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(Ills.緒理)

GS美神・極楽大作戦!

98年冬コミ同人誌レビューコーナー

Last Update : 98/ 3/ 7
 

  1. 風恋歌(もの書き屋)
  2. Break Season(宿借部隊)
  3. 死霊使いTai! 5(STUDIO AYU)
  4. 光と影(あざらしあざらしあざらしぃ)
  5. 紙の砦!! その2(文珠)
  6. うかれた魂's 2(穢れた魂)


風恋歌
  制作:もの書き屋(Web:アムリタ) 
ジャンル:小説集 
ページ数:168P、オフセット
 発行日:1999/ 1/15
 前回の夏コミで好評を博したもの書き屋の小説集「燐光」に続く、ルシオラをテーマとした小説集(残念ながら、今回で美神同人誌は終了らしい)。今回は、「龍脈」を守護する龍神族の謎の暴走に美神達が立ち向かう「Driving miss days」(神泉 涼氏)、「死んだ少女と一晩過ごして欲しい」という不思議な依頼を受けた横島と、その彼を案じるルシオラを描いた「幽婚 -Ghost Wedding-」(FAIR氏)の二編が収録されている。
 どちらの作品も、アシュタロス編終了後にルシオラが生き残っていた――という、「GS美神」本編が取り得なかった、いわばアシュタロス編の「もう一つの選択」を礎にして作成されているのが特徴である。

 「Driving miss days」で美神やルシオラが戦うことになるのは、龍神族の中でも最高級の実力を持つ「四界龍王」というかなり強力な存在であり、アシュタロスという最大最強の敵を倒した美神達にふさわしいスケールの物語になっている。
 しかし、そんな中でも、横島を巡るルシオラ・美神・おキヌの各キャラの心情をキッチリと描写しているのは流石である。というよりも、「龍王」との戦いの中で彼女たちの心情を浮きだして行くような描写を随所で織り交ぜているので、戦いよりはそちらの方の描写を主題としていると言えるかも知れない。また、「憔悴したルシオラが横島の寝室に!」なんていう、ちょっとドキドキするようなシーンが用意されている辺りの演出も上手い。
 敵キャラの具体的な描写が弱いので、読んでいて敵キャラや戦闘シーンをイメージしにくい箇所があるのが気になったが、全体としてはかなり力が入った良い作品だ。

 もう一つの「幽婚」は、「許嫁を残して女性が死んだ時、その許嫁と婚礼の儀式を上げてから埋葬する仕来りがある村」というアイデアが秀逸なショートストーリーだ。話は短いながらも、その魅力的な設定と、「愛する者を残したまま死ぬ」という、かつてルシオラが体験した事に対する感情の描写によって、一気に読ませるだけの魅力を持った作品だと言える。

 また、この「恋風歌」は、今までのGS美神同人誌で最も「豪華」と呼んでよい程装丁が凝っているのもポイントであり、一目見ただけではソノラマノベルズ等の書籍と区別が付かない程だ(後丁寧に即売用の帯まで付いてる)。小説以外の部分も、緒理氏による表紙イラストとショートコミック、御堂松楠/七月王氏によるOP・EDソング、広告記事(もちろん作品内世界のGS関連のCM)など細部への凝り様も大したもので、GS美神同人誌としては空前にして絶後と言っても過言ではないだろう。

  この「恋風歌」はまだ少々の残部があるそうなので、興味のある方はもの書き屋 Web サイト「アムリタ」まで問い合わせて頂きたい。

 
Break Season
  制作:宿借部隊(Web:虹野時空) 
ジャンル:ギャグ 
ページ数:42P、オフセット 
 発行日:1998/12/29
  「宿借部隊」の裏町片菜氏の冬コミ新作本。前回の「Lucciolic Edict」に引続き、今回もルシオラ中心のコミックで構成されている。

  内容は、ほぼ全編に渡って裏町氏のいつものセンス(ショートカット、メイド服、バニーガール、首輪、縛り、等)が貫かれており、そういう意味では非常に個人誌らしい、すがすがしい出来になっている。特にショートカットとバニーガールに対する拘りはもはや如何ともしがたいレベルに到達しており、もはや私としては、己の信じる道を邁進して頂きたいと言うしかない。
 また、個々のマンガのネタの面白さは、全体としては前作よりも上がっているように思える。裏町氏が以前 Cna-BBS で募集していた元ネタと、それを実際に裏町氏がマンガにしたものと比較して見るのも面白い。個人的には、すずめとルシオラの「貧乳なのでルシオラは男」ネタが一番面白かった。

  とりあえず、裏町氏のサイトを見て、そのセンスに共感を覚えることができる方なら買いだ。夏コミではどんなネタを持って来るかが楽しみ。

 
死霊使いTai!! 5
  制作:STADIO AYU(Web:STADIO AYU
ジャンル:コミック+イラスト 
ページ数:30P、オフセット
 発行日:1998/12/29
 STUDIO AYU の新刊。今回は鮎川政美氏による、ルシオラ中心の個人誌となっている。
 
 構成はコミック+イラストが半々であるが、今回のこの本の注目は掲載されているコミック「どきどきっ」「いつか見る、娘のために」の二編である。どちらもアシュタロス編終了を踏まえたものとなっている。
 特に「どきどきっ」は横島の娘の蛍ちゃん(5歳)と、横島の弟子となって修行をしている美神ひのめ(14歳)が登場する、まさに本編の続編としてそのまま採用できそうな「夢の次世代マンガ」といった内容となっており、個人的にかなりツボにハマった。
 また、もう一編の「いつか見る...」は横島が将来のために美神事務所から独立するという、こちらも本編の最終回でぜひ扱って欲しい内容だ。

 どちらのコミックも次回へ続きが掲載されるらしいので、今後に期待したい。全体として、前作の「死霊使いTai!! 4」よりは完成度が高くなっていると思う。

 
光と影
  制作:あざらしあざらしあざらしぃ(Web: SILK-BBS
ジャンル:評論+コミック
ページ数:16P、オフセット
 発行日:1998/12/29
 熱狂的な國府田マリ子+おキヌファンとしてその筋で有名な、上山勝久氏の新刊。
 内容は4ページ程度のコミック2本が掲載されているが、この本のメインは「【批判】おキヌちゃん復活後のGS美神」と題された評論記事である(まえがきの部分でも、「この本はGS美神の批判本です」と明記されている)。

 その批評だが、おキヌ復活後のGS美神内での役割の低下、ルシオラの扱いの悪さ、テンポの悪いストーリー展開など、おキヌ復活後の展開に対してかなり手厳しい批判が加えられている。ただ、上山氏は「かなりきつい批判」と言っているが、書かれている内容そのものはおキヌファンがコミックス23巻以降に対して抱いている不満点を代弁したものであり、それほど理不尽なものではないと感じた(私の主観では)。

 あと、おまけのコミック「病んだ人2」は自虐的な面白さがあっていい感じだった。多分何かのマンガかゲームのパロディだと思うのだが、判らないのが悔しい(笑)。

 
紙の砦!! その2
  制作:サークル「文珠」(Web:淀川ランプ亭
ジャンル:評論
ページ数:46P、コピー
 発行日:1998/12/29
  前回紹介した「紙の砦!」に続く、GS美神評論本の第二弾。今回は、前回の執筆陣(哀別句巣、出羽、羊田中、夏のこたつの各氏)に加え、私こと深沢が加わった(笑)。

  掲載されている評論は、基本的に各人が興味を持っているテーマを自由に持って来るという形式を取っているので、その内容もおキヌに関する考察、アシュタロス編の批評、マンガに登場するモノノケ達の分析、エンターテイメント論など、内容としてはかなり幅広いものになっている(別の言い方をすれば、内容に統一性がないとも言えるが)。
  その中で特に印象的だった評論記事は、昨年公開され話題になった「ムトゥ・踊るマハラジャ」に代表されるインド大衆映画(マサラムービー)の特徴をGS美神に当てはめて考察した、羊田中氏の「ザッツエンターテイメント」だ。書き手の視点が明確で判りやすく、かつユニークである点が面白い。

  「紙の砦!」は、サークル文珠のサイトからもそのうち入手可能になる予定(らしい)なので、興味のある方はそちらへどうぞ。

 
うかれた魂's 2
  制作:穢れた魂 
ジャンル:男性向け創作 
ページ数:16P、コピー 
 発行日:1998/12/29
  GS美神の成人男性向けパロディの名手・本田隆氏製作のコピー誌。
  美神の成人向けパロディは、以前は他にも「脱げ!横島」というインパクトのあるタイトルが印象的だった「来夢緑」(グリーンライム)など、いくつかのサークルが手掛けていたのだが、今ではコンスタントに製作しているサークルは本田氏の「穢れた魂」だけになってしまったような気がする。これも時代というものだろうか。

  それはそうとこの本だが、名前の通り非常に浮かれた内容で(笑)、横島とルシオラのラブラブっぷりを描いたものになっている。作品中では結局結ばれなかった二人だが、なんかもし実際にくっついていたらこんな爛れた生活を送っているのではないか、と思ってしまう。絵柄が原作のイメージを崩さない程度にエッチなのも魅力。

  まぁ、横島×ルシオラの描写よりも、そこに割り込んで来たパピリオと横島の絡みの描写の方が長かったりする辺りがアレだが(笑)、全体としては文字通りの浮かれた出来に仕上っている。今回はコピー本だが、そのうち「魔族本」というまとまった形で出版してくれることを希望する次第だ。

 

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