shall we bed


  (あ・・・俺まだ生きてるのか?)
 彼が最後に覚えているのは、小竜姫の放ったギャラクティカマグナムを顔面を受けた時までだ。
  (痛てってててて、て事はまだ生きてるようだな)
 まだ痛む顔を押さえる。数度目を擦るとボンヤリとしているが天井が見えた。
  (先刻までいた病院じゃ無いな。かといって俺のアパートでも無いし)
 鼻孔には消毒液でも無くカビ臭い物でも無い甘ったるい匂いが漂っていた。
  「気がつきましたか、横島さん」
  「ん・・・」
 天井を遮るように覗きこんできたのは小竜姫。細長い瞳孔を開いた状態で、周りは赤くまつ毛は濡れていた。どうやら彼女は少し泣いていたようだ。


  ぺこぺこぺこ
 こんな事になったことをしきりに謝る。しかし、いつも美神にやられているのと差異は無いので逆に閉口する。
 確かに握り潰されそうな感触は思いっきり痛かった。確かにそうではあったが、ちょっと気持ち良かった・・・・・。
 こんな小さく細い手に力があるのかと思わせる小竜姫の白魚のような手に握られて、痛み別にすれば思わずアッチにいっちゃいそうな程であった。
  (う!やばい!!)
 小竜姫の手の感触を思い出しただけで、握られていた横島のソレが元気になり始める。
  (ああ良かった・・・まだ使えるようだな)
 握り潰されて不能になったら、これから先何を楽しみにしていこうかと本気だ考えて青ざめた。
  (いかん、こんなさまを見られたら俺の清純なイメージが崩れてしまう)
 フザケタ事を考えつつ、納まれとばかりに目の前の美しい小龍姫から意識をクラスのむさ苦しい野郎連中の顔を思い浮かべると。
  「おえ〜」
 タイガーのムサイ顔を思い出すと今度は気持ちが悪くなり吐きそうになってしまった。
  「だ 大丈夫ですか横島さん。まだ痛みますか!」
 その表情を見、再び小竜姫がまだ痛むかと心配げに顔を近ずけてくるので誤魔化すのに苦労する。一応寝かされている体の上には蒲団がかけられているが、夏用なので薄いシーツ一枚だけだし、自慢では無いが彼の一物は相当に厚い蒲団でしか元気を隠す事ができない程に存在を誇示する物であったのだ。
 煩悩が大きいからそうなのか、そうだから煩悩が大きいのか判断付かないが、彼の父が女殺しを自他共に認めるのはコレも一因しているのだろう。
 幸い小竜姫を宥めるのに砕心したので彼のも次第に大人しくなった。彼女も自分がいつまでも謝るのを止めない方が彼を困らせると、何とか気持ち立ち直ってくれた。


  「あれっ?」
  「ん?どうしました横島さん」
 ベッドの中で発した横島の素っ頓狂な声に、洗面器で横島の顔から取った手ぬぐいを絞っていた小竜姫が振り向く。
  「ここ前の部屋じゃないすね」
 前の修業と時、雪の丞と使っていた部屋で無いことに気がつく。部屋は質素ではあるが、作りは手間をかけて丈夫なたたずまい。所々に置かれたものは年頃の女性がいかにも好みそうな小物がそこかしこに点在していた。
 聞くと、やはりそこは小竜姫の部屋だ。以前使っていた部屋は改装中らしく、急場に使えるのはここだけとパピリオの部屋であったのでコッチを使ったらしい。

  (ええ匂いじゃ〜)
 小竜姫の使っているベッド。いつぞや、香港編で想像したあの秘密の花園が今ここに・・・・・。クンクンとシロのようにシーツの匂いを嗅ぐ。再び興奮が押さえられず、先程よりも元気になってしまう。
  (ベッドの脇には、自分を心配そうに看護してくれている美女。これは濡れ場のパターンじゃあ・・・・でも)
 先程の痛みが完全に引いていたらば、のぞき込んでいるその手を掴んで引っ張り込みたかった。しかし元気になり始めた彼の息子は手に当たる毛布以外の感触に気がついた。
  「あれっ?」
 もう一つの疑問が浮かぶ。先程から度々存在を誇示するモノ、それが元気になるたびにいつもならばそれを阻害するズボンという物が無い事に気がついた。少しシーツを上げると横島は以前の修業の就寝時と同じ浴衣を着ていた。
  「・・・・・」
  「どうしました?」

 思い出した。どこの世界に服着て温泉に入る馬鹿がいるのかと。
  「俺・・浴衣なんか着てましたかね・・」
  「・・・」
 湯船の中でノックアウトされたので服など着ている筈も無い。パピリオに今は誰もいないことは聞いていたので・・・・・。
  「やっぱり、その・・」
 小さく手を上げる。気弱な女子小学生が、父兄参観の授業でやっと手を上げた風情だ。やはり着替えさせたのは彼女だった。
  「う〜ん」
 確かに見せる事に危ない快感を得たことはあったが、無意識の時に見られても嬉しくないし、代えって恥ずかしい。酒の席で酔って人前で服を脱いで裸踊りをしても、えてして着るときは人に見つからないようにするのと気持ち一緒であった・・かも?。

  「すいません。取り敢えず体は拭かないと、その、いくら夏でも風邪を引かれると思って、それに浴衣も・・その・・・」
  「つうと・・・・・・・・・つうと・・・・・・見ました・・・・・・よね」
 一応羞恥心はあるし、懇意にしている女性ならば一方的に見られてのは恥ずかしい。お互い裸ならば無論オールオーケーだが・・・・・。
  「・・・・あ・・・・・は はい・・・・・その・・・・でも、ちょっと、その・・」
 顔を真赤に染める。思いっきり握ったのは事故であったが、本当云えば見ないようにと思いつつも視線がソコに絡みつくのを押さえられなかった・・・・・・・・・・。



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