていた伝説の・・・」
皆クイ○ハンターには燃えていたので、ゴールデンハンマーを出されると、何の疑問も消え失せて回答者席に座る三人であった。
回答者席に座っているオキヌ シロ タマモに問題を出す。どうやらこれも、こんな事もあろうかと用意していたらしい。満員の客席のカキワリまで人口生命一号によって配置されて、事務所はいきなりテレビスタジオの様相を呈している。
「最終問題です」
ガシ
三人が早押しボタンに手を掛ける。皆燃えている。
オキヌはタマモの持っている熱海の聚楽宿泊券をハンターチャンスで取ろうとしていた。
シロはスーパー美神君で逆転を狙っている。
タマモは手を叩きながら「ある!ある!ある!ある!」と叫んでいた。
{すいませんが、もう少しつきあってください(作者祈願)}。
「イスカンダルと 言えば。その二重連星の兄弟星とも言えるガミ○ス星には専制君主の・・」
ピンポーンという音と共に、シロの被っていた派手なシルクハット帽子から札が上がる。「ニューヨークに行きたいでござる」と叫ぶシロ。
「デス○ー総統でござる」
「デ○ラー総統がいますが」
美神が問題を続ける。
「うう、ずるいでござる」
お手つきのシロはバッテンのついたマスクを付けさせられた。
「○スラー総統と言えば・・・・・・・今度は二人とも引っかかりませんね。じゃあ問題を続けます」
「その前線基地であった木星の浮遊大陸を・・・」
ミリオーンスロットとタマモが叫ぶ。
「波動砲!!」
「さあ波動砲があるかな?」
美神が机に斜めにもたれ掛かりカメラの方を指さす。
あるあるあるあるあるある
会場のお客さんのカキワリが上下に動き、人口生命一号の造り出した拍手が鳴り響く。が、ブーという音と共に画面にバッテンが出て、美神にバッテンの付いた札を持たされたタマモの椅子が回る。
「では問題を続けます。浮遊大陸を破壊した後に、ヤ○トは冥王星のガミラ○基地を撃破しましたが、その時にガ○ラス冥王星基地が持っていた兵器によって非常に苦戦してしまいました。さてその兵器とは
1 エメリウム光線 2 絶対零度砲
3 ロケットパンチ 4 反射衛星砲
「う・・・・・・・あ、あのテレホンいいですか?」
自分では分からないので、許可を取って実家に電話をかける。
「ああ、早苗お姉ちゃん(以下略)」
「さあ、正解をどうぞ」
「よ 4番 反射衛星砲です」
「確定です。もう一度」
「四番 反射衛星砲!」
しーんとして、オキヌの呼吸音だけが響く会場。
ピンポンピンポーン
行き成りライトが点いて会場を目映い光に包まれた。歓声が響き渡り、楠玉は割れて紙吹雪の乱舞であった。
「やったやった。トラベルチャンスだ〜」
手を叩いて喜ぶオキヌであったが、いつのまにか事務所は今までの事が全て幻であったように静まり返っている。
「あの、美神さん。トラベルチャンスは?それに次は文学歴史の50をお願いします」
美神は先程と同じようにパソコンに向かっていた。
「ええい。いつまでもこの筆者の馬鹿な趣味に付き合っていられるかっての。話を戻すの!!」
そんな〜と残念そうなオキヌをはんば無視する美神であった。一度はハワイに行きたかったらしい。憧れのハワイ航路で、ウクレレ持って、出来れば高木ブーさんも一緒に。<注9>
「それで、たった一言の為に物凄い長い前振りで、ようやく搾り出した反射衛星砲がどうらしたんですか?」
聞くが薄く笑っているだけで答えない美神。しばらくの後に勿体つけて、最後の実行キーに手をかける。
「先刻も言ったけど、月の迦具夜姫はイ○カンダルのスター○ァにそっくりよね」
「ええ、もろパクリですけど」
「本来は14万8千光年離れてないといけないのが、たかが36万キロになったなら・・・」
14万8千光年は銀河系と大マゼラン星雲の距離で、36万キロは月までの距離。
「なったなら?」
「43億5千万キロがお隣さんになるぐらいになる方がまだ許されるわよね〜」
43億5千万キロは太陽と冥王星の軌道との平均距離だ。そんなことまで分かる理由は無いので、呆気に取られるオキヌを意味深に微笑んだ美神は置いていた指に力を込めた。
「あ それ!ポチっとな<注10>」
生憎と狼と狐はいるが、豚はいないのでさっきの×ゲームで代わりに表の街路樹に登らされるシロがいた。
ゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴオッゴッッゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「な なんだ?」
美神事務所の隣の、オカルトGメン事務所では、昨日のダンベルにより鼻にバッテンばん創膏の西条が突然の地震?に思わず机の下に潜りこんだ。これで上から落ちてくる物からは体を守れると思ったが、事務所の入ったビルが真中から、まるでコンビニサラダに着いてくる中折りするように割られては無駄であった。開かれたポッカリと開いた地下の巨大空間に落ちていく西条。
代わりに巨大な地下からは、どこかで見たような巨大な列車砲のような物が迫り上がってきた<注11>。
「ああああああ」
事務所の窓から隣を見ていたオキヌが、流石に本当に現れた反射衛星砲には腰を抜かした<注12>。
「ふっふっふ。北○鮮軍がテ○ドン発射に、個人的に備えていたコレが役に立つ日が来ようとは」
どこの誰からどうやって買ってきたのか知らないがきっと金にあかして入手したのだろう?、きっと倒産したウエ○トケープコーポレーションあたりから買い叩いたに違いないと腰を抜かしながらも確信するオキヌ。
『ハンシャエイセイホウ エネルギージュウテン ヒャクニジュッパーセント ハンシャエイセイ ゴバン サンバン ナナバン ミラーテンカイ カンリョウ モクヒョウ スペースシャトルコロンビア カウントダウン カイシ』
電子合成音を、陶酔しながら聞く美神であった。
流石にそれだけは、涙ながらに止めるオキヌであった。
多分ヤマ○でも数発くらっても撃沈しなかったぐらいなのだから、これで横島が死ぬとは思えない。多分他の宇宙飛行士だけが死にそうだ。
「別にアメ公なんか幾ら死んでもいいじゃないの。アメリカにはアメリカ人は沢山いるわよ」
映画[素晴らし○飛行機野郎]の悪漢のような台詞を吐く美神。オキヌもそれには納得するが。
「私も毛○程度なら何匹死んでもいいですけど、今回のシャトルのミッションには毛利さん(仮名)と向井さん(仮名)も乗り込んでますから、二人に何かあったとバレると不味いですよ」
流石に美神も同じ同国人を殺したりすれば、なにがし問題だと思い留まった。
それに何より今回乗り込んでいる向井さん(仮名)の旦那 チョコボール向井(仮名)は恐そうだ。怒らすとガ○ドロアで撃たれそうな髪型をしていたから。<注13>
注9 クイズ番組。言わずとしれたバーコード柳生さんのやっていたクイ○ハンターであるが、筆者の田舎ではやっていなかったので詳しい内容は分からない。
シロのやっているのは世○!不思議発見だろうが、きっとシロは野々○誠の役だろう。頭の派手なシルクハットは無論アメリカ横断ウル○ラクイズの物。
タマモのやっているのは、白髪を全て黒に染めた後、わざわざ前の方だけさらに白髪に染めている関○宏のクイズ1○0人に聞きました。
最後の四択問題は今フ○テレビでやっている、もろアメリカの企画を買ったクイズ$ミリ○ネアで、分からない問題があると家族に何問か聞いていいらしい。ちなみに筆者は親父が公共事業で談合癒着汚職をしているみ○もんたが嫌いなので見たことが無い。しかし本家が一等賞金一億なのに、その十分の一とはなさけないぞフジ○レビ。社員とネ○チューンの淫行疑惑をひた隠しなんかやってる暇があったらスポンサー探せよ。お前ら神奈川県警の不祥事を報道している場合じゃないだろう。
後クイズタ○ムショックとクイ○グランプリ、クイ○ドレミファドン、クイズ世界はショウバ○ショウバイも少し入っていた。
注10 タイ○ボカンシリーズでお馴染み。ボヤ○キーさん役が必殺兵器を発射するときの決めの言葉。このごろ始まったキラメキ○ンは、昔にこだわった作りで懐かしいやら物足りないやらで評価に困る。しかし小原さんを中心にしたトリオの掛け合いは絶品。
注11 WWII でドイツ軍が開発していた列車軌道を使って運ぶ超重量遠距離大砲。キャタピラのトランスポーターで運ぶ大砲の5〜10倍の射程があったと伝えられているが、資料が殆ど残っていないので定かでは無い。形が知りたい方は 新谷○おる著 戦場ロマンシリーズに一カットだけ出ていたのでマンガ喫茶あたりで探してみたらよろしかろう。
注12 いわずもがな 宇宙戦艦○マトで○ミラスの冥王星基地が使用した兵器。ビームを複数の衛星についた四枚の鏡?と思われる衛星のミラー角度を可変することによって砲自体が星の地表面に隠れて見えない所を狙い撃てるとっても便利なビーム兵器。子供の時に見ていたときは凄いを思ったが、何故に鏡で無い部分は壊れないか非常に疑問であった。それでもトップ○狙えのガン○スターに出てきた、ホーミン○レーザーの荒唐無稽よりはずっとマシだったろう。あれはちゃんと科学的に解説していたようでいて、実は嘘ばっかりでバケガク好きな私には最悪のSFだと思っていたが、最終回の地球の明りのシーンには思わず泣いてしまって悲しかった。
尚この前読んだ 空○科学読本 柳田理○雄著 役に立つのか 超科学技術によれが、鏡の反射率は絶対100%にはならないで、反射しないエネルギーだけで鏡を割るには十分だと知り・・・・・ちょっと残念な著者であった。
注13 ガンド○ア。これを知らない人は多いだろうが、かの御大ガンダ○富野さんのターンAガンダ○を遙に超えた、初期の大失敗作品と言われている?伝説巨○イデオン 発動編でイデ○ンを葬り去った超超重装備エネルギー兵器。何しろ超新星の放出するエネルギーを収束させてブッぱなすのだ。よくこんな物を考えたと大河原さんだっけ?偉いと思う。
本来は民間のエネルギー発掘プラントであったらしい。民間から徴用したのが、作中一番の災禍最悪馬鹿女カルラの親父で、娘を異星人に寝取られたのでトチ狂って人類を破滅に追いやった親父の髪型はチョコボール向井さんに似ていたので、あれからチョコボールさんと向井さん夫婦を見る度に思い出す筆者であった。
ちなみに形は歪な形の蜘蛛と言うところだ。筆者は映画館に見に行った時に、前の席の親子ずれの多分幼稚園ぐらいの子供が、超新星をバックに現れたガン○ロアを見て泣いていたので、折角入り込んでいたのに興冷めしてしまった。是非とも今度は凄い兵器でも恐い格好でなくてミッ○ーマウ○か、キ○ィちゃんのように可愛いデザインにしてほしいものだ。それも恐いと思うが。
補足1 尚スペースシャトルが月に行くとあるが、シャトルの最大高度はHST(ハッブルスペーステレスコープ)のランデブーポイントである高度約800キロが限界とされている 通常装備では勿論、外部ロケットブースターを点けても、シャトルが宇宙に運べる重量程度のロケットブースターでは構造上地球重力干渉圏からの離脱は不可能らしい。何しろ最低でもマッハ20以上は出さないと燃料は兎も角、生命維持装置は人数分は持ってはくれないからだ だから絶対地球に落ちてくる隕石に穴を掘りに行くことは出来ない 折角松田○子が間抜けな日本人買い物客で出ていた映画も、筆者は嘘だと分かっていたので燃えなかった まだ見てないが。
ので今回は横島の文殊で超?加速をしたとする事にする。シャトルは横島を月に降ろしたその後は減速をせぬまま月のスイングバイ(惑星の重力加速航法)で戻って来たことにする・・。果たして地球への再突入での無事減速出来るか不安だが・・・・・。何しろ宇宙に上がったシャトルに殆ど姿勢制御に使うぐらいの燃料しか残っていないので、どれぐらい加減速に使える燃料が残っているかな・・・・・・空想科○研究所の柳田さん、教えてください。
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