とら! 第7節 除霊事務所設立


       
   
■魔法料理 魔鈴 本日貸切■
 
10月4日、GS資格試験の夜、魔鈴の店でGS合格パーティーが行われていた。
美神が乾杯の合図をとる。
 
令子 「 ―――とまあ 水樹ちゃんとアンちゃん ついでにカオスとメゾピーは残念だったけど、
  おキヌちゃん 早苗ちゃん 聖羅さん 
  それから首席のタイガー GS資格試験おめでとう! 乾杯―――!!
 
 
   『『『『『   かんぱ―――――い!!!!!   』』』』』

リポート35 『祝賀パーティー』
がつがつっ
「 こらうまい! こらうまい!
シロ 「 あ それは拙者の肉でござる!
魔鈴 「 みなさーん どんどん食べてくださいね〜!
黒猫 《 ・・・なんか毎回出だしが同じのような気がするニャ〜。
 
・・・隣りのテーブルではおキヌが美神や弓に祝福されており、
更に隣りのテーブルでは、ピートの左右の席に、アン・ヘルシングとエミが座っていた。
 
アン 「 ピートおにーさま! あーんして☆
エミ 「 おたく ピートから離れなさいよ!
ピート 「 ふ 2人ともちょっと・・・!(汗)
 
その様子を見ていた六女D組の春華と、唐巣の弟子の聖羅は・・・
 
春華 「 あんたも大変ね。 これからあんなコ(アン)が妹分になるなんて。
聖羅 「 ううっ それを考えると頭が痛いですわ。(汗)
 
そのアンを見て、聖羅はため息をついた。
一方タイガーの周りには、一文字や洋子など六女の生徒たちが集まっていた。
 
一文字 「 それにしてもまさか首席合格とはなー! 正直また2回戦で負けると心配してたんだぜ!
タイガー 「 いやー一文字サン 自分でもびっくりしとりますジャ!
仙香 「 ほんとあなた強くなったわよ。 1年前とは大違いね。
タイガー 「 仙香サン・・・
 
去年の資格試験2回戦でタイガーと戦い、勝利した彼女が認めた。 そして愛子は―――
 
愛子 《 それでタイガークンはこれから除霊事務所を起こすんでしょ?
  GS資格試験首席という肩書きがあれば、どんどん大きな仕事がはいっちゃうんじゃない?
洋子 「 そうや、なんならうちを従業員に雇わへんか?
一文字・水樹 ―――えっ!?―――
 
洋子の発言に、一文字と水樹が驚いたように反応した。
 
洋子 「 あと半年でうちらも卒業やし それまではアルバイトってことで。
  どうせうちはまだ どこの事務所にも属しとらんからな。
一文字 「 あ だったら私も! 腕のいい助手は必要だろ?
タイガー 「 い 一文字サン・・・
水樹 「 あのー私も――///
仙香・亜美 『『  がんばれー水樹ー!!
 
照れながら挙手する水樹を、陰で応援する友人たち。 ・・・というより楽しんでいる部分も多い。
 
タイガー 「 じゃがワシーまだ持ち合せがなんもなくて 人を雇う余裕なんか―――
一文字 「 そんなのわかってる。 しばらくは弟子入りってことでかまわねえよ。
タイガー 「 一文字サンそんな! 先に資格を取ったのは一文字サンたちのほうじゃし―――
一文字 「 んなの気にする必要ないって。 実力じゃあ私たちより上なのはわかってるから!
タイガー 「 う・・・そうやノー どのみち1人じゃ除霊仕事はできんからノー・・・
一文字 「 だろだろ!
タイガー 「 ん! こんなワシの所でよければ ワシのほうからお願いするですジャ!
一文字 「 よっし 決まったー!! これで就職活動の心配もないしな♪
「 あなたねー・・・(汗)
 
一文字の言葉にあきれる弓。 その隣りで洋子はグラスにシャンパンを注ぐと―――
 
洋子 「 所長! シャンパンやけど まあ飲め飲め!
一文字 「 よ タイガー所長! イッキ!! イッキ!!
タイガー 「 ごくごくごくごくごく・・・・・・・・!! ゲホガホッ!!
水樹 「 タイガーさん大丈夫!?
 
むせるタイガーに水樹はタオルを持ってくる。 そんな奇妙な光景を見たタマモは―――
 
タマモ ( トラ男の周りに女が群がってる・・・・・・人間ってまだまだ謎だわ。
 
 
・・・翌日、タイガー・水樹・早苗・メゾピアノの4人は、両親や師匠への報告に、それぞれの神社・学校へと戻ったのである。
 
 
 
 
 
 
■神野神社本堂■
 
タイガー 「 申し訳ありません!! 神野師匠!!
 
神野夫妻とタイガー・水樹は向かい合っており、タイガーは師匠である神野父に土下座していた。
神野父は、タイガーと同じぐらいの大男で、心理攻撃に関してはかなりの実力者である。
 
水樹 「 タイガーさん 誤る必要なんてないわ。 勝負は勝負だったんですから!
タイガー 「 いや お世話になった御恩を仇で返すような形になってしまい―――
神野父 「 ―――覚悟はできておるであろうな? <ギロッ>
タイガー 「 はい! なんなりと罰は受けますですジャ!!
水樹 「 お父さん!!
 
神野父 「「「  ならばタイガー!!
タイガー 「「「  は はいっ!!
 
 
神野父      「 責任とって 水樹のムコになれ。
 
 
ずどしゃっ  =☆
頭から倒れる水樹。
 
タイガー 「 ・・・は!?(汗)
神野父 「 だからね〜タイガーク〜ン♪ 娘を傷物にした責任をとってもらわんと〜。
 
神野父は、タイガーに近づき、あまい声をあげて言う。
実際、水樹の手や顔には、昨日の戦いでの傷が残っており、何ヶ所かバンソウコウが貼られていた。
 
神野父 「 この神社に来んかー? 水樹もまんざらでもないようじゃし―――
かああっ
水樹 「 なっ なにを言うだ父っちゃ―――!!!///
 
ぱこん  =☆
 
神野母 「 おとう! 若い子達をからかうんじゃないよ!
神野父 「 おう!
 
神野母に軽く殴られるオヤジ。
 
神野父 「 ・・・・・・ごほん! ま ぎゃぐはこれぐらいにしておこう。
タイガー ( ぎゃぐ・・・(汗)
神野父 「 まずはGS資格取得試験首席合格よくやった! タイガー!
タイガー 「 ははっ!
神野父 「 水樹は残念だったが 来年また受けるがいい。
水樹 「 うんっ!
神野父 「 ―――で 話は変わるがお前たち、“心理の書”を読むことはできたか?
 
タイガーと水樹は顔を見合わせる。
 
タイガー・水樹 「 いや まったく・・・  「 ・・・白紙のままです。
すっ
神野父 「 タイガー おめえにこれをやろう。
 
神野父は、水樹が持っている心理の書と、同じ古い本を差し出した。 
本からはわずかに神気が感じられた。
 
タイガー 「 これは?
神野父 「 “心理の書・下巻”だ。 水樹に渡した上巻とあわせて効果を発揮すると言われておる。
水樹 「 やっぱり何も書かれていないわ。
タイガー 「 ワシがもらっていいんですカイノー?
神野父 「 ああ わしからの合格祝いだ。 それに わしよりおめえが持っとったほうがええじゃろう。
タイガー 「 え?
神野父 「 いや・・・まあとにかく今日は泊まっていくがいい。 水樹も六道への転校の準備もあるじゃろう。
 
 
 
 
 
■翌日 須藤駅■
 
タイガーと水樹は神野夫妻に見送られ、神社のふもとから須藤駅までは、早苗の運転する車で向かった。
駅には学校妖怪メゾピアノも見送りに来ている。
彼はあいかわらずバラをくわえ、紫色のハデなタキシードを着ているが・・・
 
水樹 「 早苗ねえちゃんの運転する車に初めて乗ったわ。
早苗 「 ははは やっぱこんな田舎じゃ 免許持っとったほうが便利だからな。
  タイガークンも事務所を構えるつもりなら、GSだけでなくて車の免許も必要だべ。
タイガー 「 そうジャノー 除霊道具をもって電車やバスに乗るのも格好悪いし、
  エミさん時もほとんど車での移動じゃったからノー。
早苗 「 ま ゆっくりとやっていくがいいだ。
 
とそこに電車が来て、タイガーと水樹は電車に乗った。
 
タイガー 「 それじゃあ早苗サン メゾピー! お元気で!
水樹 「 また正月には里帰りするからね!
早苗 「 ああ 2人とも元気でなー!
 
ピ――――――――ッ プシュ〜ッ がたんごとん がたんごとん
窓を開けて、水樹とタイガーは早苗に手を振っていた。 やがて2人の乗った電車は見えなくなると・・・
 
早苗 「 さてと 帰るか!
メゾピアノ 《 ・・・早苗クン 実はここで残念なお知らせがあるのだ。
 
メゾピーは神妙な顔つきをしており、早苗は一応たずねた。
 
早苗 「 ・・・・・・何だべ?
メゾピアノ 《 実は・・・
早苗 「 実は?
 
 
メゾピアノ 《《《  僕たちの出番は今回で最後なんだ!!!!!  》》》
 
 
早苗 「 ・・・それで?
メゾピアノ 《 いや それでって早苗クン・・・(汗)
早苗 「 わたすはわたすのペースでかってにやっていくだ。
  おめえも教師としてかってにやってけろ。 そんじゃな〜
 
早苗は全く興味がないかのように行ってしまった。 そして残されたメゾピーは・・・
 
メゾピアノ 《 ・・・フッ まあいい。 しばらくは僕も休ましていただこう。
  しかーし! いつか僕は必ず再登場する!
  その時はタイトルを 【とら!】から【ピアノ!】に変更し、
  タイガークンにかわり僕が主役になってみせる! 待っててくれたまえファンの諸君!
 
  ふははははははははははははははははははは!!!!!  アディオス!!!!!
 
 
 
 
 
■東京の道端■
 
・・・東京へ再び戻ってきたタイガーと水樹。
水樹は六道女学院の女子寮に行き、タイガーはエミの除霊事務所へと向かっていた。 その途中―――
 
ぶつぶつぶつ・・・
タイガー ( そういえばワシ 合格してからエミさんとまともに話してなかったな。
  エミさん褒めてくれるかノー。 おとといはみんながおったから きっと照れくさかったじゃろうし・・・
 
<どんっ!> 「 キャッ!
 
考え事をしながら歩いていたタイガーは、金髪の髪の長い少女とぶつかり―――
 
タイガー 「 おっとスマン、大丈夫カイノー。
キッ!
金髪の少女 「「「  ぼけっと歩いてんじゃねえ!! このスカタン!!
タイガー 「 は はいっ!!
 
金髪の少女は鋭い目つきでタイガーを睨んで言うと、すたすたと歩いていってしまった。
 
ぶつぶつ・・・
金髪の少女 「 ―――ったくどいつもこいつもー!!
どきどきとき
タイガー ( ・・・おっかないおなごじゃのう。(汗)
 
ブツブツ言いながら歩いていた少女は、ハッと何かを思い出したかのように足を止めた。
そして後ろを振りかえると―――
 
金髪の少女 「 ? あの男 確か魔理と一緒にいた・・・
 
そこにはすでに、タイガーの姿はなかった・・・

リポート36 『GSタイガーの初仕事』
■エミの除霊事務所 所長室■
 
エミ 「 まずはおめでとう タイガー。 これであんたもようやくゴーストスイーパーね。
タイガー 「 エミさん・・・・・・じゃあご褒美にワシと愛の抱擁を―――!! <バキッ!>
 
感極まったタイガーは思わずエミに抱きつこうとするが、
顔面にカウンターパンチをくらい、鼻を押さえてうずくまっていた。
 
タイガー 「 ううう・・・!(泣)
エミ 「 ―――それで事務所を持つにはどうしたらいいのか聞きたいワケね。
タイガー 「 あ、はい!
 
 
エミはタイガーに除霊事務所を設立するレクチャーを行った。
テナントの手配、契約、申請、保険、経理、各種書類手続き、えとせとら エトセトラ・・・
 
 
タイガー 「 う、なんか大変そうですノー。(汗)
エミ 「 大変なのよ実際。 まあ面倒なのは最初だけだから。 ・・・ところであんたお金は持ってないわね。
 
するとタイガーは手をこすりだして―――
 
タイガー 「 あのー そのことについてご相談が―――
エミ               「 お金は貸さないわよ。
タイガー 「 エミさん・・・(泣)
 
タイガーの言葉にかぶせるように冷たく言い放つエミ。 とそこに―――
 
とんとん がちゃっ
仙香 「 エミおねーさま、頼まれた書類を持ってきました。
 
エミの下で助手をしている仙香と春華が入ってくる。 仙香はエミに書類を渡した。
エミはそれにざっと目を通すと―――
 
エミ 「 あんたにこの仕事をあげるわ。
 
エミはその書類をタイガーに渡し、タイガーは書類を見てみる。
 
エミ 「 ターゲットは車の衝突事故で亡くなった自縛霊2体 説得は無理、
  肉体を求めているから近接攻撃もダメ。 だけど通常遠隔除霊措置で対処できるわ。
  そして諸経費込みで2000万円。
  ただし、あんたの霊力でも最低1000万円分の吸印札が必要になる上、
  税金や保険で500万ぐらい引かれるから 残りの500万弱があんたの収入なワケ。
  あんまり割りのいい仕事じゃないけど、そんだけあったら事務所の頭金ぐらいにはなるでしょ。
 
それを聞いた春華は、エミに対し―――
 
春華 「 エミ所長 これAランクの仕事ですよ!
  私たちだって Bランクの仕事を何度か任せてもらっただけで、あとはCランクばかりで!
エミ 「 おたくらが手伝ってあげなさい。
春華 「 え‥‥いいんですか!?
エミ 「 うちの所員じゃないタイガーを使うわけにはいかないから、
  書類上はあんたたちが除霊したことにしておかないといけないワケ。 ‥‥ただし、
 
エミは目線をタイガーに移すと―――
 
エミ 「 タダで仕事をさせるわけにはいかないから、あんたが2人に助っ人代をちゃんと払うのよ。
タイガー 「 払うって‥‥どれくらいカイノー?
エミ 「 それはあんたが決めるのよ。
タイガー 「 わ わかりました!
エミ 「 頑張んなさい。 GSタイガーの初仕事よ。
 
 
 
 
 
■翌日早朝 除霊現場■
 
タイガー・仙香・春華の即席チームは、それぞれの霊衣を身にまとい、事故の起こった交差点にやってきた。
 
タイガー 「 うう 緊張するノー。
春華 「 なに緊張してんのよ。 仮にも試験の首席合格が。
タイガー 「 だってワシ 除霊仕事するの1年ぶりじゃし・・・
春華 「 しっかりなさいトラ男。
  私たちだってAクラスの仕事をエミ所長抜きで行うの 初めてなんだから。
タイガー 「 春華さん・・・
 
春華は、タイガーの胸を叩きながら言った。
これでも彼女は、実技は学年でも五本の指に入る実力者である。
成績では弓や仙香の前に隠れがちだが、キョンシーを5鬼も扱えるその力にエミも一目置いたらしく、彼女の助手としての希望を認めたらしい。
ちなみに六道女学院教師の鬼道政樹は6鬼が限界。
12鬼の式神を扱える冥子は別格である。
 
仙香 「 ・・・・・・! いたわよ!
 
仙香の持つ霊体探知機“見鬼くん”が反応する。
 
悪霊 ≪≪ グガガッ!! ≫≫ ≪≪ キィイッ!! ≫≫
 
地面からフッと浮き上がるように、男女の霊が1体ずつ現れた!
 
仙香 「 じゃあ打ち合わせ通りいくわよ! タイガー! 春華!
春華・タイガー 「 ええ!  「 ヨッシャー!
仙香 「 霊体触手!!
 
2本の念波を放出する仙香! 1本ずつ悪霊に絡ませようとし―――
 
バチバチバチッ!
悪霊 ≪≪ グガガガガッ!! ≫≫ ≪≪ キィアアアッ!! ≫≫
 
絡み、2体の霊の動きが鈍る!
 
春華 「 よしっ 2体とも束縛したわね!! 行け! イー・アル・サン・スー!!
 
ドドドドビュッ
 
春華のお札から4鬼のキョンシーが出てくる!
 
春華 「 奴らを切り刻むのよ!!
キョンシー達 『『『『   ギキイィィィィィッ!!!!!
 
ガッ! ズバッ! ザッ!
春華の呼び出した4鬼のキョンシーが、霊を切り刻んで攻撃している!
タイガーは2人の戦いをぼーぜんと見ていた。
 
タイガー 「 ・・・2人ともすごいノー。
春華 「 ぼけっとしてないでトラ男も攻撃しなさいよ!
  ダメージを与えて弱らせてからでないと、お札に吸印出来ないんだから!!
タイガー 「 ハッ! そうジャノ!!  <ぼんっ> 幻惑精神感応ー!!
 
 
 
 
・・・・・・4分後。
 
春華 「 結構しぶとい悪霊・・・ 思ったより長期戦になりそうだわ!
仙香 「 大丈夫よ春華! じっくりやれば倒せない奴(悪霊)じゃない!!
 
そして精神攻撃で仙香と共に、動きを封じていたタイガーは・・・
 
タイガー ( グッ‥‥らちがあかん! これ以上長引くといつ暴走してしまうか・・・
 
 
  ―――なにより暴走を恐れていた彼は、この時焦っていたのかもしれない―――
 
 
タイガー ( ・・・こうなったら“虎の爪”で!!
 
タイガーは10本の指から爪状の霊気剣を放出し、悪霊に向かった!
 
春華 「 ちょっとどこいくのよトラ男!?
タイガー 「 ヌオオオオッ!! <ザザンッ!>
 
タイガーの霊気の爪攻撃が、女の霊を切り刻む! だがその瞬間、春華が叫び―――
 
春華・タイガー 「 トラ男後ろ!!   「 なっ!?
 
もう1体の男の霊がタイガーの体をからめとり、乗っ取ろうとしていた!
 
仙香・春華 「 タイガー!!   「 あのバカ!!
 
乗っ取られまいと必死に抵抗しているタイガーに向け、春華は1枚の札を取りだし―――
 
春華・ウー 「 ウー!  『 キィィイッ!
 
春華が5鬼めのキョンシー『ウー』を出現させる!
そしてウーが短剣で男の霊を斬りつけ、注意をそらすと仙香は―――
 
仙香・春華 「 春華 吸印札を!!  「 わかってるわ!!
 
一枚500万円のお札を取り出す春華!
そして仙香は霊力を上げ、タイガーにまとわりつく男の霊を引き寄せる!
 
仙香 「 霊体触手・束縛MAX!!!!!
 
バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
 
春華 「「「  吸印!!!!!
悪霊 ≪≪ グガアァァァァァァァッ!!!!! ≫≫
 
春華がタイガーに取り憑こうとした男の霊を、お札に吸印した!
 
春華 「 トラ男もう1体!!
タイガー 「 ぐっ きゅ、吸印!!
 
タイガーはポケットからお札を取りだし、吸印を発動させる――― 
 
バシュウウ―――ッ
悪霊 ≪≪ キィアア――――――ッ!!!!! ≫≫ <シュポンッ>
 
女の霊は、タイガーのお札の中に吸引された。
 
タイガー 「 や やった・・・
 
 
 
 
 
 
■エミの除霊事務所■
 
タイガーの周りにはエミ・仙香がおり、タイガーは年下の春華に怒鳴られていた。
 
春華 「 ったくこの男は、あれほどエミ所長に接近戦はするなと言われてたのに!
  あの悪霊は自分の体をほしがってたんだから それが霊能力者となればなおさらよ!
  こんな初歩的なミスをするなんて! ホンットにあんた 今年の試験の首席なわけ!?
タイガー 「 も もうしわけないです・・・
 
春華に責められるが、タイガーは何も言えなかった。 すると仙香が―――
 
仙香 「 春華 もういいじゃない。
  タイガーにとっては久しぶりの除霊仕事だったんだし、無事に任務完了だきたんだから。
春華 「 よくないわ仙香! 下手したら私達みんなやられていたのよ!
  あんたそんなことでホントに事務所の所長としてやっていけるの!?
タイガー 「 う・・・
エミ 「 ・・・そうね。 春華の言うとおりよ。
タイガー 「 エミおねーさま・・・
 
エミ 「 確かに今回はタイガーのミスよ。 下手したら自分の体を乗っ取られていたワケだし。
  それにタイガーが焦って接近戦を行ったのは、長時間による精神攻撃の多用ができなかったからでしょ。
  いくら修行である程度の時間 精神感応を使えるようになったとしても、
  常に気をはっていない限り いつ暴走するかわからない。
  その見極めぐらいは出来ているみたいだけど、冷静な判断力というものは所長として
  なくてはならない必要なスキルなワケ。
  ・・・私もどうやら あんたのこと買いかぶりすぎていたのかもしれないわね。
  Aランクとはいえ もう少しマシに除霊できるものと思ってたんだけど・・・
 
タイガー 「 エミさん・・・
エミ 「 ・・・まあ除霊は無事に完了できたんだし、今回はペナルティとして報酬は半分の250万。
  このコたちの分け前もちゃんと分配すること。 いいわね。
タイガー 「 そ それだけでいいんですカイノー?
エミ 「 ただしもう2つ条件があるわ。
タイガー 「 え?
エミ 「 これをあんたに渡すわ。
 
エミは棚に置かれた箱から、一本のマダラ模様の笛を取りだし、タイガーに渡した。
 
仙香 「 これはタイガーの暴走を封じる笛・・・
エミ 「 “獣の笛(けもののふえ)”よ。 これ1本で1億はする代物(しろもの)よ。
春華 「 い 1億ですか・・・。(汗)
エミ 「 その笛はおキヌちゃんの持つ“ネクロマンサーの笛”と同じように、
  特別な才能のある者しか吹くことができないワケ。
  あんたはまず その笛を吹くことができるパートナーを探しなさい。
  そうすればもしもの時に あんたの暴走を止めてくれることができるワケ。
タイガー 「 そ そうか!
エミ 「 そしてあんたの助手は当分の間 その1人だけよ。
 
一瞬の間。
 
タイガー 「 ・・・・・・・・・えっ!?(汗)
エミ 「 フツー金もないうちからそう何人も雇えるもんじゃなくてよ。
  一文字さんや御剣さんをタダでこき使うつもりだったワケ?
タイガー 「 ワシはそんなつもりは・・・!
エミ 「 それと半年間 Bランク以上の仕事は禁止。 今回のことでわかったでしょ。
  助手としての経験はあっても 所長としての自覚と知識はまだまだ未熟。
  まずは儲けや難易度の高い仕事のことは考えず、まずは事務所としての地盤を固めること。
  それらが守られなければ、私はあんたに事務所の許可はあげられないワケ。
  あんたが失敗したら とばっちりをくらうのは元上司の私なんだから。
タイガー 「 わ わかったですジャ。
 
そのタイガーとエミのやりとりを見ていた春華と仙香は、ひそひそと話していた。
 
春華 ( エミ所長って結構世話好きよね。
仙香 ( なんだかんだいって心配してるんだわ。 なにしろ初めて弟子が事務所を構えるわけなんだし。
 
そこで春華がふとを思いだす。
 
春華 「 あ でも“獣の笛”って確かー 動物を操る時に使用するって聞いたような・・・
エミ 「 ドキッ!
 
そのエミの反応に、タイガーはジト目でエミを見ていた。
 
タイガー 「 ・・・エミさんひょっとして、今までワシをケモノと同じ扱いをしとったんカイノー。
エミ 「 うっ・・・まあ男が細かいこと気にしちゃダメなワケ。
  さあ〜がんばって パートナーを探してらっしゃい! ほらほら!(汗)
 
あせるエミ。 ショックをうけるタイガー。
 
タイガー 「 ワ ワシ 動物の調教と同じ扱いじゃったんジャノー・・・・・・初めて知った。(汗)
仙香・春華 (( ・・・・・・(汗)
 
タイガーを哀れむ仙香と春華であった。

リポート37 『金髪の少女』
※今回はリポート20・35に登場した、金髪の少女の話から始まります。
 
■とある家■
 
「 うっせーんだよ、ババア!!
「 親に向かってなんて口をきくんだい!
  担任の先生から電話があったかと思えば あんたまたケンカしたそうじゃないか!
「 うっせーって言ってんだろ!
「 ちょっとどこいくの!? まだ話は終わってないんだよ!
 
長い髪をした金髪の少女は、自分の通う高校のセーラー服を着たまま、自宅を飛びだしてていった。
足首まである長いスカートをはいているのは、いまどき珍しいところか。
 
ぶつぶつぶつ・・・・
金髪の少女 「 ちっくしょー 面白くねえー!
  学校も家もつまんねえし バイトもろくなもんがねえ!
  おまけにちょっとしたことで すぐやっかいなことが起こるしよー!
 
由布子・弥生 「 あ センパイ。  「 ちわ――っス!
 
ガムを噛んでる紫色の長髪少女(由布子)と、赤髪パーマのマスク(弥生)をした少女がやってくる。
金髪の少女と同じく、2人とも一昔前流行ったような長いスカートをはいていた。
 
金髪の少女 「 あん? ・・・なんだ、
  由布子(ゆうこ)と弥生(やよい) おまえら『!』<ボチャッ>・・・・・・・(汗)
 
金髪の少女は片足が側溝にはまり、靴が泥だらけになってしまう。
 
由布子 「 ・・・あいかわらず悲惨っスね センパイ。(汗)
弥生 「 うわっ べちゃべちゃ・・・!
 
 
 
 
 
■公園■
 
近くの公園の洗いで、靴と靴下を洗う弥生。 金髪の少女はベンチに座りボーッとしている。
由布子はジュースを買って走ってくると―――
 
由布子 「 センパーイ ジュースどうぞー。
金髪の少女 「 いらねえ。
由布子 「 そ そんなあ!
金髪の少女 「 弥生もいい加減靴返せ。 もういいから!
弥生 「 いえ 洗わせてもらうっス。 自分 好きでやらしてもらってるっスから。
 
由布子はジュースを再度差し出して―――
 
由布子 「 どうぞっス。 3本買ってきましたし、自分は2本も飲めないっスから。
金髪の少女 「 ・・・・・・
 
金髪の少女は黙ってジュースを受け取ると、ポケットから120円を取りだし、由布子に渡した。
 
金髪の少女 「 後輩におごらせるわけにないかねえからな。
由布子 「 センパイ・・・
 
嬉しそうな顔をする由布子。 少女はフタを開け、ジュースを飲む・・・
 
金髪の少女 「 ごくごくごく・・・・・・はあっ
  あーあ 金がないと遊びにもいけねーしなー・・・・・・キャバクラで働こうかなー。
弥生 「 !! <ぴたっ>
由布子 「 セ センパイ・・・! <ぽろっ>
 
靴を洗うのをやめる弥生と、ジュースを落とす由布子。 そして次の瞬間、2人は大泣きする!
 
うおおおおおおおおおんっ
由布子 「 センパイ!! それだけはやめろって、昔自分らに言ったじゃないスか――っ!!
  ワルでも自分を大事にしろって――!!
弥生 「 じっ 自分らはハンパもんっスけど、悩みがあるなら話してほしいっスよ――!!
  自分らセンパイのこと ソンケーしてるっスから――!! <ぐおっ> さあっ!!
 
泣いて頼む由布子と弥生。 金髪の少女は額に汗を流しながら―――
 
金髪の少女 「 ・・・冗談だよ。(汗)
 
 
                       ◆
 
 
靴と靴下を日に当てて乾かす弥生。 3人はベンチに座っている。
 
ぼけ〜〜〜〜〜っ
金髪の少女 「 あータイクツだー やっぱ金がねえとなー。
弥生 「 センパーイ コンビニでバイトしてたんじゃないっスかー?
金髪の少女 「 時給750円でやってられるかよ! ちょっと店長を殴ったぐらいでクビにしやがってー!
弥生 「 ・・・それ充分っスよ。(汗)
  あ、そういえばセンパイが突然運が悪くなったのは、確か2年ぐらい前からっスよねー。
  たしか幽体離脱したとかどうとか・・・
金髪の少女 「 そうだ! あんのジジイ 思い出しただけで腹が立つ! あたいに呪いでもかけたんじゃねえだろうな!
由布子 「 お払いでもしてもらったらどうっスか?
 
由布子がそう提案すると、少女は一文字のことを思いだした・・・
 
金髪の少女 「 んな金あるかよ。 ・・・・・・そういえば魔理の奴、
  “ごーすとすいーぱー”になったとか言ってたなー。 あれって儲かんだろーなー。
由布子 「 確かプロで時給数万数十万・・・ 助手でも5000円は貰えるって聞いたことがあるっスよ。
金髪の少女 「 ホントか由布子!?
由布子 「 ええ でも特殊な力がなきゃ無理だって言われてるし そうとうヤバイ仕事っスよ。
  センパイも前に川に引っぱられたことがあるじゃないっスかー。
金髪の少女 「 あれは・・・ちょっと油断したんだよ!
 
     『 いいか 私はもうあの頃の私じゃないんだ。
       GS試験にも合格したし ケンカなんかやってる場合じゃないんだよ。 』
 
金髪の少女は、いつか聞いた、一文字の言葉を思いだした。 すると・・・
 
金髪の少女 「 <むかむか>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!  ちっくしょ―――っ!!!!!
 
ガンッ!  からんからん・・・
からになったジュースの缶をゴミ箱にぶつけた。 
 
由布子 「 ど どうしたんスかセンパイ!?
 
センパイの突然の言動に戸惑う由布子と弥生。
 
金髪の少女 ( なんでだよ・・・なんであたいには 何のとりえもないんだ!!
  頭も悪いし特技もねえ! 運なんて最悪だ! あの頃は魔理もあたいと同じだと思ってたのによ!!
弥生 「 セ センパイ・・・
 
おそるおそる、弥生は金髪の少女の顔をうかがう。
すると金髪の少女は、すたすたと片足はだしのまま歩きだし・・・<かしゃんっ> 投げた缶をゴミ箱に入れた。
更に周りに落ちてたほかのゴミも拾いだした。 それを見た後輩の2人は・・・
 
由布子・弥生 ((  ・・・さすがセンパイ。(汗)
金髪の少女 「 ん?
 
公園の横の道沿いを、タイガーと仙香・春華が歩いていた。
 
金髪の少女 ( あいつ確か魔理と一緒にいた・・・
 
すると金髪の少女は、タイガーの後を追った。
 
由布子・弥生 「 あ 待ってくださいセンパイ!  「 くつとくつしたー!
 
 
 
 
 
■六道女学院女子寮 食堂■
 
一文字 「 なんだってー!?
洋子 「 助手は1人だけやとー!?
 
タイガーが以前働いていたこの食堂には、タイガーのほかに六道の寮生である一文字など、
3年生が中心に集まっており、話を聞いた彼女たちは驚いていた。
そのなかで仙香はテーブルに笛を置いて―――
 
仙香 「 そう しかもこの“獣の笛”を吹くことができる人だけ。 ちなみに私も春華も吹くことは出来なかったわ。
一文字 「 じゃ私に貸してみろ!
タイガー 「 あー 無理ジャと思うケン。
一文字 「 何でだよ。
タイガー 「 エミさん言っとった。 一文字サンや洋子サンには多分吹けんと。
一文字 「 んなのやってみなくちゃわかんねえだろ!
 
フューッフューッ
一文字は笛を吹いた。 ・・・だが吹けない。
 
一文字 「 あ あれ? おかしいなー?
水樹 「 私に貸して! <ぱしっ>
 
フューッフューッ
水樹は一文字から笛を取り上げ、吹いてみたがやっぱり吹けない。
 
水樹 「 なんでよー 何で吹けないのよー!
横島 「 やっぱり才能の問題じゃないっすかー。(?)
一文字 「 才能かー・・・・・・・ん!?
 
一文字の隣りには、いつのまにか横島がいた。
 
一文字 「 な なんでおまえがここにいるんだよ!!
横島 「 いやー それが偶然 タイガーが女子高生(仙香と春華)と歩いてたのを見かけて・・・
一文字 「 ここは男子禁制だぞ!
横島 「 じゃあタイガーはどうなんだよ!! ひいきはずるいぞ!!
一文字 「 こいつはいいんだよ!!
タイガー 「 い 一文字サン! 横島サンはわっしの友達じゃし ここは大目に・・・
横島 「 ううっ・・・ タイガー お前はやっぱり俺の親友だ。(嘘泣)
一文字 「 ・・・ったく悪さすんなよ。
びしっ!
横島 「 はいっ! 神に誓って!!
一文字 「 ・・・ウソくせえな。(汗)
 
敬礼する横島であった。 一方で他の寮生たちがざわめつきだすと―――
 
寮生 「 ・・・でもタイガーって今年の資格試験の首席でしょ?
寮生 「 そこで助手をさせてもらったら、肩書きにハクがつくわ!
一文字 「 お おまえら・・・!(汗)
仙香 「 まあまあ一文字さん。 とりあえずみんなに吹くだけ吹かしてみましょう。
 
一文字を押さえて仙香が言った。
 
 
 
・・・・・・というわけで、その場にいる寮生全員が吹いてみたが、結局誰1人、吹ける者はいなかった。
 
 
 
仙香 「 あと 吹いてない人いるー?
一文字 「 もいっぺん私に貸してみろ!!
 
フューッフューッ
再度一文字は笛を吹いたが、やっぱり吹けなかった。
 
一文字 「 くそっ! なんで吹けねえんだよ!!
タイガー ( ・・・やっぱりエミさんクラスのGSじゃなきゃ 吹けんのかノー。
  そんな人がワシの助手になってくれるとは思えんし、他にどうやって探せばいいんじゃろか・・・
 
タイガーがいろいろ考えていたその時・・・!
 
バンッ!
金髪の少女 「 あはははは! なーにやってんだよ、一文字魔理!!
 
食堂の両開きのドアが勢いよく扉が開き、金髪の少女が堂々と入ってきた。
後ろには弥生と由布子が控えている―――
 
一文字 「 お前は・・・!
金髪の少女 「 なんだいなんだい、いい大人が笛の1本や2本で熱くなりやがって。 貸してみな!
 
金髪の少女は、仙香から笛を取り上げた。 そして笛を口にあてた・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ふーっ
 
ピルルルルルルルルルルルルルルルルッ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
寮生一同、シーンとする。
 
金髪の少女 「 ・・・? なんだよ? なんか文句でもあんのかよ!!
 
がばっ! タイガーが金髪の少女の両肩を押さえると―――
 
タイガー 「 あんたなまえは!?
「 あ・・・あかね・・・・・・白石 茜(しらいしあかね)・・・・・・
タイガー 「 あかねサン ワシの助手になってツカーサイ!!
「 え!?
 
 
 
■エミの除霊事務所■
 
エミは窓を開け、外を眺めていた。
 
エミ 「 ・・・“獣の笛”は六道の子達にはまず吹けないわ。
  あの笛は本来、ケモノをコントロールするためのもの、
  ・・・そう、“獣の笛”は“孤独”を知る者にしか吹くことは出来ない。
  寮生活でぬくぬくと育ってきた子達には無理なのよ。
  もし扱える者がいたら、そいつに対してタイガーはどうするつもりなのかしら・・・・・・
 

リポート38 『パートナー決定』
■再び六道女学院女子寮 食堂■
 
一文字 「 ちょ ちょっとまてよタイガー!
  まぐれで一度吹けたぐらいで決めるのは早すぎるぜ!! しかもこんな奴に!! 
「 あんだと魔理!!
 
ピルルルルルルルルルルルルルッ
 
金髪の少女こと白石茜はもう一度、“獣の笛”を吹いた。
六道の寮生の誰もが吹くことが出来なかった笛を、いとも簡単に吹いた茜に対し、
かつてのケンカ相手であった一文字は、信じられないような顔をしていた―――
 
「 どうだ魔理! てめえには吹けなかったんだろ?
一文字 「 で でもよタイガー! こいつ霊能力者でもなんでもないんだぜ!!
タイガー 「 え? そうなのかあかねサン?
「 ・・・だからなんだよ。
仙香 「 ちょっと待って。
 
仙香は茜の前に立ち、彼女の両手を握った。
 
「 なにするつもりだよ!!
仙香 「 いいから黙って!!
 
仙香の真剣な顔つきを見た茜は、大人しく黙っていた。
そして仙香は目を閉じて、額から念波を茜に向けて接触させる。
・・・しばらくして仙香は目を開けると―――
 
仙香 「 ・・・やっぱりね。 このコ わずかだけど霊能力をもってるわ。
一文字・茜 「 え!?  「 ほ ホントか!?
 
驚く一文字。 嬉しそうな顔をする茜。
 
仙香 「 私の能力でこのコの霊質を探って見たけど、間違いないわ。
  でなければ 魔力を持った笛を吹くことなんて出来ないはず。
  おそらくあなた、霊と関わりを持ったことがあるんじゃなくて?
「 確かに霊に殺されかけたり ジジイの霊に幽体離脱させられたことはあったけどよー。
仙香 「 それってあなたのおじいさん?
「 ひいじいさんだけど。
仙香 「 やっぱり。 そのおじいさん、おそらくある程度の霊能力者だったのね。
「 ジジイが!?
仙香 「 いくら霊体でも そう簡単に生きているものを幽体離脱なんてできないわ。
  あなたはそのおじいさんの血を引いているし、
  一度幽体離脱を経験したあなたは霊と触れ、力に目覚めたってことも考えられるわ。
「 ・・・あたいに霊能力が?
 
茜は信じられないような顔で、自分の両手を見つめていた。
ついさっきまで自分にはなんの力もないと悩んでいたのに、霊能力という特殊な能力を持っていたことを告げられたのである。
その衝撃は大きかった・・・
 
仙香 「 なにはともあれ これで決まったわね。 一文字さんも水樹もよくて?
 
一文字 「「「  よくね―――!!!!!
水樹 「「「  異議あり―――!!!!!
 
仙香 「 あ あんたたち・・・(汗)
洋子 「 落ちつきー2人とも。
 
前髪で目を隠している少女、洋子は、一文字と水樹の肩を押さえて―――
 
洋子 「 エミさんが言うには半年間、つまり経営が軌道にのるまでの間ってことやろ?
  ちょうどその頃うちらも高校卒業しとるし 急ぐ必要もないやろ。
一文字 「 だけどよー。
洋子 「 寅吉の師匠のエミさんがそういう条件を出してるんやからしゃーないやろ。
  それにパートナーを決めるのは寅吉であって、うちらじゃない。
一文字・水樹 「「  ・・・・・・
 
沈黙する一文字と水樹。
とそこで、茜の後輩の由布子が、横島に気づき―――
 
由布子 「 あ センパイ! この男いつかの!!
横島 「 えっ?
 
茜は横島をじっと見ると・・・
 
「 ・・・ああ あたいの幽体離脱中におかしなまねしやがった野郎か。
  悪いがあたいは今 それどころじゃねーんだ。
横島 「 えっ? えっ?
 
横島は、何のことか思い出せなかった。
 
( 霊能力・・・・・・あたいに霊能力が!!
 
横島のことより、自分の秘めた力に興奮していた茜は、タイガーのほうを見て―――
 
「 なっなあ さっきあたいを助手にするとかいってたよな!? 時給いくらだ!?
タイガー 「 あ ああ・・・2500円でどうジャ?
「 !!
 
茜はいきなりタイガーの胸元をつかむと、寮生たちがざわつきだす―――
 
「 ああん!? GSの助手は5000円以上じゃねえのかよ!!
タイガー 「 ワ ワシまだ事務所ももってないケン、
  それにあかねサンはまだ 除霊のことについて何もしらんようじゃし―――!
「 なんだと!?
 
とそこに、横島がわってはいる。
 
横島 「 あのー。
「 なんだよ!
横島 「 俺が初めて助手になった時は、時給250円だったっスよ。
「 ・・・・・・・・・・・・・
 
ぼかっ  =☆
 
「 バカも休み休み言え!!
横島 「 ああっ ホントなのに・・・!(泣)
 
茜に殴られ、しくしくと泣く横島。 確かに事実である。
 
「 ちっ しゃーねえな。 とりあえずそれで手を打つか。
一文字・洋子 「 こんのやろ!  「 魔理落ちつきい!
 
茜の悪態にキレかかる一文字を、洋子が後ろから抱きつくように止め―――
 
一文字 「 だってこいつ GSの仕事を完全になめてるぜ!!
洋子 『 待ちいて。 すぐにわかる・・・・・・すぐにな。
 
洋子は小声で一文字にそう呟き、茜を見た。
普段は温厚な彼女もまた、茜の態度に多少なりと怒りをおぼえているようだ。 そして他の寮生たちも・・・
 
じ―――――っ
 
「 ・・・なんだよ お前らその目は。
 
寮生たちは茜に対し、冷たい視線を送っていた。 
 
由布子・弥生 「 何センパイにガンとばしてんだ!!  「 いてまうぞワレ―――!!
 
チェーンを取り出す茜の後輩たち。
 
「 やめねえかおめえら!!
由布子 「 センパイ・・・
「 いいよ。 どうせ こういうのは慣れてっからな。
  タイガーっていったっけ? これからあたいはどうすりゃいいんだ?
タイガー 「 あ ああ とりあえずワシの元上司のエミさんの所に・・・・・・
 
 
 
 
 
■エミの除霊事務所■
 
エミ 「 え!? もう見つけてきちゃったワケ!?
 
タイガーは茜を連れて、エミの事務所にやってきた。
エミもまさか、こんなに早く見つけてくるとは思わなかったらしい。
 
ピルルルルルルルルルルルルルッ
 
エミ 「 ・・・いいわ、合格よ。 タイガー、あとは指示した通りやっていきなさい。
タイガー 「 はいっ!!
 
その後エミは、茜と2人で話がしたいと言い、タイガーを部屋からだすと、
所長用のイスに座り、両肘を机に、組んだ両手の甲をあごにあて、淡々と茜に質問しだした。
 
エミ 「 おたく 高校何年?
「 2年。
エミ 「 学校は行ってるの?
「 ・・・たまに。
エミ 「 親はなにしてるの?
「 ・・・・・・さあ。
エミ 「 友達はいるの?
「 ・・・・・・・・・よけいなお世話だ。
エミ 「 ケンカ好き?
「 ・・・・・・・・・・・・キッ! んなことどうでもいいだろ! 
  なんだよさっきから、どうでもいいようなことばっかり聞きやがってよ!!
エミ 「 あら大事なことよ。 だっておたく これから死ぬかもしれないんですもの。
 
エミの言葉に、茜はドキッとする。 エミは今だ両手の甲をあごに当てて、茜をじっと見つめている。
 
「 ・・・死?
エミ 「 そうよ。 あなたなぜGSが高額の報酬がもらえるか知ってる?
  あらゆる職業のなかで 最も危険な職業の一つだからよ。
  だからGSは 本当に力のある者しかなれないワケ。
「 だけどあいつはその試験で優勝したんだろ!?
エミ 「 そのタイガー 今朝除霊に失敗して死にかけたわ。
「 えっ!?
エミ 「 幸いなんとかしのいだけど 次はおたくしか助けられる人いないワケよ。
 
しばし戸惑う茜だったが―――
 
エミ 「 ・・・怖気づいた?
「 はっ なに言ってんだよ! 上等じゃねーか!! それでこそ退屈しないですむぜ!!
 
その強気な茜の様子を見て、エミは少し微笑んだ。
 
エミ 「 フッ・・・いいわ。 おたくの役割は聞いてるわよね。
「 あたいの笛で あいつのの精神をやわらげることだろ?
エミ 「 もうひとつ。 その笛は動物や動物霊 更には魔界の獣を操ることができるわ。
  まあすぐにはは無理でしょうけど なくさないでね。 その笛1億するから。
「 い いちおく!? ( じゃあこいつを売れば何も危ない目に合わなくたって――!
キランッ☆
エミ 「 ネコババは考えないほうがいいワケ。 私が呪いの専門だってこと 忘れないように。
 
エミは茜の真横にきて茜の肩を叩くと、目を怪しく光らせてそう言った。
茜はドキッとし、額から汗が流れる。
 
( こっ この女・・・!(汗)
エミ 「 まあ何か困ったことがあったらうちにきなさい。 タイガーをよろしくね。
「 ・・・ああ・・・
 
 
 
 
 
■その頃 六道女学院女子寮 食堂■
 
タイガーや茜が出ていった後、食堂にいた寮生たちも大半は自分の部屋に戻っていた。
そんな中、食堂に残っていた水樹は仙香たちにグチをもらしていた。
一文字や洋子ならともかく、何も知らない彼女が助手になったことに、怒りを感じていたのである。
そして水樹は、事務所が出来たらすぐ駆けつけることを心に決めたのである。
一方で一文字も、水樹同様機嫌が悪かった。 そんな中、春華が―――
 
春華 「 ・・・そういえばあの男は? 横島とかいう―――
洋子 「 寅吉が出た後から姿見てないけど・・・魔理知っとるか?
一文字 「 知るかっ!
 
・・・タイガーの助手になれなかったショックも大きかったが、なにより昔のケンカ相手、
除霊についてシロウト同然の茜に、パートナーの位置をあっけなくとられたショックは大きかった・・・
そのとき横島は、自宅へと歩いて帰っていた・・・
 
横島 ( ・・・タイガーの奴も前に進んでるんだよな。 俺もそろそろ・・・
 
横島はいつになく真剣な顔をして歩いていた。
その表情には、いつものおチャラケた雰囲気はなかった。
 
横島 「 だが・・・・・・
 
ふと横島は立ち止まり、肩を小刻みに震わせてると―――
 
 
横島 「  やっぱりナンパしときゃあよかった〜〜〜!! じょしこーせーとの貴重な機会〜〜〜!!
 
 
・・・横島はやっぱり横島であった。

リポート39 『タイガー寅吉除霊事務所』
タイガーの助手が、白石茜に決定して2週間、タイガーは奔走していた。
事務所の手配、除霊道具の手配、各種書類の手続き、申請、登録・・・
エミにもらった仕事の報酬の250万はあっというまに消え、借金だけが増えていった。
(仙香・春華への助っ人代は餞別(せんべつ)ということで、2人共結局受けとらなかった。)
 
そんなこんながあって今日、タイガーは事務所に荷物を運んでいた。
エミの事務所や六女の女子寮などがある町より、電車で1時間ほど離れた町の片隅、
築20年、5階建てビルの2階の1室にそれはあった。
横島のアパートにしばらく居候していたタイガーは、
1週間前からこのビルの3階の一室にすんでおり、今日は事務所用具の搬入を行っていた。
 
窓には【タイガー寅吉除霊事務所】と書かれている。
 
タイガー 「 あかねさーん 昼飯買ってきたから食おう!
「 あいよー。
 
トラ柄ズボンにTシャツ姿のタイガーは、ダンボールを開封している茜を呼んだ。
茜はGパンにトレーナー姿で、その長い金色に染めた髪は、ポニーテール状に結ばれていた。
もともと怪力のタイガーは、軽々と荷物を部屋の中に運んだ。
量も少ないこともあって1時間とかからなかったのである。
そして2人は、ダンボールだらけの部屋で、コンビニの弁当を食べていた・・・
 
もぐもぐ
「 う・・・やっぱりせまいなー。 エミさんとこみたいに もっと広いとこ借りられなかったのかよ。
がつがつ んぐっ
タイガー 「 無茶いわんでクレ。 これでもあちこち探してやっと見つけた物件なんジャ。
  それにこの荷物を片付ければ 少しはマシになるじゃろうて。
「 ・・・で所長 いつになったら除霊仕事ができるんだ?
タイガー 「 保険の申請とかいろいろあるからノー 依頼自体は今日から受け付けられるが、
  実際に除霊仕事が始められるのは再来週ぐらいじゃろか。
「 げっ! じゃあそれまでオフかよ。
タイガー 「 んーあかねサンにはそれまでに 除霊のレクチャーをせんといかんノー。
  エミさんにもらった“獣の笛の魔導書”はもろうとるんじゃろ? ちゃんと読んどるか?
「 あんなわけわかんねえ字だらけの本なんて 読めるわけねーだろ!
タイガー 「 エミさんが日本語に訳しとったと思うが・・・。
「 訳してたけど あんなの読んでたら5分で寝ちまうよ。
 
“獣の笛”は、エミがタイガーが精神感能の多用による暴走を抑えるためのマダラ模様の笛のことで、
“獣の笛の魔導書”は、その後エミが茜に貸した、“獣の笛”の使用などについて書かれている魔導書のことである。
その本は難解な文字で書かれているが、エミが日本語で訳していたのだが・・・
 
タイガー 「 ・・・頼むからワシの精神を制御する呪文だけは覚えてくれの。
  じゃないとあかねサンを雇うとる意味がないからノー。
「 わあってるよ!
 
タイガーはあっという間に弁当を食べ終わり、ペットボトルのお茶を飲んでいた。 すると茜が―――
 
「 ・・・なあ おめー暴走すると見境なしにセクハラしまくるんだろ?
タイガー 「 まーそうじゃが・・・
「 普段もなんかやばいことしてんじゃねえだろうな?
タイガー 「 あのなー・・・(汗)
  ワシこの力のせいで 一時期女性恐怖症になっとったんジャぞ。
  それにワシを見たら、たいていのおなごは避けていきおる。
「 ふ〜ん。 ・・・<ピンッ>! ねえ、所長〜。
 
何かを思いついた茜は、突然あまい声をあげてタイガーに近づく。 タイガーは少し離れる。
 
タイガー 「 な なんジャ!?(汗)
「 給料のことだけど もう少しあげてくんないかな〜?
タイガー 「 ちょ ちょっとあかねサン!!
「 時給5000円にしてくれたらあたい、もっとがんばるよ〜。
 
徐々に近づく茜は、タイガーを壁際まで追い込んだ。
 
タイガー 「 い いかんですジャこんなこと!
 
ぴとっ・・・
茜はタイガーに軽く触れると―――
 
「 なんなら6000円でもかまわないよ〜。
タイガー 「 増えとるじゃないか!
「 細かいことはいいの! それより給料〜。
タイガー 「 やめてくださレ! こんなとこ誰かに見られたら――― <がちゃっ>
 
タイミング良く入り口の戸が開き、一文字、水樹、洋子が入ってきた。
 
一文字 「 いやー やっと見つけたぜ。
水樹 「 だから信号の所で右に曲がっとけばよかったじゃない!
洋子 「 そやからもう 済んだことはええやんか。
 
    ―――!!??―――
 
ダンボールだらけの中で、タイガーに抱きついてる茜を見つける3人。
 
タイガー 「 ち 違うんですジャ! これは・・・・・・!!(汗)
「 ちっ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――10分後。
 
むかーっ
一文字 「 ・・・・・・・・・
ぶすーっ
水樹 「 ・・・・・・・・・
 
機嫌の悪い一文字と、目に涙をためた水樹。 タイガーは精神的ダメージを受けていた。
5人はダンボールだらけの狭い部屋の中、わずかなスペースの中で囲むように座っている。
しばらく沈黙が続いた後、洋子がまず口を開いた―――
 
洋子 「 ・・・まああんたも悪さすぎんようにな。
「 ・・・ちっ もう少しで給料UPしてたのによ。
一文字 「 なんだと!?
洋子 「 待ちいて。 今日は寅吉の引越し祝いにきたんやから。 ほら寿司もこうてきたで。
 
洋子は一文字をおさえ、横においていたビニール袋を差し出した。
 
「 あたいらもう昼飯食ったよ!
タイガー 「 ワ ワシ、あと2・3人前ぐらい平気ですケン!!
 
フォローするタイガーであったが、一文字は―――
 
一文字 「 あかねお前なー、タイガーが今 金ないこと知っておきながら給料値上げを要求するんじゃねーよ!!
  しかもまだ一度も仕事してないうちからよ!!
「 午前中たっぷりとしたさ。
一文字 「 荷物運びだろ! 除霊の仕事だよ除霊の!!
「 っせえなー。 魔理にはかんけーねえだろ。
一文字 「 なにい!? だいたいおめえ学年1コ下なんだから呼び捨てにすんじゃねーよ!
「 3月生まれと4月生まれ たまたま1ヶ月早く生まれたぐらいでえらそうにすんな!
  だいたいてめえだって 所長のこと呼び捨てにしてるじゃんかよ!!
一文字 「 う!
水樹 「 あ、そういえば・・・!
 
一文字は言葉につまり、水樹はハッと気づく。 そこに洋子が大笑いをしだして―――
 
洋子 「 ぷっ あははははは! 魔理ー こりゃ1本とられたな!
一文字 「 わ 笑うな!
 
一文字は真っ赤な顔をしていた。
 
洋子 「 まーええやん 呼び方なんかどうでも。 うちらいずれ同僚になる仲間なんやから。
  今日は楽しくやろ! うちもあんたのこといろいろ知りたいしな!
「 な 馴れ馴れしい奴だな。 目え見せろよ。
 
 
 
タイガー達は寿司を食べた後、部屋の片づけをした。
一文字たちも手伝ったため、早くに片付かせることができた。
 
入り口の扉には【タイガー寅吉除霊事務所】の文字が書かれており、入ると左側にトイレ、
右側にパテーションで区切られた2畳ほどの台所がある。 奥に進むと10畳ほどの広さの中央に
来客用の椅子とテーブルがあり、右側の壁には除霊の本や資料が並べられた本棚がぎっしりと並んでいる。
更に奥に所長タイガーの机があり、そのバックに縦1.5m横4mの大きめの南向きの窓がある。
 
 
 
水樹 「 けっこういいんじゃない?
一文字 「 でもちょっと狭くないか?
洋子 「 ま 最初やからこんなもんやろ。 もっとかせいで そのうち大きい事務所を建てたらええ。
 
とそこに新たな来訪者、ピートと西条がやってきた。
 
ピート 「 こんにちはー。
西条 「 へえー ここがタイガー君の事務所かー。
タイガー 「 ピートサン! 西条サン!
ピート 「 タイガーこれ 僕と西条さんから、“お札セット”です。 よかったら使ってください。
タイガー 「 ピートサン・・・・・・<グズッ>
  うお――――――ん!!!
  ありがとう!! やっぱり持つべきものは友達ジャ―――!!! <バキバキバキメキッ>
ピート 「 い イタイイタイタイガー!! ほ 骨が―――!!(汗)
 
ピートはバンパイアミストで脱出できることを忘れているらしい。
その光景を見ながら、西条は機嫌よさそうに―――
 
西条 「 いやーそれにしても まさかキミが事務所を構えるとはねー、立派なもんだ!
( ・・・なんだこいつら?
西条 「 お、キミがうわさのあかね君か! ICPO超常犯罪課の西条だ、よろしく!
「 ? ・・・・・・
 
西条は、ニコニコしながら茜に握手を求めた。
しかし茜は怪訝(けげん)そうに警戒し、部屋の奥のほうへ向かった。
 
西条 「 ・・・? つれない子だねえ。
洋子 「 ああ 気にせんといて。 ああいうコやから。
 
洋子が西条に話した。 すると西条は洋子の後ろにいる水樹に気づくと―――
 
西条 「 お! キミは資格試験に出てた子じゃないか! いや〜すごかったよキミ〜!
 
そんな機嫌のいい西条の様子に気づいたタイガーは、いつのまにかピートを放していた。
 
タイガー 「 なんか西条サン機嫌がいいノー。 なんかあったんじゃろか?
ピート 「 ああタイガー、実は横島さんが・・・
 
がちゃっ
ピートがしゃべろうとした時、愛子・小鳩・貧が来訪する。
 
愛子・小鳩 《「 おじゃましまーす!!
《 ジャマするでー。
 
小鳩は買ってきた花束をタイガーに渡すと―――
 
小鳩 「 はい タイガーさん。 事務所設立おめでとうございます!
タイガー 「 ・・・ありがとう!
 
感激している間もなく、唐巣、聖羅、アンがやってくる。
 
唐巣 「 おじゃまするよ。 タイガー君。
聖羅 「 まあなんて狭いとこなんですの?
アン 「 あ! ピートおにーさま☆
 
更に春華と仙香。
 
春華 「 来てやったわよ。
仙香 「 これ エミおねーさまからのプレゼント。
 
冥子、魔鈴、厄珍・・・・・・
 
冥子 「 ここが〜タイガークンの〜事務所なのね〜〜。
魔鈴 「 はーい! 魔鈴特製お菓子作ってみましたー!
厄珍 「 ワタシが仕入れた新商品を使ったアルよ。
「 なんだなんだ!?(汗)
 
次々とやってくる来訪者に戸惑う茜。
 
・・・そしてしばらくして、雪之丞と弓が来た。
 
雪之丞 「 邪魔するぜー。
「 あら?
 
ざわざわわいわいがやがやっ
 
雪之丞と弓がきた時には、事務所はいっぱいの人だかりができ、宴会が行われていた。

リポート40 『唐巣の教え!』
この日多くの友人達が祝いにやってきており、10畳前後の狭い事務所の中は人であふれていた。
そんな中タイガーは、パテーションで区切られたせまいキッチンで、雪之丞やピートと話していた。
 
雪之丞 「 タイガー知ってるか? 横島、美神の事務所辞めたんだぜ。
タイガー 「 ・・・そうか。
雪之丞 「 なんだ あまり驚かないんだな。
タイガー 「 ああ 前に横島サンから聞いとったから。
雪之丞 「 ふーん・・・
タイガー ( 横島サン 妙神山に行ったんじゃな。
 
雪之丞に続き、ピートがタイガーに話した。
 
ピート 「 だから西条さんの機嫌がよかったんですよ。 ほら 西条さん、横島さんのこと嫌ってましたから。
タイガー 「 ああそれでかー。
ピート 「 でも横島さん ホントどこにいったんでしょうね。
雪之丞 「 アイツなら・・・
 
雪之丞はそう言いかけると、ピートとタイガーの肩を持ち、2人の顔を寄せて、
周りに聞こえないよう小声で話しだした。
 
雪之丞 『 ・・・横島は妙神山に修行に行ってるんだ。 タイガーは聞いてんだろ?
タイガー 『 ああ。
ピート 『 でもどうして?
雪之丞 『 あいつにもいろいろあるからな。 昔のこともあるし。
  妙神山に行ってることは秘密にしとけよ。 あいつの頼みでもあるしな。
 
ピートとタイガーは頷いた。
とそこで、遠目からは髪の毛で気づきにくかったが、ピートが雪之丞の額に貼られているバンソウコウに気がついた。
 
ピート 『 雪之丞そのケガどうしたんです?
雪之丞 『 ああ 実は俺、横島の穴埋めに美神の事務所で働くことにしたんだ。
タイガー 『 えっ!?
ピート 『 なんでまた―――
雪之丞 『 横島にどうしてもって頼まれてよ、あいつと一緒に事務所にいって そのこと言ったら・・・
ピート 『 みなまで言わなくていいです。
タイガー 『 たいへんじゃったノー。
 
ピートとタイガーは察した。
美神が横島をしばき、そのとばっちりを雪之丞が受けたことを。
 
ピート 『 シロやおキヌちゃんは・・・
雪之丞 『 ああ かなりショックだったようだぜ。 今日はとても祝いにこれる状況じゃなかったしな。
タイガー 『 そうかー・・・
 
男が3人寄って、こそこそ話してる所に、3人の少女が背後から現れた。
 
一文字 「 なーに男同士でコソコソ話してんだよ タイガー。
タイガー 「 い 一文字サン!(汗)
「 雪之丞 私とは話してくれないのですの?
雪之丞 「 か かおり・・・(汗)
アン 「 ピートおにーさま! お話しましょうよ〜!
ピート 「 あ アンちゃん・・・!(汗)
 
3人の少女は、3人の男をキッチンから引っぱり出してきた。
その様子を見た愛子と貧は・・・
 
愛子 《 青春ねー
《 何故にこの世界オンナが強いんやろか?
 
 
一方で茜は、部屋の窓に腰掛けて、顔を外に向けながら、中の様子をちらちらとうかがっていた。
そんな一人でいる茜のところに、唐巣が近づいた。
 
 
唐巣 「 キミがタイガー君の助手の白石・・・茜さんですか?
「 だからなんだよオッサン。 <ギロッ>
聖羅 「 あなた唐巣神父に対してなんて失礼な―――!
 
唐巣を睨みながら悪態をつく茜に聖羅はカッとなるが、唐巣は手を上げて彼女を制すと・・・
 
唐巣 「 どうです? あなたも一緒にみなさんとお話しませんか?
  ここにいるのはほとんどGSですから ためになると思いますよ。
「 っせえなー! ひっこんでろジジイ!!
 
ぴたっ・・・事務所内がシーンと静まる。
 
タイガー・一文字 「 あ あかねサン!  「 てめえまた―――!
 
唐巣は再度手をあげて、タイガーや一文字の言葉を止めた。
唐巣は動じることなく、茜に話し続けた。
 
唐巣 「 そうとんがらないでくださいよ。 私達はあなた達をお祝いしにきたんですから。
「 ・・・・・・
唐巣 「 みんなあなたのことはよく知らないし あなたも私たちのことをよく知らない。
  だから会話をするんです。 会話をする前から人を避けていては 何も始まりませんよ。
「 センコーみたいなこと言ってんじゃねえ!! あたいのことはほっといてくれ!! <バッ>
 
茜は2階の窓の横にある雨どいに掴みながら軽々と降り、そのまま走ってどこかにいってしまった。
 
一文字 「 あんのバカ とことんひねくれてやがるな!
聖羅 「 唐巣神父ほっときましょう! ああいうタチの悪い女と関わる必要はありませんわ!
唐巣 「 いやいや ここは年長者の私にまかせてください。 そんなに悪い子ではないはずですから。
 
一文字と聖羅が言うと、唐巣はそう言って事務所を出ていった。
 
ピート 「 唐巣先生 あれで結構世話好きですから。
 
と、ピート。
 
聖羅 「 唐巣神父・・・
 
聖羅は窓から唐巣の背中を目で追っていた・・・
 
 
 
 
 
■河原■
 
「 ちくしょー! あ〜ムカツク! なんかわかんねえけどムカツク〜〜〜!!
 
西の空が赤く染まりだした頃、茜は川に向かって石をなげていた。
そんな茜の背後に、唐巣がやってくきて―――
 
唐巣 「 いやー 青春ですねー、石を投げてうさをはらすなんて。
「 おっさんまだいたのか!?
唐巣 「 健全でいいじゃないですか。 探しましたよ。
「 っせえな ほっとけよ!
唐巣 「 そう言われるとますますほっとけなくなりますねえ。 ジュース飲みます?
「 ・・・・・・
 
 
茜と唐巣は土手に座り、夕日や川を見ながら缶ジュースを飲んでいた。
周りでは子供たちが遊んでいたり、ランニングをしている青年もみかけられた。
 
 
唐巣 「 ・・・茜君 キミは“獣の笛”が吹けるそうだね。
「 それがどうしたよ。
唐巣 「 その笛がなぜキミだけが吹けるのか、エミ君に聞いた事はないかい?
「 ・・・いや。
唐巣 「 そうか・・・やはりな。
「 な なんだってんだよいったい!?
 
唐巣は前方にある、沈みかけた夕日を見つめながら―――
 
唐巣 「 一般的には 動物の心のわかる者が吹けると仮説が立てられているが、実際は少し違うらしい。
「 え?
唐巣 「 以前エミ君が妙神山へ修行に行く前に聞いたことがある。
  獣の笛は獣を操るための魔道具、それを吹くには寂しさや悲しみといった、
  1匹であるが故の“孤独感”を知り、それに立ち向かう者にしか吹けないんだ。
  もちろんある程度の霊力や才能を必要とするけどね。
 
( じゃあエミさんはあたいと同じ・・・
 
唐巣 「 おそらくエミ君も 昔は茜君と同じ考え方をしていたのだろう。
  誰も信じない 誰も寄せつけない 親も友達もいらない・・・
  でも自分の誇りは捨てない・・・そんな心の持ち主だったんだ。 でも今は違う。
  エミ君にもたくさんの友達や弟子がいて、そのエミ君は今でもその笛を吹くことができるんだ。
  だからたとえ茜君がかわっても、一度でも吹けたキミならまた吹くことができる。
「 ・・・・・・
 
唐巣は隣に座る茜の顔を見ると―――
 
唐巣 「 だから信じてみないか? 人を 私達を。
  茜君さえ心を開けば、みんな優しくむかえてくれるはずさ。
「 ・・・・・・
 
そう言った唐巣は、立ち上がって川に背を向けると―――
 
唐巣 「 そのことをエミ君が言わなかったのは 茜君を信じてのことでしょう。
  だが私はあえて知ってもらいたかった。
  茜君ならそのことを知った上で変われることを、私は信じているからね。
「 ・・・・・・
唐巣 「 まあ なにか相談があったら私の教会に来なさい。 オッサンでよければいつでも力になりますよ。
 
そう言うと唐巣はその場を離れた。
茜はしばらくの間、夕日を見ながらじっと黙って考えこんでいた。
 
 
 
 
 
■夜 タイガー除霊事務所■
 
がちゃっ・・・茜は事務所に戻ってきた。
一文字たちの姿はそこにはなく、タイガーが1人で書類の整理をしていた。
時計の針は夜7時を回っている。
 
タイガー 「 おかえりあかねサン。 じゃがもう帰ってええぞ。 親御サン心配するジャロー。
「 心配するかよあんな・・・
タイガー 「 ?
「 それよりもさ、除霊のこと教えてくれんだろ? いまから教えろよ! なあ!
タイガー 「 それはいいがー 親御サンに電話いれてからな。
「 ・・・わ わかったよ。
 
 
タイガーはその日から、事務所の準備をしながら茜に除霊の知識や役割を教えていった。
お札の扱い方、笛を吹くタイミング、結界の張り方・・・・・
更にタイガーは、時間の合間をぬって自動車講習所にも通っていた。
 
・・・そして2週間後、11月上旬、タイガー除霊事務所の初仕事の日がやってきたのである―――
 
 
第7節−完

※この作品は、ヴァージニアさんによる C-WWW への投稿作品です。
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