GS美神 無限の中の一度
〜リポート03 フォトグラフ (その弐)〜
(ルシオラ、待て、行くな!行かないでくれくれルシオラ――!!)
ガバッ
「あれっ?ここは……病院…。」
「やっと気がついた、横須賀クン、三日間ずっと寝たままだったんだよ
まあ、あんなことがあった後だからしょうがないけど…。」
「すいません、オレ、ヘマやったみたいで…。」
「……もしかして…、覚えてないの?」
ひのめが少し驚いた表情で問いかけると、横須賀は少し黙り込む。
「ちーっす!横須賀大丈夫っ?」
「おじゃまするでござるっ!」
――と、そこへ蛍香とシロが入ってきた。
「あっ、蛍香ちょうどよかった、あの時のこともう一度詳しく聞かせてくれない?」
「いいですけど…。」
蛍香は椅子に座り三日前の氷室神社で何があったのか、話し始める。
ひのめが、死津喪比女の不意打ちで倒れたことに始まって、
シロが霊波刀で死津喪比女に切りかかっていった事こと、
横須賀に助けられたこと、
そして、横須賀が10体以上いた死津喪比女を瞬殺したこと…。
実際は10分にも満たなかった事だったが、その話は30分にもおよんだ。
蛍香が話し終わってすぐ、シロがいつに無く真剣な顔で聞いた。
「蛍香どの、横須賀どのが死津喪比女にトドメを刺した技、もう一度言ってほしいでござる。」
「ええっとね、ハンズ・オブ・グローリーとか言ったっけ。
…でもそれがどうかしたの?」
「ハンズ・オブ・グローリー!?それ、横島先生の技でござらぬか!!」
「………。」
しばし沈黙。
「それじゃあ、横須賀クンは、横島義兄さんに、
外見、性格、そして技までそっくりってこと!?」
「そう言う事になるでござるな…。」
「………。」
再び、沈黙…。
「あの…、今の話本当なんですか?
オレが、あの死津喪比女の大群オレが…倒したんですか?」
「そうだけど…、横須賀クン何も覚えてないの?」
「すいません…。」
「別に、謝らなくてもいいんだけど…。」
(けど…、あの死津喪比女一体でも相当の霊力を持っていたわ。
私でも、3体相手するのが精一杯なのに…。)
チラッっと横須賀の方を見る。
(でも…、あの横須賀クンが、13体も…。
しかも、横島義兄さんと同じ技で…。)
所変わって、三日前の妙神山
「ね〜、ペスこの人ポチ?」
ヒャクメの神通力で映しだしている画面で、ひのめたちが戦っている映像を見ている二人。
「いいかげん、名前で呼んで欲しいのね〜。」
ヒャクメのことをぺスと呼んでいるこの女性は、32年前アシュタロスの部下だった魔族…パピリオ。
パピリオは魔族なので、ある程度成長すると老化速度が急激に落ち、ほとんど不変になる。
見た目は、17・18歳に見える。
「ちょっと違うのね、横島さんだけど、横島さんじゃないのよね〜。」
「ぺスぅ、言ってる意味がよくわからないよ…?」
「あっっっ!?大変なのね〜。」
画面の中では、タマモ、ひのめ、シロが倒れ、蛍香が殺られそうになっている。
「この子、ルシオラちゃんに似てる!?」
「そんなのあたりまえなのねっ、
二人は、横島さんとルシオラの生まれ変わりだから…。
そっ、そんなことより、どうしたらいいのねぇ〜??」
「ペス32年前と何も進歩してないよね…。
しょうがないから、私が助けにいくでちゅ!」
「………、そういうパピリオも、進歩してないのね。
いまだにその“ちゅ”を付ける癖直ってないのね〜。」
「いっ、今のは無しね!
行って来る!!」
ルシオラの生まれ変わりを助けようと出かけようと駆け出したパピリオ…。
だが…、パピリオが飛び立とうとした瞬間…。
「パピリオもう行かなくて大丈夫なのねぇ〜。」
「何で?どうしたのペス?何があったの?」
本当に、ギリギリの所でヒャクメがパピリオを呼びとめた。
そして、再び映像を見る。
バキッ
横須賀が攻撃をもろに受け倒れた…。
「ああっ、また、大変なのね〜!」
「ペスよく考えなさいよ、
火事場のバカ力がそんなに長く続くはずが無いよ…。
やっぱり、私が助けに行くわ!!」
「(!)パピリオ、ちょっと待つのね…。様子が…。
辺りの気の流れが…変わったのね〜。」
「ペスみて、ポチが…。」
映像の中で横須賀が、死津喪比女を片っ端からなぎ倒している。
「たっ、大変なのね〜。」
「――て、どこが大変なの?」
「見て分からないのね〜?
そんなことより、パピリオ、小竜姫を呼んできて欲しいのね〜。」
「ペス、小竜姫ちゃんなら三日後まで温泉旅行で帰ってこないよ…。」
「わっ、忘れてたのね〜、大変なのね〜?、どうしたらいいのね〜??」
ヒャクメは…、完璧にパニクっている。
でも、パピリオは、何故ペス(ヒャクメ)がパニクっているのか分からない。
「だから、どうしたの?」
「横島さんの生まれ変わり霊力がすごく強いのね〜。」
「それは見たらわかるよー、画面越しに霊波が伝わってくるから、
でも、霊力が強いと、どうして大変なの?強いに越したことはないと思うんだけど…。」
「分からないの?修行不足なのね。
この人の、前世である横島さんは、修行などでこの強い霊力を自分自身の力で手に入れたのね、
だから、もちろんコントロールのしかたも、分かっているのね〜。
けどこの横島さんの生まれ変わりは、ただの平凡な学生:全くの素人なのね。
こんな素人にこのレベルの霊力を与えるのは、赤ん坊に拳銃を与えるようなものなのね…。
だから、最終的には自分自身の霊力が暴走して、人格崩壊を起こしてしまうのね…だいたいの
ケース破壊本能のみを残して…。つまり、自分の霊力に食われてしまうのね〜。
(17年前、タマモさんにキツイこと言われたからって、勉強しといて良かったのね〜。)」
「ほっとくとポチの生まれ変わりは戦うだけの化け物になるっていうの!?」
「だから、大変だって言ったのね〜。
早く何とかしないと本当に大変なのね〜!!」
「ペス、でも今日はもう心配いらないみたいだよ…。」
「どうしてなのね?」
「だってほら…。」
パピリオは、画面を指差す。
死津喪比女を倒し、横島の生まれ変わり(横須賀)倒れている。
それを見たヒャクメは、安堵の表情を浮かべる、それと同時に極端な無力感に陥る
(こんなに心配した私はなんだったのね〜!)
〜三日後(横須賀が目覚めた直後)〜
「ただいま、ヒャクメ、パピリオ二人だけで大丈夫だった?」
――と小竜姫が帰ってきた。
「小竜姫ちゃん…、それが、ポチの生まれ変わりが大変だったの。」
「大変だったのね〜、ルシオラさんの生まれ変わりは殺されそうになるし、
横島さんの生まれ変わりは霊力を暴走させてしまうし、もう大変だったのね〜。」
パピリオとヒャクメが声をそろえて言った…。
「(予想はしてたけど、こんなに早く…。急がないとたいへんね。)
ヒャクメ、パピリオ至急横島さんの生まれ変わりの所へいくわよ!」
〜美神除霊務所〜
「横須賀クン、あんたもその体力じゃ大変だから
回復するまでいてていいからね。」
「何から何まですいません…。」
「別に気にすることないのよ、
横須賀クンが、いなかったら、私たち本当に危なかったもの…。たーだーし……!」
「タダシ?」
「もし蛍香に手を出したら…、ただじゃ、済まないわよ!」
「わっ、分かってますよ(汗)」
さっきまでしまりの無かった横須賀の顔が急に真面目になり青ざめる。
だが…、いつもよりひのめの表情は、やさしいようにも見えた。
クスッ
それをみたタマモが笑った。
「ただいまっ、食べ物買ってきましたよ!」
「遅かったわね、それじゃあお昼にしようか。」
「おっ、牛丼ッスか、うまそうッスねぇ!」
「いや、横須賀クンには特別に作ったのがあるから…。」
「えっ、手料理ッスか?ありがとうございます!」
だが、横須賀が喜んだのもつかの間、それを見た横須賀、蛍香、シロ、タマモ…。
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
四人は目を点にしている…。
「もっ、もしかして、これッスか?」
おそるおそる、尋ねる横須賀。
「そう、それイモリの黒焼き、霊力回復にいいのよ。」
「いやー、タマネギとイモリはいやー。」
「ほら、食べなさい、霊力回復にはこれがいいのよ!」
「それでもやっぱりイモリはいやだー!」
そんな横須賀とひのめのやりとりを、苦笑をうかべ見ている蛍香とシロ、
そして、そんなことは無視して、蛍香の買ってきたきつねごん兵衛を食べているタマモ。
とその時…。
ボンッ
「突然だけどお邪魔するのね〜!」
突然の訪問客、ヒャクメ、小竜姫、パピリオが空中より現れる。
「あっ、あなたは妙神山の管理人の…。」
「久ぶりですね…、もうこちらから伺うことは無いと思っていたんですけど。
何にか、美神除霊事務所と縁があるんですかねぇ?」
ひのめの耳元でシロがささやく。
「ひのめさん、小竜姫様はわかるんですけど…、あとの二人誰?」
「あの、コスプレっぽい派手な服の人はヒャクメ、神族よ。
それで、もう一人はパピリオ確か魔族よ…。分かってると思うけど小竜姫とパピリオは、私たちとは
ケタ違いの霊格の持ち主よ、多分大丈夫と思うけど変なことして怒らせたら大変よ…。
特に横須賀・ク・・ん…!?」
「ずっと前から愛してました!!」
言ってる側から、横須賀はそう言ってパピリオの手をにぎる。
前世横島の時から成長した気配がない。
「いっときますけど…私にそう言うことすると……。」
ズバッ
「の゙あ゙」飛んできた物体をブリッジでよける。
「仏罰が下りますので…。
(さすが、ポチの生まれ変わりね…、私のけんぞくをよけるとわ。でも、何年前の映画?)」
「ほら、言わんこっちゃない…。」
その光景を見ていたひのめ…半分あきれ顔で言った…。
そして、ここに来て初めて小竜姫が口を開く。
「オチャラケはこの位にして、本題に入りましょうか?」
「そっ、そうですね…。まあ座ってください…。」
ソファーにヒャクメ、パピリオ、小竜姫が座るとそれに対面する形でひのめ、タマモ、シロが座る…。
続いて横須賀が座ろうとする…がしかし…。
「あっ、あなたはチョット席を外してほしいのねぇ〜。」
ヒャクメに止められシブシブ部屋から出て行く横須賀。
それと入れ違いに蛍香がコーヒーを持って入る。
「どうぞ。」
蛍香はコーヒーを差し出し、部屋から出て行こうとする…。
その時、パピリオと目が合い蛍香が声をあげる。
「あっ!?」
(ル・ルシオラちゃんやっぱり覚えていてくれたんだ…。)
そう思ったパピリオから涙がこぼれそうになる…。
「小竜姫様、色紙買ってきたんでサイン下さい!」
ガタン
パピリオがコケタ…。その後ずっとパピリオがふくれっつらだったのは言うまでもない…。
「いいですよ。」小竜姫は、ペンと色紙を受け取りサインする。
ちなみに、今、妙神山はGSの聖地と呼ばれるまでに有名になり、小竜姫もそこの管理人と言うことで
有名になり、そして今では小竜姫はGSの憧れの的になっている…ファンクラブもあるくらいだ。
しかし、イマイチ趣味の分からない妙神山の内装は変わってないようだ…。
サインし終るとペンと色紙を蛍香にかえす、蛍香はそれを受け取ると部屋を出て行く。
ひのめはそれを確認すると、訊いた。
「―で何の用です…?
もしかして…横須賀クンのことで?」
「そうなのね〜、単刀直入に言いますね。
その、横須賀さんは、横島さんの生まれ変わりなのね〜。
それも、前世の霊力・記憶を持った形で転生しているのね。
まだ記憶はほとんど蘇ってないみたいですけどね。」
「ふーん、そうなの。」
「そうでござるか。」
「そう。」
三人は全く驚く様子が無い…。
「何で驚かないのね〜。」
「普通驚かないよ。
あれだけ似ていて横島の生まれ変わりじゃないほうが驚くわよ!」
「せっしゃもそう思うでござる。」
「………。」
タマモとシロの言葉に何も言えないヒャクメ…。それを見かねたひのめが言う。
「でも、横須賀クンが横島義兄さんの生まれ変わりならそれでいいじゃない。
霊力だって強ければ強いでそれでいいんじゃない?」
「確かにそうですけど、それは、人間+人間の霊力だった場合なのね〜。
しかし、横須賀さんは前世横島さんのとき起きた事件の為霊基構造に魔族の霊基構造が混じってし
まったために、普通の人間のように処理できないのね〜。
土愚羅の演算によるとあと数回、覚醒すると前世の霊力に食われて横須賀さんは横須賀さんじゃなくな
ってしまうのね〜。」
「――と、言うことは横島義兄さんに…?」
「それも、違うのね〜。
どちらでもない、全くの別人になってしまうのね〜。」
「それで、結論はなに?私たちは何をすればいいの?」
ひのめの問いに対し、ヒャクメではなく小竜姫が答える。
「そうあせらずに話しを最後まで聞いてください。」
「わっ、分かりました…。」
「まず、蛍香さんはルシオラさんの生まれ変わりということはもちろん御存知ですよね。
だから、潜在能力だけならここにいるパピリオと同等…いや、それ以上かもしれません…。」
「蛍香も自分自身の霊力に食われる可能性がある。」
突然タマモが小竜姫の話に割り込んだ。
「そういうことです。
ですから、二人に妙神山に来て頂こうかと…。」
「いつ?何なら今からでもいいわよ!」
「分かりました…。今から行きましょうか。」
「じゃあ、二人を呼んでくるわ。」
〜5分後〜
横須賀、蛍香がひのめと共に入ってくる。
「それでは、行きましょうか…。」
小竜姫がそういった瞬間8人は一瞬のうちに妙神山にテレポートする。
「それでは、ここで着替えてください。
着替え終ったらその奥へ、そこで待ってますので。」
「なに?このセンスは?」
「銭湯ッスか?」
「(なにか間違ってる。)」
「銭湯でござるか?」
「(ここに来たのこれで二回目になるけど、あかわらずよく分からないセンスね…。)
あんたたち、そんなこと気にしてないで行くよ!」
「いえ…、俺は番台に座るだけで結構です!」
「けっこーじゃなーい!!」
バキッ
ひのめに殴られ横須賀ダウン。
そして、しぶしぶ番台から降り“男”のノレンをくぐっていく。
横須賀が行ったのを確認すると、ひのめ達も“女”のノレンをくぐり中へ。
「ひのめさん、何で私まで着替えなきゃ、なんないの?
私はただの付き添いなんでしょ!?」
「あのね、こういう系の修行場じゃ、例え何もしないにしても入るだけで服を着替えるのよ。」
「ふ――。」
ひのめの言葉を聞いた蛍香は安心したのか大きく息をはいた。
「ねえ、シロ私たちには何してろっていうのかな?」
「そんなことせっしゃに訊かれても知らないでござる。」
ガチャ
言われたとおり奥の扉へ、行く四人。
「あっ、遅かったですね、横須賀さんもう始めてますよ。」
小竜姫は四人にそう言うと魔法陣を指差す。
その中では、横須賀と剛練武が戦っている…。
「ひのめさん本当に私何もしなくていいんですよね…。
あんなのと戦ったりしないよね…。」
「多分ね…。」
蛍香がかなり不安がっているその間にも横須賀は必死で戦っている…、
――というよりよけるだけで精一杯だ…。
「ねえシロ、大丈夫なのあれ?」
「絶対大丈夫でござるもんっ!
タマモも横島先生の強さを知っていたらそんなことは心配しなくてすんだでござろうに…。」
「でも、横島が強かったとしてもあれ横島じゃないよ…。」
「うっ、生まれ変わりでも横島先生は横島先生でござるっ!
だから横須賀どのは横島先生でござる。」
「あっ、そう…。」
シロは自信満々に横須賀は大丈夫と言い張っているが、しかし現実は大丈夫ではなかった…。
横須賀は息が切れ、今にも当たりそうな寸前のところで、何とか剛練武の攻撃をかわしているありさま。
「小竜姫様、横須賀大丈夫なのでしょうか?あんなゴッツイ化け物と戦って…。」
「そんな事言っていたら、修行が始まりませんよ。
ここ、妙神山での修行は二択…パワーアップもしくは死ぬか…。」
顔色ひとつ変えずにあまりにあっさり小竜姫は答えた…。
「(横須賀ボロボロじゃない…。あんなの横須賀に勝ち目ないよ…。小竜姫様が止めてくれないなら…。)
ひのめさん横須賀押されっぱなしじゃない、お願い止めてください…、お願いします…!」
「うるさいよ蛍香!少しは黙って見てらんないの?」
「だって…、だって横須賀が…。」
「横須賀どの〜〜〜!!」
急にシロが大声で叫んだ…。
それに驚き、シロの目線の先に目をやると、横須賀が倒れこんでいる…ついに体力に限界が来たのか剛
練武のタックルをよけきれずに、クラってしまったのだ…、容赦せずに剛練武の二打目が横須賀を襲う、
タックルのダメージで横須賀は動く事すらできずにモロにそれをくらい3メートルほど飛ばされる。
剛練武は三打目を浴びせるべく突進する…。
「やめてー!お願い…!!」
(夕日…?)
(ヨコシマ…?)
(生きて…。)
(生きて…、ヨコシマ!!)
「…死なせない、どんなことをしてもよ!!」
蛍香は魔法陣の中に飛び込み盾になり横須賀をかばう…。
その表情からはさっきまでの、不安は全く感じられない…。
(あのバカッ!?)
(蛍香どの!?)
(蛍香!?)
剛練武はかまうことなく一直線に向かってくる!
「蛍香!よけなさい!?」
「よける必要なんてなくてよッ!」
ドコーン パラパラパラ
今の一撃で剛練武は跡形もなく吹き飛ぶ…。
そして、蛍香はよろけながらも横須賀に駆け寄り抱き上げる…。
「ヨコシマ、いえ横須賀、せっかく生き返ったのにおまえがやられちゃったら意味ないじゃない!?
しっかりして、お願い目をあけて横須賀〜〜〜!!」
その蛍香の表情は、半分別人のようにも見えた…。いや、見えたんじゃない本当に別人だったのだ。
横島(横須賀)の危機的状況に前世の記憶が反応し一瞬前世ルシオラの記憶が蘇ったのだ。だが剛練武
を倒した後はそれが弱まっていき前世ルシオラであると同時に蛍香で、記憶が混じった状態だったのだ。
ガチャ
蛍香が叫んだ直後扉が開く。
「オッス、蛍香ちゃん呼んだ?
どうしたの…そんな顔して、らしくないよ。」
「ごめんね〜〜、蛍香別に騙すつもりはなかったんだけど、小竜姫様に頼まれてさ。」
すかさずひのめはそう言った。
――と同時に小竜姫が指を鳴らす。
剛練武にやられた横須賀の体が紙のかたしろ(式神呪符)に戻る。
「(生きてた、横須賀が生きてた…。)」
無言で横須賀に駆け寄る。
「横須賀・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なに?蛍香ちゃん聞こえないよ…。」
「………。」
下を向く蛍香その顔は真っ赤。
「こら〜〜二人ともこんな所でイチャイチャするんじゃない!?」
ひのめの一言で、二人とも真っ赤。
そして、二人は慌てて離れる。
しばらくたち二人が落ち着いたのを見計らい小竜姫が言う。
「二人ともチョット用があるのでついて来て下さいな。」
「せっしゃはその間何をしてればいいでござるか?」
「私はどうしたらいいの?」
「そうですねぇ………、パピリオちょっときなさい。」
「何?小竜姫ちゃん。」
どこからともなく声がしパピリオが降りてくる。
「パピリオ、魔法陣の使用を許可しますので、
私が戻ってくるまでこの二人に死なない程度のけいこつけてあげて。」
「分かりました。」
「――で、ひのめさんはどうします?」
「そうね、私も二人についていっていいかしら?」
「わかりました…。じゃあ三人とも着いてきてください。」
そういって小竜姫が三人を案内した部屋は、八畳ほどの洋室である…。
しかし、やはりこの部屋もまちがったセンスをしている。
壁に掛けられている絵は洋室にも関わらず大和絵、ツルギが飾られていると思うと実はツルギではなく
刀だったり、そして決定的なのは信楽焼きのタヌキが置かれているそれもでかい…。
こういうのを表現する為に和洋折衷という言葉ができたのかも知れない。
三人のこの部屋に入ったときの感想はいうまでもない。
「まあ、座ってください。」
小竜姫がそういって座ると三人はそれに続き座る、――とその時。
「少し遅くなったのねぇ〜。」
大きなトランクをかかえたヒャクメが現れる。ヒャクメは小竜姫の隣に座り大きなそれを開ける。
「さっそくですが本題に…。
えっ、何ヒャクメ?あっ、そうだいけない忘れるところだった…。
横須賀さん蛍香さんちょっとこちらへ…。」
小竜姫の指示どおり二人は壁に向かって立つ。
「少しの間、目を閉じて、リラックスしてください。」
二人の背中に手をかざす小竜姫。
「いきますよ…。
£¢%£■§∀♭‡‰‰∽∬≡∃⊥▼℃▽∝Å¢■※★→▽▲>
#£$☆♪♭‰∝∬∫※¢□#∴‡∵Å♭〓▽¢#%@%
ŧ%¢£。」
小竜姫のこの人間語ではない語での詠唱が終わった直後…。
ほんの一瞬閃光が走った。
「どうぞ、もう目を開けて結構ですよ。
……………ふたりとも今、どんな感じですか?」
「いえ、別に…、さっきほんの少し電撃がチクッと来た以外はなにも…。」
「俺も、そんな感じです。」
「そうですか…。
では、ソファーに座ってください今度こそ本題に入ります。
まず、あなた方二人、もうきずいていると思いますが常人では考えられない霊力を持ってます。
間違いなく世界一のGSでしょう…、しかしそれは霊力の点での話…。大きな力もコントロールができ
なければ何の意味もありません…むしろ自分自身を危機にさらす恐れすらあります…。
蛍香さんその危機というのがどういうことか一番よく知っているはずです。
横須賀さんが死津喪比女と戦ったときどうでしたか?第一印象でいいです教えてください…。」
「第一印象…あの時のですか…。
一言で言うと何も考えてない悪霊や化け物みたいな…。」
「そう言うことです…。
己の力を超えた力を持ってしまうと、その力に己を支配されてしまいます…。
そう、悪霊や化け物と同じように…。
何度もそれを繰り返すうちに本当の化け物と化してしまうでしょう…。
今日およびしたのはそれを防ぐためです…。
さっきの術であなたたちの霊力の大きすぎる霊力を封じましたのでもうそうなる事はありません、
安心してください…。
これによって、少し霊力の流れが変わったと思うんで多分これまでと大分変わってくると思います。
ですから、明日、修行も兼ねて色々教えましょう。
ですから今夜は泊まって行ってください…。じゃあ部屋に案内しますんで…。」
「小竜姫様ちょっと。」
小竜姫が立ちあがったそのとき、横須賀が小竜姫を引き止める…。
「何ですか横島さん…?」
「俺と蛍香ちゃん常人じゃ考えられない霊力を持ってるって言いましたよね…。
教えてくれませんか?オレ知りたいんです…自分のことだし…。」
「確かにあなたの事には変わりませんけど…教えられません、今は…。」
「でもオレ何か…、何か大切なこと忘れてる気がするんです。
事務所の倉庫で写真見つけた時も…。
死津喪比女の話聞いたときも…始めはただのデジャブだと思ってた。
だけどそうじゃないと思う。
そのこと聞いたら全部思い出せる気がするんです。」
「そのことはまた時がきたら話します。」
「分かり…ました。」
「部屋はここを出て廊下を右に曲がった突き当たりですので…。」
「ありがとうございます…。」
ひのめはそう一言、言うと横須賀と蛍香をつれ足早に出て行く。
3人が部屋を出たあと…。
「ヒャクメどう?二人は?」
「予想どうりなのね…。
口で説明するより見た方がはやいのねー。」
小竜姫はヒャクメのトランク(パソコン)を見る…。
さっきとったと思われる横須賀と蛍香のデータが写っている…。
「やっぱり、二人とも霊力属性が人間の物に加え魔族の物が混じっている…。
この異様に強い霊力の正体はこの魔族の属性の部分が引き起こしたもの…。
特に蛍香さんのは魔族の属性の部分が大きい…。」
「でも大丈夫なのね〜。
何も心配いらないのねぇ〜。」
「そうね…。」
〜一方そのころの横須賀〜
「あ、あのひのめさん…。」
「何、横須賀クン?」
「もしかして、朝話してた横島って人…オレに似てるって言ってた人…。
もしかして蛍香ちゃんの親父?」
少しの間ひのめは黙り込む…。その時ひのめの頭をかすめたことがある…。
『横須賀クンもしかしてもう横島義兄さん(前世)の記憶が蘇り始めている?』のかと。
「そっ、そうだけどでもなんで?」
「いえ、事務所の倉庫に蛍香ちゃんとオレの写真があったんで…、でもここ来たの初めてだし会った事
もないから変だなって。でも、横島って人がオレに似ていて、蛍香ちゃんの親父だったら親子の写真っ
てことで説明つくじゃないっスか。」
「そうね…。でも訊くんだったら普通“恋人かなんかですか?”って訊かない?
普通“親父?”とは訊かないよ。」
「そ、そんなの“蛍香ちゃんに彼女いるんでるか?”って訊いてるようなもんじゃないっスか。
そんな言い方できるわけないっスよ。」
「それもそうね…。」
「もう一つ聞いていいですか?
人って知らないほうがいいこともあるんですか?」
「――難しい質問ね…。
人によってそれぞれだけどあるんじゃない?
もし相手の考えていることが全部分かっちゃったら…多分誰の事も信じれなくなると思うわ
『どいつもこいつも嘘つきだ――!!』ってね。誰も人が信じれなくなったらもう終わりよ…。」
「………。」
(あ゛、寝てる…。ったく自分から聞いといて…。)