MISTER ZIPANGU > REVIEW 'LoveHINATA' > Vol. 10

00/ 7/31 小姓萌え

時空SFへの誘い

質問:
「タイムパトロール警察の取り締まりは厳しいのでしょうか?
 このことを親に話したら、歴史を変えることは違法だと言われたので、あんまり派手なことはできないと思いました。」
答え:
「仮にマシンの搭乗者が歴史を変えたとして、それを誰が判断するのですか?

Yahoo! Auctionsタイムマシン(本物)」Q&A 質問44より


 サンデー35号の「MISTER ジパング」を読んだ時、ふと「タイムマシン(本物)」オークションでのやり取りが脳裏を過ぎったりする今日この頃ではございますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 前回の話で「時空」(=パラレルワールド?)という概念を表に出し、歴史マンガの枠に留まらないストーリー展開をするという意気込みを見せた後、更に今回の話で日吉が早くも銃撃を受けて死んでしまった事により(注:まだ死んでません)、このマンガの「時間SFモノ」っぽい要素が更に強調されて来た感があります。
 我々が良く知っている歴史の世界に、その「歴史」をすべて知っている存在であるヒカゲと、如何なる理由があるかは判りませんがその歴史を改編しようとする天回という二人のキャラが加わっただけで、このマンガは戦国群雄の活躍を描いた「歴史モノ」から、その戦国群雄の活躍した歴史をメタな視点から観察する「時間SFモノ」に一気にジャンルがシフトしました(少なくとも私の中では)。

 時間SFモノの基本は、基本的に『もしも』が許されない歴史において、あえて最小限の歴史の改編――未来を知っている人間が過去へ移動する、その時代にはなかったテクノロジーを持ち込む、など――することによって、読者が「歴史のif」を追求する知的好奇心をかき立てられる点にありますが、今のところこのマンガは十分「時間SF」としての資格を有していると思います。
 連載が始まった時は、作者コメントで「これは歴史物ではなく、歴史パロディーです。人物像も世界観も史実とあまり関係なく、半分以上ウソと冗談で、やりたい放題やるつもりです」とか言っていましたけど、やはり椎名氏は本心では史実をベースにした「正統派SF」をやりたかったのだな、とか思った次第です。
 口では何だかんだ言いながらも、カラダは正直だなぁ!(←語弊のある表現で大変に申し訳ない)

ときめき勝三郎

 あと今回のエピソードでは、単に「SF」的な背景設定が明らかになっただけではなく、日吉を巡る信長配下の人間達の心理描写に焦点が当たっていたのもポイントでしょう。
 特に、これまでの展開では日吉が侍になりたい具体的な動機が語られておらず(というか、単に「侍になりたい」という意識が妄想のように浮かんでいただけ)、その点が日吉というキャラに対する物足りなさに繋がっていた感があるのですが、今後はこの辺にも焦点を合わせて頂きたいな、とか思う次第です。

 そして、特にこの点で俄然注目を集めつつあるのが、池田恒興こと勝三郎の存在です。
 彼の態度からは、「信長が日吉に対して大きな期待を抱いており、日吉もそれに応えられるだけの器量があることを彼は見抜いているにも関わらず、肝心の日吉が信長に仕えるだけの覚悟(=日吉が侍になる)があるのかどうなのかハッキリしない」現在の状況を憂いている様子が伺えます。
 こんな彼の心理状況は、早い話が恋愛マンガにありがちな「尊敬している先輩の恋路を心配している後輩女子」の心理そのものであり、即ち勝三郎は、「あたし、センパイには幸せになってもらいたんです!」と涙ながらに訴えたり、先輩に対して態度をハッキリさせない彼氏に対して「アナタはセンパイのことをどう思っているんですか!」と問い積める、いわゆるお節介後輩女子タイプに属しているキャラである! と言えましょう。 萌え萌えですな!(ヤベエ)

 史実での池田恒興は秀吉の事をそこそこ以上に高く評価していたらしいのですが、このマンガにおける彼は日吉に対してどう接していくのでありましょうか。「信長の幸せが自分の幸せ!」「殿のためなら死ねる!」など、小姓フェロモンを存分にまき散らす発言をしている勝三郎の今後も注目であります。

 つうか、このマンガの男性キャラって、なんかこんなのばっかりなような気がしませんか?

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