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00/ 3/13 ラブヒナタ第1回 男には向かない職業

 他にすることはないのですか?(軍師風挨拶)

 というか、ゲ−ム世代のワタシとしては、やはり「織田信長」と言えばそのまま光栄の名作ゲーム「信長の野望」に連想のリレーションが繋がっているんですよ。
 で、このゲームに代表される昔の光栄の国盗りゲームには伝統的に兵士を鍛えて練度を上げる「訓練」コマンドがあったのですが、このコマンドは実際問題として実行しても兵力がちょっと上がる程度の効果しかなく、要は1ターンを無駄に過ごすに等しい行為なのです。なので、コマンドを実行しようとすると軍師とかから「他にすることはないのですか?」とわざわざ確認を求めて来るんですよ。 諸葛孔明から竹中半兵衛まで、歴史上の名だたる軍師が揃いも揃って「他にすることはないのですか?」とわざわざ聞いて来るんですよ? このオレに! バーチャル一国の主であるこのオレに!
 アンタちょっと、兵士鍛えないとこのゲームはバトルで負けるっての! そんな事言うんだったら、最初からこんなコマンド作るなっての! ムキャー!

 ……これで、少しは戦国時代マンガファンサイトっぽい雰囲気になったでしょうか?(なりません)
 こちらは、椎名高志ファンホームページ C-WWW です。能力値は気合で目押し。


 そんなこんなで、ハデに生きるぜ戦国乱世マンガ「MISTER ジパング」も連載第二週目に突入しましたが、今のところは毎回毎回ホントに楽しく読ませて頂いております。
 私が見た範囲ではネット上での評判も上々であり、特に普段はマンガに対して容赦ない意見がガンガン流れるような匿名掲示板でも好意的な意見が多いのには、個人的にはビックリしています。現段階で好意的な意見が沢山出ているってのは、即ち作者・椎名高志氏をマンガ家として高く評価しているが故に読者が期待している、という事の現れだと思いますが、こういうのを実際に見ると「GS美神」や「椎名百貨店」で長年培ってきた信頼と実績はダテじゃなかったんだよな、と感心しきりです。
 むしろ、この作品に対して懸念を表している読者の意見が読めるのは、このサイト近辺(チャットとか)だけ! といった感じがしないでもありませんが。みんな、過去の遺恨はそろそろ忘れて、もっと素直にマンガ読もうぜ!

 それで、この前サンデーに掲載された第2話には、期待の萌えキャラ・ヒナタなる人物が登場しました。
 このキャラ、見てくれからして「巫女装束+ショートカット、オプションとしてポニーテールを装備」という、なんつうかこう我々の嗜好を知り抜いた者だけが選択できる絶妙なコスチュームを標準装備している上、顔のテクスチャ(まだ言うか)が椎名マンガの数少ない「活発で利発な女の子」系を象徴する小田切あゆみ@ポケットナイト系なものであったため、その筋では早くも人気が出そうな雰囲気です。

 ですので、今回は、この期待の新人・ヒナタことヒナたん(愛称)に関して、ねちっこく考察してみることにしました。

ヒナタ登場記念・ヒナタ考察企画
ラブヒナタ(←タイトル)

第1回 「渡り巫女」・男には向かない職業(巫女だから)

 「仕事熱心なご婦人は美しいねぇ」と、今は亡きルパン三世がカリオストロ公国で申しておりましたが、特にマンガのような虚構の世界においては、女性キャラの「職業」はそのキャラを把握する上で極めて重要な要素であります。
 「女学生」「団地妻」「女教師」「美人秘書」等、職業からそのキャラクターのイメージが沸いて出てくる例は沢山ありますが、虚構世界における職業とは元々コンセプチュアルな要素を内包しているものなのです。

 即ち、個々の職業にはそれぞれステレオタイプと呼ばれる「該当する職業が持つイメージ」というものがあり、その職業に就いているキャラは必然的にステレオタイプな要素を持ち合わせている、というケースが多いです。
 上で出した職業の例でも、「女学生=エロい」「団地妻=エロい」「女教師=エロい」「美人秘書=エロい」と、それぞれ固有のステレオタイプを持っていることがよく判りますね。ウソです。全然判りません。


 前置きはこのくらいにして本題に入りますが、まず彼女の職業は「渡り巫女」という事になっております。
 「渡り巫女」は、一般的には「歩き巫女」と呼ばれるのが普通で、(マンガの中でも解説されていますが)特定の神社に属さずに諸国を巡って歩く巫女のことを指します。古くから実在した職業の様で、「歩き巫女」は平安末期の歌集『梁塵秘抄』にも出てきます。歴史的に一番有名な「歩き巫女」は、歌舞伎の起源と言われる江戸時代初期の日本舞踏の始祖・出雲のお国でしょうか。

 で、この「渡り巫女」(歩き巫女)の設定から、ヒナタというキャラは以下の特徴を持っていることが判ります:

放浪

 元々特定の拠点を持たないで各地を放浪する「渡り巫女」は、日本の何処にいてもおかしくない、という事を意味しております。今後このマンガがどんな展開を辿るのかは謎なのですが、仮に舞台がどこに移ろうとも、「渡り巫女」である彼女はその舞台に移動して活躍させる事が可能となります。

 このマンガの事実上の主人公である(と思われる)日吉も、既に第一話で『家族を失って帰るところがない』という設定になっており、おそらく今後しばらくは尾張各地を放浪して商売する(で、トラブルに巻き込まれて信長が介入する)行動を取るのではないか、と思われます。ヒナタはそんな日吉と行動を共にするには最適なキャラですね。
 というか、今のところは、他に日吉の相方になれそうなキャラはいないでしょう。この二人がコンビを組む可能性は、十分に考えられます。

忍者

 時は既に戦国時代であり、そんな時代には忍者に代表される諜報機関は必須の存在です。何処にいてもおかしくないという「渡り巫女」の設定は、裏を返せば情報収集するための変装として最適である、という事が言えます。史実でも武田信玄の下には(歩き巫女を含めた)優秀な忍者軍団がおり、信玄の偉業の裏には彼らの功績があった、と伝えられています。デキる武将は、友達に差を付けるため、みんなコッソリ忍者を使っていたのです。
 今回、ヒナタはその「武田信玄の忍者組織を抜けたことになっちゃった忍者」だという事が明らかにされましたが、少なくともここしばらくは、彼女とその姉を巡るドタバタが物語の中心になることは間違いないでしょう。

 まぁ、それより何より「忍者」というのはマンガの世界ではお馴染みのキャラであり、そのキャラが「忍者」であるというだけで超人的な体術をいくら披露しても矛盾が発生しない、という事になっております。例えば、ARMSに出てくる涼の父親なんか、なに、忍術を少々…」とか言ってるだけなのにも関わらず、ニューヨークのハーレムに巣くったマフィア組織を壊滅させちゃうくらいの実力を持っているのです。それくらい、マンガの世界での忍術はスゴイのです。
 ですので、あのヒナタも、忍者である以上はなんか凄い技の一つや二つは持っているに違いありません。小田切あゆみみたいなかわいい顔して、実は彼女は凄いテクニシャンですよ! ビバ忍術! ヤフー!

 あと、今週出てきた新キャラ・滝川一益も、元々は甲賀出身の忍者であったという設定になっています(史実もそうだったらしい)。彼くらいのレベルだったら、おそらくマンガに出てくる忍者なら誰でも持ってる究極の超必殺技・ダイナマイトいずな落としを「ワシの勝ちじゃあ〜〜」と叫びながら繰り出すくらいのことはできるはずです。いや、できなければなりません。
 つうか、イズナ落としの一つや二つくらいできないと、マンガの世界じゃ忍者とは言えねぇ! やれ!(無茶)

妄想誘発

 上記の二つはどっちかと言えばマンガの構成要素としての設定面において重要なのですが、さらにもう一つ読者の妄想面を満たさなければ、真の少年マンガとは呼べません。少年マンガ的な妄想の代表格と言えば、これはもう「エロ妄想」で決まりですね。エロ。

 幸いにして、前述の「渡り巫女」には、金のために夜のお相手をする遊女的な要素も内包されているって事になっているので、とりあえずこの設定だけでも男子読者の妄想を刺激するには十分でしょう。「実際にヒナタがそういう事をするのかどうか?」は、もはや我々の妄想の前では大した問題でないのであります。現実と妄想の区別がキチンと付けられる我々だからこそ、我々は妄想の中で真の自由を得られるのであります!

 今週の話の中には、ヒナタが日吉を人がいない古びた神社に連れ込むというシチュエーションがありましたが、ここを読んだ純で多感な男子読者はンもうドッキドキ! であり、何も知らない日吉をヒナタが手取り足取り! 大丈夫、何も怖いことなんてないワ! お姉さんが教えてアゲル! って妄想がモリモリ浮かんでいたに違いないのです。
 この辺の演出の巧さは以前「GS美神」で小鳩やルシオラが出てきた時とかにも垣間見せていましたが、まだまだこのセンスは健在だと思いましたね。

 ただ、エロっぽい要素で「GS美神」と大きく違うのが、主人公であるところの日吉にそのケがまったく見られない点です。
 これが前作の「GS美神」の横島だったら、「暗闇でねーちゃんと二人きり!」という台詞の一つ二つが出てきて次のコマでねーちゃんに飛びかかってカウンターパンチを食らってギャフン、というお約束の展開が繰り広げられていたのは間違いないのですが、この辺の違いが日吉と横島のキャラクター性の相違なのでしょう。
 日吉は、まだこの戦国時代を生き残ることで精一杯な状態なのです。

 あともう一つヒナタの妄想誘発関係での強み(やな強みだな)を上げるとすると、彼女は歴史に縛られないまったくのオリジナルキャラであるが故に、人間関係面でのしがらみがほとんど皆無であるという事でしょうか。つまり、今後彼女がどんな行動をして、誰とどんな関係になるのかという事を、読者が(あるいは作者も)想像して楽しむ余地が与えられているのです。
 「MISTERジパング」は登場人物のほとんどが歴史上に登場するキャラであるので、人間関係は当然の事ながら歴史上のソレを意識せざるを得ず、そのために「キャラの将来」を想像する余地があまり与えられていない、という欠点があるのですが、ヒナタはこの拘束から逃れることができる、今のところ唯一のキャラです。私がヒナタに一番期待しているのも、実はこの「想像する余地をこちらに与えてくれる」要素だったりします。

 ラブコメ要素の観点では、第1話に出てきた帰蝶姫も重要と言えば重要ですが、彼女の場合は「信長に対する心情の変化」の過程を描写するのがメインになるでしょう。これも「MISTERジパング」の話の軸の一つになる事は間違いないですね。
 一応信長の対抗馬として明智光秀が用意されてはいますが、彼はもうフラレるのか決定しているので、妄想する余地は少なそうです。残念だったな、明智君。また会おう。フハハハ(明智間違い)。

結論

 と、以上のようにヒナタなる新キャラを分解して見たわけですけど、端的に言えば見てくれから設定に至るまで極めてよくできたキャラだと言うことができます。
 「GS美神」でも、コミックス3巻までに登場したレギュラーキャラの完成度の高さと、そのキャラが活躍するシチュエーションの作成能力には驚愕するべきものがありましたが(基本設定をほとんど変えずに8年間も連載を引っ張ってこられたのは、レギュラーキャラの設定がしっかりしていた点が大きい)、今回の「MISTERジパング」でも、少なくとも序盤の2〜30話くらいまでは、大まかな話の流れと、その話のシチュエーションにマッチしたキャラクターは事前段階で作り上げているはずです。当分の間は、今の面白さのクオリティは保てると思って間違いないでしょう。

 だからこそ! 故にこの大老知久! 大安心で悠々と、この「MISTERジパング」を見守るものなり!
 と、突然「覚悟のススメ」チックにまとめてみたがどうか。他にすることはないのですか? エロ。

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