その後のGS美神 2199 リポート7 終わりなき命

ずっといるわよっ?

著者:まきしゃ


    時は中途半端な2120年ぐらいの春のこと…
  某有名大学の大講堂では、新入生へのサークル勧誘が賑やかに行われていた
  その片隅に、ぽつんと1つ机を置いてるだけの『オカルト研究会』…
   
女子学生 「あの〜、すみません…」
男子学生 「ああ、入会希望者ですか? 希望してくれるのは嬉しいんだけど、ここは同好会じゃなくて
  研究会なんです。 超能力がすごいとか、なんか神秘的だとか、そういうことに興味が
  あるなら、同好会に行かれたほうがいいですよ?」
  真面目な研究を目指しているのに、軽いノリの希望者ばかりが来ていたせいで、
  少々不機嫌になっているオカルト研究会の会長さん…
   
女子学生 「そうなんですか? では、ここでは、どんな研究をされてるんですか?」
男子学生 「えっ? あ、研究について、お話を聞いてくれるんですか?
  えっと、神族、魔族がこの世界で果たしている役割とか、人間は彼らとどう共存して
  いくべきかとか、そういった哲学的なことを追求していきたいと思ってて…」
   
女子学生 「していきたいって、まだ、されてないんですか?」
男子学生 「あ、いや、まだこの研究会、僕が作ったばっかりなんです。
  同好会の体質と、ちょっと合わなかったんで…
  だから、まだ、会員も僕一人だけで、これから、増やしていこうかなと思ってる段階で…」
   
女子学生 「くすくすっ。 なんだか、面白そうですね。 私、入会していいですか?」
男子学生 「ええっ! もちろんっ! ああ、よかった。 僕の話をまじめに聞いてくれそうな感じがして、
  入ってもらいたいなぁ〜って思ってたんです。
  あっ、自己紹介がまだでしたね。
  僕、芦優太郎っていいます。 2年生です。」
女子学生 「私は、新入生で、蜂須賀蜜子っていいます。 友達からは、べスパって呼ばれてます。
  よろしくお願いしますっ!」
   
   
  その頃、妙神山で、この光景を見守っているパピリオたち
  ちなみに、このころのパピリオは、中学生ぐらいに成長していた…
パピリオ 「ぺス〜〜、もっと画像をクリアにしてよ〜〜!」
ヒャクメ 「はひ〜〜 これ以上は無理なのね〜〜 神通力が切れちゃうから〜
  それに、いい加減、その呼び方、止めてくれません〜〜?」
   
  ヒャクメの言葉を聞いてなかったかのように、小竜姫に尋ねるパピリオ
パピリオ 「べスパちゃん、なんか感じが違うんだけど、どうしてかな〜?」
小竜姫 「やはり、自ら望んだとはいえ、人間になったばかりで、心細いからじゃないかしら?
  魔族として強い力を持っていたときと違い、今のべスパは格段に力が落ちるから…
  それに、芦さんがアシュタロスの生まれ変わりだとはいっても、魔族ではなく
  人間なんだから、前世の記憶は有ったとしても断片だけで、まったく別の人生でしょ?
  べスパを受け入れてくれるかどうか、まだわからないもの…」
   
パピリオ 「そんなこと無いわっ! アシュ様の生まれ変わりだもの。 絶対べスパちゃんのこと
  好きになるに、決まってるんだからっ!」
小竜姫 「そうね、ごめんなさい。 私も、そう思うわ。」
   
   
   
  話は一気に飛んで 2199年
  三玉財閥総帥の本宅 日曜のリビングでのひととき…
女の子 「ね〜ね〜、おじいちゃん。 おじいちゃんの会社、なんで三玉って名前なの〜?」
総帥 「それはね、会社を作ったご先祖様の名前にちなんでつけたんだよ。
  玉康、玉則、玉三郎っていう、3兄弟が力を合わせて作った会社なんだ。
  3人とも、タマさんの子供なんだよ?」
   
女の子 「うっそだぁ〜〜。 タマさん、うちのお母さんより、若いんだよ〜?
  そんな昔の人のお母さんのはずがないわ〜〜?」
  苦笑する総帥 隣できつねうどんを食べてるタマモに声をかける
   
総帥 「タマさん、この子にいったい幾つって言ってるんですか?」
タマモ 「………、21歳」 (苦笑)
総帥 「あ〜あ、もう200歳を越えちゃってるのに…」
タマモ 「こらっ! 女性の年を口にするんじゃないのっ!
  それに、見た目が若いんだから、へたにほんとのこと言わないほうがいいでしょ?」
   
総帥 「まあ、そうですけど… でも、康則さんご健在の頃のタマさんの写真を見ると
  どうしても、ギャップが埋まらなくて…」
タマモ 「あの頃は、康則に合わせて、一緒に老けていったからね〜〜
  でも、それだって100年以上も前の話でしょ?
  あんたは、私の若い姿しか見てないじゃないの。」
   
総帥 「まあ、それだけ僕が老けたってことですよ。
  やっぱり、若いっていうのはうらやましいですからね。」
タマモ 「これはこれで、結構、苦労もあるんだけどね。」
   
  そんなところに総帥の奥さんがやってくる…
祖母 「あなた、康史の奥さんの陣痛が始まったんですって。」
総帥 「おお、そうかっ! ちゃんと、尻尾のことは言ってあるんだろうなっ?」
祖母 「二人目ですから、心配いりませんよ、おじいさん。」
総帥 「そうか、それなら大丈夫だな。」
   
女の子 「おじいちゃん、尻尾のことってなぁ〜に?」
総帥 「うん、うちの家系にはね、狐の妖怪の血がたっぷり入ってるんだ。
  だから、子供が生まれたとき、尻尾が生えてるんだよ。
  でも、この尻尾を生やしたまま育てると、狐になっちゃって、人間になれないんだ。
  そうならないために、生まれてきた子供の尻尾は、すぐ抜くことになってるんだよ。」
   
女の子 「ふ〜ん、おじいちゃんも生えてたの〜?」
総帥 「そうだよ。 おまえも、おまえのお父さんも生えてたんだよ。」
女の子 「え〜? 私も〜? なんか、やだな〜。」
総帥 「いやいや、これは自慢していいことなんだ。 尻尾がはえてたってことは、それだけ
  妖狐の優秀な能力を引き継いでいることの証だからね。」
   
女の子 「でも〜、妖怪なんでしょ〜?」
総帥 「妖怪といっても、とっても綺麗な妖怪なんだよ? ねっ? タマさん?」
タマモ 「まぁね〜〜」
   
  孫にいろいろ説明するために、タマモと康則の時代のデジタルアルバムを
  引っ張り出してきた総帥
総帥 「タマさん、僕にもいろいろ教えてくださいよ。 僕も、知らないこと多いですから…」
タマモ 「いいけど、ずいぶん前の話だからね〜。 覚えてるかな〜?」
総帥 「あっ、そうだ。 一条理絵事件の話をしてくださいよ。
  タマさんや、タマさんの家族も活躍したんでしょ?」
タマモ 「ああ、あれね…」
   
女の子 「それって、どんな事件なの〜?」
総帥 「160年ぐらい前、一条理絵っていう独裁者が世界を征服してたんだけど、タマさんや、
  タマさんの義姉の美神令子さんていう人が活躍して、独裁者をやっつけたのさっ!」
女の子 「わぁ〜、すごい〜〜! どうやってやっつけたの?」
   
タマモ 「結果はすごいけど、経過はちょっとね〜…」
総帥 「世界中の電波を独占し情報を支配していた一条理絵に対向して、霊波を使って
  情報を流したことにより、美神さんたちが勝ったって聞いてますけど…」
タマモ 「うん、そうだけど…。 当時は、世紀の罵り合いって言われてたわ…」
   
総帥 「えっ? 罵り合い…?」
タマモ 「そう。 一条理絵と美神さんが、電波と霊波で、相手の悪口を延々と言い合ったの…。
  悪口の言い合いじゃ、美神さんに勝てる相手なんて、一人もいないわ…。
  結局、美神さんのひどい言葉に、ぶち切れた一条理絵が、脳溢血で倒れちゃって
  決着がついたの…。」
   
総帥 「そ、そうだったんですか…」
タマモ 「そのあと、美神さんも、一条理絵みたいに世界征服しようとしたんだけど、
  それをなんとか思いとどまらせたのが、私やおキヌちゃんだったの…」
総帥 「う〜ん、聞いてみないと、わかんないもんだなぁ〜〜」
   
  みんなの話を聞きながら、TVも観ていた祖母がタマモに声をかける
祖母 「タマモさん、今TVにその美神さんの話が出てるわよ?」
タマモ 「えっ? どんなことで?」
  TVでは、インガ・リョウコの霊体不法売買事件の特集が流れていた…
   
   
  翌日 旧美神事務所に、ふらっとやってきたタマモ…
タマモ 「懐かしいけど…… ずいぶん、荒れ果てたわね〜〜…
  もっと前に来ていれば、美神さんたちの残留思念に会えたと思うと、ちょっと残念だな。」
   
  誰もいない旧事務所の中をうろつきまわるタマモ
  それぞれの部屋に残った沢山の思い出を、一つ一つ掘り起こしながら…
   
  タマモにとっての事務所… 
  彼女の200年の中でのたった15年の出来事…
  人間社会の常識を覚えるために美神さんについてきて…
  同居人シロとの、つまんない理由での数々の喧嘩
  康則と一緒に弓さんの家庭教師で勉強した日々
  美神家の養子になって中学・高校に通ったこと
  おキヌちゃんが家出したせいで、カップルが3組できたこと
  おキヌちゃんが銀ちゃんと結婚して事務所を去ることになった日のこと
  でも新居が徒歩1分のところで、やっぱり毎日事務所に来てたこと
  そして、康則との結婚…
   
タマモ 「あっ! あのときの跡がまだ残ってる… あんときはずいぶん慌てたもんな〜」
  康則との結婚で事務所を去ることになった日、まだ中学生だったひのめが
  さびしくて号泣しちゃったのはいいんだけど、念力発火能力を暴走させちゃって
  もう少しで事務所を灰にしてしまう事件を起こしていた…
  今、タマモが目にしているのは、そのとき出来た焦げ跡…
   
タマモ 「そういえばひのめちゃん、あれ以来、横島に『冥子2世』ってあだ名をつけられて、
  ずいぶん、怒ってたわね〜 (クスクスっ)」
  その『冥子2世』も世を去ってから100年以上が過ぎている…
   
  彼女の200年の中でのたった15年
  でも、これから先、何年生きようとも、
  もう2度と経験できない、彼女の青春が詰まっている15年…
   
   
  がやがやがや… タマモが感慨にふけっていたとき、ピートが建築業者をつれて
  事務所にやってきた…
ピート 「あれっ? タマモさんっ? いや〜、なつかしいなぁ〜。
  先日、ここで、美神さんたちの残留思念に会ったばかりなんですよ?」
タマモ 「あっ、ピートっ! お久しぶりっ! 私も、その事件をTVで見て、なつかしくなっちゃって
  ふらっと、ここに来てみたの。」
   
ピート 「あっ、そうだったんですか。 いやぁ〜、タマモさんに会えて、ちょうどよかった。
  実は、この地所を僕が買い取ったんで、また昔のように改修しようと思ってるんですよ。
  でも、僕はここの住人じゃなかったから、細かいところがわからなくて…
  タマモさん、アドバイスをお願いできますよね?」
タマモ 「あら、面白そうね。 手伝わせてもらえる?」
   
   
  その夜 三玉ビル120階の特別貴賓室で夕食をとることにした二人
  食事のメニューは、特製きつねうどんと、赤いバラだけなんだけど…
タマモ 「こうしてピートと二人だけで話をするなんて、もしかして初めてかしら?」
ピート 「そうですね。 いつも、誰かしら他の人も一緒にいましたから…。
  そうそう、シロさんが必ずいましたし。 そういえば、シロさんは、お元気ですか?」
   
タマモ 「シロ〜? 元気よ〜。 先月会いに行ったばっかしだし。
  50年程前、森が恋しくなって人狼の里に帰っちゃったけど、里では賑やかな
  オバさんとして、子供相手に武勇伝を語りまくってたわ。」
ピート 「あははは。 シロさんらしいですねっ。」
   
タマモ 「ただね〜、私が遊びに行くと、愚痴を聞かされてね〜…
  ほら、人狼も年をとるでしょ? 顔に皺取りクリーム塗りながら
  『タマモは、いつまでも若くてよかったでござるなっ!』って、嫌味たっぷりに言うのよ?
  も〜、いつまでたってもガキなんだから〜。」
ピート 「その調子なら、まだまだ長生きしそうですねっ!」
   
タマモ 「そうね…。 人狼の寿命は500年ぐらいって聞いてるけど、最近、人狼の健康管理も
  進んだみたいで、寿命が延びたらしいしね。
  あいつなら、あと千年生きたって、驚かないわっ!」
ピート 「そうですね… みんな、長生きしてもらいたいです…」
タマモ 「………、うん…。」
   
タマモ 「その…、長生きのことなんだけど… ピートは、今幾つ?」
ピート 「え〜っと、たぶん900歳ぐらいかな…?」
タマモ 「そうよね〜、私より700歳も先輩なのよね〜…」
ピート 「やはり…、人間との寿命の違いが気になりますか…?」
タマモ 「………、うん…。」
   
タマモ 「康則と過した70年は、とても楽しかったし、子供や孫たちの成長を見守るのも
  楽しかったわ。 でも、さすがに孫たちも他界してしまうとね〜〜。
  この、5〜60年、ただぼんやりと生きてただけみたいでね…。
  シロが里に帰る気になったのも、わかるような気がするわ。
  ピートは、どんな感じで、気持ちの整理をしてきたの?」
   
ピート 「気持ちの整理… 僕も、それが出来たらどれだけ楽になれたか、と思ってます…。
  人間で好きになってしまった女性も、何人もいましたが、寿命の違いを思うと
  どうしても一緒になることが出来なくて…」
タマモ 「えっ? 女性にも興味が有ったの?」
ピート 「あああ、タマモさんっ! 『も』じゃなくて、『だけ』ですっ!」
   
タマモ 「あれっ? そうなの? だって、ICPOのピート直属部隊って、未婚の女性は
  配属されてないって聞いたわ? それって、お気に入りの若い男性ばかりを
  集めてるってことでしょ?」
ピート 「あああ、未婚の女性を配属しないのは本当ですが、意味が逆ですっ!
  人間の女性に好かれると、その女性に申し訳無いから、遠ざけているだけでっ!
  ワイドショーの流した、悪質なデマに、惑わされないで〜っ!」
   
タマモ 「あははは。 そうだったんだぁ〜。
  昔、魔理さんに、そうだと聞いて、ずっとそう思ってたのに〜。 
  つまり、長生きが心の負担にならないよう、用心しているってことなのね?」
ピート 「ええ…。」
タマモ 「それはそれで、つらいとこも有るわね〜…」
ピート 「まあ、そうですけど、でもこれは不老不死の僕たちの宿命ですから…
  今はただ、先のことなど考えずに、目の前にいる人たちと一緒に、充実した日々を
  送ることが心の支えになっています。」
   
タマモ 「………、強いのね…」
ピート 「こう見えても、900年、生きてますからっ!」
タマモ 「私も、強く、なれるかな…?」
  まだとても若かった頃、平安時代に時間移動してしまい、自分の前世に
  出会ったときのことを、ぼんやり思い出しているタマモ…
   
  前世の妖狐は、愛する人との別れが辛くて、自ら命を絶とうとしたけれど
  来世のタマモに会えたことで、自分がいつか死ねることがわかり
  逆に生きる希望が湧いてきたのだった…
  でも、現世のタマモは、自分の存在が社会的に認められるようになったため、
  自ら死地に飛び込まない限り、自分には死が訪れないことを悟っていた…
  それがここ数十年、心の負担となって重くのしかかっていた…
   
ピート 「不安でしたら……、僕と一緒に暮らしませんか?」
タマモ 「え゛っ!? い、いきなり、プロポ〜ズゥ〜〜っ!?」
   
ピート 「へ、変でしたかっ!? そ、その、こんなこと言ったの、初めてでしたから…」
タマモ 「い、いや、変ってゆ〜か、唐突だったから…」
   
ピート 「僕も…、強そうなこと言ってますけど、一人で生きつづけるのはつらいんです…
  ただ、そうするしかなかったから、そうしてきただけで…
  今、タマモさんと話してて、タマモさんとなら、気持ちが分かり合えると思って…
  それに…、タマモさん、その……、綺麗ですし…」
タマモ 「………」
   
ピート 「そ、その〜、返事は今すぐでなくていいですから…」
タマモ 「そ、そうね…。 少し、考えさせてくれる?」
ピート 「ええ…。 100年でも、200年でも、待ってますから…」
タマモ 「(クスクスっ) さすがに、気が長いのねっ。」
   
   
  3ヶ月後…
ピート 「ありがとう、タマモさんっ。 こんなに早く、来てくれてっ!」
タマモ 「人間だったら、結構、長い時間だと思うけどね…。
  康則が、どう思うかな〜ってずっと考えてたんだけど、あいつなら、
  許してくれそうな気がしてね…。」
ピート 「………」
   
タマモ 「ねえ、ピート。 あなたの方も、覚悟は出来てるわね?
  私、ずぅ〜〜っといるわよっ!? ほんとに、ずっとよっ?」
ピート 「ええ、もちろんっ。 ずっといてください。 千年でも二千年でも、地球が滅びるまでっ!」
タマモ 「(クスクスっ) 私たちの場合、それが冗談にならないところが、すごいわねっ。」
   
   
  タマモがピートと同居するようになってから、はや100年…
  改修された旧美神事務所は、ICPOと民間GSの情報交換サロンとして活用することになり、
  管理人として、タマモが常駐するようになっていた
   
  まっ、実態は、若いGSの溜まり場になってるだけだけど…
  あっちこっちで、わいわい、がやがや…
伊達雪斗 「おい、政伸。 おまえら兄妹、また式神を暴走させたんだって〜?」
六道政伸 「いや、暴走はさせてない…。 でも、暴走させたほうが、まだましだったよ。
  冥華のせいで、ヒドイ目に遭っちゃってね…。」
六道冥華 「だって〜〜、お兄ちゃん〜〜〜」
   
伊達雪斗 「なにがあったんだ?」
六道政伸 「冥華がプッツンしそうになったんで、あわてて俺の夜叉丸を冥華の影に入れたんだ…」
伊達雪斗 「ああ、合体夜叉丸十二神将って奴にするためだな?」
六道政伸 「そうなんだけど… そいつがしゃべれるのは知ってるだろ?」
伊達雪斗 「なんか言われたのか?」
   
六道政伸 「説教だよ、説教っ! ご先祖様が、式神をどう扱ってきたかとか、俺たちの修行が
  なってないとか、延々と聞かされてなっ!」
伊達雪斗 「そんな奴、影に戻しちまえばいいじゃん。」
六道政伸 「冥華の霊力で操ってるんだから、冥華がその気になんなきゃ戻らないんだ…」
六道冥華 「だって〜〜、怖かったんだもの〜〜」
   
六道政伸 「冥華っ! 式神に使われる式神使いなんて、聞いたことないぞっ!?
  もう、プッツンしても止めてやんないからなっ!?」
六道冥華 「あ〜ん、お兄ちゃん〜〜〜」
伊達雪斗 「情っけねぇ〜な〜、おまえら。 でも冥華には、いい薬になったんじゃね〜の?
  ろくに式神、操れね〜みたいだし。」
   
六道冥華 「雪斗くん、ひどい〜〜〜
  雪斗くんだって〜、まだ〜、魔装術を使いこなせてないじゃないの〜。
  あんな〜ゴキブリみたいな姿で〜、『俺は強い!』だなんていばっても〜、
  カッコ悪いんだからぁ〜〜〜!」
伊達雪斗 「ゴッ、ゴキブリだと〜〜〜?」
   
  わいわい、がやがや…
  バキィっ! 美神に殴られ横島ダウン…
横島忠彦 「堪忍やぁ〜〜 しかたなかったんやぁ〜〜」
横島絹代 「あああ…、お兄ちゃんっ!」
美神ヒノコ 「絹代ちゃん、あんたのバカ兄貴、ちゃんと管理してよねっ!?
  ここにくればタダでシャワーが使えるのに、こいつがうろうろしてるせいで、
  使えなくなっちゃうじゃないのっ!」
   
横島絹代 「あああ…、ヒノコさん、すいません、すいません。
  お兄ちゃんっ! なんで、そんなことしたんですかっ!?」
横島忠彦 「いや… その… 文珠が出せたんで…」
   
横島絹代 「えっ!? お兄ちゃん、すごいっ! ついに出せたのねっ!?
  お父さんでさえ、週に1個出せるかどうかなのにっ!」
横島忠彦 「それで、使えるかどうか、ためしてみたくって…」
横島絹代 「………、使っちゃったんですね… ヒノコさんに、殴られるような理由で…」
横島忠彦 「しかたなかったんやぁ〜〜〜」
   
西条恵理 「ずいぶん、怒ってるわね〜? いいじゃん、別に。 風呂のドアを開けられたくらい…。」
美神ヒノコ 「あんたは、黙っててっ!
  そおね…、ここはひとつ、タマモさんにお仕置きしてもらおうかしらっ!?」
横島忠彦 「そ、それだけは、やめてぇ〜〜〜!!」
   
横島絹代 「えっ!? タマモさんのお仕置きって、そんなにキツイんですか?
  ヒノコさんが、お兄ちゃんを殴るのよりもっ!?」
伊達雪斗 「そんなの、比じゃねえな。 地獄に落とされるんだぜっ!?」
横島絹代 「地獄…ですか?」
伊達雪斗 「ああ…。 おタマ婆さんの幻術で、ほんとに地獄に落ちた幻覚を見ちまうんだ…」
横島絹代 「伊達さんも、経験があるんですね…?」
伊達雪斗 「うっ…」
   
  まあ、ここも、いろんな情報交換には役立ってるみたい…
  そこにタマモがやってくる…
タマモ 「あんたたち、うるさいわよっ!」
横島忠彦 「あああ…、タマモさんっ! お仕置きしないでっ!?」
   
タマモ 「ん? あんたを、いちいちかまってる暇なんかないのっ!
  それに、あんたの前世のこと、よく知ってるけど、ちょっとやそっとで、
  バカやスケベが直るなんて思ってないわ。
  もう、あんたも、あんたの前世も、それが本能だからね…
  ヒノコちゃんも、見られるのが嫌なら、ここでシャワーなんか浴びないことね。
  自分の身体を見せびらかしたいっていうんなら、別だけど。」
美神ヒノコ 「み、見せびらかしたくなんか、ありませんっ!」
伊達雪斗 「そういう割には、ずいぶん肌を露出してるのな…」
   
横島絹代 「でも、タマモさん、お兄ちゃんの前世って言われている、横島忠夫さんって、
  ものすごく活躍したGSだって聞いてますけど…?」
タマモ 「活躍はしたけどね〜〜 でも、性格と霊能力に関係ないのはわかるでしょ?
  それに、こいつの前世がどうとか言う前に、横島家の血を引く男どものエネルギー源は、
  煩悩だってこと、あんたもよく知ってるでしょ?」
   
横島絹代 「うっ…… イ、イヤ〜〜ッ! お父さんもお兄ちゃんも、フケツ〜〜ッ!」
タマモ 「そういえば…、横島家の血筋には、妄想癖もあったわね…」
   
タマモ 「それはともかく… 今日、あんたたちに集まってもらったわけは、わかってるわよね?」
美神ヒノコ 「ええ。 GS見習の高校生が、挨拶にくるんでしょ?」
タマモ 「そうよ。 かわいらしい姉妹なの。
  私とピートで面倒みることになったんで、あんたたち、仲良くしてやってね。
  今、ピートが迎えに行ってるから、もう、まもなく来るわよ。」
   
横島忠彦 「おおっ、可愛い姉妹っ! よしっ! お兄さんがやさしく指導してあげようっ!」
横島絹代 「お兄ちゃんっ! バカなことしたら、ほんとにお仕置きされちゃいますよっ!?」
横島忠彦 「心配するなっ! 俺にだって、理性ぐらいあるさっ!」
横島絹代 「その理性が、すぐ飛んじゃうから、心配してるんだけど…」
   
   
  やがて、ピートが噂の姉妹を連れてくる
ピート 「みなさん、タマモさんからも話があったと思うけど…」
   
横島忠彦 「あっ! かわいいっ!」
  がばぁ〜〜っ!!
「一生ついていきます、おにーさま―――ッ!!」
横島忠彦 「わああッ?」
  横島を見るなり、いきなり抱き付いてきた女の子っ!
   
横島絹代 「あああ…?」
「ね、姉さんっ!? なんて、バカなことをっ!?」
   
タマモ 「ピート…、この子、ほんとにルシオラって魔族の生まれ変わりなの…?
  どっちかっつ〜と、横島忠夫の生まれ変わりのよ〜な…」
ピート 「い、いやぁ〜、横島さんの体内で魂が再生されたから、その影響かも…」
   
「あ、あの、ごめんなさい…。 普通に挨拶するつもりだったんですけど…
  その、今までおにーさまみたいな、ものすごく素敵な人を、見たことがなくて、
  どーしたらいいか、わかんなくなっちゃって…」
横島忠彦 「えっ、え〜っと、俺も…」
   
「なに言ってんのよ、姉さんっ! 早く離れなさいよっ! みっともないっ!」
横島絹代 「あああ…、お兄ちゃん…」
   
伊達雪斗 「あいつ…、素敵…なのか…?」
六道政伸 「さ、さあ…?」
   
ピート 「えっと、今、横島さんに抱きついた人が、芦ほたるさん、こちらが妹の芦ミツエさん。
  み、みんな、仲良くしてあげてくださいねっ。」
タマモ 「ピート…、誰も聞いてないわよ?」
   
   
  300年ぶりに、劇的(…マンガ的)に再会を果たした、横島とルシオラの魂
  もちろん、後ろで手をまわしていたのは、妙神山御一行
  この光景を見守っているパピリオたち
   
パピリオ 「ルシオラちゃんは、やっぱり積極的だったね〜〜。
  ヨコシマのことが、好きだってことは頭ではわかってたけど、
  こう、一気に盛り上がるとは、思わなかったもんな〜。
  このまま、うまくいくよね? 小竜姫ちゃん?」
   
小竜姫 「そうね。 問題ないと思うわ。
  彼女を横島さんの子供に転生させる計画は、私の力不足で途中で失敗して
  しまったんだけど、こうしてみると、この方が良かったのかもしれないわね…」
   
パピリオ 「でも…、それは、私たちの命に終わりがないから思えることかも…
  寿命が有って、転生が信じられないなら、別れはつらいだけだもの…」
小竜姫 「ん… たしかに… 終わりのない命には、お別れは、ないのと同じだものね…」
   
パピリオ 「えっ? 画像が消えちゃった? ぺス、なにやってんのよっ!?」
ヒャクメ 「その〜…、神通力がぁ〜〜…」
パピリオ 「もうっ! こんな大事なときに情けないわねっ、あんたはっ!
  早く画像を映さないと、ケロちゃんのエサにしちゃうわよっ!?」
ヒャクメ 「あああ〜、私、パピリオのペットじゃないんですけど〜〜
  でも、怖いから、すぐつけますね〜〜 もうちょっと、待っててくださいね〜!」
   
  相思相愛で恋のライバルもいないとなれば、うまくいかないわけもなく、
  もう、まわりがうらやむほどアツアツの二人…
  あの横島なのに、浮気する気も無いみたい…
  そんな調子で、ハラハラしどおしの妹たちをしりめに、結局、できちゃった結婚っ!
  どうやら、二人はとっても仲睦まじく平穏無事に暮らしている模様…
   
   
   
   
   
  ただ〜…、え〜っと…、そのぉ〜…
  二人の子供に、美神令子の魂が転生してからは…  ゴニョゴニョ…
END  

※この作品は、まきしゃさんによる C-WWW への投稿作品です。
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