とら! 第2節 女たちの挽歌
10月下旬。 | |
「 ハアッハアッハアッハアッ | |
朝日の昇る頃、長い前髪を揺らしながら坂道を駆け上がっていく、1人の少女がいた。 | |
「 ん? | |
彼女の前に5・6歳の女の子の浮遊霊が佇(たたず)んでおり、彼女は浮遊霊に声をかけた。 | |
「 どした? | |
《 ・・・・・さがしているの | |
「 ・・・なにを? | |
《 ・・・おもいで | |
そう言うと 女の子の幽霊は消えてしまった。 | |
■六道女学院第二女子寮 玄関前■ | |
タイガーが女子寮に来て2週間――― 彼はなんとか煩悩を働かせることのないようなるべく平静をたもとうとした結果、 一度も“ゴクウの輪”に反応させることなくやり過ごしていた。 その日の朝、タイガーはいつも通り 生ゴミをゴミ捨て場に持っていこうとすると、 その時ちょうど2年D組の御剣洋子が、ランニングから戻ってきた所だった。 | |
洋子 | 「 ただいまー。 |
タイガー | 「 おかえりですジャ 御剣サン! いつも早いですノー。 |
洋子 | 「 あんたもね。 |
寮生の大半に嫌われている中、一文字以外でタイガーに挨拶を交わす寮生は極めて少ない。 タイガーは食堂での仕事に伴い 毎朝ゴミ出しや食材運びをしているため、 毎日早朝トレーニングを行う洋子とは時々玄関先で顔を合わせていた。 洋子のさっぱりした性格もあってからか 彼女は他の寮生同じように、タイガーと会ったときは挨拶程度の言葉は交わしていた――― | |
タイガー | 「 ワ、ワシも朝仕事がなかったら朝練したいんじゃがノー。 |
洋子 | 「 すればいいじゃん。 |
タイガー | 「 えっ? |
洋子 | 「 あんた強くなりにここに来たんやろ。 30分なり1時間なり、早く起きれば済むことやんか? |
タイガー | 「 ・・・そ、そうジャノ・・・ |
洋子 | 「 なんだったらうちもつきあっちゃるよ。 ついでだし。 |
タイガー | 「 えっ!? |
・ | |
・ | |
・ | |
(泣)うるる | |
洋子 | 「 なぜ泣く? |
タイガー | 「 い、いや、ここにきて一文字さん以外のおなごにやさしくされたのはじめてで・・・ |
洋子 | ( やさしくしたつもりはないんやけど・・・ |
タイガー | 「 わかりました!! 明日からお付き合いしますですジャ!! |
すると洋子は頭をかきながら――― | |
ぽりぽり・・・ | |
洋子 | ( 大声で誤解されるようなことを言うなよ。 ・・・まあいいか。 |
―――そんなことを考えていた。 | |
こうしてタイガーは翌朝から5時に起きることとなり、まだ薄暗い中、 洋子と共に早朝トレーニングを行うこととなったのである――― | |
ぜいぜいぜいぜいっ | |
タイガー | 「 み、みつるぎさん・・・まって・・・ |
洋子 | 「 ・・・まあ こうなるとは思っとったけどな。 |
ランニング20分でばてるタイガー。 洋子はほとんど疲れた様子はない。 | |
洋子 | 「 しゃーない。ここらでちょい休憩するか。 |
2人は川沿いの土手に座り込んだ。 東の空には日がのぼりかけており、川沿いでは大きな犬の散歩をしている少女がいる。 しばらく黙って景色を眺めてた2人だが、やがて洋子が口を開く。 | |
タイガー | 「 ・・・あんたどっちすきなん? |
洋子 | 「 え? |
タイガー | 「 エミさんと魔理。 |
洋子 | かあっ |
タイガー | 「 なっ・・!? わ、わしはそんな・・・・! |
洋子 | 「 あ、無理して言わんでええ。 ひまつぶしに聞いてみただけやから。 |
タイガー | ( ・・・こっ・・・・・・このおなごわからん! 前髪で目え隠しとるから表情も読めん! |
洋子 | 「 からだでかいな。 |
タイガー | 「 はあ・・・・・ |
にこっ | |
洋子 | 「 肩に乗せてくんない? |
タイガーは洋子を肩にのせてもちあげた。 去年のクリスマスの時の一文字のように。 | |
洋子 | 「 わ、たかーい!(喜) |
タイガー | ( お、おなごがワシの肩に・・!! /// |
高さ3メートルの地点から辺りをみまわす洋子。 | |
タイガー | ( ま、前に一文字さんを乗せたことがあるんじゃが あのときは夢中で・・・! |
どくんどくんどくん /// | |
タイガー | ( い、いかん! 電気が!! |
洋子 | 「 タイガー!! |
タイガー | 「 はっ!? |
洋子 | 「 この程度で心をみだしたら、あそこ(女子寮)でこの先やっていけんよ。 |
タイガー | 「 御剣さん・・・・・ |
洋子 | 「 さ、このままあの坂道を登ってくれる? |
タイガー | 「 あ、ああ。 |
タイガーは洋子を肩に担いだまま 坂道を登り始める。 すれちがった人たちはみな不信がっていたが、彼女は気にすることなく 高い視点からの風景を楽しんでいた。 ・・・・・そして15分後、丘の上の小さな公園にたどりついた。 | |
タイガー | 「 はあ、はあ、御剣サン、もういいじゃろか・・・ |
洋子 | 「 うん。 ここらへんかな。 |
洋子はタイガーの肩から飛び降りた。 | |
洋子 | 「 ふうー やればできるじゃん。 |
タイガー | 「 えっ? |
洋子 | 「 じつは内心 ビリビリくるんじゃないかってヒヤヒヤしてたんよ。 |
タイガー | 「 それじゃあ御剣さん ワシのために・・・ |
洋子 | ( ま、逆に電気がながれなかったってことは、 うちにオンナを感じんかったってことで、ちと悲しい気もするけどな。 ・・・・・・ん? |
タイガー | 「 どうしたんですジャ? |
洋子 | 「 ・・・・・・かすかに感じた。 見られとるわ。 |
あんた、テレパス(精神感応者)やろ? ちょっとこの辺の霊を呼んでくれん? | |
タイガー | 「 呼ぶって・・・なしてわざわざ・・・ |
洋子 | 「 かるくでいいから。 |
タイガー | 「 わ わかったですジャ。 <ボッ> 出てきんシャイ!! |
タイガーは瞬間的にトラの獣人に姿を変え、念波をとばす。 するとそこに、昨日会った女の子の浮遊霊が現れた。 | |
タイガー | 「 このこは・・・ |
洋子 | 「 昨日も会ったんよ。 |
洋子は少女の前でしゃがみこんで目線を合わせると、優しい声で――― | |
洋子 | 「 ・・・思い出は見つかったの? |
ふるふるっ 少女は首を横にふった。 | |
少女 | 《 かたぐるま・・・ |
洋子 | 「 えっ? |
少女 | 《 おとうさんの ・・・かたにのるの |
洋子 | 「 ・・・そうかー タイガーやってやんなよ。 |
タイガー | 「 わ、ワシが!? |
タイガーはその女の子の幽霊を肩に乗せて歩いた。 幽霊だけに重さは感じない。 しばらく少女は周りの景色を見回すと、やがて満足したかのように消えてしまった。 | |
タイガー | 「 成仏したんカイノー。 |
洋子 | 「 きっとな。あのくらいの子の喜ぶことって、こんなことなんだろうな。 |
うちらがやってたのを見て思いだしたんやろ 父親との思い出を。 | |
タイガー | 「 御剣さんもそうじゃったんか? |
洋子 | 「 ・・・うちは父親おらんね。 誰かの肩に乗ったんもあんたがはじめてよ。 |
タイガー | 「 そ、そうなんか・・・ |
洋子 | 「 ・・・・・・・ |
タイガー | 「 ・・・・・・・ |
2人の間に気まずい空気が流れる。 タイガーはとりあえず話題を変えようと――― | |
タイガー | 「 で、でも御剣サンはすごいノー! |
ワシなんかさっきの子の幽霊なんて気づきもせんかったのに。 | |
洋子 | 「 フッ うちはそんなにすごくないよ。 |
さっきの子も、前に会ったことがあるから気づいたんやしな。 | |
更にタイガーはあからさまに話題を変えようとする。 | |
タイガー | 「 そ、それでもすごいケン! |
さすがGS試験で、六女のなかでいちばん勝ち進んだだけのことはあるノー! | |
洋子 | 「 うちは仙香やかおりのように才能がないからな、特訓するしかないんよ。 |
特殊な力も使えんし、武器も神通棍とお札だけや。 | |
試験もたまたま勝ち続けただけで、ホントは仙香やかおりのほうがずうっと強いわ。 | |
タイガー | 「 ・・・・・・・ |
洋子はバシッとタイガーの背中をたたき、にまっと微笑む――― | |
洋子 | 「 ま、がんばろな! うちらのような才能のない奴は、こうやって、努力せんとな! |
タイガー | 「 御剣サン・・・! |
洋子 | 「 洋子でええよ。 うちも『寅吉』って呼ぶから。 |
タイガー | 「 え・・・!? |
洋子 | 「 いやか? |
洋子はタイガーを下から見上げるようにすると、前髪の隙間から片目を見せて微笑んだ。 するとタイガーの顔が、見る見る赤く染まりだす。 | |
タイガー | 「 いや、あ、いや・・・そうじゃのうて、この町にきて『寅吉』って呼ばれたことなくて、 |
その〜 みんな『タイガー』って呼んどったから・・・ | |
洋子 | 「 いいじゃん、うちは寅吉のほうが気に入ったよ。 |
タイガー | 「 そ、そうなんかの? |
洋子 | 「 んじゃそろそろ戻ろっか 寅吉。 朝ごはん用意せんといかんのやろ? |
タイガー | 「 あ、そうジャノ! |
こうしてタイガーの朝練1日目が終わった。 と同時に、頼もしき朝練仲間もできたタイガーであった。 | |
■朝 六道女学院第二女子寮食堂■ | |
寮生A | 「 ねえ、あれ見て・・・ |
寮生B | 「 ・・・どういうことなの? |
寮生達がある方向を見てひそひそ話をしてる所に、D組の春華と聖羅がやってきた。 | |
春華 | 「 おはよう。 |
聖羅 | 「 おはようございますですわ。 |
2人は寮生たちの視線に気づき、視線の先の人物を見る。 そこには同じクラスの洋子と、厨房で働いているはずのタイガーが 同じテーブルで向かい合って、一緒に食事をとっていたのである――― | |
聖羅 | 「 洋子さん!? |
春華 | 「 なんで・・・!? |
―――数分後、めずらしく早く起きた一文字がやってくる。 | |
一文字 | 「 おっはよー! |
春華 | 「 洋子!ちょっとどういうことなの!? |
聖羅 | 「 この状況、くわしく説明していただきますわ! |
一文字 | 「 な、なんだ!? |
一文字の目線の先に、洋子を問いただしてる春華と聖羅がおり、 洋子は朝食を食べながら2人の問いに答えていた。 | |
洋子 | 「 んぐんぐ 朝飯食べてるだけやけど。 |
春華 | 「 そうじゃなくて、何でトラ男と一緒に食べてるのよ!! |
洋子 | 「 んなのいいじゃん 別に。 はむっ |
春華 | 「 あんた、食堂の仕事はどうしたのよ! |
タイガー | 「 いや まだなんジャケンど・・・ |
春華 | 「 ちゃんと仕事しなさいよ! |
聖羅 | 「 そうですわ! 与えられた課題ぐらいきちんとこなすものですわよ! |
タイガー | 「 は、はいっ! 今すぐやりますジャ! |
一文字 | 「 あいつら・・・・・・! |
洋子 | 「「 いい加減にしとき!! |
一文字がわって入ろうとしたとき、洋子の声が食堂中に響いた。 | |
洋子 | 「 聞けば、こいつが契約した働く時間は朝1時間、夕方2時間、 |
ここの家賃代と食事代を払える程度働けば済むらしいやん! | |
あんたらの中に家賃も食うもんも親の金やのうて 自分で働いて払っとる奴がおるんか!? | |
おまけに自主的に寮の掃除までしてくれて・・・ | |
あんたらなにが気にいらんのじゃ!! ゆうてみい!! | |
長い前髪の間から目をぎらつかせ、寮生たちをにらみつける洋子。 彼女のあまりの迫力に、その場の全員がおし黙ってしまった。 そして春華と聖羅は――― | |
春華 | 「 ・・・・・・クッ! |
2人は何も言わずに食堂から出て行った。 | |
タイガー | 「 よ、洋子サン・・・ |
洋子 | 「 きにすんな。食おうや。 |
一文字 | 「 ・・・おはよう。 |
一文字も加わり、3人は一緒に朝食をとったあと、一緒に学校へと向かう。 その登校中――― | |
一文字 | 「 それにしても、洋子が怒ったとこ初めてみたよ。 あれはさすがに私もびびったよ。 |
洋子 | 「 やめてーや。 今思うとかなり恥ずいことしたなと思うとるんやから。 |
今頃になって照れて顔を赤くし、頭をかく洋子。 | |
一文字 | 「 それにしても、おまえらいつからそんなに親しくなったんだ? |
タイガー | 「 ワ ワシ、ちょっと前から洋子サンと朝練するようになったんジャ。 |
一文字 | 「 あされんー!? おめえGS試験合格したってのにまだやってたのか!? |
洋子 | 「 うちの日課やしな。 去年あんたにクラス対抗で負けたときからね。 |
一文字 | 「 あんときはおまえ すぐ交代しちまっただろ。 4ページぐらいで。 |
タイガー | 「 一文字サン、洋子さんと戦ったことがあるんかいノー! |
一文字 | 「 まーな・・・・・・ そっかー 私もやろうかなー? |
タイガー | 「 いいけんどワシら5時に起きとるケン、7時半に起きる一文字さんには辛くないかノー。 |
一文字 | 「 ご 5時だと!? う〜〜〜ん・・・・・・ |
予想外の時間に一文字は考え込んだ。 無理もない、彼女にとって・・・いや、一般的高校生にとってはまだ夢の時間帯なのだから。 | |
洋子 | 「 そうや寅吉、今晩G組の神野水樹ってコと話しに行こう。 |
あんたと同じ精神感応の使い手やから、いろいろためになるかも。 | |
一文字 | ( とらきち・・・・・・? |
タイガー | 「 そうジャノー・・・あ、じゃあワシ、学校あっちじゃから! |
そういうとタイガーは走っていった。 | |
洋子 | 「 そんじゃうちらもいこか。 |
一文字 | 「 なあ、いま『寅吉』って言ったよな。 |
洋子 | 「 言ったよ。 |
一文字 | 「 そういやあいつも『洋子サン』って・・・ |
洋子 | 「 そーやな。 |
一文字 | 「 ・・・なして? |
洋子 | 「 気になる? |
一文字 | 「 ・・・別に。 |
にまっ | |
洋子 | 「 気になるやろー? |
かあっ | |
一文字 | 「 別にって言ってんだろ!! |
◆ | |
■六道女学院 2年D組■ | |
春華と聖羅のまわりに、数人の女生徒が集まっている。 今朝の件で、春華は怒りをあらわにしていた。 | |
春華 | 「 ――ったくもう、ムカツクったらありゃしない! おまけに朝食食べそこねた〜〜〜っ!! |
聖羅 | 「 はあ、仕方ありませんわ。 洋子さんの言うことはまったくの正論なんですもの。 |
春華 | 「 もうあんな子、クラスメイトでもなんでもないわ! |
女生徒A | 「 お、おちついて桂木さん、この前からギスギスしすぎよ。 |
春華 | 「 ちょっと自分がGS試験に勝ち進んだからって、いい気になって〜〜〜!! |
『『『 そりゃあんただ。(汗) 』』』 ―――と、全員心の中でつっこむ。 | |
がらがらっ 洋子が扉を開け、教室に入ってくる。 と同時に、先ほどまで騒いでいた教室が静まりかえる。 霊能科の大半が寮生活をしてるため、今朝のことはほとんど皆知っていたのである。 洋子は全く気にする様子もなく、自分の席についた。 | |
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん〜〜〜 | |
先生 | 「 ほらー席に着けー。 |
担任の先生が来てホームルームがはじまる。 | |
先生 | 「 ―――というわけで、桂木・御剣。 GS資格試験に合格したお前達は、 |
来月から1週間、オカルトGメンで特別研修が始まる。 がんばってこいよ――― | |
■女子寮401号室前■ | |
夜。 タイガーと一文字、そして洋子は、心理攻撃の使い手である神野水樹の部屋を訪ねた。 コンコン。 一文字が扉をたたく。 出てきたのは資格試験でタイガーに勝利した霊体触手の使い手、仙香であった。 | |
仙香 | 「 あら? 一文字さんに洋子さん、それにタイガー寅吉・・・めずらしいな。 |
洋子 | 「 まーね。 水樹ちゃんに用があんのやけど。 |
仙香 | 「 ああいるよ、水樹ー。 |
水樹 | 「 なぁにー? |
仙香は同室に一緒に住んでいる神野水樹を呼んだ。 すると奥のほうで、せんべいを食べながらテレビを見ていた水樹がトタトタとやってくる。 | |
一文字 | 「 ちょっといいかな? タイガーのことで相談があるんだけど。 |
水樹 | 「 え、ええ・・・ |
◆ | |
■401号室■ | |
部屋にはタイガー、一文字、洋子、仙香、水樹がガラスのテーブルを囲むように座っている。 密室で男1人に女4人。 滅多に女性の部屋にあがりこんだことのない彼にとって、この状況はいろんな意味で紙一重。 | |
「「「「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | |
どきどきどきどきどき | |
タイガー | ( ・・・お、おなごの部屋! しかもおなごが4人も!! |
いつも以上に慣れない状況にガチガチになるタイガー。 それを見た洋子は――― | |
洋子 | 「 寅吉! これくらいで電気ながすんじゃないよ! |
タイガー | 「 はっ! |
一文字 | 「 心配ないって、ここんとこ全然ビリッときてないし。 な! 大丈夫だろタイガー。 |
タイガー | 「 あ、ああ・・・ |
タイガーを信じて安心しきってる一文字。 だが彼の内心は、ドキドキ感でいっぱいであった。 | |
仙香 | 「 ・・・それで、水樹に相談っていったいなんなんだ? |
洋子 | 「 ああ、それはやな・・・ |
洋子は、タイガーと水樹が似たような能力の持ち主であるということから その能力について相談しあえば、お互いにとってきっとプラスになるであろうことを話した。 | |
仙香 | 「 ・・・・・・なるほど。 でも無理ね。 |
洋子 | 「 なして? |
仙香 | 「 タイガーの場合、精神感応を一定量使いすぎると暴走するみたいだけど、 |
水樹の場合 自分の精神自体に問題があるんだもの。 | |
水樹 | 「 ちょっと! なによそれー! |
仙香 | 「 だって 『ハワイに旅行したことないー!』 とか言って戦意喪失するし、 |
臨海学校でも見かけにだまされてほとんどパニック状態だったじゃない。 | |
水樹 | 「 だってだって―――!! メロウかわいかったんだもん!! |
仙香 | 「 おまけにこの前の試験も、対戦相手にびびって、すぐにギブアップしちゃったじゃない。 |
水樹 | 「 だってだって―――!! 九能市ってヒトの目、本気でアブナかったんだもん! |
なんでか知らないけど心理攻撃もきかなかったし! | |
仙香 | 「 ・・・とにかく、私のほうとしても水樹をなんとかしたいのよ。 |
一文字 | 「 そっかー。 逆境に弱い友達をもつと、お互い苦労するよなー。 |
タイガー・水樹 | 「「 ・・・・・・ |
黙って下を向くタイガーと水樹。 | |
洋子 | 「 ・・・しゃあないな。 いいアイディアだと思ったんやけどなー。 |
洋子は立ち上がり、部屋を出ようとする。 つづいてタイガーも立ち上がると仙香がタイガーに声をかけてきた。 | |
仙香 | 「 タイガー。 |
タイガー | 「 はい? |
仙香 | 「 あなた、強かったわよ。 今度は必ず合格するわ。 |
タイガー | 「 えっ!? |
仙香 | 「 私でよければ、実戦トレーニングの相手をしてあげるわ。 |
タイガー | 「 あ・・・ありがとう! |
仙香 | 「 それから・・・・・・ちょっとお願いがあるんだけど。 |
タイガー | 「 な、なんジャ? |
仙香は赤くなり、コホンと軽くセキ払いをすると、タイガーに一気につめより彼の両手を握る! | |
「「「 !? | |
突然の仙香の行為に一文字たちは驚く。 そして仙香は目をキラキラさせてタイガーを見上げると――― | |
仙香 | 「 おねがい! 今度エミ様を紹介して!! 私 大ファンなの!! |
ずだだだっ =☆ こける水樹と洋子、そして一文字。 だがタイガーは――― | |
かああっ どきどきどきどき・・・・・・ | |
タイガー | ( お、おなごのほうからワシの手を・・・・・・!! ―ぷちっ― |
洋子 | 「 はっ! 仙香! はよ離れ――― |
タイガーの頭につけられた“ゴクウの輪”が、煩悩臨界点を越える! | |
ピシャアアア――――ッ! | |
タイガー | 「「 グギャアア――――――ッ!!! |
仙香 | 「「 キャアアア――――――ッ!!! |
ばたばたっ プシュ〜〜〜ッ・・・ ・・・洋子の呼び止める声空しく、2人はボロボロになって倒れこむ。 | |
仙香 | 「 あ‥‥あなた、こんなこと、よく平気でやってられるわね‥‥ |
タイガー | 「 へ、平気じゃないですケン‥‥ |
洋子 | 「 仙香! あんたタイガーをクビにして、自分がエミん所の助手になるつもりか!? |
仙香 | 「 い いや、そんなつもりは‥‥ |
最近ようやく電気を流さなくなったが、いきなりのふいうちに精神をみだしてしまったタイガー。 洋子はタイガーの前に立ち、長い前髪のスキマから彼を見下ろすと――― | |
洋子 | 「 寅吉・・・あんたうちに触ってもなんもおきへんかったくせに、 |
仙香に手を握られたぐらいで電気を流すなんて どういうことやね。 | |
タイガー | 「 そ、それは・・・(汗) |
一文字はしゃがみこんでタイガーに顔を近づけると、疑いのまなざしで――― | |
じ〜〜〜 | |
一文字 | 「 ・・・おめえまさか仙香のことが――― |
タイガー | 「 ち、ちがうっ! と、とっさじゃったからつい・・・!(汗) |
あわてて取り繕うタイガー。 だが一文字の視線は冷ややかなものだった。 基本的にタイガーの味方である彼女であったが、自分がからんでいる時に、 彼が煩悩を働かして電流を流したことはないことを考えると、心中複雑な想いがあった。 | |
なにはともあれ、タイガーの事務所クビまであと電流2回――― | |
2年A組 紫 小町 17歳。 初登場。 | |
戦闘霊衣は着物、武器は扇。 着物を着て戦う端正な顔立ちに女性からのファンが多い。 | |
下級生A | 「 センパイ! あの〜これ、受けとってください! |
小町 | ( は、ハートマークの手紙?(汗) |
下級生A | 「 きゃ――っ!! |
手渡した女生徒は走っていってしまった。 そこに同じクラスの仮面少女、月白 昴(すばる)がやってきた。 | |
昴 | 「 あいかわらずもてるな、女に。 |
小町 | 「 女性にもてたってうれしくないわよ! |
昴 | 「 私を見ろ。 下級生なんてよりもしない。 |
小町 | 「 あんたは四六時中“ファントムの仮面”つけてるからでしょ! |
知らない人が見たら怪しい人にしか見えないわよ! | |
昴 | 「 いや〜これがまた落ちつくのよ。 うふふふふ♪ |
小町 | 「 仮面マニア・・・(汗) |
とにかく、この女子高という空間は歪んでいるわ! | |
いくら私が男顔だからって 女が女に・・・! | |
とそこに別の下級生が弁当をもってくる。 | |
下級生B | 「 先輩! これ、食べてください! |
小町 | 「 ・・・・・・あのさー |
下級生B | 「 はい! なんでしょう!? |
小町 | 「 私のどこがいいの? |
下級生B | 「 はい! かっこいいし、男装の麗人みたいで素敵だからです! きゃ〜言っちゃったー! |
すたたたたっ 下級生は走り去っていった。 | |
わなわな・・・ | |
小町 | 「 着物着て戦うこの私が、オトコらしい・・・!? |
昴 | 「 小町、落ち着け。 |
小町はフトコロからハリセン・・・もとい、扇を取りだした。 そして昴に向かい――― | |
小町 | 「 すばる! そのお面を貸せ! 私も顔を隠す! |
昴 | 「 うわっ! や、やめろ小町! この仮面だけは堪忍して〜〜〜! |
嫌がる昴をおいかける小町。 彼・・・いや、彼女の女難はつづく―――――― | |
ここは女子寮の315号室、2年D組桂木春華と聖羅の部屋。 春華の持ち霊、キョンシー4鬼プラス1鬼の会話である。 | |
『 はあ〜 | |
『 どないしたんや、イー。 | |
『 いやな、最近疲れがたまってなー | |
『 最近、よう呼び出されとったからな。 | |
『 だいたいあのオンナ、わしらをこきつかいすぎなんじゃ。 | |
『 そうやなー、戦いの時以外でも呼び出しおるからな。 | |
『 そやそや。 この前なんか、お茶くみだけに呼ばれたし。 | |
『 わしはコンビニにパシリにつかーされた。 | |
『 わてなんか宿題を手伝わされたんやで。 | |
『 難儀やなー | |
『 ほんまや。 | |
『 そんなにひどいもんかなー? | |
話しに加わったのは5鬼めのキョンシー【ウー】である。 | |
『 あんさんはまだ新人だからわからんやろーけどな。 | |
『 えげつないで〜あのオンナは。 | |
『 ぼく、この前ケーキもらったよ。 | |
『 ウー、そんなん最初のうちだけやがな。 | |
『 ・・・て、わてらがケーキもらってどうすんのや? | |
『 食べられないから春華さんにあげたけど。 | |
『 ・・・おまえ絶対だまされてるって。 | |
『 あーあ わてあのオンナの持ち霊やめたいなー | |
『 おい滅多なこと言わんほうがええぞ。 | |
『 そや、わてらはあのオンナの力がないと現世に存在できんのやからな。 | |
『 でも去年のクラス対抗戦こと思い出してみい。 | |
『 あれか・・・・・・ | |
『 ああ、あれはひどかったからな。 | |
『 ああ、悲惨やったな。 | |
『 ・・・なにかあったの? | |
『 ウー あんさんは知らんやろーけどな、あのオンナ わてらの護符を日干しにしたんや。 | |
『 えっ!? | |
『 丸1日中洗濯物と一緒に干されてな、干からびて死ぬとこやったんやで。 | |
『 そやそや、ちょっと試合の時に相手方に協力したぐらいでな。 | |
『 僕らはこれ以上死ねないと思うけど・・・。 | |
『 わし、あん時の笛のねーちゃんの下につきたかったなー。 | |
『 そやなー、やさしそうやったし。 | |
『 けっこうかわいかったしなー。 | |
『 それにくらべあのオンナときたら・・・あーもう、もっとわてらを大事にしろっちゅーんじゃ! | |
『 あのオンナにとっちゃあ、わしらなんてどーでもええ存在なんかもしれんな。 | |
『 確かに。 今日なんかわしらの護符をおいて学校にいっとるしのー。 | |
『 わてらの護符ぐらいちゃんともっとけっちゅうーんじゃ。 | |
ぼそっ | |
『 ・・・・・・はあ、なんかしてやりたいな。 | |
『 なんかって? | |
『 なんかよ。 あのオンナをギャフンと言わせるような‥‥ | |
『 ギャフンとは言わないと思うぞ。 | |
『 たとえだ たとえ。 | |
『 でもあのオンナに弱点なんてあるのか? | |
『 う〜〜〜ん・・・・・・ | |
『 ・・・・・・・・・・・・ | |
『 ・・・・・・・・・・・・ | |
『 ・・・・・・・・・・・・あっ! | |
『 どないしたスー? | |
『 そういえば、この前お使いの帰りに下水道通ったときになー。 | |
『 なんでお使いの帰りに下水道なんか通るん? | |
『 いやーたまにはいつもと違う道を通りたいと思う、ちょっとした冒険心やないかー。 | |
『 ・・・で、なんやねん? | |
『 そのときになー、おもろい奴におうたんよー。 | |
『 まさかこの前話してたあいつか!? | |
『 でもあいつ、大した力 持ってへんかったとちゃうか? | |
『 いやまて、人間のオンナは・・・いやオトコもそうだが、ほとんどはそいつには触りたがらん。 | |
『 そう、ある意味人類のライバル! あいつを見て平常心でいられるオンナはおらん! | |
『 嫌がらせには絶好の存在やしな! | |
『 ・・・やるか? | |
『 ・・・もち! | |
『 異議なし! | |
『 徹底的にやな! | |
『 いいのかなあ・・・・・・ | |
―――春華と聖羅帰宅。 | |
春華 | 「 ただいまー。 イー・アル・サン・スー・ウー、いま帰ったわよー。 |
『『『『 きたっ!!!! | |
『 おかえりい、春華さん。 | |
『 首を長くしてまっとったでー。 | |
部屋の入り口で迎えるキョンシーたち。 | |
春華 | 「 今日はごめんねー、はい これ。 |
『 な、なんや? | |
春華はキョンシー 一鬼一鬼にリボンのついた袋を手渡した。 彼らが袋をあけると、5鬼おそろいの帽子がはいっていた。 | |
『 春華さん、これは・・・ | |
春華 | 「 いやー GS試験の合格祝い、あんたたちとやってなかったしね。 |
5鬼分のプレゼントってなると、帽子だけでやっとなのよ。 | |
『 春華さん 僕・・・感動です! | |
春華 | 「 あらあらウーったら、泣かなくたっていいのよ。 |
『『『『 ・・・・・・・・・・・・ | |
困惑するイー・アル・サン・スー。 | |
聖羅 | 「 さあ、早く部屋にあがりましょ。 今日はキョンシー専用の食事も用意してきたんですから。 |
『『『 うわああああっ!!! | |
『 い いまはあかん! | |
『 ちょ ちょっとわてら 部屋をちらかしてしまったさかい! | |
聖羅 | 「 え・・・? |
聖羅を止める4鬼のキョンシー達。 その横で春華が部屋に入ろうとしていた。 | |
すたすたすたっ | |
春華 | 「 いいわよそれぐらい。 ちゃちゃっと片付けてパーティーのしたくしましょ。 |
『『 あああっ!! | |
がちゃっ 春華がキッチンから部屋に通じる扉をあけると・・・・・・ | |
春華・聖羅 | 「「 !!?? |
かさ・・・ | |
ぽりぽり | |
≪ ん? ジャマしてるぞ。 | |
聖羅 | 「 い、イヤあああああ――――――っ !!!! |
・・・・・・ばたっ | |
気絶する聖羅。 | |
部屋にはなんと数百・・・いや、数千匹ものゴキブリがうごめいていた! その真ん中には、ポテトチップスを食べながらテレビを見ている人型のゴキブリがいた! | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
人型ゴキブリ | ≪ ここは気に入った。 この部屋を、人類制圧の拠点としてくれようぞ。 |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
かさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさかさっ | |
こそこそこそこそ……… 逃げようとする4鬼のキョンシー。 春華のバックには炎のオーラが出現し、メガネがあやしく光る。 | |
ずごごごごごっ | |
春華 | 「 ・・・・・・まてい、きさまら。 |
4鬼 | 『『『『 ひいっ! |
その後、キョンシーたちがどうなったのかは誰も知らない……………… | |
特別ゲスト : 人型ゴキブリと仲間たち、そして――― | |
『キョンシーの憂鬱(ゆううつ)』その後です。 | |
かさかさかさかさかさかさっ | |
はあっ はあっ・・・ | |
人型ゴキブリ | ≪ くっそ〜 あのキョンシー共〜 絶好の住処を教えてやると言いながら |
あんな凶暴女の所を紹介しやがって〜! あんなトコ誰が住めるものか! | |
あのあと、鬼神と化した春華にこっぴどくやられた人型ゴキブリは、 ヨロヨロと棒を杖代わりにして女子寮内から出ようとしていた。 人型ゴキブリの後ろには無数のゴキブリがついてきている。 そして寮の裏庭の霊的格闘グラウンドにて。 | |
人型ゴキブリ | ≪ あれは!? |
そこには黒装束を着た仙香が 数人の寮生たちと模擬訓練を行っており、 彼女はちょうど額から2本の霊体触手をのばし、寮生に接触させ相手を沈めていた。 その姿を見た人型ゴキブリは――― | |
人型ゴキブリ | ≪ あのワザはまさに、ゴキブリの王である私にこそふさわしい! おい女! |
仙香 | 「 え? |
人型ゴキブリ | ≪ 是非ともそのワザ、この私に教えてもらおうか。 |
その触覚ビーム、必ず我々一族の世界征服のために役立つであろう。 | |
仙香をはじめ、ほかの寮生たちも時が止まったかのように顔を青くして固まった。 それも当然。 なぜなら――― | |
かさかさかさかさ(エンドレス) | |
人型ゴキブリだけならまだしも、後ろには1000匹を越える無数のゴキブリがいるのだから。 | |
仙香 | 「 ゴ・・・・・・ゴキブリ!?(汗) |
人型ゴキブリ | ≪ いかにも。 |
人型ゴキブリは腕を組んでなぜか偉そうにしていた。 仙香は顔を引きつらせながら――― | |
仙香 | 「 れ・・・・・・ |
人型ゴキブリ | ≪ れ? |
仙香 | 「「「 霊体触手―――っ!!!!! |
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッッ!!!!! | |
人型ゴキブリ | ≪≪≪ わげぐあぁあぁあああ――――――っ!!!!! |
・・・・・・・・・・・・ばたっ。 | |
仙香の放った触覚ビーム・・・ もとい霊体触手が一直線に放たれ、人型ゴキブリは感電したかのように地面に倒れふせた。 霊体触手は本来相手の自由を奪うなどの精神コントロールを主としたワザであったが、 今回の場合嫌悪感が先にたった彼女の霊力暴走により、 霊的存在を打ち砕くかのような破壊技へと変質したのである。 そして人型ゴキブリは、地面に這いつくばったまま――― | |
人型ゴキブリ | ≪ す、すばらしい! 女、我々の仲間にならぬか? 人間とはいえ他人とは思えぬ・・・。 |
仙香 | 「 やかましい! |
後方で固まってた寮生たちは・・・ | |
寮生A | ( ゴキブリ男に仙香さんが誘われてる。 |
寮生B | ( そういえば仙香さんの昔のあだなって・・・ |
そして翌日、学園の廊下にて――― | |
弓 | 「 あらあら仙香さん。 あなたゴキブリに告白されたんですってね。 |
式を挙げるときは 是非とも私もご招待してほしいものですわ♪ | |
仙香 | 「 誰―――かおりにしゃべったのは―――!?(泣) |
楽しそうに語る弓、泣き叫ぶ仙香。 どうやら今回の口ゲンカ勝負は弓の勝ちのようである――― | |
■六道女学院第二女子寮■ | |
翌週の日曜日。 一文字や仙香といった 2年生のGS試験合格者7人は、特別研修へと向かった。 (弓は自宅通学)他の寮生達は玄関で7人を見送ったあと、寮内に戻っていった。 | |
タイガー | 「 さてと、天気もいいし、庭の掃除でも始めるかノー。 |
季節は秋。 木の葉が舞い落ちる中、タイガーは寮内にある寮生専用の霊的格闘グラウンドにいた。 ここには寮生のために、半径5メートルの特殊な結界魔法陣が常に設置されており、 このなかではすべての物理攻撃が無効になる。 タイガーも時々、一文字たちとここでトレーニングを行っている。 | |
タイガーが竹ほうきでグラウンドの枯れ葉を掃除をしていると、 ラフな格好をした、G組の神野水樹が1冊の本を手にしてやってきた。 2人は近くのベンチに座り、タイガーはその本を手にしている――― | |
タイガー | 「 これが“心理の書”の写し。 |
水樹 | 「 そう、私の実家の神社に代々伝わる秘伝書の1部。 |
私が六女(六道女学院)に入学したときに父から受け継いだものなの。 | |
これには精神感応に関するすべてのことが書かれているらしいわ。 | |
タイガー | 「 らしいって、神野サンは見てないのかノー? |
水樹 | 「 見たけどね。 |
タイガー | 「 ワシが見てもいいんカイノー。 |
水樹 | 「 うん。 |
タイガーは本を広げた。 しかし、そこにはなにも書かれていなく、全て白紙だった。 | |
タイガー | 「 どういうことジャ? |
水樹 | 「 それが読めるのは神の力を授かった精神感応者だけだってお父さん言ってた。 |
まあ胡散臭い話だけど、一応それなりに力は感じるでしょ? | |
タイガー | 「 確かに・・・なにか力を感じるノー。 |
水樹 | 「 精神感応者にもいろいろあって、私達みたいに幻覚をみせたり弱い霊を |
目視させる以外に、イタコのように霊を呼び寄せるだけじゃなくて | |
離れた人の言葉を聞きとってそれを伝えることができる人もいるわ。 | |
もっとすごい人は、相手の思考そのものまで読み取ることができるらしいし・・・ | |
タイガー | 「 神野サン詳しいノー。 |
水樹 | 「 フフッ GS界でも精神感応者はわりと貴重なほうだし。 |
これでも私 六女の精神感応者のなかではトップクラスの成績なんだから! | |
タイガー | 「 ほえーすごいノー。 |
水樹 | 「 そうだ、タイガーさん、今度うちの実家に行ってみたら? |
お父さんなら、精神波をうまくコントロールする方法を知っているかも。 | |
タイガーと水樹が話しこんでるところに、 黒の法衣を着た聖 聖羅と他5人の寮生がグラウンドにやってきた。 | |
聖羅 | 「 あら、神野さん珍しいですわね。 あなたが男の人と一緒にいるなんて。 |
水樹 | 「 聖(ひじり)さん・・・・・・ |
聖羅 | 「 いくら彼氏がほしいからって、なにもこんな野獣と付き合うこともないでしょうに。 |
水樹 | 「 わ、私はそんな! |
タイガー | 「 や、野獣・・・・・・。(汗) |
聖羅 | 「 あなた、神野さんにまで手をだすんじゃないですわよ。 |
神野さんも気をつけなさい。 | |
この男、内心何を考えてるのか、わかったもんじゃありませんから。 | |
そう言うと、聖羅たちは結界魔法陣のなかに入っていった。 | |
水樹 | 「 聖さんが男嫌いなのは知ってるけど・・・タイガーさん、あなたなにかしたの? |
タイガー | 「 いやーそれがのう、この寮に来た日に・・・ |
■タイガーの回想■ | |
タイガーが廊下を歩いていると、床にハンカチらしきものが落ちていた。 | |
タイガー | 「 落し物カイノー? |
タイガーが拾うとそれは・・・ | |
タイガー | 「 !? こっ、これは、おなごの下着!? |
びりびりびりびりびりびりびり | |
タイガー | 「「 グワァアッ!! |
ぷしゅうー | |
タイガー | 「 お、おなごのしたぎ・・・・ |
ゴクウの輪による電撃により、倒れたタイガーの前を聖羅が通りかか |