『バトル・ウィズ・ウルブズ byシロ』

著者:まきしゃ


  まえがき このお話しは『バトル・ウィズ・ウルブズ!!』(18巻リポート4〜19巻リポート2)
での出来事を、シロがタマモに語ったものです。単行本を片手に読まれることを
お薦めいたします。
   
  美神事務所の屋根裏部屋
タマモ 「ねえ、シロ。前から気になってたんだけど、あんたの横島への
  思い入れ、ハンパじゃないわね。狼が仲間を大事にするっていう
  のはわかるけど、あんなバカのどこがいいっていうの?」
   
シロ 「こ、こらっ!!先生のことをバカというなっ!!
  そ、そりゃぁ、賢い方ではござらぬが、情に厚いのでござるぞっ!!
  よし、拙者が先生と知り合ったときのことを、聞かせてやるでござる。
  先生のすごさが、よくわかるでござるよ。」
   
タマモ 「ふ〜ん、そうなの?」
   
シロ 「あれは拙者がまだ二頭身で描かれてたころの話しでござる。
  拙者、父上の仇を討つために、人狼の里を一人抜け出してきたのでござるが、
  拙者の腕ではとても勝てる相手では無かったのでござるよ。
   
  仕方なく、拙者を強くしてくれる師匠を探していたところ、
  たまたま霊波の強い3人に出会ったのでござる。
  先生と、ピートどの、タイガーどのでござった。
   
  ただ、当時は気がたっておったのでござろうな。
  失礼なことに、拙者の剣がよけきれないなら無用とばかりに、いきなり
  切りつけたのでござる。
   
  ピートどの、タイガーどのは、拙者の殺気に驚き、逃げ腰だったので、
  拙者は最も強そうな先生に切りかかったのでござる。
  ところが、先生は拙者の切っ先をあっさりかわし、振り向きざま霊波刀で
  拙者をたたきのめしたのでござった。」
   
タマモ 「え〜?シロって、あいつに負けたの?弱っちぃ〜」
   
シロ 「せっ、先生は、本気になると強いのでござるっ!!
  黙って、続きを聞くでござるよっ!!
   
  で……、そうそう、拙者、先生の霊波刀で気を失ったのでござるが、
  やさしい先生は、拙者を弟子にしてくれたうえ、部屋で食事まで
  食べさせてくれたのでござる。
   
  そのあと先生は、拙者を美神さんに紹介するためにここに連れてきた
  のでござるが、驚いたことに、やってきたのは父上の仇でござった。
   
  なんでも前夜、人間界でも悪さをしてた父上の仇を相手に、美神さんも
  含めた多くのGSが戦ったそうでござる。でも、返り討ちにあって、多くの
  怪我人が出て、美神さんも髪の毛をばっさり切られたんでござるよ。
  で、狩りそこねた美神さんを殺しに、ここに来たのでござる。」
   
タマモ 「なにそれっ。シロの敵って、むちゃくちゃ強いじゃん!!」
   
シロ 「だから、そう言ったでござろう?
  そんな敵なのに先生は堂々と立ち向かい、銀の弾の入った銃を向けて
  相手の動きを止めたのでござるっ!!」
   
タマモ 「まだ、そんなに強い敵だってこと知らなかったからでしょ?」
   
シロ 「そ、そうでござるが、ピートどのやタイガーどのは、柱の影に隠れていたから、
  先生の方が偉いのでござるっ!!
  で、そのまま戦っていたら危なかったのでござるが、美神さんがバイクで駆けつけて
  くれたので、逃げることが出来たのでござる。
  それから半日、延々とバイクで逃げたのでござるよ。それでも追いつかれて
  拙者と先生の二人で立ち向かうことになったのでござる。」
   
タマモ 「あれ?二人でって、美神さんもいたんでしょ?それに、おキヌちゃんは?」
   
シロ 「言い忘れてたけど、敵は妖刀を持っていて、霊波刀しか通用しないんでござるよ。
  だから、霊波刀を使えない美神さんは、見てるしかなかったのでござる。
  おキヌちゃんは、当時は幽霊で戦力にならなかったんでござる。」
   
タマモ 「ふ〜ん。それじゃ、すぐ負けちゃうんじゃないの?」
   
シロ 「それがでござるっ!!
  拙者は、いきなり切りつけられて深手をおい、気を失ってしまったのでござるが、
  横島先生がかっこよかった!!
  敵の刀をさけつつ霊波刀をくりだし、相手に深手をおわせたのでござる。
  敵は、横島先生にかなわぬと思い、逃げ出したのでござるよっ!!
  先生は、とどめをさしたいと思いつつも、傷ついた拙者を置いて行けなくて
  その場の戦いは、終わったのでござった……」
   
タマモ 「ウソくさいわね〜…。あんた、気絶してたんじゃないの?」
   
シロ 「そ、そこは、先生から聞いた話しでござるから……
  そのあと美神さんの知り合いの別荘で手当てを受けたんでござるが…
  え〜っと、拙者が気がついたときは……!!!」(ポッ!顔真っ赤)
   
タマモ 「…?」
   
シロ 「せ、拙者、横島先生の胸に抱きしめられていたのでござるっ!!
  ワオッワオッ、ワオォ〜〜〜〜〜ン!!!!」
   
タマモ 「……、シロ、一人で興奮するなんて、みっともないわよ…
  あんた、そのとき重傷だったんでしょ?」
   
シロ 「それがでござる。
  先生は、拙者の胸の傷に手を置いて霊波を注入……
  拙者の胸に、先生の手がっ!!
  ワオッワオッ、ワオォ〜〜〜〜〜ン!!!!」
   
タマモ 「………、聞くのやめようかしら…」
   
シロ 「す、すまん。 聞いて欲しいでござるよ、クゥ〜ン、ク〜〜〜〜〜ン」
   
タマモ 「はいはい、それで?」
   
シロ 「で、先生と美神さんに手当てしてもらったのでござるが、先生の霊波が強力で、
  拙者、目が覚めたときには傷が治るだけでなく二頭身から八頭身に成長して
  おったのでござる。 つまり、拙者の身体の中には、先生の霊波がたっぷり
  含まれているのでござるよっ。」
   
タマモ 「実際の霊波は、美神さん9割、横島1割ってとこでしょうね。それで?」
   
シロ 「うぐっ! そ、それから美神さんは、拙者の里に行って敵のやっつけかたを
  聞きにいったのでござる。
  その間、拙者と先生は二人っきりで何日も一緒に修行を続けたんでござるよ。」
   
タマモ 「二人っきりって、おキヌちゃんもいたんでしょ?」
   
シロ 「うぅ、そのときのおキヌちゃんは、幽霊だったんであまり気にしてなかっ
  たんでござるよ…」
   
タマモ 「あんた、けっこう冷たいのねっ!」
   
シロ 「厳しいツッコミはつらいでござるよ……
  と、ともかく、拙者、この修行はつらいはずなのに、楽しかったんでござる。
  先生は、拙者が少しでも上達すると、すごく嬉しそうに誉めてくれるんでござるよ。
  拙者は、それが嬉しくて頑張ったでござる。
  里から来た長老も、拙者の上達ぶりをみて『先生がよかった』と言って
  くれたんでござるよ。」
   
タマモ 「ふ〜ん、これは信じてもよさそうね。」
   
シロ 「そうでござろう?
  で、修行を続けていたのでござるが、傷の治った敵がいきなり襲ってきたのでござる。
  そのときは、里から美神さんと長老が戻ってきてて、一旦は追い払ったのでござるよ。
  それから数日間、美神さんとおキヌちゃんは、敵をやっつけるための女神を呼び出す
  魔方陣を描くのにかかりっきりでござった。
  拙者と先生は、長老の指導でさらに修行を続けたのでござる。」
   
タマモ 「その女神って、なんなの?」
   
シロ 「月と狩りの女神っていう、古代の神でござるよ。敵も、古代の狼王フェンリルを
  蘇らせようとしてたんでござる。」
   
タマモ 「あたしの前世より古いのかしら?」
   
シロ 「そんなこと、拙者、知らないでござる。
  それより、こっからの敵との戦いで、横島先生がかっこいいんでござるっ!!
  敵がやってきたとき、まだ魔方陣は完成してなかったんでござる。
   
  拙者は、魔方陣の中から動くなと言われていたので、出来るまで長老と先生が
  時間稼ぎをすることになったんでござるよ。
  守るだけとはいえ強敵でござったが、先生は長老と一緒に守りきったのでござる。」
   
タマモ 「その長老、すごい腕前ねっ!」
   
シロ 「少しは、横島先生のことも認めてほしいでござるぅ〜〜〜
  ちょっと大げさなとこも、あるにはあるけど…
  ともかく、拙者は女神の力を借りて、ものすごく強くなったんでござる。
  ただ、敵もすぐに狼王フェンリルに変身してしまったんでござる。
   
  それでもかまわず飛び掛ったら反撃されて、拙者、木にたたきつけられたんでござる。
  タマモ、ここが大事でござる。よく聞くでござるよっ!!
  そのとき、先生はこうおっしゃった。『てめえ俺のシロに―――!』」
   
タマモ 「………」
   
シロ 「タマモッ!先生は『てめえ俺のシロに―――!』って言ったのでござるっ!
  拙者、先生のシロでござるよっ!!
  先生は、拙者のことを大切に思ってくれているのでござるっ!!
  『てめえ俺のシロに―――!』 ワォ〜〜〜ン!!」
   
タマモ 「………、わかったから先を続けて」
   
シロ 「そうでござるか? クゥ〜ン…何度、思い出してもいい言葉でござるのに…
  拙者、その言葉を聞いて、絶対負けられないと思ったでござる。
  なんとか立ち直って、女神の力を借りて、おもいっきり霊波刀を狼王に
  たたきつけたんでござる。」
   
タマモ 「やっつけたの?」
   
シロ 「いや、まだでござる。
  もう一撃くらわせれば倒せたと思うんでござるが、拙者の身体が
  女神のパワーに追いつかなくて、立つのもやっとの状態でござった…
  そのときの先生が、またかっこよかったんでござるよっ!!」
   
タマモ 「………、はいはい」
   
シロ 「そのときに狼王に勝てるのは、女神のパワーを借りた拙者しかいないんでござる。
  それなのに拙者は、もうふらふらでござった。
  そんな拙者に、先生は無理だから戦うなって言うのでござる。
  それでも『先生を守りたい』と言って戦おうとする拙者に、先生はこうおっしゃった。
  『俺はおまえの先生だぞ!!そこで俺の闘い方をよく見とけ!!』」
   
タマモ 「!!」
   
シロ 「タマモ!!わかるでござろう!?
  先生の力では、狼王には勝てない。
  先生はそれを承知のうえで、拙者の身を案じて、見てろと言った。
  先生は、横島先生は、命をかけて拙者を守ろうとしたのでござる!!」
   
タマモ 「ほんと?!あいつがそんなことを?!」
   
シロ 「ほんとでござるっ!
  先生は、そういうことの出来る人でござるっ!!
  拙者と知り合ってから、一ヶ月もたってなかったのに
  拙者が無理やり弟子にしてもらっただけなのに……
   
  今、思い出しても、こう、なんか、くるものがあるでござる…
  父上を失って、人狼の里を飛び出して、
  勝つあてもないのに仇を追いかけて…
  初めて声をかけた人間が横島先生で………
  優しくしてもらって、戦ってくれて、
  助けてくれて、強くしてくれて、
  命をかけて守ってくれたのでござる………
   
  せんせえ〜〜〜〜、横島せんせえ〜〜〜〜〜〜!!
  拙者、せんせえと知り合えて嬉しいでござる〜〜〜〜〜!!
  ウワォ〜〜〜ン!! オオオォ〜〜〜〜ン!!」
   
タマモ 「どうやらウソじゃなさそうね…。続きを聞かせてもらえる?」
   
シロ 「クゥ〜ン、えっとね、えっとね…
  このままじゃ勝てないんで、女神が拙者から美神さんに乗り移ったんでござる。
  それで、美神さんが狼王をやっつけたのでござる。」
   
タマモ 「えっ?それでおしまい?」
   
シロ 「ん〜、美神さんも苦戦したのでござるが…
  拙者も一緒に戦ってて、狼王に食われそうになったんでござるが、
  里のみんなが助けに来てくれて…
  地面に落ちそうになった拙者を、先生が受け止めてくれたのでござる!!
  拙者、先生に抱かれていたのでござる!!
  うれしいでござる〜〜〜〜〜
  ワオッワオッ、ワオォ〜〜〜〜〜ン!!!!」
   
タマモ 「………」
   
キヌ 「どうしたの?こんな夜中ににぎやかね?」
タマモ 「あっ、おキヌちゃん。シロのやつ、私に横島と出会ったときのことを
  話してたんだけど、なんか一人で盛り上がっちゃって…」
キヌ 「あら、そうだったんだぁ。あのときは、いろいろ大変だったもんね」
   
タマモ 「ねぇ、おキヌちゃん。横島って、ほんとにシロのために命懸けで戦ったの?」
   
キヌ 「ええ、本当よ。シロちゃんのときもそうだけど、横島さんって、
  私のときも、美神さんのときも、命懸けで戦ってくれる人なの。
  だから、みんなから好かれてるのよ。」
   
タマモ 「ふ〜ん、ほんとなんだぁ… そうは見えないんだけど」
シロ 「タマモッ!!拙者の話しを信用してなかったんでござるか?!」
   
キヌ 「くすっ!
  タマモちゃんの言うこともわかるわっ。普段の横島さんって、なんか
  頼りなさそうだもんね。
  でも、これから一緒に仕事をしていくと、タマモちゃんを守るために
  命懸けで戦ってくれるときがきっとあると思うわ。」
   
タマモ 「そうかなぁ〜」
シロ 「そうに決まってるでござるっ!!」
   
キヌ 「さっ、もう遅いし私は寝るわね。話しててもいいけど、もう少し静かにしてね。」
シロ 「は〜い」
タマモ 「うん、おやすみなさい。シロ、もう話しは終わったんでしょ?私も寝るからねっ。」
シロ 「あっ、拙者も寝るでござる。おやすみなさい」
   
   
  翌日の夜 屋根裏部屋
シロ 「昨日、あれだけ話したせいか、今日の先生はとってもかっこよく見えたでござる。
  タマモも、そう見えたでござろう?」
   
タマモ 「横島の弁当を狙って襲いかかったシロ……」
シロ 「えっ?!」
   
タマモ 「美神さんの下着入れから拳銃を取り出した横島、
  美神さんのパンツを持ち出して戦った横島
  ノミにも勝てなかった横島………」
   
シロ 「うっ!ど、どうしてそれをっ!」
タマモ 「多少は脚色してるだろうと思ったけど、まさか、ここまでとはね…」
   
シロ 「ピートどのや、美神さんに聞いたんでござるな?
  あぁッ…!!思い出は美しいままにしといて!!」
   
タマモ 「ま、それでもあんたを命懸けで守ろうとしたのは本当みたいね。
  それだけで十分かもね、あんたが横島に思い入れるには。」
シロ 「そ、そうでござろう?」
   
タマモ 「でも、競争率は高いわよ。適当にがんばってねっ!」
シロ 「うっ!拙者が一番気にしてることをっ!!
  タマモのアホ〜〜〜〜〜!!!!」
   
END  

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