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(Ills.雨雷四音)

GS美神・極楽大作戦!

98年夏コミ同人誌レビューコーナー

Last Update : 98/10/12
 

  1. 燐光(もの書き屋)
  2. Lucciolic Edict(宿借部隊)
  3. おちたる横島(暗闇乙女) 
  4. 極楽まっしぐら!! 8(オレンジ紅茶)
  5. 死霊使いTai! 4(STUDIO AYU)
  6. PINK & PINK(カカロッ闘)
  7. 紙の砦!!(サークル「文珠」)
  8. 大好き(王様のレストラン)
  9. 恋をすると(あざらしあざらしあざらしぃ)
  10. ALWAYS(風色通り)


燐光
  制作:もの書き屋(Web:アムリタ) 
ジャンル:小説集 
ページ数:190P 
 発行日:1998/ 8/16
 ルシオラをテーマとした、「GS美神」の小説集。メリーさん、タカハ、FAIR、神泉 涼の各氏による共著。 

 「疑惑の影!」その1の状況下(アシュタロス戦一ヶ月後)を舞台にした比較的スタンダードなアクション小説「この愛に生きて」、逆天号出撃前にダメな部下達(笑)に接するドグラマグラの苦労を描いた「管理職は辛いよ」、最終決戦でルシオラを失った横島と、そんな彼に対するおキヌのせつない想いがテーマの「君への…想い」、そして「甘い生活!」編以降の「GS美神」のストーリーをバックにルシオラの横島への感情を描く「One's reason for being」の四編が納められている。 

 どの作品もかなり読める内容になっており、完成度は高い。特に「One's reason for being」の最後の部分の「甘い生活!」その4の展開を逆手に取ったシーンなどはアイデア的にも優れており、かなり印象に残った。あと、個人的には「管理職は辛いよ」の着眼点も評価したい。 
 という訳で、この本はお薦め。ここで紹介した作品は、アムリタでも読むことができるので、興味のある方は参照して頂きたい。この本の著者達の次の作品集が楽しみである。 
 

 
Lucciolic Edict
  制作:宿借部隊(Web:虹野時空) 
ジャンル:ギャグ 
ページ数:30P 
 発行日:1998/ 8/15
 このサイトのイラストコーナーでもお馴染みの、裏町片菜氏の個人誌。 
  
 今回も、また裏町氏のセンスが炸裂。巻末の「荒縄で縛られて尻にロウソクを立てられたルシオラ」(言葉で書くと隠微だなぁコレ)に代表されるように、全般としてかなりバカっぽいノリで統一されている。 
 個人的には、「アシュタロス様=爆乳まにぃ」「ここから毒液がおぴゅっと」辺りがツボにいい感じにヒットしている。あと、「時代は、今、手のひら!」と自分の貧乳っぷりをアピールしているルシオラが、ベスパのブラジャーをつい装着して涙を流すシーンには、心打たれるものがある。こういう発想ができるのが裏町氏だ。 

 このタイプの個人誌は、氏個人を知っていればさらに楽しめることは間違いない。っつう訳で裏町氏を知りたい方はこちらへどうぞ。ってコレ全然解説になってないような。

 
おちたる横島
  制作:暗闇乙女 
ジャンル:女性向け創作 
ページ数:28P 
 発行日:1997/ 3/30
 迎山みぎわ氏の個人誌。 

 この本のテーマは、前書きから引用させて頂くと「(コミックス25巻ラストで)マリアと共に流れ星になってしまった横島君のその後を想像力を駆使して楽しみましょう」というものである。今回は、横島とマリアがそのまま魔族の手に渡ってしまったという設定の「魔界編」、横島の記憶がないのをいいことに西条が横島を自分のマンションに引き込んでやおい的展開に持ち込む「西条編」の二つが収録されている。 

 「西条編」では西条×横島のラブシーンが入っているのだが、この本では直接的なシーンを描写するのではなく、情事が終わった後の余韻のシーンにスポットを与えることによって、横島が西条に甘える様子をエロチックに表現することに成功している。作者のやおい小説の力量の程を感じる。 

 何はともあれ「記憶喪失に陥った横島」で遊んでみようという着眼点は良く、発想次第では原作の制約をはずれたかなり面白い話が作れそうな気はする。 
 私としては、前書きに書いてあった「記憶をなくして、美形青年実業家と同棲!」編を読んでみたい。青年実業家を「芦優太郎」という名前にして頂ければ、私それ買います(笑)。

 
極楽まっしぐら!! 8
  制作:オレンジ紅茶 
ジャンル:コミック 
ページ数:74P 
 発行日:1998/ 8/15
 愛鬼みさと氏を中心とした、サークル・オレンジ紅茶(朝の魔法)制作の美神合作本。 
「極楽まっしぐら!!」は美神系同人誌の中でも古参の部類に入るが、この第8巻をもって美神本の発行は終了するらしい。ちょっと残念だ。 
  
 合作本という事で、内容は「GS美神の同人コミックであること」であれば何でも良いというノリになっており、作者それぞれが好きなテーマで好きなコミックを描いているな、という雰囲気の本になっている。逆に言えば全体としての統一性がないという事も言えるけど、合作本にそこまで求めるのはちょっと酷だろう。 

 この「極楽まっしぐら!! 8」執筆陣の中で特に注目したい作者として、愛鬼みさと氏と柿崎こーじ氏を挙げておきたい。 
 愛鬼みさと氏の描いた美神と横島の結婚ストーリーは、原作のキャラクターの性格を自分なりに消化した上でマンガ的に説得力のある話を組み立てており、好感が持てた。絵も個人的には好みだ。 
 逆に、柿崎こーじ氏の方は「私のマンガは美神パロというより柿崎オリジナルです」と言い切っているように、原作キャラを大きくカスタマイズした独自の世界観を造り上げている点が評価できる。絵もかなり個性的だ。 

 あと、きょおぢ氏の1Pコミック「みかえもん」は、邪悪なみかえもんがいい味だしていてよろしい。どこかで続きを描いてくれないだろうか?

 
死霊使いTai! 4
  制作:STUDIO AYU (Web: STUDIO AYU
ジャンル:イラスト+トーク 
ページ数:20P 
 発行日:1998/ 8/15
 おキヌファン本として名が知られている、「死霊使い Tai!」の新刊。鮎川 政美、社中 真咲、亜塚 史樹各氏の合作本。 

 内容は、トーク込みのイラストがメイン。タイトルがタイトルなのでおキヌのイラストが多く、なんか執筆者の好みでファミレスの制服や「To Heart」の制服を着たおキヌなんかを拝むことができる。 
 個人的には、巻末の横島とルシオラのベットでの会話をマンガ化したショートコミックの雰囲気が良く、なかなか気に入っている。実際にこの二人が付き合いだしたら、多分こういう会話をするんじゃないかなという感じが出ていて良い。 

 全体としては、おキヌのファンブック的な要素が強く、コミックや濃いトークを期待するタイプの本ではないと思う。おキヌファン本としての今後の展開に期待したい。

 
PINK & PINK
  制作:カカロッ闘 
ジャンル:女性向け創作 
ページ数:34P 
 発行日:1998/ 5/ 3
 この「カカロッ闘」も、割と昔から女性向け美神本を手がけているサークル。この「PINK & PINK」は、端的に言えば「女になった横島」がテーマの本である。 
 横島というキャラクターは、女性向け美神同人界では「受け」キャラとしての役割が定着しているが、そういう役割故に、横島を女にしたシチュエーションの同人本も時折見かける。この本は、その「女横島」というテーマを突き詰める事を目的にした感がある。 

 この本のメインとなる創作小説は、メドーサとユーディット(この作品オリジナルの女魔族)に捕まった横島が監禁され、「女」になる薬を飲まされた挙げ句に色々とヒドイ事をされる……というシチュエーションの話なのだが、この話の凄いところは女になった横島が受ける陵辱のバリエーションの妙であると言える。 
 ユーディットに鞭で打たれたり鎖で引き回されたりする辺りの行為は当然として、更に凄いのはこの陵辱劇におキヌまで巻き込み、女になった横島と絡む事を強制されるというシーンがある点だ。流石にこの展開は予想していなかったので、初めてこれを読んだ時には「やられた!」と思った。こんな異常で、かつ魅力的ですらあるシチュエーションを発想できるセンスには感服させられる。 
 勿論、ただ無闇にエロチックなだけではなく、登場キャラクターの感情もキチンと描かれている。特に、横島を救おうとして気丈な態度を取り続けるおキヌの描写は見事だ。 

 この本には、他にも横島が女になったシチュエーションでの美神との短編コメディも掲載されており、メインの小説の重い雰囲気に対する若干の息抜きの役を果たしている。 
 何にしろ、「GS美神」女性向け創作の奥深さを感じさせる一冊だ。陵辱監禁モノに耐性がある方にお勧めしておきたい。

 
紙の砦!!
  制作:サークル「文珠」
ジャンル:評論
ページ数:54P
 発行日:1998/ 8/15
 サークル「文珠」は、BBS メイプルタウンで「GS美神」のファン活動を行っているメンバーが集まって作られたユニットである。今回のこの本は、羊田中・哀別句巣・出羽・夏のこたつ・OG各氏が寄稿して作成された。
 この「紙の砦!!」は、GS美神系の同人誌としては珍しい「評論」という形式を取っており、「椎名高志の面白さって、言葉にすると何だろう」(前書きより)という観点より、寄稿した各氏がそれぞれ独自の視点から「GS美神」を論ずる形を取っている。
 このタイプの評論本はありそうでなかったものであり、ある意味貴重と言える。

 内容としては、恋愛要素的な観点からGS美神を考える「大河ラブコメとしての極楽」、小竜姫というキャラの細部(年齢とか仕事とか)をマンガの中での行動から推測する「妙神山の小竜姫さま」、椎名高志作品における高橋留美子の影響や共通性を探る「るーみっくの系譜」、ロボットファンの観点よりマリア、およびメカ美少女について語る「マリア考」、および椎名高志マンガにおける人間関係の構図をモデル化した「ボケとツッコミとインターフェースと」、の5つの論文が掲載されている(他に、コラム的な読み物が2つと「扉絵ポイントランキング」もあり)。

 このタイプの評論は、ヘタをすると筆者の思い入れのみを語った「オレ美神」みたいなものに走りがちなのだが、この「神の砦!!」は全般として「オレ美神」的要素を多少内包しつつも、筆者個々の得意分野からの視点から評論する、というスタンスは崩れていない。一部ni
は「(笑)」を多用した評論と呼ぶにはちょっと砕けちゃってるものもあるが、総じて見れば評論本としては悪くないレベルに達していると思う。
 個人的には、「GS美神」の登場キャラクターの基本関係を「ボケ・ツッコミ・その二人を繋ぐ存在(インターフェース)」という形でモデル化できる事を説明している「ボケとツッコミとインターフェースと」(羊田中氏)の着眼点の良さが印象的だった。

 このサークルは冬コミにも出展を予定しているそうなので、次回はどんな観点から椎名作品を論じてくれるのか楽しみである。期待したいサークルの一つだ。


 
大好き――おキヌちゃんの本
  制作:王様のレストラン
ジャンル:コミック
ページ数:16P
 発行日:1998/ 8/15
 小仏良平氏の個人誌。これが初めての美神本なのだそうだ。
 
 この本のテーマは「おキヌちゃん」。「スリーピングビューティー」編で甦ったおキヌちゃんが見た一夜の夢を描いた、ショートストーリーが掲載されている。21巻の「横島の夢枕に出てくるおキヌ」の逆パターンで、美神と横島が夢の中でおキヌに語りかけて元気付ける、という心温まる内容である。

 それより何より、小仏氏の描くおキヌちゃんは丸っこさを貴重としたかなり個性的なデザインで、やおら可愛い。ゴムマリみたいな胸が魅力的だ(笑)。
 巻末では「次はALLキャラ本を出そうかと思っている」と言っておられるので、今後の活躍に期待したい。

恋をすると――スリーピングそしてそれからシリーズ(2)
  制作:あざらしあざらしあざらしぃ
ジャンル:コミック
ページ数:26P
 発行日:1998/ 8/15
 一部でコアなおキヌファンとして知られている、上山勝久氏の個人誌。
 上山勝久氏は、以前よりGS美神20巻までのおキヌ(=幽霊だった頃)の魅力を振り返るという「スリーピング・ビューティー! 完全版」の制作に勤しんでおられるのだが、今回は作画方面のこだわった為に夏コミに間に合わなかったという事で、夏コミ向けに制作・発行したのがこの「恋をすると」である。

 それでこの本だが、今回のテーマはコナミの恋愛シミュレーションゲーム「みつめてナイト」に登場するアンというキャラのエンディングをおキヌに代えたパロディである。私は残念ながら「みつめてナイト」はプレイしていないので詳しくは語ることができないのだが、オリジナルにうまい形でおキヌをオーバーラップさせており、ハッピーエンドであるにも関わらず非常に切ないものを感じる内容になっている。上山氏のおキヌ、および「みつめてナイト」のアンに対する、只ならない思い入れの程を感じる次第だ。

 現在製作中であろう「スリーピング・ビューティー! 完全版」は、おそらくは上山勝久氏にとっての「GS美神」の集大成的なものになると思われるが、私としてはいくら時間がかかっても良いので、本人の納得が行くものを作って欲しいと思っている。大変だとは思いますが、頑張って下さい。いやマジで。

ALWAYS
  制作:風色通り
ジャンル:女性向け創作
ページ数:58P
 発行日:1998/ 8/15
 葦谷弥生氏の創作を中心に、六月ねも・如月ゆきの各氏が寄稿して制作した、雪之丞×ピートの女性向け美神本。
 雪之丞×ピートは、この手の組み合わせとしてはスタンダードな部類に入るが、この本では31巻の「そして船は行く!!」編での船内を舞台とした話を中心に、実に安定したラブラブっぷりの描写を見せてくれる。

 この本は、今までここで紹介してきた他の女性向け創作に比べるとエロティックなシーンはほとんど登場しないが、その分だけ雪之丞とピートの心情的な描写を行うことに力を入れている感があり、なかなか読ませる内容になっている。
 また、葦谷弥生氏の作品では、オリジナルの「GS美神」では描写されなかった砕氷船内での美神と横島の事も少し触れられており、「信頼している仲間同士の心の通い合い」を良い雰囲気で演出している。この辺は「GS美神」の方で触れて欲しかった内容だっただけに、個人的には嬉しい。

 何にしろ、極めて良質な美神同人誌であると言える。GS美神の女性向け同人誌の基本としてお奨めしたい。


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