| 某日深夜 美神事務所の屋根裏部屋 | ||
| ベッドの上でごろごろしている、パジャマ姿のシロとタマモ。 | ||
| ごそごそごそ… タマモが自分のファンシーケースを覗きながら、なにやら悩み始めている… | ||
| タマモ | 「明日は、どの服にしよ〜かなぁ〜」 | |
| シロ | 「タマモ、なにを悩んでいるんでござるか? おまえなんか何を着ても、一緒でござるよ。 | |
| それに悩むほど、服なんか持っていないでござろうに…」 | ||
| タマモ | 「(カチンっ!) なによ、それっ! 一着しか持っていない、あんたなんかと一緒にしないでよっ! | |
| 私は、秋モノの服は、10着ほど持ってるのよっ!?」 | ||
| シロ | 「えっ? そんなに持ってるんでござるか? また、無駄なことを…」 | |
| タマモ | 「なんで、無駄なのよっ!?」 | |
| シロ | 「だってタマモは、葉っぱ1枚あれば、なんでも好きな服を着られるんでござろう? | |
| わざわざ、お金を使ってまでして買うなんて、無駄もいいとこでござるよっ。」 | ||
| タマモ | 「都会の葉っぱは、排気ガスで汚れていて、着心地が悪いのよっ。 | |
| それに、服を買ってくれる人がいるんだから、素直に買ってもらって何が悪いの?」 | ||
| シロ | 「えっ? 誰に買ってもらってるんでござるかっ!?」 | |
| タマモ | 「美智恵さんに、決まってるでしょ?」 | |
| シロ | 「え〜〜〜っ! ずるいでござる〜〜っ!」 | |
| タマモ | 「なにがよっ! あんたの場合、ひのめちゃんの子守りしに行ったとき、 | |
| いっつも最高級のお肉を昼食に用意してもらってるでしょっ!? | ||
| あれって、私の昼食代の10倍はするのよっ!?」 | ||
| シロ | 「そんなの、タマモが高級品を食べたがらないのが悪いんでござるよっ!」 | |
| タマモ | 「私もそう思ってたから、気にしてなかったんだけどね。 | |
| でも、美智恵さんが、それでは二人のバランスが取れないからって言って、 | ||
| 私だけに服を買ってくれることになったわけ。 | ||
| 最初は断ったんだけど、それが人間の一般常識だそうだから、素直に従っただけよ。」 | ||
| シロ | 「う〜、なんか、気に入らないでござるよ〜…」 | |
| タマモ | 「あんたも服が欲しいんだったら、昼食の高級肉を断ってドッグフードにしてもらえば〜? | |
| そ〜すれば、服を買ってくれるはずよ〜?」 | ||
| シロ | 「うぅ……、肉でいいでござる…」 | |
| タマモ | 「さてと、どれにしよ〜かな〜?」 | |
| シロ | 「どんな服があるんでござるか?」 | |
| タマモ | 「こんな感じよ。」 | |
| 服を何着かベッドの上に並べだしたタマモ。 やっぱり服を眺めるのは、うれしいらしい… | ||
| タマモ | 「どれがいいと思う?」 | |
| シロ | 「どれって… どれも、地味でござるな…」 | |
| タマモ | 「地味で悪かったわねっ! 私も美神さんみたいな、ど派手なボディコンにしろっていうのっ!?」 | |
| シロ | 「そうは言ってないでござるが… | |
| このワンピース、着やすそうでござるな。 ちょっと拙者が着てみるでござるよっ!」 | ||
| タマモ | 「えっ?」 | |
| ぽいぽいっ、ぱさっ! さっさと着替えてしまったシロ。 姿見で自分を眺めているが… | ||
| シロ | 「う〜ん…」 | |
| タマモ | 「似合わないわね…」 | |
| シロ | 「そう、はっきり言わなくても…」 | |
| タマモ | 「あんたみたいな、ガサツな犬には、スカートはムリね。」 | |
| シロ | 「(カチンッ!) そういうなら、タマモも拙者の服を着てみるでござるよっ?」 | |
| タマモ | 「あんたの?」 | |
| シロ | 「そうでござるっ! おまえみたいな、グータラ狐には、ジーンズはムリでござるっ!」 | |
| タマモ | 「(ムッ!) 私だったら、なんでも似合うんだからっ!」 | |
| シロの左側だけ短く切ったジーンズを着てみるタマモ… | ||
| タマモ | 「………」 | |
| シロ | 「………」 | |
| タマモ | 「あんた…、よく、こんな服、恥ずかしげもなく着れるわね…」 | |
| シロ | 「で、でも、拙者には似合ってるでござろう…?」 | |
| タマモ | 「見慣れるってのは、怖いわね…」 | |
| シロ | 「似合っていれば、いいんでござるっ!」 | |
| タマモ | 「まあ、似合ってる、てゆ〜かそれしかイメージできないけど… でも、片足ってのは問題ね…」 | |
| シロ | 「拙者の生足を片方だけ見せるのが、チャームポイントでござるよっ!」 | |
| タマモ | 「でもさ…、脱いだらヒドイわよ…?」 | |
| シロ | 「うっ…」 | |
| タマモが指摘したのは、シロの足の色の違い。 | ||
| 日に焼けて真っ黒な左足と、日に当たらずに真っ白な右足が、 | ||
| ワンピースを着たままのシロの裾から、ガニマタ気味ににょっきりと顔を出している… | ||
| タマモ | 「あんたも、パンツぐらい買ってもらったら…?」 | |
| シロ | 「うぅ〜… 今度、先生にジーンズのお古を譲ってもらうでござるぅ〜〜〜」 | |
| 翌日… 美神事務所のお昼休み | ||
| シロ | 「美神さん〜 お昼の準備が出来たでござるよ〜〜」 | |
| 令子 | 「ん〜、ご苦労さん。 いま、そっち行くから〜」 | |
| 横島とおキヌちゃんは学校に行っているので、令子、シロ、タマモの三人でお昼を食べるのが、 | ||
| 最近の事務所での日常的な風景… | ||
| もぐもぐもぐ…… ポリポリポリ… | ||
| もぐもぐ…… ポリポリ… | ||
| もぐもぐもぐ…… ポリポリポリ… | ||
| 令子 | 「あ〜もう、気になるわね〜っ! タマモっ! 食事中に、何やってんのよっ!?」 | |
| タマモ | 「なんか…、足がカユくて…」 | |
| 令子 | 「虫にでも、刺されたの? 食事中は我慢しなさいっ!」 | |
| タマモ | 「そうしたいんだけど…」 ポリポリポリ… | |
| 令子 | 「そんなにカユイのっ? ちょっと、見せてごらんなさいっ!」 | |
| タマモ | 「うん…」 | |
| 令子がタマモの足を見てみると、右足中に赤い発疹が… | ||
| 令子 | 「また、派手にかぶれてるわね〜… どれどれ…?」 | |
| ぺろんっ! タマモのスカートをめくり、パンツの中を覗いてみる令子。 | ||
| 令子 | 「おしりはキレイなままね。 どうやら、かぶれてるのは右足だけか。 | |
| タマモ…、あんた、右足だけをドブの中に突っ込んだりとかしたの?」 | ||
| タマモ | 「そんなこと、してないんだけど… あっ!」 | |
| シロ | 「うっ…!」 | |
| 令子 | 「ん?」 | |
| タマモ | 「シロっ! 昨夜、あんたのジーンズをはいたせいだわっ! | |
| あんたのパンツって、ドブなみの汚さなのねっ!?」 | ||
| シロ | 「せっ、拙者は、毎日はいてるけど、なんともないでござるっ! | |
| タマモの肌が弱すぎるのが悪いんでござるっ!」 | ||
| 令子 | 「ふ〜ん、そういうことか。 しょ〜がないわね〜 | |
| 横島クンたちが出社してきたら、病院に連れていくしかないわね〜」 | ||
| タマモ | 「えっ? 病院に行くのっ? なにか、薬とかはないのっ?」 | |
| 令子 | 「人間の薬ならあるけどね… あんたの本体はキツネだから、獣医に診てもらったほうがいいのよ。 | |
| 『倍櫓』は、強心剤みたいなもんだから、これには効きそうも無いしね。」 | ||
| タマモ | 「病院なんて、行きたくないなぁ〜…」 ポリポリポリ… | |
| シロ | 「へへ〜んだっ。 ぶっとい注射を打たれればいいんでござるよっ!」 | |
| 山村動物病院… | ||
| 獣医 | 「よし、次っ!」 | |
| 看護婦 | 「はい、次の方、診察室へどうぞ。」 | |
| 香山夏子 | 「先生っ! シロがっ! シロがぁ〜っ! うぇ〜〜〜んっ!」 | |
| 香山シロ | 「くぅ〜〜ん…」 | |
| 氷雅 | 「あまり心配しなくても大丈夫ですわ。 ちょっと足をくじいただけみたいですから。」 | |
| 獣医 | 「なるほど、足が変な方を向いているな… レントゲンで骨の状態を見てみよう。」 | |
| どうやら足を怪我してしまった、ピレネー犬の香山シロ。 | ||
| 飼い主の香山夏子と一緒に来ていたのは、同級生の伊能せいこうと、 | ||
| 彼の専属乱破、氷雅と妖岩姉弟… | ||
| しばらくして… | ||
| 獣医 | 「どうやら、脱臼しただけのようだね。 骨は折れていないから、治りは早い。」 | |
| 伊能 | 「そうですか。 よかったね、香山。」 | |
| 香山 | 「うん…。 (ぐすん…)」 | |
| 獣医 | 「それにしても… どうやったら、こんなに不思議な脱臼の仕方をするかなぁ〜 | |
| いままで、見たことも無いような方向に、ずれていたからなぁ〜」 | ||
| 氷雅 | 「あら、どうしてでしょうかしら。 おほほほほほほ…」 | |
| 伊能 | (こいつだ… こいつが何か、シロに忍術をし込もうとしたに違いない…) | |
| 妖岩 | 「………」 | |
| 獣医 | 「よしっ。 これで、もう大丈夫だ。 | |
| このまま歩いて帰っていい。 まだ腫れはあるから、長距離はムリだが。」 | ||
| 香山 | 「ありがとうございます。 先生。」 | |
| 獣医 | 「はっはっは。 これが、私の仕事だからねっ!」 | |
| 山村動物病院から外に出る香山たち… | ||
| ちょうどそのときやってきた、美神事務所の5人。 ばったりっ! | ||
| 氷雅 | 「えっ!?」 | |
| 横島 | 「んっ?」 | |
| 氷雅 | 「あ、あなたはっ!! わたくし…、あなたの顔… よ〜〜く覚えてましてよっ! | |
| よくも、よくも、わたくしの邪魔をしてくれましたわねっ!」 | ||
| 横島 | 「あ、あんた、GS資格試験のときの、俺の相手…」 | |
| 氷雅 | 「そうですわよっ! わたくし、あなたの卑劣な戦いかたのせいで、 | |
| 貴重な青春のひとときを、だいなしにされたのですわっ!」 | ||
| 横島 | 「卑劣って… あんたが秘孔を突かなければ、俺、ギブアップしてたのに…」 | |
| 氷雅 | 「おだまりっ! あなたのせいで、GS資格が取れなかったばっかりに、 | |
| どれだけみじめな思いをしてきたことかっ! | ||
| あれから3ヶ月、郷里の父の元で、とても厳しい修行をさせられたのですっ!」 | ||
| 横島 | 「負けたんだから、しょうがないと思うけど…」 | |
| 氷雅 | 「いちいち、言い返さないでもらえますっ!? え〜い、腹のたつっ! | |
| そうですわね… このさい、ここであのときの借りを返させていただきましょうか…?」 | ||
| ぐいっ! 横島の胸倉を掴む氷雅っ! | ||
| 氷雅 | 「忍犬シロっ! さっき教えた、『各個撃破の術』を使うのよっ!」 | |
| カプッ! カプッ! | ||
| 氷雅 | 「わっ!?」 | |
| 横島 | 「やめろっ、シロっ!」 | |
| 香山 | 「やめてっ、シロっ!」 | |
| 氷雅の足首に噛み付いた、香山シロと、 | ||
| 氷雅の手首に噛み付いた、犬塚シロ…。 | ||
| シロ | 「ふぇんふぇ〜ひ、へはひはふひょ〜へほはふっ! (先生に、手出しは無用でござるっ!)」 | |
| 横島 | 「シロっ! もういいから、噛むのをやめろっ!」 | |
| 氷雅 | 「くっ…! よくも、わたくしに噛み付きましたわねっ!? | |
| そ〜ですわね…。 あなた、慰謝料を払っていただきましょうかっ!」 | ||
| 横島 | 「うっ…。 こんどは、ゆすりかっ?」 | |
| ズイっ! あきれて眺めていた令子が、いきなり顔を出す。 | ||
| 令子 | 「ほぉ〜〜? うちの丁稚から、金を巻き上げようってゆ〜気っ?」 | |
| ズゴゴゴゴゴォ〜〜ッ! | ||
| 氷雅 | 「うっ…!」 | |
| (ま、まずい… この女、出来るわっ! これに逆らったら、半殺しにされる… | ||
| 全治3ヶ月 → 父上にバレたらさらに修行を3ヶ月 → 青春の無駄遣い | ||
| うぅ… それだけは、さけなければ…) | ||
| 氷雅 | 「おほほほほ… いやですわ、おねえさま。 なんのことですかしら〜? | |
| シロちゃん、怪我が治ってよかったですわね。 さっ、若、帰りますわよっ?」 | ||
| 適当にごまかして、この場を去ることにした氷雅… | ||
| 伊能 | 「すみません、すみません。」 ペコペコ… | |
| キヌ | 「こちらこそ、すみません。」 ペコペコ… | |
| 妖岩 | 「………」 ポタポタ… | |
| タマモ | 「………」 ポリポリ… | |
| ようやく、動物病院の中に入った美神たち… | ||
| 看護婦 | 「先生…、次の患者さんなんですが…」 | |
| 獣医 | 「ん? どうかしたのか?」 | |
| 看護婦 | 「その…、動物を連れてらっしゃらないんですけど…」 | |
| 獣医 | 「ふむ…、連れ出せないほどひどいのか…? とりあえず、診察室に入ってもらいなさい。」 | |
| 看護婦 | 「はい。 それでは、こちらへどうぞ。」 | |
| 診察室に入ってきた美神たち | ||
| 獣医 | 「おおっ、なんだ、君かっ! 私の愛のこもった予防注射から、逃げまわった人狼の女の子だねっ!? | |
| 先生は、君がどんなにヒドイ病気になっても、絶対に救ってみせるよっ! | ||
| ボクは、そのために獣医になったのだからねっ! ふはははははは…」 ズゴゴゴ〜 | ||
| シロ | 「うっ… おっかないでござる…」 | |
| ぴゅぅ〜 獣医の勢いに押されて、横島の後ろに隠れるシロ | ||
| 横島 | 「あの…、先生。 今日は、こいつじゃなくて、タマモの方なんです。」 | |
| 獣医 | 「ん? こちらの女の子も、人狼なのか?」 | |
| タマモ | 「人狼ですってっ!? こんなバカ犬と一緒にしないでよっ!」 ポリポリポリ… | |
| 令子 | 「タマモっ! ぶつぶつ言ってないで、早く変化を解きなさいっ。」 | |
| タマモ | 「は〜い。」 | |
| ぽんっ! 変化を解いて、キツネ姿になったタマモ | ||
| 獣医 | 「なっ…!?」 | |
| ……… | ||
| 獣医 | 「よし、診察だっ!」 | |
| 看護婦 | 「せ、先生…、タフですね…」 | |
| 獣医 | 「ふむ、なかなか見事なシッポを持っているキツネだね。 | |
| 私の見たところ、このキツネは天然記念物でもおかしくないほどの貴重な種族のよ〜だね。」 | ||
| 看護婦 | 「天然記念物とかそ〜ゆ〜問題でしょ〜か…?」 | |
| 横島 | 「妖狐です。」 (汗) | |
| 獣医 | 「貴重なキツネが病気に冒されるのを、みすごすわけにはいかんっ! | |
| 美しいキツネ!! 愛らしいキツネ!! | ||
| りこうでかしこく、少しだけワガママな人間の友!! | ||
| それを守れなくて何の獣医かっ!? な――お――す――ぞ――!!」 | ||
| ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ〜〜〜〜 | ||
| ズザザ…… 引き気味の令子たち… | ||
| 獣医 | 「で、どこが悪いのかね?」 | |
| 令子たち | 「うっ…」 | |
| タマモの症状や感染した理由とかを、令子から問診する獣医。 | ||
| 獣医 | 「なるほど…。 右足だけに発疹が出ているのか。 どれどれ?」 | |
| タマモ | 『ハウッ!?』 | |
| 獣医に傷口をさわられて痛がるタマモ。 でも、涙目ながらに耐えている… | ||
| 獣医 | 「うん、これは典型的な感染症の皮膚病だな。 症状は軽いから、すぐに治る。 | |
| 早速、治療することにしよう。 君、バリカンを頼む。」 | ||
| 看護婦 | 「はい、先生。」 | |
| 横島 | 「美神さん…、なんで、バリカンなんかを…?」 | |
| 令子 | 「だって、皮膚病の治療をするのよ? 体毛が邪魔になるでしょ?」 | |
| キヌ | 「えっ? タマモちゃん、毛をそられるんですか?」 | |
| 令子 | 「………、しかたないでしょ?」 | |
| ヴィ〜〜ンッ! 電動バリカンのスイッチが入れられる… | ||
| タマモ | 『じょっ、冗談じゃないわよ〜〜〜っ!!』 | |
| ぽんっ! いきなり人間形態に変化して、逃げ出そうとするタマモっ! でも… | ||
| バシュッ!! シュゥ〜〜〜… | ||
| 令子に封魔札を貼られて、ふたたびキツネ形態に戻されてしまう… | ||
| 令子 | 「タマモっ! 世話焼かすんじゃないわよっ! あんたのためなのよっ!?」 | |
| タマモ | 「キュ〜〜…」 | |
| キヌ | 「あああ… タマモちゃん、かわいそう…」 | |
| 横島 | 「でも、こればっかりはなぁ〜…」 | |
| シロ | 「拙者…、事務所に帰ったら、タマモを慰めるでござるよ…」 | |
| ジョリジョリジョリ…、ジョリジョリジョリ… | ||
| お札で動けなくなったタマモ…。 彼女の体毛は、獣医によって容赦なく刈られていく… | ||
| 看護婦 | 「先生、どのあたりまで刈りますか?」 | |
| 獣医 | 「症状が出ているのは右足だけだが、左足に感染しててもおかしくないな… | |
| よしっ、下半身を全部だっ!」 | ||
| ギロリンッ! 涙目でシロを睨み付けるタマモ… | ||
| シロ | 「そ、そんなに怖い目で、拙者をにらまないで欲しいでござる…」 (汗) | |
| どよよ〜ん… 体毛を刈り終えて、つるっつるになってしまったタマモの下半身… | ||
| ああ、恥ずかしい… | ||
| 獣医 | 「それじゃあ、彼女に薬を塗ってくれたまえ。」 | |
| 看護婦 | 「わかりました、先生。」 | |
| ぺたぺたぺた… 皮膚病の塗り薬をタマモの下半身全体に塗り付ける看護婦… | ||
| タマモも、もう開き直って、看護婦のなされるがままに… | ||
| 獣医 | 「さて…、次は君だな。」 | |
| シロ | 「えっ? 次って…?」 | |
| 獣医 | 「うん。 人狼の君のことだ。」 | |
| シロ | 「えっ!? せっ、拙者、どこも悪くないでござるよっ!?」 | |
| 獣医 | 「でも、美神さんの話では、どうやら君が感染源なんだろ? | |
| 症状は出ていなくても、君も治療しておかないと、またキツネの彼女にうつしてしまうからね。」 | ||
| シロ | 「拙者、イヤでござる〜〜〜っ!!」 | |
| やっぱり、逃げようとするシロ。 でも… | ||
| シロ | 「うぎゃんっ!?」 | |
| パシッ! ぐるぐるりんっ! | ||
| 令子と横島によって、呪縛ロープで拘束されてしまう… | ||
| キヌ | 「あああ…」 | |
| シロ | 「先生〜、ひどいでござるぅ〜〜!!」 | |
| 横島 | 「シロ、すまんが、ここでおまえと鬼ごっこするつもりはないんでな…」 | |
| 令子 | 「タマモも、我慢したのよ? あんたも、同じ目に遭ったほうが、気をつかわなくて済むでしょ?」 | |
| シロ | 「拙者、タマモに気をつかってもいいから、毛をそられたくないでござるぅ〜〜〜っ!!」 | |
| ジョリジョリジョリ…、ジョリジョリジョリ… | ||
| タマモ | 『ふんっ!』 | |
| シロ | 『うぐぅ…!』 | |
| ふてくされる二匹… | ||
| キヌ | 「あの、先生…。 どうして、タマモちゃんだけ発症したんでしょうか…?」 | |
| 獣医 | 「体質の違いが大きいせいだとは思うんだが…。 | |
| 皮膚の強さの影響もあるかもしれない。 | ||
| よし、彼女の皮膚の状態を、拡大鏡で覗いてみよう。」 | ||
| そりたてのシロの太ももを、拡大鏡で眺めている獣医… | ||
| 獣医 | 「おおっ!! そうか、そういうことだったのかっ!!」 | |
| 横島 | 「先生。 こいつに、なにか特別なことでもあったんスか?」 | |
| 獣医 | 「うむ。 彼女の足は、数層におよぶ垢でおおわれているっ!」 | |
| 横島 | 「垢……っスか…?」 | |
| 獣医 | 「そのとおりっ! これだけ垢がこびりついていると、さすがのバイ菌も皮膚まで届かないようだ。 | |
| これは見事な、自己防衛システムだねっ! ははははは…」 | ||
| 横島 | 「わ、笑い事なんスか…」 | |
| 令子 | 「おキヌちゃん…、シロって、ちゃんとお風呂に入ってるの…?」 | |
| キヌ | 「あの…、その…、ちゃんと入っているはずなんですけど…」 | |
| 横島 | 「シロのこったっ。 ど〜せ、水浴び程度で、すましてるんじゃね〜の…?」 | |
| じとぉ〜〜〜… | ||
| シロに対する視線が、やたらと冷たくなっていく… | ||
| シロ | 『うう… なんだか、とってもまずいでござる…』 | |
| タマモ | 『このバカ犬が…』 | |
| ジャブジャブジャブ… | ||
| 薬を塗る前に、犬用浴槽に入れられて、身体を洗われているシロ… | ||
| 獣医の指摘通り、シャンプーの泡が茶色に変色して流れ落ちている… | ||
| 獣医 | 「う〜ん、野良犬ならわかるんだけど、飼い犬でここまで汚れているのは珍しいな…」 | |
| 令子 | 「うっ…。 おキヌちゃん…。 これからは、シロと一緒にお風呂に入るのよっ!? | |
| こんなことで、こんなに恥ずかしい思いをするなんて、想像もしなかったわっ!?」 | ||
| キヌ | 「そ…、そうですね…。」 | |
| シロ | 『拙者…、無事に帰れるんでござろうか…?』 (汗) | |
| シロの心配をよそに、二匹の治療は終了してしまう… | ||
| 獣医 | 「これで、もう大丈夫だ。 2、3日、家で薬を塗り続ければ治るだろう。 | |
| でも、体毛が生え揃うまでは、汚れたところには連れて行かないように。」 | ||
| キヌ | 「先生。 この二人は、人間形態に戻っても大丈夫なんでしょうか?」 | |
| 獣医 | 「えっ? あっ、そうか。 そんなこと、考えたこともなかったな。 | |
| う〜ん、人間形態だと、服を着ることになるのか…。 | ||
| よく消毒した服だったら、いいだろう。 汚れた服は、着せてはダメだよ。」 | ||
| 令子 | 「しかたないわね…。 帰りに、こいつらの服を買って帰るか。 | |
| それまでは、その格好でいるのよっ!」 | ||
| タマモ | 『………』 ムッス〜〜〜 | |
| シロ | 『………』 (汗) | |
| 事務所に戻ってきた5人… | ||
| ぽんっ! ぽんっ! ようやく人間形態に戻った二人。 | ||
| 買ってきたばかりのお揃いのジャージを着ることに… | ||
| 横島 | 「あれ? シロ…、おまえの髪の毛…」 | |
| シロ | 「うう… 体毛を刈られたせいでござる…」 | |
| おしりのとこまであったシロの長い髪の毛は、今は肩口までしかなかった…。 | ||
| 横島 | 「ってことは…、タマモも…? うっ…! ぷぷっ!」 | |
| キヌ | 「よ、横島さんっ! 笑ったら、タマモちゃんがかわいそうですっ!」 | |
| 令子 | 「でも、笑えるわよね〜! あははははっ!」 | |
| キヌ | 「あああ…、美神さんまで…」 | |
| タマモの後頭部は、束ねられた九尾のまわりが刈り上げられた状態に… | ||
| ちょうど清国の辮髪(べんぱつ)みたいな感じ… | ||
| タマモ | 「えっ!? なっ、なによっ、これ〜〜〜っ!!」 | |
| カァ〜〜〜ッ! 自分の髪の毛の状態に気づいて、顔を真っ赤に染めるタマモ… | ||
| ビュォンッ! 慌てて変化をやり直す。 | ||
| シロ | 「えっ? タマモの髪が、前と同じに戻ってるっ?」 | |
| タマモ | 「ふんっ! 私なら、これぐらいの修正なんて簡単よっ!」 | |
| シロ | 「うう… タマモがうらやましいでござる…」 | |