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某日深夜 美神事務所の屋根裏部屋 |
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ベッドの上でごろごろしている、パジャマ姿のシロとタマモ。 |
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ごそごそごそ… タマモが自分のファンシーケースを覗きながら、なにやら悩み始めている… |
タマモ |
「明日は、どの服にしよ〜かなぁ〜」 |
シロ |
「タマモ、なにを悩んでいるんでござるか? おまえなんか何を着ても、一緒でござるよ。 |
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それに悩むほど、服なんか持っていないでござろうに…」 |
タマモ |
「(カチンっ!) なによ、それっ! 一着しか持っていない、あんたなんかと一緒にしないでよっ! |
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私は、秋モノの服は、10着ほど持ってるのよっ!?」 |
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シロ |
「えっ? そんなに持ってるんでござるか? また、無駄なことを…」 |
タマモ |
「なんで、無駄なのよっ!?」 |
シロ |
「だってタマモは、葉っぱ1枚あれば、なんでも好きな服を着られるんでござろう? |
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わざわざ、お金を使ってまでして買うなんて、無駄もいいとこでござるよっ。」 |
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タマモ |
「都会の葉っぱは、排気ガスで汚れていて、着心地が悪いのよっ。 |
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それに、服を買ってくれる人がいるんだから、素直に買ってもらって何が悪いの?」 |
シロ |
「えっ? 誰に買ってもらってるんでござるかっ!?」 |
タマモ |
「美智恵さんに、決まってるでしょ?」 |
シロ |
「え〜〜〜っ! ずるいでござる〜〜っ!」 |
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タマモ |
「なにがよっ! あんたの場合、ひのめちゃんの子守りしに行ったとき、 |
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いっつも最高級のお肉を昼食に用意してもらってるでしょっ!? |
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あれって、私の昼食代の10倍はするのよっ!?」 |
シロ |
「そんなの、タマモが高級品を食べたがらないのが悪いんでござるよっ!」 |
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タマモ |
「私もそう思ってたから、気にしてなかったんだけどね。 |
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でも、美智恵さんが、それでは二人のバランスが取れないからって言って、 |
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私だけに服を買ってくれることになったわけ。 |
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最初は断ったんだけど、それが人間の一般常識だそうだから、素直に従っただけよ。」 |
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シロ |
「う〜、なんか、気に入らないでござるよ〜…」 |
タマモ |
「あんたも服が欲しいんだったら、昼食の高級肉を断ってドッグフードにしてもらえば〜? |
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そ〜すれば、服を買ってくれるはずよ〜?」 |
シロ |
「うぅ……、肉でいいでござる…」 |
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タマモ |
「さてと、どれにしよ〜かな〜?」 |
シロ |
「どんな服があるんでござるか?」 |
タマモ |
「こんな感じよ。」 |
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服を何着かベッドの上に並べだしたタマモ。 やっぱり服を眺めるのは、うれしいらしい… |
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タマモ |
「どれがいいと思う?」 |
シロ |
「どれって… どれも、地味でござるな…」 |
タマモ |
「地味で悪かったわねっ! 私も美神さんみたいな、ど派手なボディコンにしろっていうのっ!?」 |
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シロ |
「そうは言ってないでござるが… |
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このワンピース、着やすそうでござるな。 ちょっと拙者が着てみるでござるよっ!」 |
タマモ |
「えっ?」 |
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ぽいぽいっ、ぱさっ! さっさと着替えてしまったシロ。 姿見で自分を眺めているが… |
シロ |
「う〜ん…」 |
タマモ |
「似合わないわね…」 |
シロ |
「そう、はっきり言わなくても…」 |
タマモ |
「あんたみたいな、ガサツな犬には、スカートはムリね。」 |
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シロ |
「(カチンッ!) そういうなら、タマモも拙者の服を着てみるでござるよっ?」 |
タマモ |
「あんたの?」 |
シロ |
「そうでござるっ! おまえみたいな、グータラ狐には、ジーンズはムリでござるっ!」 |
タマモ |
「(ムッ!) 私だったら、なんでも似合うんだからっ!」 |
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シロの左側だけ短く切ったジーンズを着てみるタマモ… |
タマモ |
「………」 |
シロ |
「………」 |
タマモ |
「あんた…、よく、こんな服、恥ずかしげもなく着れるわね…」 |
シロ |
「で、でも、拙者には似合ってるでござろう…?」 |
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タマモ |
「見慣れるってのは、怖いわね…」 |
シロ |
「似合っていれば、いいんでござるっ!」 |
タマモ |
「まあ、似合ってる、てゆ〜かそれしかイメージできないけど… でも、片足ってのは問題ね…」 |
シロ |
「拙者の生足を片方だけ見せるのが、チャームポイントでござるよっ!」 |
タマモ |
「でもさ…、脱いだらヒドイわよ…?」 |
シロ |
「うっ…」 |
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タマモが指摘したのは、シロの足の色の違い。 |
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日に焼けて真っ黒な左足と、日に当たらずに真っ白な右足が、 |
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ワンピースを着たままのシロの裾から、ガニマタ気味ににょっきりと顔を出している… |
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タマモ |
「あんたも、パンツぐらい買ってもらったら…?」 |
シロ |
「うぅ〜… 今度、先生にジーンズのお古を譲ってもらうでござるぅ〜〜〜」 |
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翌日… 美神事務所のお昼休み |
シロ |
「美神さん〜 お昼の準備が出来たでござるよ〜〜」 |
令子 |
「ん〜、ご苦労さん。 いま、そっち行くから〜」 |
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横島とおキヌちゃんは学校に行っているので、令子、シロ、タマモの三人でお昼を食べるのが、 |
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最近の事務所での日常的な風景… |
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もぐもぐもぐ…… ポリポリポリ… |
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もぐもぐ…… ポリポリ… |
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もぐもぐもぐ…… ポリポリポリ… |
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令子 |
「あ〜もう、気になるわね〜っ! タマモっ! 食事中に、何やってんのよっ!?」 |
タマモ |
「なんか…、足がカユくて…」 |
令子 |
「虫にでも、刺されたの? 食事中は我慢しなさいっ!」 |
タマモ |
「そうしたいんだけど…」 ポリポリポリ… |
令子 |
「そんなにカユイのっ? ちょっと、見せてごらんなさいっ!」 |
タマモ |
「うん…」 |
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令子がタマモの足を見てみると、右足中に赤い発疹が… |
令子 |
「また、派手にかぶれてるわね〜… どれどれ…?」 |
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ぺろんっ! タマモのスカートをめくり、パンツの中を覗いてみる令子。 |
令子 |
「おしりはキレイなままね。 どうやら、かぶれてるのは右足だけか。 |
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タマモ…、あんた、右足だけをドブの中に突っ込んだりとかしたの?」 |
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タマモ |
「そんなこと、してないんだけど… あっ!」 |
シロ |
「うっ…!」 |
令子 |
「ん?」 |
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タマモ |
「シロっ! 昨夜、あんたのジーンズをはいたせいだわっ! |
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あんたのパンツって、ドブなみの汚さなのねっ!?」 |
シロ |
「せっ、拙者は、毎日はいてるけど、なんともないでござるっ! |
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タマモの肌が弱すぎるのが悪いんでござるっ!」 |
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令子 |
「ふ〜ん、そういうことか。 しょ〜がないわね〜 |
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横島クンたちが出社してきたら、病院に連れていくしかないわね〜」 |
タマモ |
「えっ? 病院に行くのっ? なにか、薬とかはないのっ?」 |
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令子 |
「人間の薬ならあるけどね… あんたの本体はキツネだから、獣医に診てもらったほうがいいのよ。 |
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『倍櫓』は、強心剤みたいなもんだから、これには効きそうも無いしね。」 |
タマモ |
「病院なんて、行きたくないなぁ〜…」 ポリポリポリ… |
シロ |
「へへ〜んだっ。 ぶっとい注射を打たれればいいんでござるよっ!」 |
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山村動物病院… |
獣医 |
「よし、次っ!」 |
看護婦 |
「はい、次の方、診察室へどうぞ。」 |
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香山夏子 |
「先生っ! シロがっ! シロがぁ〜っ! うぇ〜〜〜んっ!」 |
香山シロ |
「くぅ〜〜ん…」 |
氷雅 |
「あまり心配しなくても大丈夫ですわ。 ちょっと足をくじいただけみたいですから。」 |
獣医 |
「なるほど、足が変な方を向いているな… レントゲンで骨の状態を見てみよう。」 |
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どうやら足を怪我してしまった、ピレネー犬の香山シロ。 |
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飼い主の香山夏子と一緒に来ていたのは、同級生の伊能せいこうと、 |
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彼の専属乱破、氷雅と妖岩姉弟… |
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しばらくして… |
獣医 |
「どうやら、脱臼しただけのようだね。 骨は折れていないから、治りは早い。」 |
伊能 |
「そうですか。 よかったね、香山。」 |
香山 |
「うん…。 (ぐすん…)」 |
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獣医 |
「それにしても… どうやったら、こんなに不思議な脱臼の仕方をするかなぁ〜 |
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いままで、見たことも無いような方向に、ずれていたからなぁ〜」 |
氷雅 |
「あら、どうしてでしょうかしら。 おほほほほほほ…」 |
伊能 |
(こいつだ… こいつが何か、シロに忍術をし込もうとしたに違いない…) |
妖岩 |
「………」 |
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獣医 |
「よしっ。 これで、もう大丈夫だ。 |
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このまま歩いて帰っていい。 まだ腫れはあるから、長距離はムリだが。」 |
香山 |
「ありがとうございます。 先生。」 |
獣医 |
「はっはっは。 これが、私の仕事だからねっ!」 |
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山村動物病院から外に出る香山たち… |
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ちょうどそのときやってきた、美神事務所の5人。 ばったりっ! |
氷雅 |
「えっ!?」 |
横島 |
「んっ?」 |
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氷雅 |
「あ、あなたはっ!! わたくし…、あなたの顔… よ〜〜く覚えてましてよっ! |
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よくも、よくも、わたくしの邪魔をしてくれましたわねっ!」 |
横島 |
「あ、あんた、GS資格試験のときの、俺の相手…」 |
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氷雅 |
「そうですわよっ! わたくし、あなたの卑劣な戦いかたのせいで、 |
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貴重な青春のひとときを、だいなしにされたのですわっ!」 |
横島 |
「卑劣って… あんたが秘孔を突かなければ、俺、ギブアップしてたのに…」 |
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氷雅 |
「おだまりっ! あなたのせいで、GS資格が取れなかったばっかりに、 |
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どれだけみじめな思いをしてきたことかっ! |
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あれから3ヶ月、郷里の父の元で、とても厳しい修行をさせられたのですっ!」 |
横島 |
「負けたんだから、しょうがないと思うけど…」 |
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氷雅 |
「いちいち、言い返さないでもらえますっ!? え〜い、腹のたつっ! |
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そうですわね… このさい、ここであのときの借りを返させていただきましょうか…?」 |
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ぐいっ! 横島の胸倉を掴む氷雅っ! |
氷雅 |
「忍犬シロっ! さっき教えた、『各個撃破の術』を使うのよっ!」 |
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カプッ! カプッ! |
氷雅 |
「わっ!?」 |
横島 |
「やめろっ、シロっ!」 |
香山 |
「やめてっ、シロっ!」 |
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氷雅の足首に噛み付いた、香山シロと、 |
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氷雅の手首に噛み付いた、犬塚シロ…。 |
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シロ |
「ふぇんふぇ〜ひ、へはひはふひょ〜へほはふっ! (先生に、手出しは無用でござるっ!)」 |
横島 |
「シロっ! もういいから、噛むのをやめろっ!」 |
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氷雅 |
「くっ…! よくも、わたくしに噛み付きましたわねっ!? |
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そ〜ですわね…。 あなた、慰謝料を払っていただきましょうかっ!」 |
横島 |
「うっ…。 こんどは、ゆすりかっ?」 |
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ズイっ! あきれて眺めていた令子が、いきなり顔を出す。 |
令子 |
「ほぉ〜〜? うちの丁稚から、金を巻き上げようってゆ〜気っ?」 |
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ズゴゴゴゴゴォ〜〜ッ! |
氷雅 |
「うっ…!」 |
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(ま、まずい… この女、出来るわっ! これに逆らったら、半殺しにされる… |
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全治3ヶ月 → 父上にバレたらさらに修行を3ヶ月 → 青春の無駄遣い |
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うぅ… それだけは、さけなければ…) |
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氷雅 |
「おほほほほ… いやですわ、おねえさま。 なんのことですかしら〜? |
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シロちゃん、怪我が治ってよかったですわね。 さっ、若、帰りますわよっ?」 |
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適当にごまかして、この場を去ることにした氷雅… |
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伊能 |
「すみません、すみません。」 ペコペコ… |
キヌ |
「こちらこそ、すみません。」 ペコペコ… |
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妖岩 |
「………」 ポタポタ… |
タマモ |
「………」 ポリポリ… |
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ようやく、動物病院の中に入った美神たち… |
看護婦 |
「先生…、次の患者さんなんですが…」 |
獣医 |
「ん? どうかしたのか?」 |
看護婦 |
「その…、動物を連れてらっしゃらないんですけど…」 |
獣医 |
「ふむ…、連れ出せないほどひどいのか…? とりあえず、診察室に入ってもらいなさい。」 |
看護婦 |
「はい。 それでは、こちらへどうぞ。」 |
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診察室に入ってきた美神たち |
獣医 |
「おおっ、なんだ、君かっ! 私の愛のこもった予防注射から、逃げまわった人狼の女の子だねっ!? |
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先生は、君がどんなにヒドイ病気になっても、絶対に救ってみせるよっ! |
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ボクは、そのために獣医になったのだからねっ! ふはははははは…」 ズゴゴゴ〜 |
シロ |
「うっ… おっかないでござる…」 |
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ぴゅぅ〜 獣医の勢いに押されて、横島の後ろに隠れるシロ |
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横島 |
「あの…、先生。 今日は、こいつじゃなくて、タマモの方なんです。」 |
獣医 |
「ん? こちらの女の子も、人狼なのか?」 |
タマモ |
「人狼ですってっ!? こんなバカ犬と一緒にしないでよっ!」 ポリポリポリ… |
令子 |
「タマモっ! ぶつぶつ言ってないで、早く変化を解きなさいっ。」 |
タマモ |
「は〜い。」 |
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ぽんっ! 変化を解いて、キツネ姿になったタマモ |
獣医 |
「なっ…!?」 |
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……… |
獣医 |
「よし、診察だっ!」 |
看護婦 |
「せ、先生…、タフですね…」 |
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獣医 |
「ふむ、なかなか見事なシッポを持っているキツネだね。 |
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私の見たところ、このキツネは天然記念物でもおかしくないほどの貴重な種族のよ〜だね。」 |
看護婦 |
「天然記念物とかそ〜ゆ〜問題でしょ〜か…?」 |
横島 |
「妖狐です。」 (汗) |
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獣医 |
「貴重なキツネが病気に冒されるのを、みすごすわけにはいかんっ! |
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美しいキツネ!! 愛らしいキツネ!! |
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りこうでかしこく、少しだけワガママな人間の友!! |
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それを守れなくて何の獣医かっ!? な――お――す――ぞ――!!」 |
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ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ〜〜〜〜 |
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ズザザ…… 引き気味の令子たち… |
獣医 |
「で、どこが悪いのかね?」 |
令子たち |
「うっ…」 |
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タマモの症状や感染した理由とかを、令子から問診する獣医。 |
獣医 |
「なるほど…。 右足だけに発疹が出ているのか。 どれどれ?」 |
タマモ |
『ハウッ!?』 |
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獣医に傷口をさわられて痛がるタマモ。 でも、涙目ながらに耐えている… |
獣医 |
「うん、これは典型的な感染症の皮膚病だな。 症状は軽いから、すぐに治る。 |
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早速、治療することにしよう。 君、バリカンを頼む。」 |
看護婦 |
「はい、先生。」 |
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横島 |
「美神さん…、なんで、バリカンなんかを…?」 |
令子 |
「だって、皮膚病の治療をするのよ? 体毛が邪魔になるでしょ?」 |
キヌ |
「えっ? タマモちゃん、毛をそられるんですか?」 |
令子 |
「………、しかたないでしょ?」 |
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ヴィ〜〜ンッ! 電動バリカンのスイッチが入れられる… |
タマモ |
『じょっ、冗談じゃないわよ〜〜〜っ!!』 |
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ぽんっ! いきなり人間形態に変化して、逃げ出そうとするタマモっ! でも… |
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バシュッ!! シュゥ〜〜〜… |
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令子に封魔札を貼られて、ふたたびキツネ形態に戻されてしまう… |
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令子 |
「タマモっ! 世話焼かすんじゃないわよっ! あんたのためなのよっ!?」 |
タマモ |
「キュ〜〜…」 |
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キヌ |
「あああ… タマモちゃん、かわいそう…」 |
横島 |
「でも、こればっかりはなぁ〜…」 |
シロ |
「拙者…、事務所に帰ったら、タマモを慰めるでござるよ…」 |
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ジョリジョリジョリ…、ジョリジョリジョリ… |
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お札で動けなくなったタマモ…。 彼女の体毛は、獣医によって容赦なく刈られていく… |
看護婦 |
「先生、どのあたりまで刈りますか?」 |
獣医 |
「症状が出ているのは右足だけだが、左足に感染しててもおかしくないな… |
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よしっ、下半身を全部だっ!」 |
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ギロリンッ! 涙目でシロを睨み付けるタマモ… |
シロ |
「そ、そんなに怖い目で、拙者をにらまないで欲しいでござる…」 (汗) |
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どよよ〜ん… 体毛を刈り終えて、つるっつるになってしまったタマモの下半身… |
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ああ、恥ずかしい… |
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獣医 |
「それじゃあ、彼女に薬を塗ってくれたまえ。」 |
看護婦 |
「わかりました、先生。」 |
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ぺたぺたぺた… 皮膚病の塗り薬をタマモの下半身全体に塗り付ける看護婦… |
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タマモも、もう開き直って、看護婦のなされるがままに… |
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獣医 |
「さて…、次は君だな。」 |
シロ |
「えっ? 次って…?」 |
獣医 |
「うん。 人狼の君のことだ。」 |
シロ |
「えっ!? せっ、拙者、どこも悪くないでござるよっ!?」 |
獣医 |
「でも、美神さんの話では、どうやら君が感染源なんだろ? |
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症状は出ていなくても、君も治療しておかないと、またキツネの彼女にうつしてしまうからね。」 |
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シロ |
「拙者、イヤでござる〜〜〜っ!!」 |
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やっぱり、逃げようとするシロ。 でも… |
シロ |
「うぎゃんっ!?」 |
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パシッ! ぐるぐるりんっ! |
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令子と横島によって、呪縛ロープで拘束されてしまう… |
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キヌ |
「あああ…」 |
シロ |
「先生〜、ひどいでござるぅ〜〜!!」 |
横島 |
「シロ、すまんが、ここでおまえと鬼ごっこするつもりはないんでな…」 |
令子 |
「タマモも、我慢したのよ? あんたも、同じ目に遭ったほうが、気をつかわなくて済むでしょ?」 |
シロ |
「拙者、タマモに気をつかってもいいから、毛をそられたくないでござるぅ〜〜〜っ!!」 |
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ジョリジョリジョリ…、ジョリジョリジョリ… |
タマモ |
『ふんっ!』 |
シロ |
『うぐぅ…!』 |
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ふてくされる二匹… |
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キヌ |
「あの、先生…。 どうして、タマモちゃんだけ発症したんでしょうか…?」 |
獣医 |
「体質の違いが大きいせいだとは思うんだが…。 |
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皮膚の強さの影響もあるかもしれない。 |
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よし、彼女の皮膚の状態を、拡大鏡で覗いてみよう。」 |
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そりたてのシロの太ももを、拡大鏡で眺めている獣医… |
獣医 |
「おおっ!! そうか、そういうことだったのかっ!!」 |
横島 |
「先生。 こいつに、なにか特別なことでもあったんスか?」 |
獣医 |
「うむ。 彼女の足は、数層におよぶ垢でおおわれているっ!」 |
横島 |
「垢……っスか…?」 |
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獣医 |
「そのとおりっ! これだけ垢がこびりついていると、さすがのバイ菌も皮膚まで届かないようだ。 |
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これは見事な、自己防衛システムだねっ! ははははは…」 |
横島 |
「わ、笑い事なんスか…」 |
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令子 |
「おキヌちゃん…、シロって、ちゃんとお風呂に入ってるの…?」 |
キヌ |
「あの…、その…、ちゃんと入っているはずなんですけど…」 |
横島 |
「シロのこったっ。 ど〜せ、水浴び程度で、すましてるんじゃね〜の…?」 |
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じとぉ〜〜〜… |
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シロに対する視線が、やたらと冷たくなっていく… |
シロ |
『うう… なんだか、とってもまずいでござる…』 |
タマモ |
『このバカ犬が…』 |
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ジャブジャブジャブ… |
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薬を塗る前に、犬用浴槽に入れられて、身体を洗われているシロ… |
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獣医の指摘通り、シャンプーの泡が茶色に変色して流れ落ちている… |
獣医 |
「う〜ん、野良犬ならわかるんだけど、飼い犬でここまで汚れているのは珍しいな…」 |
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令子 |
「うっ…。 おキヌちゃん…。 これからは、シロと一緒にお風呂に入るのよっ!? |
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こんなことで、こんなに恥ずかしい思いをするなんて、想像もしなかったわっ!?」 |
キヌ |
「そ…、そうですね…。」 |
シロ |
『拙者…、無事に帰れるんでござろうか…?』 (汗) |
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シロの心配をよそに、二匹の治療は終了してしまう… |
獣医 |
「これで、もう大丈夫だ。 2、3日、家で薬を塗り続ければ治るだろう。 |
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でも、体毛が生え揃うまでは、汚れたところには連れて行かないように。」 |
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キヌ |
「先生。 この二人は、人間形態に戻っても大丈夫なんでしょうか?」 |
獣医 |
「えっ? あっ、そうか。 そんなこと、考えたこともなかったな。 |
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う〜ん、人間形態だと、服を着ることになるのか…。 |
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よく消毒した服だったら、いいだろう。 汚れた服は、着せてはダメだよ。」 |
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令子 |
「しかたないわね…。 帰りに、こいつらの服を買って帰るか。 |
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それまでは、その格好でいるのよっ!」 |
タマモ |
『………』 ムッス〜〜〜 |
シロ |
『………』 (汗) |
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事務所に戻ってきた5人… |
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ぽんっ! ぽんっ! ようやく人間形態に戻った二人。 |
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買ってきたばかりのお揃いのジャージを着ることに… |
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横島 |
「あれ? シロ…、おまえの髪の毛…」 |
シロ |
「うう… 体毛を刈られたせいでござる…」 |
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おしりのとこまであったシロの長い髪の毛は、今は肩口までしかなかった…。 |
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横島 |
「ってことは…、タマモも…? うっ…! ぷぷっ!」 |
キヌ |
「よ、横島さんっ! 笑ったら、タマモちゃんがかわいそうですっ!」 |
令子 |
「でも、笑えるわよね〜! あははははっ!」 |
キヌ |
「あああ…、美神さんまで…」 |
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タマモの後頭部は、束ねられた九尾のまわりが刈り上げられた状態に… |
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ちょうど清国の辮髪(べんぱつ)みたいな感じ… |
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タマモ |
「えっ!? なっ、なによっ、これ〜〜〜っ!!」 |
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カァ〜〜〜ッ! 自分の髪の毛の状態に気づいて、顔を真っ赤に染めるタマモ… |
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ビュォンッ! 慌てて変化をやり直す。 |
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シロ |
「えっ? タマモの髪が、前と同じに戻ってるっ?」 |
タマモ |
「ふんっ! 私なら、これぐらいの修正なんて簡単よっ!」 |
シロ |
「うう… タマモがうらやましいでござる…」 |
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タマモの束ねられたシッポの房は、四尾に減っていたけれど… |
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令子 |
「さてと…、シロっ! タマモっ! わかってるわよねっ!?」 |
シロ |
「な、なんでござるか…?」 |
タマモ |
「なに? 美神さん…。」 |
令子 |
「屋根裏部屋の消毒よっ! バイ菌だらけのあんたたちの部屋に戻ったら、 |
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いつまでたっても、タマモの皮膚病は治らないわっ! |
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動物病院の治療費って、むちゃくちゃ高いんだからね〜〜〜っ!」 |
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1週間後… 今夜の仕事を終えて事務所に戻ってきた5人。 |
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一段落ついて、ほっと一息のティータイム… |
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横島 |
「それにしても、ここもずいぶんキレイになったなぁ〜」 |
キヌ |
「ええ。 シロちゃんと、タマモちゃんが、毎日こまめに掃除してますから。」 |
令子 |
「こいつら、よっぽど、毛をそられたのがイヤだったみたいねっ。」 |
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横島 |
「さすがに、あれは可哀想でしたからね〜」 ポリポリポリ… |
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ビクッ! ズザザザァ〜〜〜ッ!! |
横島 |
「えっ?」 |
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なにげに手を掻きはじめた横島をみて、慌てて飛び離れるシロとタマモ… |
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シロ |
「せっ、先生っ! 拙者に、うつさないで欲しいでござるっ!」 |
タマモ |
「横島っ! あんた、今夜はもう用事はないんでしょっ!? 早く帰れっ!」 |
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横島 |
「うっ…! し、心配するなってばっ。 俺が掻いてるのは、さっき蚊にさされたからで、 |
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おまえらにうつるような、バイ菌のせいじゃないからっ!」 |
シロ |
「先生…、ほんとでござるか…?」 |
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横島 |
「疑り深いやつだな… おキヌちゃん、ほら、そうだろ?」 |
キヌ |
「ええ、そうですね。 私、虫さされの薬を持ってきますね。」 |
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おキヌちゃんの言葉で、なんとか平静を取り戻したシロとタマモ… 心の傷は重そう… |
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やがて、ティータイムも終わり、帰宅することにした横島。 |
横島 |
「それじゃあ、俺、帰ります。」 |
令子 |
「ん。 お疲れさん。」 |
キヌ |
「お疲れ様でした〜」 |
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シロ |
「先生っ! 銭湯に行って、身体をキレイにして帰るでござるよっ!」 |
横島 |
「てめ〜に、言われたくねぇぞっ! (苦笑)」 |
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夜の街中を一人、家路に向かう横島… |
横島 |
「ああは言ってみたけれど…、俺も病院に行ったほ〜がいいかもな… |
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バレたら、あいつらに殺されかねね〜もんなぁ〜…」 |
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そう言いながら、ふいに路上で立ち止まり、 |
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スニーカーを脱いで足の指の間を掻きはじめる横島であった… |
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ポリポリポリ… |
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END |
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