戦場の証明(その1)

No.12000/08/04 01:39 中村 守博(task17@mocha.ocn.ne.jp)


 『あなたが戦場で生き残ったと言う事は、誰かの犠牲のお陰です。』

 と、死の香り漂う導入で、こっ〜んばんわっ、申し訳ない(初めに謝っておく)

  さて、『戦場の猿たち』シリーズは、未だ現在進行中なので
 その一部の編を注出して、中身を述べるのは多少冒険だとは思いましたが
 ネット上の約一名が『書いて〜』と言ってくれたので、書きます。

  後のフォロー宜しくね!

  今回のみを見て私が思うには、
 第一に、このシリーズが果たして椎名先生が
 描きたかったジパングの一面か?と言うことです。
 まずは、この辺りから攻めてみましょう。

  まずは、怖いよう〜の意見が多いと思う、戦場(いくさば)の
 シーンですね。 確かに怖いですけども・・・。
 
  その場所でヒヨシは眼を覚ますのですが、そこは
 おそらくは『殿軍』のある『備』から、はぐれた若しくは
 落後した足軽達の末路でしょう。

  信長本隊が多数の伏兵に遭遇して混乱に陥り、各備が各個に
 抵抗した結果、頬に十字傷の格好いいお兄さんが喋った様に
 「乱戦で同士討ちも頻発している状態」になったのでしょう。
 しかし、こうなるともはや両軍共に組織的な戦闘は不能の状態であり
 戦場(いくさば)は、全てが混沌のフィールドに陥ってしまいます。
 つまり、コントロール不能。

  でも、ヒヨシさんとしては万死に一生を得た感じで目覚めた
 と場所と思うのですが、この場合「あの世で目覚めた」方が幸せか
 「この世の地獄で目覚めた」のが幸せか、まだこの編の一部分では
 判断できませんね。

  さて、死屍累々の描写は凄まじいのですが、細かく見ると
 先生自身良くこの時代のことをリサーチされておられると感じました。
 
  まず、その死体の傷を見てみると槍や弓矢が突き刺さっている
 のがほとんどですね。
 これって史実に則って描かれていると思います。
 その頃の『いくさば』での死傷の原因の第一位は『弓矢による刺し傷』
 第二位は『槍で刺されたり、払われたりした時の槍傷』そして第三位は
 驚く無かれ、刀による叩き傷(切傷ではない)そして殿が『刀傷』になります。
 まあ、比率としては、5:3:1.5:0.5 って感じです。

  武士の魂である刀が、この時代どの様にして使われていたかというならば
 大体のところ、『叩くとか刺す』ってのが主流であり、切るって言う
 江戸時代の時代劇に格好良く悪代官と悪商人を成敗する暴れん坊将軍形
 使用法は余りなく、ただ単にその刃で突く叩くってのが実戦形剣術だったそうです。

  理由は、その頬に十次傷の男が言っている事ですが、実態は

  『やはり、怖かった』ってのが本音のようです。
 
 この頃の合戦形態は、まずは弓兵部隊や甲斐武田軍で有名な石つぶて部隊による
 遠距離斉射により敵備を混乱させて、その後にお互いの槍部隊が突き合い
 その後乱戦になって、ようやく刀で叩きまくるって感じで推移しました。
 鉄砲が導入された後もやはり、鉄砲による斉射により敵備を混乱→後同じ
 って感じでした。

  お前織田兵だろう?って、その長槍の兄貴がヒヨシに刀よりも槍か飛び道具を
 選ばせたのは、たとい初心者でも長槍ならば敵兵と距離があるのでビビってしまわない
 って、戦場の勘から言ったと思います。
 その兄貴は結構な当世具足を身につけているので、備の部隊長ぐらいの身分ですね。
 だから、今川隊の追跡兵に遭遇したときに彼らが「『ヨロイ』を身につけている手柄首云々」
 の動機付けから『突き殺せッ!』のプレリュードを奏でながら襲いかかってくるのは
 必然だと思います。

  なんせ、この兄貴が吠えながら『雑兵共』と罵られ四〜五コマで討ち取られていく
 彼らこそ、この様な「手柄首」によって、一気に侍に慣れるチャンスだからです。
 なお雑兵と足軽の意味合いは同じであります。 その事についてちょっと話すと・・
 応仁の乱以降、領主が戦の時に兵の頭数を揃えるために
 農民を軍役として農兵に仕立て上げたってのが原形です。

  その後、農兵の中でも精鋭な人々を常駐的に「自軍」組み入れたものの
 やはり戦をする度にその定員が減る、ンじゃ仕方がないから、広く農村に
 『臨時アルバイト募集・職種・兵隊・待遇委細面談』ってな感じで募集したのです。
 しかし時代が下るにつれ『税が重すぎて離村した人々』や『アウトロー的な人々』も
 その募集に応募して「とりあえず今日のメシ」を確保したい意識もあったようです。

  と言うか、当時は「雑兵足軽」って職種が人気ナンバーワンだったから恐ろしい。
 ニュアンス的には傭兵みたいなもので、手柄を立てれば報奨金が貰えるし
 もしかしたら、侍(武士)になれるチャンスの一番高い職種だったからです。
 で、足軽雑兵から武士に成り上がり(極めて希)○人扶持って言う武士階級に、
 皆必死かというと、実はさにあらず。 その実態は品行方正が甚だ悪く、一度
 その率いる将、若しくは隊長が『負けそうに』なれば、スタコラと三十六計逃げるにしかず
 大勝ちすれば、バトルフィールドの村落に押し入って略奪どころか火は付けるわ、
 倒した敵兵の刀・槍・弓矢・胴丸・等々何もかも引剥がしてしまうわと
 ただの、夜盗か山賊以下の事をしでかす兵隊だったのですな。

  ただ、この前提には「全ての価値観が流動化」して「都の将軍様も公家等々も権威失墜」
 して、権威や階級が崩壊(と言うより御和算のニュアンス)して、
 早い者勝ち、強い者(知も含む)勝ちの、殺伐とした実力主義になり
 いわば、これまで弱い立場だった民衆が『階級的復讐心』も手伝って
 これ以上底の無い世界(階級)から上にのし上がれる下克上を彼らが巧みに利用したと
 見れば分かりやすいと思います。
 
  何故か歴史解説に陥ったので、話を戻します。

  スゲー強いと、ここが新しい安全地帯?と一瞬ホットする
 ヒヨシさんですが、その安全地帯兄貴(命名)は次の瞬間
 名も言う暇もなく流れ弾で即死と言う非命に斃れるのですが
 当に生き馬の目を抜くってこの事を言うんですね。

  更に混乱の様相を見せる安祥方面ですが
 今度は、敵兵が涙を流してヒヨシに助けを乞うところに
 友軍が雪崩れ込み、寄ってたかって串刺しにしたと思えば
 その友軍が次のコマで弓矢で串刺しとなったり
 その放った今川兵はハナからヒヨシには目をくれず
 先ほどの安全地帯兄貴の御首(みしるし)をざっくり
 やったり、もはや『世界は地獄を見た。』では無く
 『ヒヨシが地獄を見た!』って感じで凄まじいですな。
 NHKネタのタイトルで申し訳ない。

  首を捧げ上げて「もーけたぜ―――ぎゃははは!」←イッちゃってる
 と、もはや顔さえ影で隠れた雑兵キャラを見たヒヨシが
 「ケダモノだどいつもコイツも・・・」と、何か頭の中で弾ける寸前まで
 の描写で今週は終わってますが、しかし「エテ公」と罵ったところで
 これが『当時の現実』なのは哀しいです。

  最後の頁のアオリには「怒りが爆発・・・」って書かれていますが
 それでは、ジパングの最初で「エテ公がのさばって云々」「なんとかしやがれ」
 と、道三&信長&光秀に言った台詞が自分に返ってきますし
 困ったものです。

  あと、「戦場は人間をケダモノにする。」って表現がありますが
 この名言を立てかけておきましょう。

 『戦争にはルールらしきものはあるが、戦場にはルールなぞ無い。』

  補足すれば「戦国時代自分ルール」と言う「無秩序」のみが
 支配していたと言えるでしょう。(それがルールと言えるかは別問題としても)

  閑話休題

  と、ここまで長々と戦国風聞を羅列したのは次から述べる文章を理解するための
 予備知識の為です。

   すいません二部に続きます。 

No.22000/08/04 03:20 笹蒲鉾(hayakawa@kamab.net)


〉 ネット上の約一名が『書いて〜』と言ってくれたので、書きます。

〉  後のフォロー宜しくね!

 どうも毎度〜。ここまで気合いを入れた感想を寄せてくださるとは(笑)。
いやはやたいしたものです。

〉  今回のみを見て私が思うには、
〉 第一に、このシリーズが果たして椎名先生が
〉 描きたかったジパングの一面か?と言うことです。

 そうですね、今回はいろんな要素がたくさん入っており、今後への
大きな伏線となるのは必然かもしれませんね。

〉  でも、ヒヨシさんとしては万死に一生を得た感じで目覚めた
〉 と場所と思うのですが、この場合「あの世で目覚めた」方が幸せか
〉 「この世の地獄で目覚めた」のが幸せか、まだこの編の一部分では
〉 判断できませんね。

 ここは信長の言う筋を通して、生きている限り逆転があるとうことで・・・。
 
〉 その頃の『いくさば』での死傷の原因の第一位は『弓矢による刺し傷』
〉 第二位は『槍で刺されたり、払われたりした時の槍傷』そして第三位は
〉 驚く無かれ、刀による叩き傷(切傷ではない)そして殿が『刀傷』になります。
〉 まあ、比率としては、5:3:1.5:0.5 って感じです。

 詳しい比率までは知りませんでしたが、今の大河ドラマの合戦シーンを見ても、
鉄砲や槍で敵を倒すことが多く、刀は首取りに使用してますね。
さんざん、いい加減に歴史考証すると言っておきながら案外凝っていますよね(笑)。
下の立場から見た戦場というのが面白い。

〉 使用法は余りなく、ただ単にその刃で突く叩くってのが実戦形剣術だったそうです。

 まあ、そうでしょうなあ。しかし面白いことに日本刀は良く切れるのですよね(笑)。
日本が明と貿易する時の輸出品に刀剣があります。
曲線を描く日本刀は刃の接触面積が広くかなり実践的です。こういう兵器は大陸には
なかったのですね。日本の技術力に乾杯(笑)。
戦国時代にも少なからず剣豪はいましたし、かの室町将軍も剣術を嗜んでいましたから。
 
〉 この頃の合戦形態は、まずは弓兵部隊や甲斐武田軍で有名な石つぶて部隊による
〉 遠距離斉射により敵備を混乱させて、その後にお互いの槍部隊が突き合い
〉 その後乱戦になって、ようやく刀で叩きまくるって感じで推移しました。

 こういう合戦形態は古代中国でも共通してますよね。まあ、その当時は騎馬隊が
完全な主力ではありませんでしたが。

〉  お前織田兵だろう?って、その長槍の兄貴がヒヨシに刀よりも槍か飛び道具を
〉 選ばせたのは、たとい初心者でも長槍ならば敵兵と距離があるのでビビってしまわない
〉 って、戦場の勘から言ったと思います。

 槍は単純に突くという動作なので、訓練の足らない人でも扱える兵器らしいですね。
派手に振り回すのは本来の槍の使い方でないと(笑)。

〉  と言うか、当時は「雑兵足軽」って職種が人気ナンバーワンだったから恐ろしい。

 今はITベンチャーが人気ですなあ。ハイリスクハイリターンな点で共通してるかしら。

〉 その安全地帯兄貴(命名)は次の瞬間
〉 名も言う暇もなく流れ弾で即死と言う非命に斃れるのですが

 こういう場面にも戦場の非情さを感じますね。劣悪な環境にいると人間の精神に変調を
きたし、日吉は、、、が、来週への期待と。

〉 やったり、もはや『世界は地獄を見た。』では無く
〉 『ヒヨシが地獄を見た!』って感じで凄まじいですな。
〉 NHKネタのタイトルで申し訳ない。

 このネタ理解する人はかなりのNHKヲタやなあ(笑)。
私?・・・この前の中国文明は途中で地震情報が入って遺憾。。。


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