美神 令子・その人生・その愛

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96/ 6/16

 今週で「サバイバルの館」編が終了した。
 が……さすがに、今回は読んでいて非常にしんどさを感じた。

 今回の「サバイバルの館」は、週単位で展開が変わるストーリーの見通しの悪さ、その場つなぎのギャグの多さ、意図的に記号化されたようなキャラの表情など、全体としてかなり作者が苦しんでいるなと思ってしまうような兆候が見られた。
 特に第2話は、途中で舞台が表題の「館」から「塔」に変わったり、おキヌちゃんの初めての告白が使い捨てのギャクとして処理されてしまったりと、もうかなりハチャハチャ。この回を読んた時、「今回のサバイバルの館編は、途中の展開を準備していない見切り発車状態で描き始めざるを得なかったに違いない」と確信した。

 だが、ゴーレムやグーラーといったキャラを登場させて展開の取っ掛かりを掴んた辺りからは椎名氏らしい調子が出てきて、最後は何とかキレイな終わり方に到達できた(と、思う)。
 そんな訳で今回は、どんな状況下でも連載を続けなければならない週刊連載作家としての椎名高志氏の「底力」を、(不本意だったかもしれないが)発揮したエピソードであったと思っている。

 マンガ好きの人には、この「底力状態」になってからのマンガを読むのが好きだと言う人もいるが、私はあまりそういうのは好きではない。やっぱマンガ家も人の子だし、「次にどうしていいのか考えられないまま書き続ける」というプレッシャ−下でマンガを書くのは良いことではないだろう(「ドラゴンボール」や「幽遊白書」が突然死したのは、これへの配慮の欠落が一番の原因ではないか?)。

 それに、椎名氏の場合は余裕を持ってストーリーを練り上げて描いたマンガ方が面白いものができるのではないのだろうか。
 現に、「サバイバルの館」と同時進行で作られた(んじゃないかと思う)「ジパング!」は、ページ数不足が原因で状況説明が足りない場面がある印象は受けたものの、話そのものはなかなかよくできていたと思う。
 どちらかと言えば、椎名氏は月刊連載の方がその真価を発揮できるタイプになったのかも知れない。


 で、最後に(読んでないとは思うけど)椎名先生にお願い。
 何か雑に見えちゃう今の絵柄をもう少し何とかしてー(ややマジ)



96/ 6/16

 「サバイバルの館」ついでにもう一つ。

 横島が「最終回が見えたかっ」なる旨の発言をしたことに対して、ここの掲示板で「本当に終わっちゃうんでしょうか」と心配していた書き込みがあったが、私としてはまだ「本当に終わりが近い」とは考えていない。
 今や人生の時間の 1/24 くらいを C-WWW に割いているよーな生活をしている私としては、そう簡単に終ってしまっては困るのだ(笑)。


 ただまぁ、「GS美神」というマンガの終り方の道筋は、実はもう示されつつあるとは思っている。
 前の「デッド・ゾーン」編で提示されたように、美神は最終的にはアシュタロスと決着をつけなければいけない宿命を背負い込んでいる。魔族の中でも特に反体制的なアシュタロスを倒し、神族と魔族と人間たちの間に何らかの新しい秩序を確立するのが、「GS美神」の最終的な目的になるであろう。おお、なんかスケールでかいぞ。

 メドーサは、アシュタロスと同様とても反体制的な野心家であるので、何らかの形でアシュタロスとつながっているに違いない。つまり、メドーサを美神が叩けばアシュタロスも新しいアクションを起こし、それが「GS美神」の終局へと続いていく……という感じになるだろう。横島が「最終回が近い」とか何とか行ったのは、こんな考えが椎名氏にあるからなのかも知れない。

 仮に本当にGS美神を終らせると椎名氏が考えているとしても、今の週刊サンデーなら、マンガ家の意向に沿った形で作品を最後まで完遂させてくれると信じている(もちろん、人気がある程度なければそうも行かないだろうけど)。どんな形で「最終回」まで持っていくのか、椎名氏の力量に期待したい。


 ……全然関係ないけど、最終回といえば、「スラムダンク」が終っちゃったねぇ。
 あれにはビックリ。



96/ 6/16

 最近気付いたこと。


 「GS美神・極楽大作戦」と、

 「河童の三平・妖怪大作戦」は、

 どことなくゴロが似ている……


 以上。



96/ 6/22

 今週からサンデー連載の方では「バッド・ガールズ!!」編が始まったが、あれは凄いぞ。

 何てったってアンタ、舞台が女子校よ女子校。しかも現代っぽいトレンディなディティールなど微塵も感じさせない、前年代っぽいオールドスタイルな薫りがプンプンする、凄まじいアナクロテイストな女子校が舞台と来たもんだ。
 こういう設定は、何かこう興奮するモノを感じると思わないか、君たち。

 それと同時に、今回は久しぶりにGS美神というマンガの懐の広さを感じる回でもあった。
 『霊能』『除霊』絡みであれば、あのマンガは実はもう何でもアリなのだ。あらゆるものを許容できるだけのキャパシティが、あのマンガにはある。
 そういう意味では、「麻雀マンガ」や「エロマンガ」と同様、オカルトマンガの中の一つのジャンルとしての「除霊マンガ」のスタイルを、GS美神は確立したと言えるかも知れない。この手のマンガは増加傾向にあるみたいだし。


 で、前回ちょぴっとだけ最終回がどうだという話が出たので心配している読者も多いようだが、今回の「バッド・ガールズ」編を見る限りでは、復活おキヌちゃんをしばらくの間腰を据えて活躍させるようなので、まだ当分「最終回が見える」ようなエピソードは出てこないだろう。
 心配する必要は、たぶんあと最低半年くらいはないと思う(日数に根拠なし)。



96/ 6/22

 5月に行った同人誌即売会で入手した同人誌の中に、「ドラえもん」と「北斗の拳」などの原哲夫系のマンガのノリをブレンドさせたという、凄いセンスオブワンダーなものがあり、私は密かに気に入っている(溝口ヒデ人なる方の個人誌)。
 今ではコミケも「男性向け創作系」とか「女性向け創作系」とか「人気アニメの同人サークル」とかに圧倒されつつあるらしいが、ちゃんとこういうセンスあふれるサークルを探し出してチェックするのが、やはり同人誌即売会参加者の本道と言えるのではないのだろうか。

 そういう訳で(笑)、個人的に一度見てみたいGS美神のパロディはこれだ:


  • GS美神と高橋留美子作品
     椎名高志氏は、以前「GS美神で一番影響を受けたのは『うる星やつら』だ」と、何かのインタビューに答えていたらしい。
     そのためかどうかは知らないが、椎名高志キャラに高橋留美子キャラのパロディをさせるのは、比較的容易だ。例えば:


  • GS美神と「覚悟のススメ」
     立ちまくったキャラと尋常ならざる台詞の数々で一部で異常な人気を博した「覚悟のススメ」だが、これとGS美神の組み合わせはぜひ見てみたい。マンガの質としては全然ミスマッチなのだが、それがいいのだ。

     マジメな話、「スリーピング・ビューティー」編をベースにして「覚悟のススメ」ノリの話が書けるかどうか検討してみたこともあった。
     当初の構想では、死津喪比女に体当たりして天国へ行ったおキヌちゃんが、

    「私は幽霊! 安らぎは受け取らぬ!
     横島さんのいる、あの荒れ果てた世界に、安らぎをもたらすのだ!」

     と叫んで、天国で割腹して復活するつもりだったのだが……見事に構想倒れ(笑)。
     だれか私の志を継いで、物語を完成させてくれないだろうか。


  • GS美神と「乱丸XXX」
     週刊チャンピオンを読んでいない人は絶対知らないと思うが、現在チャンピオンには「乱丸XXX」(トリプルエックス)という今時珍しいお色気マンガが連載されているのだ。
     読んだことのない人のために、これがどんなマンガであるかを説明すると、

     という、非常に判りやすい内容のマンガである。昔懐かしい川原正敏の「パラダイス学園」なんて比較にならないお色気ぶりに、もはや読者は呆れるしかない。そんなマンガだ。

     このノリをGS美神に持ってくるとどうなるか。……おそらく、美神が毎回お色気をまき散らし、横島とおキヌが延々といやーんハレンチーなドタバタコメディを繰り広げるというものになるだろう。
     なんかこうやって文章で書くと非常に情けないモノを感じるが、しかしこんな展開は、もしも「GS美神」の掲載誌がヤングサンデーかなんかで、さらに三歩半くらい椎名氏が道を誤っていたら陥っていたパターンである、と言えなくもないのではないのだろうか(我ながらヒデエ事言うなぁ)。

     しかし、このアイデアの最大の問題は、そもそも「乱丸XXX」をプッシュする同人サークルなどまず存在していないに違いないという点である。


  • GS美神とレディースコミック
     「GS美神」の連載が開始されたのは、まだバブルの香りがプンプンしていた時期だった。今も美神のデフォルト衣裳に、当時の残り香を感じることができる(最近は衣裳を頻繁に変えてるからあんまりボディコン着てくれないけど)。
     あの頃は会社の羽振りもよくて、東京に出張勤務していた時は昼飯に1000円以上のランチを食べても出張手当が気前良く出たからお釣りが来たよなー……と過去を懐かしむのはともかく(泣)、あの頃の美神のキャラクターは、端的に言えば「現代的な、自立して成功した女性」のイメージを持っていたと思う。

     「現代的な、自立して成功した女性」と言えば、次に連想されるのがレディースコミックだ(何故かは訊くな)。レディコミが流行ってきたのもバブル期だったと思うが、そんなレディコミの主人公の代表的な人物像が、やはり「現代的な、自立して成功した女性」だったのだ。
     忙しいが充実したビジネスライフを送り、高価なマンションに住み、収入も充分ある、でもなにか満たされない……というのが主人公の典型。で、ビジネスでトラブルが起きたり、上司の愛人になったりとか何とかしながら、結局最後は「真実の愛」を手に入れてめでたしめでたし、というのが、基本的なストーリーである。
     最後に主人公と結ばれるのは、純粋に主人公を恋い慕ってくれる、年下の男(部下とか)が多かったような気がする。

     美神と横島を主人公にすれば、こういう典型的なレディコミが(多少無理はあるが)作れるという算段だ。


     しかし時代は変わり、今やレディコミは「女性向けのエロマンガ」と言われるくらい、なんかこう退廃的なものが多くなっているらしい。レズとか3Pとか緊縛プレイとかは当たり前の、結構ひぃぃぃな世界だ。
     そんなレディコミにGS美神を持っていったら、極楽大作戦ならぬ「極楽退廃大作戦」になってしまう事は必至。極楽違いで大違いだ。

     だが、それがいい……。