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00/ 4/12 ラブヒナタ第2回 ラブバトル

 添い寝巫女!(挨拶)

 週刊少年サンデーでの「MISTER ジパング」の連載も第6回を越え、そろそろ読む方もマンガが頭に馴染んできた頃だとは思いますが、あなたの頭の中では、このマンガのキャラの台詞を喋る声優の配役は既にお済みでしょうか?

 私の場合、ヒナタ=丹下桜、ヒカゲ=「おジャ魔女どれみ」にたまに出て来てバンダイ開発のオモチャをどれみ達に押しつける魔女界の女王様(キャスト不明)までは確定しているのですが、肝心の男性キャラ陣はどうもまだキャストが決定していません。
 というか、私は基本的に「ドラえもん」を観て育った世代なためか、どうも少年が主人公の声のマンガを読む場合は、脳内では自動的にのび太の声が割り振られている様なのですよ。幼少期のすり込み効果恐るべしです。

 日吉がのび太の声になってしまっている以上、信長の声は必然的にジャイアンの声になってしまう訳であり、その結果として織田家の跡取り息子にして戦国の覇王・信長さまも、オレの頭の中では途端に乾物屋の跡取り息子・近所ガキ大将に降格してしまいます。オレの脳内の状況はまったく予断を許しません。どうにかして下さい(オレを)。ど、ドラえも〜ん!


 それで連載の方の「MISTER ジパング」ですが、「結局、『眠る忍者』って誰の事だったのかなぁ! ヒカゲは別に忍者って訳じゃねぇしなぁ!」という大いなる謎を一部読者に残したままファーストエピソード『眠る忍者』編が終了し、19号より次のエピソードである『蜂須賀村の決闘』編が始まりました。
 今回新登場したキャラは、蜂須賀小六正勝。後に秀吉に力を貸し、天下統一に大きく寄与したことで有名な人です。彼と秀吉が始めて出会ったとされる矢作橋のエピソード(要約:橋で寝ていた日吉の頭を小六が蹴飛ばしたためケンカになったが、最後には「へっ、いいパンチしてるじゃねぇか…」「ふっ、貴様もな…」系の男の友情が芽生え、二人はマブダチになって一件落着)はその筋では有名ですが、今回の『蜂須賀村の決闘』もそれをモチーフにした形を取っている様です。
 小六は、史実では信長の美濃攻略戦の時に秀吉の手下となって数々の勲功を揚げ、その後も秀吉の天下統一を知謀で支えたと伝えられる重要人物であり、秀吉(日吉)が主人公であるこのマンガにおいては、ある意味他の信長配下のキャラ(一益や犬千代など)よりも遙かに重要度が高いキャラであると言えます。

 更に、『眠る忍者』編で登場した石川五右衛門とは違い、小六の場合は少年時代から秀吉と交友があったのが歴史上の事実であることがハッキリしている、というキャラ特性もあります。秀吉と小六の活躍を描いた歴史小説も数多く存在しているため、歴史マニアな方の間では、小六のキャラクター像は既に固まっているのではないかと思います(乱暴粗野な野武士、のイメージが強いそうな)。
 勿論、逆に言えば、既にイメージが固まっているキャラをどう料理するか? というのはパロディ作家としての作者の腕の見せ所の一つである、とも言える訳ですけどね。とりあえず、今の段階では「ツラは怖いけど、案外いい奴」っぽくまとめて来そうな感じはしますが、これからどうなるか見物です。

 『眠る忍者』編の終盤のヒカゲの台詞により、このマンガは「日吉が天下を統一して『日本の王』になる器の人物であることを示す」ことがテーマとして提示されましたが、今回の蜂須賀編は「日吉が『日本の王』になるための掛け替えのない仲間を得る」という意味において、とても重要なエピソードになる事は確実です。この二人がマンガの中でどう関わって親好を深めていくのか、注目して行きたい所存です。

 以上、とりあえずファンページらしい意見を出して義務を果たしたので、後は好き勝手な事書かせて頂きます。
 今回のテーマは添い寝巫女について(結局)。

ヒナタ考察企画第二段
ラブヒナタ(←タイトル)

第2回 ラブバトル――私の世界、夢と恋と不安でできてる(歌:坂本真綾)

 という訳で今週号のヒナたん(声:丹下桜)なのですが、既にここのサイトのシャウト系感想掲示板「妙神山・裏門」で騒がれているように、冒頭からいきなり日吉(声:小原乃梨子)に添い寝→起きた彼氏に「おはよ、ヒヨシ!」→「えへへ……寝顔見ながら考えごとしてたから……」っていう、なんかこうギャルゲーみたいなベッタベタに甘い台詞を言い出す萌えコンボをいきなり炸裂させたことにより、俄然萌え筋方面で注目を集めるキャラとなりました。
 つうか、丹下桜ヴォイスによる「えへへ」はかなり強力ですよ! みんなにも、オレの頭の中の丹下桜えへへヴォイスを聴かせてやりてぇぐらいですよ! えへへ! えへへ!(←重症っぷりをアピール)

 とは言うものの、そうそう単純に喜んでいる訳にも参りません。
 確かに、彼女は前回のエピソードでは結果的に日吉に命を救われた形になり、ヒナタを助けた日吉の男っぷりに感服した姉のヒカゲが妹を彼に託した、という事になっています。しかし、それ以外でのヒナタと日吉の関わりと言えば、せいぜい一緒にお茶飲んで神社で手紙読んでもらった程度であり、ギャルゲー的恋愛観ではせいぜい「フラグが1つ立った程度」の関係に過ぎない筈です。
 即ち、デートに誘えば一応オッケーはしてくれるけど、まだ「こいつは本当はどんな奴なのか?」「果たして相手はどのくらいこちらに好意を持っているのか?」と逢ってる間にお互いがお互いの腹を探り合う程度の関係ですね。この段階は、男女交際において一番スリリングかつシビアなプレイを要求される時期であり、「恋人同士が仲良さそうに語らっている」ように見えても、その裏では真剣勝負の鍔迫り合いにも似た激しいラブバトルが展開されるはずなのです。

 しかし、冒頭の彼女の台詞は、そのシビアな真剣勝負に勝利したものだけが甘受できるはずの「恋愛・友好度ゲージMAX」状態でないと出てこない類のものである事は明白であり、今の段階のフラグ状態から判断するに、ヒナタはあまりにも日吉に対するガードが緩すぎると判断されても致し方がありません。まさに今のヒナタは「ボディがガラ空きだぜ!」なのです。文字通り。
 果たしてこれは一体、何を意味するのでありましょうか? 我らがヒナたんに何が起こったのでしょうか? まさか、姉のヒカゲに裏からコナミコマンド(専門用語)を入力され、好感度パラメータがいきなりMAXになってしまったのではないのでしょうか? いかな妹の身体を誰かに庇護して貰わないといけないとは言え、いきなり妹をクラックするとは、なかなかやりますな姉さん! つうか、ヒカゲならそれくらいやりかねないのが怖いけどな!


 と、ギャルゲー的観点から見れば謎が多い今回のヒナタの萌えコンボ行動ですが、実は少年マンガ的な観点からこの事象を考えることにより、問題はあっけなく氷解します。

 「ヒナタは男性読者向けサービス要員である

 つまり、あのヒナタの萌え萌えな行動は、作者の側が「君達、こういうのが好きなんだろ? かわいい女の子に『オ・ハ・ヨ!』とか言ってもらいたいんだろ? ン?」とか何とか言いながらコンテ描いて作り上げたものに違いないのであり(妄想)、我々男性読者と致しましては、「ああそうさ! オレ達はこういうの好きさ! つうか大好きさ!」と悔しまぎれに叫びながらも、先方の思惑通りに萌えざるを得ない訳なのです。

 また、彼女が妄想誘発要員であることは既に以前ここで指摘した通りですが、今回の甘い展開によって、想像力たくましい読者が「昨夜、日吉達が五右衛門と別れて二人きりになった後、果してこの二人に何があったのか」という方向に妄想を発達させることが可能になった、という効果も期待できるのがポインツです。
 これぞまさに「誰もいない夜の河原で、何も知らない二人が!」系の妄想を抱くのが大好きな人(オレとか)にとっては辛抱たまらない展開であり、ああもうこれはこれで! これはこれで! と息を荒げて叫びたくなってしまう訳であります! やってくれるよなぁ!(注:作者は何もしてません)


 まぁ、それはそれとして、個人的にはここでもう一つ気付いた事があります。それは、「このマンガは、ラブコメ要素はあまり重視されない可能性が高い」という事です。
 前述した通り、今回のヒナタの冒頭での言動は、本来ならば男女が繰り広げる激しいラブグラップルの最果てにあると言い伝えられる涅槃の地にたどり着いた勇者だけが拝むことができるものです。世間一般で言われる「ラブコメマンガ」の大半は「フラグが1個立った状態」から始まり「涅槃の地」に至るまでの過程を辿るものなのですが、今回その「過程」がすっ飛ばされていきなり斯様な状況になってしまった以上、この二人がマンガの中でこの段階以上に関係が進展することは、逆にあまり期待できなくなってしまったような気がします。
 先週までの段階では、「日吉とヒナタのラブコメ的な展開をサイドに挟めつつ展開するのかなぁ」とか思っていたのですが、ここまでの話を読む限りでは、あんまりそういう方面は突っ込まず、あくまで日吉と将来日吉を『日本の王』にする男達との関わり合いを描く方を重視する様ですね。

 ついでにラブ方面で言うと、歴史的にはヒナタは日吉とくっつく展開になることはおそらくありえない、という制約もあります。
 歴史によれば、日吉はマンガの時代(1948年頃)から約12,3年くらい後に「ねね」(おね)という女性と結婚する事になっていますが、この「ねね」は結婚した時の年齢はわずが14歳。「カードキャプターさくら」に換算すると、たったの「木之本さくら+3歳」という若さです(ヤベエ)。
 現段階でヒナタはもう14〜5歳くらいの年齢になっていると見積もれますので、どう考えても「ねね」とは年齢が合いません。つまり、この二人は良い行商コンビにはなれても、人生のパートナーとなることはできない定めなのです。

 更には、前の話で姉のヒカゲが口にした「ヒナタが消える日まで……」という思わせぶりな言葉も気になります。我々椎名高志マンガ読者は、既に一度「女性キャラが本懐を遂げられずに死んでしまう」悲劇をイヤという程見せつけられているだけに、彼女の将来に一抹の懸念を抱かざるを得ない今日この頃です。


 そして、彼女に対する懸念材料はまだあります。
 サンデー19号で木曽の蜂須賀一家と蜂合わせ(シャレ)したヒナタは、日吉に対して「蜂須賀? ……誰? 偉いの?」と聞いておりますが、これは即ち「彼女は木曽周辺の情勢に詳しくない」という事を意味します。前のエピソード『眠る忍者』編では「忍者たちのために仕事はしていた」と語っていたので、それなりの地域状況は知っていてしかるべきだと思うのですが、少なくとも木曽周辺の情報はよく判ってないみたいです。

 先週までの段階では、「ヒナタは渡り巫女で地域情報にも詳しいだろうから(そういう描写あったし)、日吉の行商の道案内みたいなことをするのかも」とか漠然と思っていましたが、どうもこの線での活躍も望み薄みたいです。いくら姉がアレでナニだったからとは言うものの、ホントに武田に雇われていたのでしょうか彼女。雇われて何をしていたのでしょうか彼女。どうでも良い謎が更にどうでも良く深まります。


 ただ、救いは彼女の性格が「極めて活発である」という点でしょうか。19号のエピソードでは、怖いツラした蜂須賀小六に対して「タカられたら大変!」と思い、連中を追い払おうとタンカ切ってましたが(逆効果だったけど)、その辺に彼女の本来の明るい姿を垣間見ることができます。
 この調子でハキハキと明るいアッパー系美少女としてキャラを立てる事に成功すれば、単なる読者サービス要員系萌えキャラ以外の道も開けてくるのはないのでしょうか。

 それに、「テンション高い家出少女」な彼女は、案外「地元のヤンキーだけど根はいい奴」っぽい蜂須賀と相性いいかも知れませんしね。今回の話が終わる頃には、こいつら意気投合してたりしてな(いいかげんな憶測)。

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