GS美神 無限の中の一度
〜リポート06 国道127号線の白き稲妻〜
妙神山での修業(?)から数週間後横須賀は新学期をむかえていた。
「おっす、久しぶり。」
色々あった夏休みだが何もなかったように普通にあいさつを交した。
「横須賀おまえ夏休み何やってたんだよ?TELしても全然でねえじゃん?」
「何って、バイト。」
「はぁ?一日中バイトやってたのか!じゃ、帰りなんかおごれよ!」
「何でそうなるんだよっ!それに金ないんだ…。」
「何で金ないんだよ!?」
そのことに驚いたのか、それとも言い訳に聞こえたのか?口調が少しきつめになる。
「うっせえっ!俺のバイト時給安いんだよ!」
それに対し横須賀もきつめの口調で帰した…。
「ふーん、バイトにかわいいコがいるとかだろ!
図星だろ?どうせカナワヌ恋になるくせによくやるよな(笑)」
「……そっ、ういうおまえはどうなんだよ!
夏休みどうせ成功もしないナンパでおわわったんだろ?」
(正直どうなのかな?蛍香ちゃん俺のことどう思ってるんだろ?)
しばらく考え込む横須賀…
「オイっ!横須賀っ、人の話ながすなよ!」
自分がうわの空だったことに気付き、一瞬あたふたした…。
「まっ何かよくわかんねぇけど、色々あっって複雑ってことか、お前もよ?
じゃあ今日は気晴らしにどっかいくか、横須賀?」
「おぅ、行くかっ!」
横須賀に気を使ってくれたのか、さっきまでと打って変わった落ち着いた口調だった。
丁度そのときベルがなる、憂欝な時間の始まりだ。
それから三時間うわの空だった…
そして二度目のベルが憂欝な時間のおわりを告げる。
「やっと終わったなジャ行くかっ!」
「でもよどこいくよ?」
「ちょい他まってろよ俺のZEPHYR(ゼファー)こっちに回すから!」
「えっ、ゼファーって……」
横須賀の言葉にはきずかなかった…
「待たせたな横須賀、どよ?俺の新車?」
「おまえ免許とったのかよ、それよりよく金あったな…」
「まっ、免許持ってても肝心のバイク持ってないおまえとは違うんで(笑)」
「……。」
「そう怒るなよ(笑)。とりあえず乗れよ。」
無言でバイクの後ろに乗る横須賀、
それを確認すると一気にエンジンの回転をアオリ、スタートさせる
…空冷エンジン独特のメカノイズを響かせながら加速をはじめる…
その音はなにかこの後興ることを告げているようにもきこえた。
そして、しばらくしてゲームセンターにつく…
夏休み明けだから人があまりいないと思っていた、
だけど思っていたよりたくさんいた…
それから二時間だろうか横須賀の左腕にはめてある時計は一時半を指している、もう金もつきかけてる。
「そろそろ切りあげっか横須賀ぁ?」
「少しまってくれ、もう少しだからよ。」
そういうと、ゲームシートに座り百円コインを投入口にころがす。
ハンドルを握りスタートしようとする。
「えっっ!?乱入、上等じゃねぇかっ!」
威勢よく挑戦をうけてたった横須賀だったが
「まっ…負けた。」
ゲーム画面にはLOSEの四文字が横須賀を嘲笑うかのようにそれいっぱいに表示されている。
「畜生っ、負けたの初めてだぜ……えっっ!マジかよ?」
その屈辱の四文字の下にはWINERその横に…
「KEIKA…ケイカぁ?」
(もしかして)そう思って隣2P側のゲームシートをのぞいてみる。ハット目が合った…
「「やっぱりっ!」」
同時に声がでた…
「横須賀、しりあいか?」
「この子蛍香ちゃんバイトで一緒の…。」
「蛍香でぇす!今は横須賀の彼氏やってまっす!ヨロシクぅ。」
「「えっっ!」」
今度は横須賀たち男二人同時に声がでる…
と、蛍香人差し指をたてるしぐさで「言わない、言わない。」と横須賀に合図を送る。
「横須賀ぁ!何が複雑だよこんな可愛いコ彼女にしちゃってよ!おごった分の金かえせよ。」
「(俺は複雑なんてひとことも…)てかよ今からどうする?外ドシャブリだぜ…」
(正直うれしかった…冗談でも蛍香ちゃんは俺のこと彼氏にしてくれた…
いつかは蛍香ちゃんの本当の彼氏に…。)横須賀は密かなる野望をいだいていた!
〜しばらく雨が止むのを待っていた〜
「止みそうにないなぁ…」
「横須賀、おまえら二人で帰れよ…おまえの彼女傘もってんだろ?
俺の事は気にしなくていいからよ(笑)じゃな!」
そう一言いうとドシャブリの雨にうたれながらもバイクで帰っていった…。
「俺たちも…帰ろっか?」
ちなみに今横須賀は事務所に住んでいる…色々あってアパートを追い出されたのだ。
「うん。」
二人はゲームセンターをあとにした……
歩きながらイロイロと話した、これまでの事、中学時代の話、次々と話のネタがでてくる。
それから少ししたら二つの別れ道がある、よくゲームセンターからの帰りに自転車で通るからまず間違える事はない…
とは言っても距離的に少し遠回りなだけだが。
そのみちをいつもどおりの方に行こうとする横須賀と蛍香。
「兄ちゃんたち、ちょっとまちな!」
っと、後ろから誰かに呼び止められた…。
(カツアゲ!?)
「この先、今土砂崩れでとうれねぇよ。」
振り替えってみるとその声の主は工事のオジサンだった。
仕方なく遠回りをして帰る事になった…あまり通りなれていない道しかし横須賀はこの道に何故か懐かしさを感じていた…。
「何か、雨の日のこういう道って…不気味だね。」
クネクネまがったカーブの連続、左側はガケが反りたっていて、右側は深い谷、
そのなかに落ちないための命綱はベコベコに変形しそしてさびついたチッポケなガードレール…ただそれだけ…。
「あれっ!?何だろう?」
一部ガードレールが大きくへこんで黒くあとがついているのを見つけた横須賀。
そしてそれのあった付近の谷をみおろす…。
「ぶぁいく?」
「あぁ、そうみたいだ…」
谷底を覗き込みその底に、無残にも変形し錆付いたバイクを見つけた…。
しばらく…雨が降っているにもかかわらずそのバイクをながめていた…。
それから、ゆっくりそこをあとにした。
「い・くな…。」
「「何…?えっっ!?」」
「横須賀?」
「蛍香ちゃん?」
「「誰っ!」」
振り替えってみると、さっきのガードレールの辺りに、シロイ影か浮かんでいる…
「去く・な…」
それはそう発しながら徐々に濃くなり存在を明らかにしていく…
「蛍香ちゃん!行くよ!」
「うん!」
「「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前――破!」」
詠唱とともに、二十っ本の光が、放たれる…それにより無数に切り裂かれるシロイ影がはっきり見えた。
「軽いな…」
「何か、あっけなかったね…」
「行こう、蛍香ちゃん。」
「去く・な!」
よりクリアになったさっきの声がみみをうった。
「えっっ!?」
「そう簡単には、行かないってかぁ?」
そして、再び詠唱を唱え。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前――封!つらぁっ!」
封の九字切りを繰り出す今度は青白い光…そいつは目標を束縛すべく一直線に向かって行く…。
「今度こそ!」
続けざまに蛍香が破の九字切りを重ねる。
一瞬白い影に苦痛の表情か浮かんだようにも見えた…。そしてそれは跡形もなく消えていた…。
「俺たちは…」
「「強い(笑)」」
顔を見合わせ二人でそう微笑んだ。
「えっっ!?体が……体が動かない!?」
「けっ、蛍香ちゃん!?大丈夫!」
「大丈夫じゃ…ない。息…でき…な…」
「まってろ、今助ける!」
とは言ったが当然なにもなすすべがない…。
蛍香の意識は徐々に薄れていく…。
「チクショウ!何がどうなってやがんだ!(なんで毎回毎回絶体絶命のシーンがあるんだ!?)」
イチカバチカ、もう一度破の九字切りを繰り出そうとするが…
「体が動かない…。(息が…)」
意識が薄れていく…そんななか二人は半分もう助からないとあきらめていた…
しかしもう半分は助かるなぜかそんな気持ちでいっぱいだった。
「破!」
誰の声だろうか?その声と同時に放たれた術により金縛りからときはなたれた。
「横須賀っ、蛍香大丈夫!?」
「たっ、タマモさんっ!助けにきてくれたんだっ!」
「偶然とおりかかっただけ。ソンナコトよりくるよ!」
「「はいっ!」」
二十本の光のスジと青白いホノウのコンビネーション…
二十本の光の刃物で切り裂かれ、霊波のホノウによって完全に消滅さされる…
「ザマァみろってんだよ!」
「さすがタマモさんっ!」
「おわりね…。(!?)気ぃ抜くんじゃないよ!!」
長年ゴーストスイーパーをやっていた経験だろうか、それともただのカンだろうか、
何かがタマモを奮い立たせた…。
それもそのはずである…さっきの三人のコンビネーション攻撃はうまく決まれば計算の上ではBラン
クぐらいのれいなら優に倒せる威力を持っていたのだから…。
「狐火!」
姿を確認することすらなく、ホノウを放つ…
無造作に放たれたそれにより辺りの地面の水滴を蒸発させ、焦がす…
「タマモさんっ?」
「……。」
無言で、たいせいをゆるめた、しかし視線はまだその方向をみ見続けたままである、
横須賀、蛍香にもその緊張が伝わっているだろう。
そんななか辺り一面になんとも言えない静けさがただよい、一瞬風が吹く…
さっきのタマモの狐火による熱風がそれにより流される…。
そして風によって運ばれて来たように再びふっと姿をあらわした白い影…
「特攻服!?」
さらに姿を明らかにする白い影…。
「蛍香、横須賀、封の九字切りフルパワーでうってみて!」
「でも…。」
「いいから!(私の読みが正しければ…。)」
何度目だろうか?二十本の光のスジが向かって行く光景を見るのは…。
タマモはじっとそれを凝視している…
(やっぱり…。)
「タマモさん?」
「こいつには攻撃がきかないよ。」
「攻撃がきかないってそんな…」
「こいつ霊じゃないんだ、残留思念…それもまだ定着していない!」
「どうでもいいけど何とかしてくださいよぉ〜(半泣)」
白い影…残留思念はもうほとんど完全に姿をあらわした…
「霊力に反応してる!?」
横須賀は手に霊力を集中させる…
目を閉じ自分の手に力が集まっているのをイメージし、そして目をあけた…。
「霊波刀?」
そうタマモが言ったように横須賀の手のひらには霊波刀が3センチと極小だかできていた…
「こうなりゃヤケクソダ!」
その霊波刀(?)を振りかざしそれを敵にあてるために走りこむ!
「横須賀っ!待ちな!」
タマモは叫んだ…それはあたりをにさらなる静けさを喚んだ…。
こまくがじーんとする…そんな大声で…。
横須賀は一瞬びくついた、がしかし突進をやめようとしない。
「あのバカっ!…」
その一声と同時に横須賀は音をたて倒れた… タマモと蛍香は身構えた…。
「蛍香熱くなっちゃダメ!!あんたがなんとかできる相手じゃない!」
「でもっっ!」
「ケガ人が増えるだけなのわからないの!」
「わかってる…だけど、だけど!」
攻撃を仕掛けようとする蛍香、それを必死で止めようとするタマモ、二人の攻防はつづく…
「大丈夫…だよ、蛍香ちゃ…ん。」
弱々しくだが少し恐ろしげな声…、そして、よろけながら立ち上がる横須賀。
「横須賀!?大丈夫なの?」
「タマモさん…、ヤツのコトはオレにまかせてくださいよ…。」
「横須賀!どういうつもり!?」
何かに取りつかれたかのように、白い影にむかって歩み寄る。
「横須賀やめな!!」
タマモの声に全く反応しない、微動だにせず、それに近づいていく。
「横須賀どうしちゃったの!?」
蛍香の問い掛けも無視し、白い影に手を触れる横須賀…それから、小声で何かをつぶやいた。
白いそれは、ふって消えた…一瞬笑みを浮かべたかの用にも見えた…。
消えた後、すぐにまばゆい、しかしやわらかい青白いような光がほとばしる、視界はほとんどゼロに近くなる。
横須賀は目を閉じ、手を握り締めた…はしばらくして光が消え、視界が戻ると、
横須賀がかざした手の先には一台のパールホワイトのフェックス(Z400FX)あった…。
そして、握り締めた手の中には、それのキーがあった。
無言でそれを差し込み、スターターを回す、アタリを切り裂く爆音と友にエンジンが目覚める。
「蛍香ちゃん、のって!」
蛍香はいわれるがまま、バイクのリヤシートにとびのった。
「タマモさんスイマセン先行きます!」
「横須賀、さっき何したの!大丈夫なの!?」
「詳しい話は事務所でします…今はこいつが…フェックスが走りたがってるから…。」
「ちょ…」
タマモの声はエキゾーストサウンド(排気音)にかき消された…。
〜20分後・某峠〜
そこを駆け抜ける、横須賀と蛍香のタンデム(二人乗り)のバイク。
「40年ぶりの走行は、はどうよ?フェックスぅ?」
バイクに語りかける横須賀、リヤシートに座る蛍香のほほに、横須賀の涙が数滴当たった…。
「どうしたの?横須賀?」
「いや、なんでもない…。」
そういうとそれっきり無言でバイクを事務所まではしらせた…。
〜深夜・美神除霊事務所〜
「遅くなって、スイマセン…。」
「まぁ、すわりな。」
横須賀が座るなりいきなり本題に入るタマモ…
「で、あの時何があったの?」
あの時、残留思念に攻撃されてからのことを話す横須賀。
「つまりあの倒れた時、残留思念が直接頭の中に語りかけてきた、そういうこと…。」
「はい…。」
「それで、横須賀にバイクをたくして、成仏した。」
「はい。」
「そういうこと…もう行っていいよ、あのバイクもうちょっとはしらしてやりな…。」
「わかりました…」
事務所を後にする横須賀…いきつく先はあの残留思念がいた場所…。
「はい、ジュンジさんコーヒーとカスタムライト(タバコ)。」
ガードレールの支柱にタバコとコーヒーを立て掛ける…。
あの時、直接頭の中に語りかけたのではなく
横須賀はジュンジさん(残留思念)とテレパシーで思考がつながったのだった…
だからジュンジさんのことは何もかも誰よりも分かる…マブダチ(親友)のように…。
「許せなかったんですよね、自分のカンバンが朽ち果てて行くの…
ホントは悲しかったんですか…。ジュンジさんオレこいつ(Z400FX)大切にしますね…」
バイクに乗ろうとするとリヤシートにはジュンジさんの特攻服がかかっていた…。
コバルトブルーの夏の朝を迎えにパールホワイトのフェクスは今夜も走り出す…!!